改元で気づいた源泉所得税納付書の書き方

1.新元号と源泉所得税納付書の書き方

 2019年(平成31年)4月1日に、5月1日以降の新元号「令和」が発表されました。この改元に伴い、「平成」が印字された源泉所得税の納付書の記載のしかたが国税庁ホームページで公表されました。

 公表された「改元に伴う源泉所得税の納付書の記載のしかた(リーフレット)」によると、改元後においても「平成」が印字された源泉所得税納付書は使用できるようです。
 新元号が印字された納付書は、税務署で本年 10月以降に順次配布予定とのことですので、それまでの間は現在手元にある「平成」が印字された納付書を使用することになります(10月以降も「平成」が印字された納付書の使用は可能です)。

 「平成」が印字された納付書の記載にあたっては、以下の点に注意しなければなりません。

(1) 現在手元にある納付書に印字されている「平成」の二重線による抹消や新元号の「令和」の追加記載などにより補正をする必要はありません。

(2) 2019年(平成 31 年)4月1日から2020年(令和2年)3月末日の間に納付する場合、納付書左上「年度欄」は「31」と記載します。

 上記2点について、リーフレットでは【「平成」が印字された納付書の記載にあたってのお願い】となっていますが、(1)はしてはいけないこと、(2)はしなければならないこと、と認識しておく必要があります。 

 (1)については、補正をすると数字の読み取りが難しくなることもあるため、それを避けるための措置だと思われます。
 (2)については、例えば2019年(令和元年)5月10日に納付する場合でも「年度欄」には「31」と記載し、「01」と記載してはいけないということです(税務署側の管理上の都合でしょうか?)。
 「平成」が印字された納付書の具体的な記入方法については上記リーフレットに載っていますので、そちらを参照してください。 

2.ずっと間違っていた源泉所得税納付書の書き方

 納付書の書き方をリーフレットで確認していて、気づいたことがありました。リーフレットには、2020年(令和2年)3月10日に2月支給給与の源泉所得税を納付する場合の記入例が載っていたのですが、「年度欄」には上記1.(2)で確認したとおり「31」と記入されています。

 ここでハッと気づきました。 納付する場合?納付?

 この業界に入って以来、これまでずっと源泉所得税を「納付する年月」ではなく、給与を「支給した年月」でこの欄を記入していたのです。

 例えば、2018年(平成30年)1月から12月までに支給する給与に係る源泉所得税納付書には「30」と記入し、年が変わった2019年(平成31年)1月に支給する給与に係る源泉所得税納付書から「31」と記入していました(実際、今年(2019年)の1月分納付書(納期限2月12日)の「年度欄」にも「31」と記入しています)。

 国税庁ホームページで調べてみると、「納付書の記載のしかた(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)」に次のことが書いてありました。

「年度」(会計年度(平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間に納付する場合には、「30」)を記載します。)・・・・・・

 ということは、平成31年1月分は平成31年3月31日までに納付しますので、年度は「31」ではなく「30」を記入することになります。

 税務署から間違いを指摘されたことはありませんが、これまで当たり前に行っていたことが、実は間違っていたということです。

法人設立届出書に登記事項証明書の添付は不要になったけれども…

1.法人設立時の届出書と提出期限

 法人を設立した際には、様々な届出書等の提出が必要です。中でも重要なのは、「青色申告の承認申請書」です。

 法人の設立初年度の青色申告の承認申請書は、設立の日以後3か月を経過した日と当該事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日までに税務署に提出しなければなりません。
 提出を失念した場合には、青色欠損金の繰越しや租税特別措置法に規定されている特別償却・特別控除などの適用を受けることができません。

 その他、法人設立時に税務署に提出する届出書には以下のものがあります(カッコ内は提出期限)。

(1) 設立届出書(設立登記の日から2か月以内)
(2) 棚卸資産の評価方法の届出書、有価証券の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出書(設立後最初に到来する確定申告期限)
(3) 給与支払事務所等の開設届出書(事務所開設日から1か月以内)

2.法人設立届出書等の登記事項証明書は添付省略可

 設立届出書も法人設立時の届出書のひとつですが、2017年度(平成29年度)税制改正において、企業が活動しやすいビジネス環境整備を図る観点から、次のとおり手続きの簡素化措置が講じられました。

(1) 法人の設立・解散・廃止などの届出書等において添付が必要とされていた「登記事項証明書」
(2) 税務署からの求めにより、添付していた「登記事項証明書」

については、2017年(平成29年)4月1日以後、その添付が不要となりました。

3.登記事項証明書の添付は不要になったはずなのに・・・

 上述のように2017年度(平成29年度)改正により、法人設立届出書等には登記事項証明書の添付が不要になりました。

 この度、新規の顧問先について法人設立届出書を提出する機会があったのですが、税務署の対応は上記と異なるものでした。
 新様式の法人設立届出書の「添付書類等」の欄には、これまであった「登記事項証明書」の記載がなくなっていました。
 たしかに2017年度(平成29年度)改正を反映したものとなっていたのですが、念のため税務署(大阪府内の税務署です)に問い合わせてみました。
 すると、「法人番号の導入で法人の存在は確認できるのですが、代表者等の確認のために登記事項証明書の添付をお願いします」とのことでした。

