外注費か給与か…国税庁の判断基準

1.国税庁法令解釈通達に一定の判断基準あり

 その業務を他の事業者に委託(外注)することが多い建設業や運送業を営む事業者の税務調査では、外注先に支払った経費が外注費なのか給与なのかで争いが起きることがあります。
 外注先に支払った経費が給与とされると、源泉所得税の徴収漏れを指摘されるとともに消費税の仕入税額控除が否認されます。
 外注費と給与のいずれに該当するかについては判然としないことが多く、明確な線引きも難しいのですが、2009年(平成21年)12月17日の「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」において次の判断基準が示されており、実務上はこれらを総合的に勘案して、外注費か給与かを判断することになります。

(1) 他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
(2) 報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3) 作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
(4) まだ引渡しを完了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
(5) 材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。

 以下では、これら5点の判断基準について解説します。

2.実務上の判断基準となる5つの観点

(1) 代替性の有無

 他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうかという観点から、外注費と給与を区分します。
 
 雇用契約に基づく役務の提供の場合、雇用された者は自分自身が仕事をすることで、その役務の対価(給与)を受け取ることができます。
 一方、請負契約に基づく役務の提供の場合、依頼主との間で仕事の期限や代金等を決定すれば、実際の仕事は必ずしも請け負った者自身に限らず、自己が雇用する第三者に任せることで、その役務の対価(外注費)を受け取ることができます。
 つまり、役務提供者が契約当事者に限定され、他の者が当事者に代わり役務の提供をできない場合や、本人が自らの判断で第三者を使うことが認められていない場合は代替性が無いといえ、給与の該当性を強めるといえます。 

(2) 拘束性の有無

 報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうかという観点から、外注費と給与を区分します。

 勤務する日や就業時間が決められていたり、出勤簿、タイムカード又は本人からの報告等で就業時間が管理されていたりする場合には、時間的拘束があるといえ、給与の該当性を強めるといえます。

(3) 指揮監督の有無

 作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうかという観点から、外注費と給与を区分します。

 雇用契約の場合、雇用主が定める就業規則に従わなければならず、作業現場では監督者等が個々の作業について指揮命令をするのが一般的です。
 一方、請負契約の場合、仕事の期限さえ守れば途中における進行度合いや手順等について、依頼主から特に指図を受けることがないのが通常です。
 つまり、仕様書、設計図、指示書等の交付により作業の具体的内容や方法が指示されており、業務の遂行が使用者の具体的な指揮命令を受けて行われている場合は、給与の該当性を強めるといえます。

 なお、「業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く」とは、例えば運送業の場合、運送物品、運送先及び納入時間の指定は業務の性質上当然であり、これらが指定されているからといって指揮監督の有無に関係するものではないことをいいます。

(4) 報酬請求権の有無

 まだ引渡しを完了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうかという観点から、外注費と給与を区分します。

 請負契約の場合、引渡しを終えていない完成品が不可抗力(災害等)のため滅失して期限までに依頼主に納品できない場合は、一般的には報酬の支払を受けることができません。
 一方、雇用契約の場合、労務の提供を行えば結果に関係なく報酬を請求できます。
 給与が労務の提供自体に支払われるのに対し、外注費は労務の提供ではなく仕事の完成に対して支払われます。
 つまり、役務提供の結果による較差が少なく、業務の量に応じて報酬が支払われる場合は、給与の該当性を強めるといえます。 

(5) 材料又は用具等の供与の有無

 材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうかという観点から、外注費と給与を区分します。

 雇用契約の場合は雇用主が材料や用具等を役務提供者に支給しますが、請負契約の場合は役務提供者が材料や用具等を自分で用意するのが一般的です。
 つまり、職務遂行に当たり必要な旅費、設備、備品等の費用について、原則として役務提供者が負担する場合は、外注費の該当性を強めるといえます。

 なお、「くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く」とは、例えば据え置き式の工具など高価な器具を所有するなど、その経費の多寡も判定要素となることをいいます。