 改正では登記事項証明書の添付はしなくてもよいことになりましたが、実務の現場ではまだまだ登記事項証明書が必要のようです。

65歳からの老齢基礎年金と雇用保険

1.年金の受給資格期間が10年に短縮された

 原則65歳から老齢基礎年金を受け取るためには、保険料納付済期間(国民年金保険料納付済期間や厚生年金保険、共済組合等の加入期間を含みます)と国民年金の保険料免除期間などを合計した「受給資格期間」が、これまでは25年(300月)以上が必要とされていました。

 しかし、2017年(平成29年)8月1日からは、受給資格期間が10年(120月)以上あれば老齢基礎年金を受け取ることができるようになりました。

 なお、受給資格期間を満たして老齢基礎年金を受給できる方が、1か月でも厚生年金保険に加入していた場合には、原則65歳から老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受給できます。

2.65歳以上の従業員も雇用保険の適用対象となった

 先日、顧問先の社長から「65歳以上の従業員を雇った場合、雇用保険の適用対象となるか?」という質問を受けました。

 そこで、調べてみると、2017年(平成29年)1月1日以降は、これまで適用除外となっていた65歳以上の新規雇用者についても、雇用保険の適用対象となったようです。

(1) 2016年(平成28年)12月31日までの旧制度

 以前の制度では、65歳以上の新規雇用者は、雇用保険に加入することはできませんでした。
 ただし、65歳以前から働き、65歳以降も同じ会社で働き続ける場合は、65歳になった段階で高年齢継続被保険者という扱いになり、雇用保険に加入し続けることができます。

 また、離職して求職活動をする場合には、高年齢求職者給付金(賃金の50%~80%の最大50日分)が1度だけ支給されました。
 なお、毎年4月1日時点で満64歳以上になる方については雇用保険料が免除されています。

(2) 2017年(平成29年)1月1日以降の新制度

 2017年(平成29年)1月1日からの新制度では、65歳以降に雇用された従業員も雇用保険の加入要件を満たす場合は雇用保険に加入することができます(雇用保険の加入要件については、本ブログ記事「雇用保険を遡って加入できるか?」を参照してください)。
 また、その従業員が離職して求職活動をする場合には、その都度、高年齢求職者給付金が支給されます。支給要件・内容はこれまでと同様で、年金との併給も可能です。

 介護休業給付、教育訓練給付等についても、新たに65歳以上の方も対象となります。

 さらに、2020年度(令和2年度)より、64歳以上の方の雇用保険料の徴収免除が廃止され、原則通り徴収が開始されます(2020年(令和2年)3月まで免除されます)。 

2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される税制改正項目

 今日から2019年度(平成31年度)が始まります。新元号も「令和」に決まりましたので、2019年5月1日以降の和暦は「令和」と表記します。

 2019年度(平成31年度)税制改正大綱は、2018年(平成30年)12月14日に発表され同年12月21年に閣議決定されました。
 今回は、この2019年度(平成31年度)税制改正項目と2018年度(平成30年度)以前の税制改正項目のうち、新年度から適用開始される項目(創設、改正、延長)について、法人税、所得税、消費税の税目別に整理します。

1.法人税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(創設、改正、延長)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 創設される項目

① 防災・減災設備の特別償却制度

 改正中小企業等経営強化法施行日から2021年(令和3年)3月31日までに、青色申告書を提出する中小企業者のうち中小企業等経営強化法の認定を受けたものが一定の防災・減災設備等を取得等した場合は、取得価額の20%の特別償却が可能となります。

② 法人が有する仮想通貨に係る整備

 2019年(平成31年)4月1日以後終了事業年度分から、法人が期末に保有する仮想通貨について、時価法等により評価損益を計上等することとされます。

(2) 改正される項目

① 研究開発税制の見直し

 試験研究を行った一定のベンチャー企業の税額控除限度額が25%から40%に引き上げられます。
 オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)における税額控除上限が、法人税額の5%から10%に引き上げられます。

② みなし大企業の範囲の見直し

 100%グループ法人内の複数の大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等)に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている法人も、みなし大企業の範囲を決める大規模法人に該当することになります。