土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の適用

 運送業を営む顧問先のA社が、所有していた土地(遊休地)を当期中に売却することになりました。土地の譲渡は消費税の非課税売上ですが、土地の譲渡によりA社の当期の課税売上割合は、例年より大きく減少する見込みです(A社は仕入控除税額を個別対応方式で計算しています)。
 そこで、当期の消費税の申告に備えて、「課税売上割合に準する割合」の適用を検討することになりました。

 A社のように、たまたま土地の譲渡があったことにより課税売上割合が減少する場合において、課税売上割合を適用して控除対象仕入税額を計算すると、その事業者の事業の実態を反映しないと認められるときは、課税売上割合に代えて課税売上割合に準ずる割合を適用することができます。

 今回は、土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の適用について紹介します。

1.要件

 A社のようなケースで課税売上割合に準ずる割合を適用するためには、つぎの要件を満たす必要があります。

(1) 土地の譲渡が単発であること
(2) その土地の譲渡がなかったとした場合には、事業の実態に変動がないと認められること(具体的には、事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内であることをいいます)

 以下の数値例を使用して、要件や課税売上割合に準ずる割合の算定方法を確認していきます。

   土地の譲渡があった当期と過去3年間の課税売上割合等  (単位:円)

課税期間 課税売上高 非課税売上高 総売上高 課税売上割合
当期 589,391,004 211,570,080 800,961,084 73.58%
前期 668,809,034 1,348,360 670,157,394 99.79%
前々期 588,936,478 1,176,152 590,112,630 99.80%
前々前期 557,889,004 568,435 558,457,439 99.89%

 運送業を営むA社にとって今回の土地の売却は単発ですので、要件(1)を満たします。
 また、A社の営業の実態に変動はなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合99.89%(前々前期)と最も低い課税売上割合99.79%(前期)との差(0.10%)が5%以内ですので、要件(2)も満たします。
 したがって、当期のA社の消費税の申告において、課税売上割合に準ずる割合を適用することができます。

2.課税売上割合に準ずる割合の算定

 課税売上割合に準ずる割合の適用要件を満たしましたので、次の(1)又は(2)の割合のいずれか低い方を課税売上割合に準ずる割合として適用することができます。

(1) 土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合
(2) 土地の譲渡があった課税期間の課税期間の課税売上割合

 (1)については、次のように計算します。

 課税売上高÷総売上高=(668,809,034+588,936,478+557,889,004)÷(670,157,394+590,112,630+558,457,439)=1,815,634,516÷1,818,727,463=99.82%

 (2)は、前期の99.79%です。

 したがって、(1)>(2)ですので、99.79%が課税売上割合に準ずる割合になります。

3.消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書

 課税売上割合に準ずる割合を適用する場合は、その土地を譲渡した課税期間内に「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を所轄税務署長に提出し、その承認を受けなければなりません

※ 2021(令和3)年度税制改正により、課税売上割合に準ずる割合の適用開始時期の見直しが行われました。これまでは、課税売上割合に準ずる割合の適用を受ける場合、税務署長の承認を受けた日の属する課税期間から適用することとされていましたが、2021(令和3)年4月1日以後に終了する課税期間から、適用を受けようとする課税期間の末日までに承認申請書を提出し、同日(課税期間の末日)の翌日から同日以後1月を経過する日までの間に税務署長の承認を受けた場合、当該承認申請書を提出した日の属する課税期間から適用されることとなりました(2021(令和3)年4月1日更新)。

4.課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書

 この課税売上割合に準ずる割合の承認は、たまたま土地の譲渡があった場合に行うものですから、翌課税期間において「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出しなければなりません。

 その提出がない場合は、課税売上割に準ずる割合の承認の取消しが行われますので注意しなければなりません。

課税売上割合に準ずる割合の算定方法と注意点

 課税売上げに係る消費税の額から控除する仕入控除税額を個別対応方式により計算する場合は、課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係る消費税額に、原則として課税売上割合を乗じて計算します。
 しかし、課税売上割合により計算した仕入控除税額がその事業の実態を反映していないなど、課税売上割合により仕入控除税額を計算するよりも、課税売上割合に準ずる割合によって計算する方が合理的である場合には、課税売上割合に代えて課税売上割合に準ずる割合によって仕入控除税額を計算することができます。

1.適用と不適用の手続き

(1) 適用の承認申請

 課税売上割合に準ずる割合を適用するには、納税地の所轄税務署長に「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出して、適用しようとする課税期間の末日までに税務署長の承認を受ける必要があります

※ 2021(令和3)年度税制改正により、課税売上割合に準ずる割合の適用開始時期の見直しが行われました。これまでは、課税売上割合に準ずる割合の適用を受ける場合、税務署長の承認を受けた日の属する課税期間から適用することとされていましたが、2021(令和3)年4月1日以後に終了する課税期間から、適用を受けようとする課税期間の末日までに承認申請書を提出し、同日(課税期間の末日)の翌日から同日以後1月を経過する日までの間に税務署長の承認を受けた場合、当該承認申請書を提出した日の属する課税期間から適用されることとなりました(2021(令和3)年4月1日更新)。

(2) 不適用の届出

 納税地の所轄税務署長に「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出すれば、提出した日の属する課税期間から、課税売上割合に準ずる割合の適用をやめることができます。

2.課税売上割合に準する割合の適用範囲と算定方法

(1) 適用範囲

 課税売上割合に準ずる割合を適用する場合、すべての事業について同一の割合を使うこともできますが、次のように一定の単位ごと異なる割合を適用することができます。

① 事業の種類の異なるごと
② 事業所の単位ごと
③ 販売費一般管理費、その他の費用の種類ごと

 また、課税売上割合に準ずる割合は、通常の課税売上割合と併用することもできます。

(2) 算定方法

 課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等の性質に応じた合理的な基準(使用人(従業員)の数又は従事日数、消費又は使用する資産の価額、使用数量、使用面積の割合など)により算定します。
 具体的な計算方法と注意点は次のとおりです。

① 従業員割合

 従業員割合は、従業員数に比例して支出されると認められるものについて適用でき、次の計算式で算定します。

 従業員割合=課税業務従業員数÷(課税業務従業員数+非課税業務従業員数)

イ.従業員数を課税資産の譲渡等と非課税資産の譲渡等に係る業務ごとに区分できることが前提です。
 課税業務従業員数とは課税資産の譲渡等のみに従事する従業員数をいい、非課税業務従業員数とは非課税資産の譲渡等のみに従事する従業員数をいいます。

ロ.従業員数は、原則として課税期間の末日の現況によります。課税期間の末日における従業員数が課税期間における実態と異なるなど、事業の実態を反映しないものであるときは、課税期間中の各月末の平均数値等によることができます。

ハ.課税・非課税の双方の業務に従事する従業員については、原則として、この割合の計算上、分母・分子のいずれにも含めません
 ただし、事務日報等により課税・非課税の双方の業務に従事する従業員全員の従事日数が記録されていて、この記録により従業員ごとの従事日数の割合が計算できる場合は、その割合により各業務に按分することは認められます。

ニ.例えば、建設会社の海外工事部門の従業員など国外取引のみに従事する従業員については、この割合の計算上、分母・分子のいずれにも含めません。

ホ.法人の役員(非常勤役員を除きます)も従業員に含めて取扱います。アルバイト等についても、従業員と同等の勤務状況にある場合には、従業員に含めて取扱います。

ヘ.本店・支店ごと又は事業部門ごとにそれぞれの従業員割合を適用することは認められます。

② 事業部門ごとの割合

 独立採算制の対象となっている事業部門や独立した会計単位となっている事業部門や支店については、事業部門ごと、支店ごとの割合を課税売上割合に準ずる割合とすることができます。

 事業部門ごとの割合=事業部門ごとの課税売上高÷(事業部門ごとの課税売上高+事業部門ごとの非課税売上高)

イ.事業部門ごとに、その事業部門に係る課税売上高と非課税売上高を基礎として、課税売上割合と同様の方法により割合を求めます。

ロ.総務、経理部門等の事業を行う部門以外の部門については、この割合の適用は認められません。

ハ.経理、総務部門等の共通対応分の消費税額すべてを各事業部門の従業員数比率等適宜の比率により事業部門に振り分けた上で、事業部門ごとの課税売上割合に準ずる割合により按分する方法も認められます。

③ 床面積割合

 床面積割合は、専用床面積に比例して支出されると認められるものについて適用でき、次の計算式で算定します。

 床面積割合=課税業務専用床面積÷(課税業務専用床面積+非課税業務専用床面積)