③ 業績連動給与の手続き要件の見直し

 「業務執行役員が報酬委員会等の委員ではないこと」の要件が除外等されます(経過措置あり)。

④ 地域未来投資促進税制の見直し

 一定の要件を満たす場合は、機械装置及び器具備品の特別償却率を40%から50%に、税額控除率を4%から5%にそれぞれ引き上げられます。

(3) 延長される項目

① 中小企業者等の法人税の軽減税率特例

 中小企業者等に対する法人税の軽減税率15%(年800万円以下の所得に対する税率。本則は19%)の特例が、2021年(令和3年)3月31日まで2年延長されます。

② 中小企業向け設備投資減税

 中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制について、2021年(令和3年)3月31日まで2年延長されます(本ブログ記事「税制改正による2019年4月1日以降の設備投資税制」を参照)。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限(2021(令和3)年3月31日)の到来をもって廃止されています。

2.所得税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(改正)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 改正される項目

① 住宅ローン控除の拡充等

 消費税率が2019年(令和1年)10月1日以降、8%から10%に引き上げられます。
 これに伴い、消費税率10%が適用される住宅取得等のうち2019年(令和1年)10月1日から2020年(令和2年)12月31日までに取得等する住宅については、現行10年の控除期間が3年延長されて13年間控除できるようになります。

② 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の延長等

 被相続人から相続した居住用家屋等の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例の適用要件が、次のように緩和されます。

イ.被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ相続の開始の直前まで老人ホーム等に入居していたこと

ロ.被相続人が老人ホーム等に入所をしたときから相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ事業の用、貸付の用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと

 上記要件を満たす場合は、相続の開始直前まで被相続人が対象の家屋を居住の用に供していたものとみなされ、被相続人が相続の開始直前に老人ホーム等に入居している場合でも、特例を受けることができます(2019年(平成31年)4月1日以降の譲渡に適用されます)。

3.消費税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(改正)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 改正される項目(2019年度(平成31年度)改正)

① 輸出物品販売場制度の見直し

 既に輸出物品販売場の許可を受けている事業者に限り、臨時販売場での免税販売が認められます。2019年(令和1年)7月1日から適用されます。

② 金地金等の密輸に対応するための仕入税額控除制度の見直し

 2019年(平成31年)4月1日以降、密輸と知りながら行った課税仕入れの仕入税額控除が認められないほか、本人確認書類の写しの保存が要件に加わります。
 本人確認書類の写しの保存要件は、2019年(令和1年)10月1日以後に行う課税仕入れから適用されます。

(2) 改正される項目(2018年度(平成30年度)以前改正)

 2019年(令和1年)10月1日以降、消費税率が8%から10%に引き上げられます。
これに伴い、軽減税率制度(概要は省略)、区分記載請求書等保存方式(概要は省略)、簡易課税制度の事後選択特例、簡易課税制度のみなし仕入率の見直しが行われます。

① 簡易課税制度の事後選択特例

 「簡易課税制度選択届出書」を提出した課税期間から同制度を適用できる時限的措置です。
 2019年(令和1年)10月1日から2020年(令和2年)9月30日までの日の属する課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば適用されます。

② 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し

 2019年(令和1年)10月1日以降、第3種事業である農業・林業・漁業のうち、軽減税率が適用される飲食料品の譲渡を行う事業が第2種事業とされ、そのみなし仕入率は80%が適用されます。

監査役の報酬を取締役会で決めることはできない

 取締役と監査役の報酬上限を株主総会で決定し、個々の配分については取締役会で決定している会社があるとします。
 取締役の報酬についてはこれでいいのですが、監査役の報酬については取締役会で決定することはできません。

 会社法第387条1項には「監査役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。」とあります。
 定款で監査役の報酬を定めている会社はあまりないと思いますので、監査役の報酬は株主総会の決議によって定めることになります。
 これは、監査役の報酬を取締役会が決定すると、監査役の独立性に影響を及ぼすことになるからです。

 また、会社法第387条2項には「監査役が2人以上ある場合において、各監査役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、前項の報酬等の範囲内において、監査役の協議によって定める。」とあります。
 監査役の報酬上限を株主総会で決定した場合でも、個々の報酬については取締役会で決めることはできず監査役の協議で決めることになります。

ゴールデンウィーク10連休と4月決算法人の前払保険料

1.口座振替を振込に変更して対応

 今年(2019年)のゴールデンウィークは、4月27日(土)から5月6日(月)までの10連休となります。そのため、生命保険料等の口座振替日が4月27日(土)以降に設定されている場合、金融機関の口座からの引落し日は5月7日(火)となります。

 そこで、税務上注意しなければならないのは、4月中に支払ったことが損金算入の要件となる前払費用です。

 前払費用は支払った日の属する事業年度の損金の額に算入できることとされており(法人税基本通達2-2-14)、例えば、前払保険料、前払家賃、前払賃借料などがあります。

 これらの前払費用は、4月決算法人の場合、4月中に支払わないと損金算入できません。特に生命保険料については、節税対策として1年分を前払いしている法人も多いものと思われますので、損金算入できなかったとしたら多大な影響を損益に与えることになります。
(短期前払費用の損金算入要件等については、本ブログ記事「短期前払費用の損金算入の注意点」を参照して下さい)