イ.床面積を課税資産の譲渡等と非課税資産の譲渡等に係る業務ごとに区分できることが前提です。

ロ.計算の基礎となる床面積は、原則として課税期間の末日の現況によります。課税期間の末日における床面積が課税期間における実態と異なるなど事業の実態を反映しないものであるときは、課税期間中の各月末の平均数値等によることができます。

ハ.課税・非課税の双方の業務で使用する専用床面積については、原則として、この割合の計算上、分母・分子のいずれにも含めません

ニ.本店・支店ごと又は事業部門ごとにそれぞれの床面積割合を適用することは認められます。

④ 取引件数割合

 取引件数割合は、取引件数に比例して支出されると認められるものについて適用でき、次の計算式で算定します。

 取引件数割合=課税資産の譲渡等に係る取引件数÷(課税資産の譲渡等に係る取引件数+非課税資産の譲渡等に係る取引件数)

イ.取引件数を課税資産の譲渡等と非課税資産の譲渡等に係る件数に区分できることが前提です。

ロ.本店・支店ごと又は事業部門ごとにそれぞれの取引件数割合を適用することは認められます。

3.適用上の注意点

(1) 課税売上割合に準ずる割合は、個別対応方式により仕入控除税額を計算している場合のみ適用することができます。

(2) 適用を受けるときは、適用しようとする課税期間の末日までに承認申請書を提出するだけではなく、税務署長による承認を受けておく必要があります(みなし承認はありません)。承認審査には一定の時間が必要ですので、当該申請書は余裕をもって提出してください。

※ 2021年度(令和3年度)税制改正により、課税売上割合に準ずる割合の適用開始時期の見直しが行われ、次のようになります。
「消費税の仕入控除税額の計算について、課税売上割合に準ずる割合を用いようとする課税期間の末日までに承認申請書を提出し、同日の翌日以後1月を経過する日までに税務署長の承認を受けた場合には、当該承認申請書を提出した日の属する課税期間から課税売上割合に準ずる割合を用いることができることとする。」(2021年(令和3年)1月25日更新)

(3) 承認又は届出のあった課税期間から適用又は不適用となります。また、継続適用は強制されませんので、一課税期間でやめることができます。

(4) 課税売上割合に準ずる割合の承認を受けると、課税売上割合を適用した方が有利となる場合でも、不適用の届出書を提出しない限り、必ず課税売上割合に準ずる割合を適用しなければなりません。ただし、承認を受けた課税仕入れ等以外のものについては、課税売上割合を使用します。

(5) 課税売上割合に準ずる割合の承認を受けている場合でも、全額控除できるかどうかの95%以上の判定は、課税売上割合によって行わなければなりません(準ずる割合が95%以上であっても、課税売上割合が95%未満なら全額控除はできません)。

(6) たまたま土地を譲渡したことにより、その課税期間の課税売上割合が低くなった場合には、前課税期間の課税売上割合と前3年の課税期間の通算課税売上割合を比較して、小さい方を課税売上割合に準ずる割合として用いることができます。

土地建物を一括譲渡した場合の対価の区分方法

 土地と建物を一括で譲渡した場合は、土地の譲渡は消費税の非課税売上となり、建物の譲渡は課税売上となります。
 このように土地と建物を一括譲渡した場合、両者を合理的に区分した対価の額が契約書に記載されているときは、その区分によりそれぞれの売上高とします。
 合理的な区分が行われていない場合は、その譲渡代金について、土地の対価部分と建物の対価部分に区分する必要があります。
 

1.譲渡対価の区分方法

 土地付建物を一括譲渡した場合の課税売上高と非課税売上高に計上する金額は、それぞれ次のとおりです。

(1) 契約書の記載金額の区分が合理的な場合

① 契約書に土地と建物の価額が区分されている場合は、その価額によります。
② 契約書に建物に係る消費税等の額が記載されている場合は、その消費税率から割返して建物の対価の額を区分します。
〈消費税税率10%の場合〉
  イ. 建物の価額=契約書に記載された消費税等の額÷10%×110%
  ロ. 土地の価額=取引総額―建物の価額