 日本生命、住友生命、三井生命、オリックス生命など、口座振替日が27日となっている生命保険会社は多いです。このようなケースでは、口座振替を振込に変更して4月中に支払うなどの対応が必要です。

2.倒産防止共済は未払計上で損金算入可

 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の掛金の口座振替日は毎月27日となっています。 

 この件に関して、独立行政法人中小企業基盤整備機構より、税務上の取扱いが加入者に発信され、「毎月口座振替により納付している掛金については、5月7日に引き落とされた掛金が会計上、未払い計上をしているのであれば、税務上もその未払いとなっている掛金の損金算入が認められる」とされています。
 また、毎期1年分の掛金を口座振替で前納をしている場合も同様とされております。

 つまり、4月決算法人において引き落としが5月7日であっても未払計上することによって当該年度に損金算入が可能なのは、①毎月、口座振替で納付している掛金、②毎期、口座振替で1年分を前納している場合の掛金、ということです。

 なお、既契約者が毎期でなく、新たに4月振替で前納をする場合は、3月に申出を行い口座振替をする必要があります。
(倒産防止共済の損金算入要件等については、本ブログ記事「中小企業倒産防止共済掛金の損金算入要件等」を参照して下さい。)

ピーク時の解約返戻率が50%超の定期保険等の税務取扱いの見直し

 2019年(平成31年)2月13日に国税庁から各生命保険会社に対して、「法人契約の定期保険等の税務取扱について見直しを検討している」旨の連絡がありました。
 これを受けて、翌14日から大手生命保険会社をはじめ、他の生命保険会社も当該商品の販売を一斉に停止しました。

1.見直しの具体的な内容は?

 今回、税務取扱の見直しの対象になったのは、「ピーク時の解約返戻率が50%超」の法人契約の定期保険等です。
 これに該当する保険商品は、支払保険料の全額又は一部が損金算入でき、かつ、ピーク時の解約返戻率が80%超に設定されており、中途解約すれば、払込保険料の多くを解約返戻金として受け取ることができるタイプのものです(今回の見直しの対象となった保険商品による節税と税務上のリスクについては、本ブログ記事「『低解約返戻金型逓増定期保険』の節税の仕組みと税務上のリスク」を参照)。

 現時点では検討段階であるため、具体的な改正内容や改正時期については未定とのことですが、これらの保険契約にかかる支払保険料の経理処理について、損金算入できる金額が縮小される方向性が示されています。 

2.既契約の保険料の経理処理は?

 今回の見直しが、既契約の保険商品の経理処理にも及ぶのかどうかについては、現時点では不明です。

 2008年(平成20年)の逓増定期保険、2012年(平成24年)のがん保険の改正の際は、通達改正日以降の新契約が対象となっており、既契約については従来の経理処理が認められました。

 しかし、1996年(平成8年)の逓増定期保険に関する通達改正の際は、既契約であっても通達改正日以降に払い込む保険料から影響する取扱いとなりました。

※国税庁は2019年(平成31年)4月11日に、節税保険に対応した法人税基本通達の改正案を公表しました。改正案については、本ブログ記事「法人向け節税保険の改正後の税務取扱い」を参照してください。

先端設備等導入計画の認定がとれました―申請書類等の実際の記載例を紹介します

1.生産性向上特別措置法による支援

 2018年(平成30年)6月6日に施行された生産性向上特別措置法では、2020年度(平成32年度)までを生産性革命・集中投資期間と位置づけ、中小企業の生産性革命の実現のため、市区町村の認定を受けた中小企業の設備投資を支援しています。

 具体的には、中小企業者等が「先端設備等導入計画」を作成し、国から導入促進基本計画の同意を受けている市区町村に提出して同計画について認定を受けた場合は、税制支援、金融支援、予算支援を受けることができるといったものです。

 税制支援とは、導入した設備の固定資産税(償却資産税)の課税標準を、3年間にわたってゼロ以上2分の1以下の範囲内で軽減する制度です(固定資産税の軽減措置については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照)。

 金融支援とは、先端設備等導入計画に基づく事業について、必要な資金繰りを支援(信用保証)する制度です。

 予算支援とは、認定事業者に対する一部補助金における採択を優先(審査時の加点)する制度です。

 先日、製造業を営むA社から、上記のうち税制支援を受けたいというご相談がありました。設備取得まで土曜日曜を含めて10日しかない状況でしたが、B市の担当者に事前確認した上で必要書類を提出し、無事認定を受けることができました。

 今回は、その際に得られた書類記載上の注意点等について述べていきます。

2.B市に確認したこと

 先端設備等導入計画は、設備取得前に認定を受けなければなりません。設備取得まで時間がなかったので、書類作成に先立って、B市の担当者に以下の点について確認しました。

(1) 認定に間に合うか?