(2) 契約書の記載金額の区分が合理的でない場合

① 近隣の取引事例を参考に計算した建物及び土地の時価の比により按分計算します。
② 不動産鑑定評価額により区分します。
③ 相続税評価額や固定資産税評価額をもとに按分計算します。
④ 土地や建物の原価をもとに按分計算します。
⑤ 建物の標準的な建築価額表により区分します。
  イ.「建物の標準的な建築価額表」により建物の取得価額を算出
  ロ. 建物の価額=建物の取得価額―減価償却費
  ハ. 土地の価額=取引総額―建物の価額

※ 建物と土地を一括譲渡した場合に、租税特別措置法に規定する法人税の土地の譲渡等に係る課税の特例の計算における取扱いによって建物と土地の価格を区分しているときには、消費税の計算においてもその区分したところによらなければなりません(消費税法基本通達10-1-5)。
〈参考〉
 法人税の土地の譲渡等に係る課税の特例について規定している租税特別措置法第62条の3及び第63条は、1998年(平成10年)1月1日から2020年(令和2年)3月31日までに行う土地の譲渡等について適用しないこととされています。

2.区分方法の計算例

 簡単な数値を用いて、譲渡対価の主な区分方法の計算例を以下に示します。

(1) 契約書に建物の消費税額の記載がある場合(記載金額の区分が合理的な場合)

土地建物譲渡契約書
第1条 土地付建物を5,000万円(うち消費税200万円)で譲渡する。

① 建物の価額:200万円÷10%×110%=2,200万円
② 土地の価額:5,000万円―2,200万円=2,800万円

(2) 契約書に取引総額のみの記載がある場合(記載金額の区分が合理的な場合)

土地建物譲渡契約書
第1条 土地付建物を5,000万円で譲渡する。
固定資産税課税明細書
固定資産税評価額
土地1,000万円
建物1,500万円

 ここでは固定資産税評価額をもとに按分します。
① 建物の価額:5,000万円×1,500万円÷(1,000万円+1,500万円)=3,000万円
② 土地の価額:5,000万円×1,000万円÷(1,000万円+1,500万円)=2,000万円

(3) 契約書の記載金額の区分が合理的でない場合

土地建物譲渡契約書
第1条 土地付建物を下記のとおり譲渡する。
(1) 土地の譲渡代金 4,000万円
(2) 建物の譲渡代金 1,000万円
固定資産税課税明細書
固定資産税評価額
土地1,000万円
建物1,500万円

 契約書記載金額が合理的に区分されていない場合は、譲渡時の時価の比(ここでは固定資産税評価額)で按分します。
① 建物の価額:5,000万円×1,500万円÷(1,000万円+1,500万円)=3,000万円
② 土地の価額:5,000万円×1,000万円÷(1,000万円+1,500万円)=2,000万円

適格請求書発行事業者登録制度と免税事業者

 2023年(令和5年)10月1日以降は、区分記載請求書等の保存に代えて、「適格請求書」等の保存が仕入税額控除の要件となります。
 適格請求書とは、売手が買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類をいいます。

1.適格請求書発行事業者の登録

 適格請求書を交付できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。適格請求書発行事業者となるためには、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書(以下、「登録申請書」といいます)」を提出し、登録を受ける必要があります。
 なお、課税事業者でなければ登録を受けることはできません。

(1) 登録申請のスケジュール

 登録申請書は2021年(令和3年)10月1日から提出できます。適格請求書等保存方式が導入される2023年(令和5年)10月1日に登録を受けようとする事業者は、2023年(令和5年)3月31日(特定期間における課税売上高が1,000万円を超えたことにより課税事業者となる事業者については同年6月30日。以下同じ)までに登録申請書を所轄税務署長に提出する必要があります。

 ただし、2023年(令和5年)3月31日までに登録申請書を提出できなかったことにつき困難な事情がある場合において、2023年(令和5年)9月30日までの間に登録申請書にその困難な事情を記載して提出し、税務署長により適格請求書発行事業者の登録を受けたときは、2023年(令和5年)10月1日に登録を受けたこととみなされます。
 なお、「困難な事情」については、その困難の度合いは問いません(インボイス通達5-2)

※ 2022(令和4)年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正大綱において、事業者の準備状況を考慮して、「困難な事情」の記載がなくても2023(令和5)年4月以降の申請ができるようになりました(詳細については、本ブログ記事「登録制度の見直しと手続きの柔軟化:インボイス制度負担軽減措置」をご参照ください)。

(2) 登録拒否要件

 消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行が終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者は、登録を受けることができません。

(3) 登録と通知

 事業者から登録申請書の提出を受けた税務署長は、その事業者が登録拒否要件に該当しない場合には、適格請求書発行事業者登録簿に法定事項を記載して登録を行い、登録を受けた事業者に対して、その旨を書面で通知します。

(4) 登録の効力

 登録の効力は、通知の日にかかわらず、適格請求書発行事業者登録簿に登載された日(登録日)に発生します。

(5) 登録の取消し

 税務署長は、次の場合に適格請求書発行事業者の登録を取り消すことができます。

① 1年以上所在不明であること
② 事業を廃止したと認められること
③ 合併により消滅したと認められること
④ 消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられたこと

(6) 登録の取りやめ

 適格請求書発行事業者には、事業者免税点制度は適用されません。したがって、適格請求書発行事業者は、基準期間における課税売上高及び特定期間における課税売上高が1,000万円以下となっても、取りやめの手続きを行わない限り免税事業者となることはできません。

 適格請求書発行事業者が、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書(以下、「登録取消届出書」といいます)」を提出すると、適格請求書発行事業者の登録の効力は消滅します。
 登録の効力が消滅する日は、次のとおりです。

登録取消届出書の提出日 登録の効力が失効する日
課税期間の末日から起算して30日前の日まで 登録取消届出書の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間の初日
課税期間の末日から起算して30日前の日から、その課税期間の末日までの間 その提出があった日の属する課税期間の翌々課税期間の初日


※ 適格請求書発行事業者が事業を廃止し、「適格請求書発行事業者の事業廃止届出書」を提出した場合は、事業を廃止した日の翌日に登録の効力が失われます。

※ 2022(令和4)年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正大綱において、上表の30日前とあるのは15日前に改められました(詳細については、本ブログ記事「登録制度の見直しと手続きの柔軟化:インボイス制度負担軽減措置」をご参照ください)。

2.免税事業者の登録手続き

(1) 登録日が令和5年10月1日の属する課税期間の場合(経過措置の適用がある場合)

 免税事業者は適格請求書発行事業者となることはできません。免税事業者が適格請求書発行事業者としての登録を受けるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要があります
 ただし、免税事業者が2023年(令和5年)10月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、消費税課税事業者選択届出書を提出する必要はありません※1
 2023年(令和5年)3月31日までに登録申請書を提出すれば、登録拒否要件に該当しない限り2023年(令和5年)10月1日に登録され、適格請求書発行事業者である課税事業者となります※2
 なお、免税事業者の登録申請書の記載方法については、本ブログ記事「適格請求書発行事業者の登録申請書の書き方と記載例(R3.10.1~R5.9.30提出分)」をご参照ください。

※1 2022(令和4)年度税制改正で経過措置期間が延長され、2023(令和5)年10月1日から2029(令和11)年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合も登録申請書の提出のみで手続きが完了するため、消費税課税事業者選択届出書の提出は不要となりました。 

※2 2022(令和4)年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正大綱において、2023(令和5)年4月以降の申請でも制度開始時に登録が可能となりました(詳細については、本ブログ記事「登録制度の見直しと手続きの柔軟化:インボイス制度負担軽減措置」をご参照ください)。

(2) 登録日が令和5年10月1日の属する課税期間の翌課税期間以降の場合

 免税事業者が2023年(令和5年)10月1日の属する課税期間の翌課税期間以後に登録を受ける場合には、消費税課税事業者選択届出書及び登録申請書を提出する必要があります※1
 免税事業者が翌課税期間から課税事業者となることを選択し登録を受けようとする場合は、その翌課税期間の初日の前日から起算して1月前の日(登録日が1月1日であればその前年の11月30日)までに※2、消費税課税事業者選択届出書及び登録申請書を提出しなければなりません※1