 B市のホームページには、計画認定までの目安として2週間程度と記載されていました。
 そこで、設備の取得まで10日しかない状況で申請して、認定が間に合うかどうか尋ねたところ、明後日までに書類がB市に届くなら審査はできるとのことでした(つまり、土曜日曜を除く6日間で審査をすることは可能ということです)。

(2) 書類提出方法は郵送だけか?

 B市のホームページには、書類の提出は郵送のみとありました。時間がなかったので、作成した申請書類をB市に持参するつもりだったのですが、郵送でしか受け付けられないとのことでした。

 郵送の場合、速達で出してもB市に到着するまで1日かかります。すると、認定までのスケジュールを考えると、申請書類は1日で仕上げる必要がありました。

 設備取得まで10日-土曜日曜の2日-郵送にかかる1日-審査にかかる6日=1日

(3) 書類に不備があった場合は?

 提出した書類に不備があった場合は、A社へメールで連絡が入るとのことでした。
 その後、修正した書類が届くまで審査は中断されるとのことでしたので、不備は許されない状況でした。
 実は、「先端設備等導入計画」に1か所不備があったのですが、押印が不要な書類でしたので、修正したものは郵送によらずメール送信にて済ますことができました。 

3.書類記載上の注意点

 このような状況のもと、1日で以下の申請書類を仕上げなくてはなりません。

(1) 先端設備等導入計画に係る認定申請書
(2) 先端設備等導入計画
(3) 先端設備等導入計画に関する確認書
(4) B市暴力団排除条例に係る誓約書
(5) 申請書提出用チェックシート

 なお、税制支援を受ける場合は、上記以外に工業会証明書(写し)も必要ですが、A社は事前に入手されていました。

 では、これらの書類について、記載上の主な注意点と記載例を紹介していきます。

(1) 先端設備等導入計画に係る認定申請書

① 「宛名」(認定申請書の提出先)は、先端設備等が所在する市区町村長宛となります(B市市長 〇〇〇〇様)。本店の所在地を管轄する市区町村長ではありません。

② 「住所」(認定申請書の申請者)は、本店所在地を記載します。支店等で手続きをする場合でも、支店等の所在地ではなく本店の所在地を記載します。

③ 「名称及び代表者の氏名」で注意を要するのは、「代表者の氏名」です。名称は「A株式会社」、代表者の氏名は「代表取締役 〇〇〇〇」と記載します。

 B市によると、この代表取締役という役職名が抜けている場合は、修正の対象になるそうです。あらかじめB市担当者からよくある間違いとして聞いていましたが、聞いていなければ抜かしていたかもしれません。

(2) 先端設備等導入計画

「先端設備等導入計画」の記載要領は、上記(1)の「先端設備等導入計画に係る認定申請書」に載っています。
 主な注意点は次のとおりです。

① 「1 名称等」

(イ) 「2 代表者名(事業者が法人の場合)」欄には、念のため「代表取締役 〇〇〇〇」と記載しました。

(ロ) 「5 常時使用する従業員の数」欄に、役員は含めません。また、正社員以外のパート、アルバイト、契約社員等を従業員数に含めるかどうかは、個別判断とされています(含めても含めなくてもよい)。

② 「2 計画期間」

 計画期間は、3年間、4年間、5年間とされています。先端設備等導入計画の実施時期の月から起算して36か月、48か月、60か月のいずれかの期間を設定します。
 A社の場合は3年間の計画とし、「平成31年3月~平成34年2月」と記載しました。

 気をつけなければならないのは、例えば「平成31年3月~平成34年3月」のような期間設定はできないということです(年号が問題なのではありません)。
 「平成31年3月~平成34年3月」は37か月であり、年単位に端数が生じています。計画期間は3年間(36か月)、4年間(48か月)、5年間(60か月)のいずれかしか設定できません。
 B市によると、この間違いも多いそうです。

③ 「3 現状認識」

(イ) 「①自社の事業概要」は、適用を受ける業種の内容を記載します。A社の場合は、次のように記載しました。

「創業〇〇年の法人事業者で、アルミなどの非鉄金属の切削・表面処理を中心に、精密機器等の部品加工及び製造を行う。」

(ロ) 「②自社の経営状況」は、売上高や営業利益率の推移による経営分析を行い、自社の特徴や経営上の課題、改善点、目標などを記載します。
 A社の場合は、概ね次のように記載しました。

「売上は平成29年3月期が〇〇千円、平成30年3月期が〇〇千円と減少しているが、営業利益は〇〇千円から〇〇千円に増加しており、営業利益率も〇.〇%から〇.〇%へ改善されている。
 他方で、〇〇、〇〇が、今後、当社の生産性を高め、業績を伸ばしていく上での課題である。」

④ 「4 先端設備等導入の内容」

(イ) 「(1) 事業の内容及び実施時期」欄には、「① 具体的な取組内容」と「② 将来の展望」を記載します。
 「① 具体的な取組内容」は、具体的な設備内容と導入による効果を記載します。
 注意しなければならないのは、先端設備等の導入による「人員削減のための計画」は、先端設備等の導入に関する指針に定める「雇用への配慮」の観点から認められないということです。
 A社の場合は、次のように記載しました。

「従来のNC工作機械の老朽化に伴い、本社工場に立形マシニングセンタを導入する。当該設備の導入により、手動式であった工具交換を自動化し、製造時の省力化によるコスト削減を図る。
 また、立形マシニングセンタは、加工物の複数面に同時に数種類の加工を連続して行うことができ、これまでよりも複雑な形状の加工も可能となるため、受注の変化に応じた柔軟な生産体制を構築することができる。」

 「② 将来の展望」は、上記の「①具体的な取組内容」の結果、期待される自社の生産性向上などを記載します。
 A社の場合は、次のように記載しました。

「新設備の導入で作業の自動化・省力化が進み、熟練工以外の工員であっても作業可能領域が広がるため、人的資源を適切に配置することができるようになる。人的資源の適切な配置によって製品の品質が向上し、より多くの受注にも柔軟な対応が可能となるため、生産性向上の実現が可能となる。」

(ロ)「(2) 先端設備等の導入による労働生産性向上の目標」

現状(A) 計画終了時の目標(B) 伸び率(B-A/A)
〇〇千円 〇〇千円 9.0%

 労働生産性の伸び率は、設備導入の直近の事業年度末から計画終了時において、年平均3%以上向上する必要があります。
 A社の場合、計画期間を3年に設定しましたので、伸び率が9%(3%×3年)以上向上している必要があります。

 労働生産性は、以下の算式により算定します。

 労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)/労働投入量

 上記算式の人件費は、製造原価の労務費だけではなく販管費の人件費も対象になります。役員報酬を含めるかどうかは、個別判断とされています(含めても含めなくてもよい)。

 減価償却費は会計上の減価償却費が対象となり、製造原価及び販管費の減価償却費の合計となります。会計上の減価償却費は費用配分の原則に基づくことから、税務上認められている即時償却を予定している場合は計画終了時の労働生産性が正しく算定されないこともあるため、計算上は各計画期間に配分されるようにします。

 労働投入量は、「労働者数」又は「労働者数×1人当たりの年間就業時間」となります。労働者数は、上記算式の人件費の計算の基礎となった人数にします(人件費に役員報酬を含めた場合は、労働者数にも役員を含めます)。
 A社の場合は、労働者数を労働投入量としました。

 労働生産性の「現状(A)」欄は、設備導入の直近の事業年度末の決算書から数字を拾います。「計画終了時の目標(B)」欄は、A社の場合、伸び率が9.0%以上となるように逆算して算定しました。

 B市によると、労働生産性の算定にあたっては、現状と計画終了時において期間比較性が確保されるように、算定条件は必ず同一にしなければならないとのことでした(例えば、「現状(A)」欄の人件費に役員報酬を含めたのであれば、「計画終了時の目標(B)」欄にも役員報酬を含める必要があります)。
 また、計画終了時に9.0%以上の伸び率が達成できなかったとしても、罰則等はありません。

(ハ)「先端設備等の種類及び導入計画時期」

  設備名/型式 導入時期 所在地
1 マシニングセンタ/MT-12R 平成31年3月 〇〇県〇〇市〇〇3-4-5
2      
  設備等の種類 単価(千円) 数量 金額(千円) 証明書等の文書番号
1 機械装置 30,000 1 30,000 31-6147
2          
  設備等の種類 数量 金額(千円)
設備等の種類別小計 機械装置 1 30,000
合計   1 30,000

 「設備名/型式」欄は、工業会証明書に記載されている「設備の名称」と「設備型式」を転記します。
 「所在地」欄は、取得予定の先端設備等が設置される住所を記載します。〇〇県や〇〇府から記載します。
 「設備等の種類」欄と「証明書等の文書番号」欄は、工業会証明書に記載されている「減価償却資産の種類」と「整理番号」を転記します。
 「金額」欄は千円単位となっていますので、ご注意下さい。

⑤ 「5 先端設備等導入に必要な資金の額及びその調達方法」

使用・用途 資金調達方法 金額(千円)
先端設備等購入資金 融資 25,000
  自己資金 5,000

 「使用・用途」欄は、「先端設備等購入資金」と記載します。
 「資金調達方法」欄は、「自己資金」「融資」「補助金」のいずれかを記載します。
 「金額」欄は、上記④(ハ)下段の表にある「合計」欄と必ず一致するように記載します。実は、B市から修正の指摘を受けたのは、この箇所でした。
 当初、金額欄には融資を受ける25,000千円だけを記載していましたが、取得設備の合計金額30,000千円と一致していないとの指摘でした。残りの5,000千円についてA社に確認したところ自己資金で賄うとのことでしたので、上記のように修正してB市にメール送信しました。
 時間がなくあせっていたとはいえ、金額の不一致に気づかなかった私のケアレスミスでした。