※1 2022(令和4)年度税制改正で経過措置期間が延長され、2023(令和5)年10月1日から2029(令和11)年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合も登録申請書の提出のみで手続きが完了するため、消費税課税事業者選択届出書の提出は不要となりました。

※2 2022(令和4)年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正大綱において、1月前の日が15日前の日に改められました(詳細については、本ブログ記事「登録制度の見直しと手続きの柔軟化:インボイス制度負担軽減措置」をご参照ください)。

区分記載請求書等保存方式と請求書等保存方式の異同点

 軽減税率制度の実施による複数税率化に伴い、「適格請求書等保存方式(日本型インボイス制度)」が導入されますが、当面は執行可能性に配慮し、2019年(令和元年)10月1日から2023年(令和5年)9月30日までの4年間は、「区分記載請求書等保存方式」によって税率の区分経理に対応することになります。
 区分記載請求書等保存方式とは、現行の請求書等保存方式を維持した上で、次のように帳簿及び請求書等の記載事項を追加するものです。
 なお、簡易課税制度を適用する場合は、帳簿及び請求書等の保存は必要ありません。

1.帳簿の追加記載事項

 課税仕入れが軽減対象資産に係るものである場合には、帳簿の記載事項に「軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨」が追加されます。
 この記載は「軽減」等と省略して記載することや、事業者が定めた記号(※印など)を付す方法によることができます。

2.請求書等の追加記載事項

 課税仕入れが軽減対象資産に係るものである場合には、請求書等(請求書、納品書その他これらに類する書類)に、従前の記載事項に次の2項目が追加されます。
(1) 軽減対象資産の譲渡等である旨
(2) 税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額
 これらを記載した区分記載請求書の保存が、仕入税額控除の要件となります。

3.区分記載請求書等保存方式と請求書等保存方式の異同点

 区分記載請求書等保存方式と請求書等保存方式の記載事項の異同点を以下に掲げます。

  請求書等保存方式 区分記載請求書等保存方式
期間 令和元年9月30日まで 令和元年10月1日~令和5年9月30日
帳簿 ①課税仕入れの相手方の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容
④対価の額
左記に加え
軽減対象資産の譲渡等である旨
請求書等 ①請求書発行者の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容
④対価の額
⑤請求書受領者の氏名又は名称
左記に加え
軽減対象資産の譲渡等である旨
税率ごとに区分して合計した税込対価の額

 

4.留意点

(1)「軽減対象資産の譲渡等である旨」等の記載がなかった場合の追記

 区分請求書等保存方式は請求書等保存方式と同様に、売り手には請求書等の交付が義務付けられていません。もし、仕入先から交付された請求書等に「軽減対象資産の譲渡等である旨」(上表⑥)や「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」(上表⑦)の記載がない時は、これらの項目に限って交付を受けた事業者自らが、その取引の事実に基づき追記することができます(他の項目について追記や修正を行うことはできません)。

(2) 免税事業者からの課税仕入れの取扱い

 区分記載請求書等保存方式では、免税事業者も区分記載請求書を交付することができます。また、免税事業者からの課税仕入れも、区分記載請求書を保存していれば仕入税額控除の適用を受けることができます。
 この場合、免税事業者からの仕入れであっても、「軽減対象資産の譲渡等である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」の記載がある区分記載請求書等の保存が必要となります。
※上記2項目の記載がない場合は、取引の事実に基づき追記することができます。

(3) 3万円未満の取引等に係る仕入税額控除

 区分記載請求書等保存方式の下でも、3万円未満の少額な取引や自動販売機からの購入など請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるときは、現行と同様に、必要な事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の要件を満たすことになります。

(4) 一定期間のまとめ記載

 日々の取引内容については納品書等に記載され、一定期間の納品についてまとめて請求書が交付される場合において、納品書等と請求書との相互関連性が明確で、かつ、これらの書類全体で区分記載請求書等の記載事項を満たすときは、これらの書類をまとめて保存することで、区分記載請求書等の保存があるものとして取り扱われます。
 この場合、請求書に記載する取引年月日については、対象となる一定期間を記載すればよく、また、同一の商品(一般的な総称による区分が同一となるもの)を一定期間に複数回購入しているような場合、「軽減対象資産の譲渡等である旨」の記載については、同一の商品をまとめて記載して差し支えありません。