(3) 先端設備等導入計画に関する確認書

 この書類は、税理士事務所等の認定経営革新等支援機関が、中小企業者等が作成した先端設備等導入計画の内容を確認し発行するものです。

 B市によると、間違いが多いのは日付だそうです。確認書の日付は、必ず申請書の日付より前の日付としなければなりません。

 「宛名」は、先端設備等導入計画を申請する「A株式会社 代表取締役 〇〇〇〇殿」と記載します。
 認定支援機関の「代表者役職」は、個人の税理士事務所に複数の税理士(所属税理士)がいる場合は、「所長税理士」などと記載します。

 「1.認定経営革新等支援機関担当者名等」の「①認定経営革新等支援機関担当者名」は、先端設備等導入計画事案を直接担当するのであれば、所長税理士、所属税理士以外に、税理士資格を持たない職員でもいいとのことでした。

 「2.先端設備等導入計画の実施に対する所見」は、導入する先端設備等が生産・販売活動等に直接利用されているか、先端設備等の導入によって労働生産性向上の目標に寄与するかといった観点から内容を確認します。

 A社の場合は、次のように3つの観点から記載しました。

「(1) 導入する先端設備等が生産活動に直接供されるかどうかについて
 マシニングセンタの導入により、作業の自動化・省力化によるコスト削減が可能となる。
 また、当該設備の導入により複雑な形状の加工も可能となるため、受注の変化に応じた柔軟な生産体制を構築することができるようになる。
 よって、今回導入する設備は、労働生産性の向上に資するものであり、生産に直接供される設備である。

(2) 先端設備等の導入の確実性について
 導入時期については、平成31年3月を見込んでおり、納入業者との調整もできていることから、問題ない。
 また、日本政策金融公庫からの設備資金2,500万円の融資の実行が確実であり、自己資金も潤沢であることから、導入に特段の問題はなく、導入は確実である。

(3) 労働生産性向上の目標達成見込について
 平成30年3月期において、営業利益〇〇千円、人件費〇〇千円、減価償却費〇〇千円、実労働者数〇〇人、労働生産性〇〇千円であった。
 先端設備等を導入することによって、計画期間終了後には、営業利益〇〇千円、人件費〇〇千円、減価償却費〇〇千円、実労働者数〇〇人、労働生産性〇〇千円となり、3年間で労働生産性の向上率9%を達成する計画である。
 雇用を確保しながら売上増による営業利益の増加が想定されることから、当該計画は妥当であり、労働生産性向上の目標達成見込みは高い。」

(4) B市暴力団排除条例に係る誓約書

 「宛名」は、「先端設備等導入計画に係る認定申請書」の宛名と同じく、先端設備等が所在する市区町村長宛となります(B市市長 〇〇〇〇様)。

 「商号又は名称」と「氏名又は職及び代表者名」は、フリガナを付けます。代表者名には、「代表取締役 〇〇〇〇」と記載しました。

 なお、この誓約書はB市独自の提出書類ですので、すべての市区町村で必要ということではありません。

(5) 申請書提出用チェックシート

 記入上の注意点は特にありませんが、「事業者名」は「A株式会社 代表取締役 〇〇〇〇」、「代表者名」は「代表取締役 〇〇〇〇」というように、役職名を記載しました。
 「申請者チェック」欄に✔を付けて提出します。

4.まとめ

 今回は申請までのスケジュールがタイトで大変でしたが、事前に市の担当者に確認・相談することが重要であると感じました。
 市区町村によって、提出書類や提出方法等が異なる場合もありますので、事前の確認は重要です。
 また、設備の取得が10日後に迫っていることを相談した上で申請しましたので、市の担当者も迅速に対応してくれたのだと思います。
 認定は、設備取得日の前日にとれました。 

税制改正による2019年4月1日以降の設備投資税制

 中小企業者等の設備投資を引き続き促進するため、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制及び中小企業経営強化税制について、次のような改正が行われました(2019年度(平成31年度)税制改正)。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制に商業・サービス業・農林水産業活性化税制を盛り込む形で制度を一本化した上で、中小企業投資促進税制の適用期限が2023(令和5)年3月31日まで延長されました。なお、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は適用期限(2021(令和3)年3月31日)の到来をもって廃止されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

1.中小企業投資促進税制

(1) 制度概要

 この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の機械装置等を取得等し指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できるというものです( ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)。

(2) 改正内容

 この制度については、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。

 中小企業投資促進税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制」を参照して下さい。 

2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

(1) 制度概要

 この制度は、認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)から経営改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の経営改善に資する器具備品や建物附属設備を導入した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できるというものです(資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)。

(2) 改正内容

 この制度については、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることを適用要件に加えた上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。
 この改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されます。
 なお、同日前に交付を受けた経営改善指導助言書類に係る経営改善設備のうち同年9月30日までに取得等をしたものについては、上記の確認を受けることを不要とする経過措置が講じられます。

 商業・サービス業・農林水産業活性化税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制」を参照して下さい。 

3.中小企業経営強化税制

(1) 制度概要

 この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得し指定事業の用に供した場合、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用できるというものです。

(2) 改正内容

 この制度については、特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行った上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されました。

「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化」とは、具体的には、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外することを意味します。

 全量売電を目的とした太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象になりませんが、発電した電気の一部を指定事業に使用(例えば自社の製造工場で使用)し、余った電気を売電(余剰売電)する場合は対象となります。
 ところが、最近では、太陽光発電設備の敷地に自動販売機を設置し、そこにわずかな電気を使うことで形式的に指定事業に係る要件を満たすといった、制度趣旨に反するような事例がみられるようになったことから、2分の1超の売電を見込む設備については対象設備から除外されることとなりました。

 また、売電を予定している場合には、経営力向上計画の認定申請時に一定の書類(発電の用に供する設備の概要や当該設備による発電量等の見込みを記載)の添付が義務付けられました。

 中小企業経営強化税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制」を参照して下さい。

使用人賞与を未払計上する場合の注意点

1.損金算入の要件

 利益が出ている法人では、決算対策として使用人賞与を未払計上することがあります(いわゆる決算賞与です)。
 この決算賞与を損金算入するためには、以下の賞与の類型に応じて、それぞれの要件を満たすことが必要です。

(1) 支給予定日がすでに到来している賞与

  就業規則等で定められている支給予定日が到来している賞与については、次の要件を満たす必要があります。

① 使用人に支給額の通知をしていること
② その支給予定日又はその通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理していること

 上記2要件を満たす使用人賞与については、支給予定日又は通知日のいずれか遅い日の属する事業年度に損金算入することができます。
 使用人賞与については、実際に支給をした日の属する事業年度に損金算入するのが原則ですが、この規定はその例外として、内国法人が資金繰りが悪化している等の事情で労働協約又は就業規則により定められている支給予定日が到来していながら賞与が未払状態になっている場合には、たとえ未払であっても損金の額に算入することを認めるものです。

(2) 翌期の1か月以内に支払う賞与

 翌期に支給する使用人賞与については、次の要件を満たす必要があります。

① 支給額を各人別に、かつ、全員に通知をしていること
② その支給額につき①の通知をした日の属する事業年度 終了の日の翌日から1か月以内に賞与を支給すること
③ その支給額につき①の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること

 上記3要件を満たす使用人賞与については、通知日の属する事業年度に損金算入することができます。
 一般に、賞与はその支給額を通知するのとほぼ同時に支給されるのが慣行となっているものの、事業年度末において各人別に支給額が通知され、たまたま支給が遅れているような場合にまで一切損金算入することを認めないのは適当でないことから、一定範囲で通知をした日の属する事業年度においても損金の額に算入することを認めた上で、取扱いの統一性を確保し恣意性を排除する観点から、上記3要件が規定されています。

2.決算賞与の留意点

 決算賞与を未払計上するにあたっての留意点は以下のとおりです。

(1) 使用人賞与の額には、使用人兼務役員に対して支給する賞与のうち使用人としての職務に対応する部分の金額が含まれます。

(2) 例えば「基本俸給×〇か月×業績割合」などのような支給額の算式を通知しても、支給額を通知したことにはなりません。業績割合が確定していないため、支給額も決定したものとはいえないためです。
 また、「基本俸給×〇か月」などのような支給額の算式は、使用人自身が支給額を計算できますが、法令上はあくまでも「支給額」の通知を求めていますので、具体的な支給額を通知することが望ましいといえます。

(3) 税務調査では、個々の使用人に対して実際に通知されたか否かが確認事項となりますので、すべての使用人別に書面やメールで支給額を通知して証拠資料を残しておくことが必要です。

(4) 所得拡大促進税制の適用にあたって決算賞与の未払計上によって賃金要件を充足している場合、税務調査で決算賞与の損金算入が否認されると所得拡大促進税制の適用も否認されてしまうリスクがあります。

※ 所得拡大促進税制は、2022(令和4)年4月1日以降「賃上げ促進税制」に呼称が改められ、適用要件などの見直しが行われています。賃上げ促進税制の詳細については、本ブログ記事「中小企業者等の賃上げ促進税制《令和4年4月1日~令和6年3月31日開始事業年度》」をご参照ください。