(5) 軽減税率対象品目がない場合の請求書等の記載

 軽減税率の対象となるものがなく、取引のすべてが標準税率(10%)の対象となる場合は、2019年(令和元年)9月30日までの請求書と変わるところはありません。したがって、「軽減対象資産の譲渡等である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」の記載は要しません。

(6) すべてが軽減税率対象品目である場合の請求書等の記載

 取引のすべてが軽減税率の対象となる場合は、例えば「全商品が軽減税率対象」と記載するなど、その請求書等に記載されたすべての取引が軽減税率の対象であることが客観的に明らかになる程度の記載が必要です。

複数税率対応レジ等の補助金の要件が緩和されました

 2019年(令和元年)10月1日から軽減税率制度(複数税率)が導入されます。軽減税率の導入にあたり、複数税率対応レジの導入や受発注システムの改修等を行う中小企業・小規模事業者の方には、その経費の一部を補助する軽減税率対策補助金制度が設けられています。免税事業者の方も、軽減税率対策補助金による支援措置を受けることができます。
 軽減税率対策補助金にはA型・B型・C型の3つの類型があり、その概要は次のとおりです。
 

1.A型:複数税率対応レジや券売機の導入等支援

 レジや券売機を使用して日頃から軽減税率対象商品を販売している事業者が、複数税率に対応するためのレジや券売機を新規導入し、また、既存のレジや券売機を改修する際の支援(小売り段階の支援:B to C)です。

(1) 補助対象者

軽減税率の対象商品の販売を行っている中小の小売事業者等

(2) 補助対象経費

① レジ等の本体(タブレットを含む)、対応するソフトウェア導入に係る経費
② 券売機
③ レジ付属機器(バーコードリーダー、レシートプリンタ等)
④ 設置に要する経費(商品マスタ設定費、運搬費、設置費等)

(3) 補助率

3/4以内(3万円未満のレジを1台のみ購入する場合は4/5以内)

(4) 補助限度額

・レジ1台あたり20万円以内が上限
・商品マスタの設定、機器設置に要する経費は1台あたり20万円を加算
・複数台を導入する場合は、1事業者あたりの上限は200万円

(5) 完了期限-要件が緩和されました

2019年(令和元年)9月30日までに「契約等の手続き」が完了していること

※従来、完了期限は2019年(令和元年)9月30日までに「設置・支払い」が完了していることとされていました。
 しかし、軽減税率制度の実施が目前となり、複数税率対応レジの需要が急速に高まっている中、対応レジの契約から設置・支払完了までに数週間程度かかることから、「本年9月30日までに複数税率対応レジの設置・支払いが完了していること」をクリアできず補助金の対象外となってしまうケースが予想されました。
 そこで、中小企業庁は完了期限を「本年9月30日までにレジの導入・改修に関する契約等の手続きが完了していること」に見直し、対応レジの普及促進を図ることとしました。
 この措置は、B型、C型についても同じです。

(6) 申請期限

2019年(令和元年)12月16日までに交付申請書を提出(消印有効)

※完了期限が上記(5)のように緩和されたため、9月30日までに設置・支払いが完了していなくても補助金の対象となりますが、補助金の申請はレジの設置・支払い後となるため、補助金申請期限である12月16日までには設置・支払いを完了する必要があります(B型、C型についても同じです)。

2.B型:電子的受発注システムの改修等支援

 電子的な受発注システム(EDI/EOS等)を利用して軽減税率対象商品を取引している事業者が、複数税率に対応するために必要となる機能の改修・入替えを行う際の支援(事業者間取引の支援:B to B)です。

(1) 補助対象者

軽減税率の実施に伴い電子的に受発注を行うシステムの改修等を行う必要がある中小の小売事業者、卸売事業者等

(2) 補助対象経費

① 電子的な受発注システム等の改修(区分記載請求書等保存方式に対応する請求管理機能の改修を含む)等に要する経費
② パッケージ製品・サービスの導入に要する経費等

(3) 補助率

3/4以内(他の機能と一体的なパッケージ製品の場合は、初期費用の1/2を補助対象経費とします)

(4) 補助限度額

・発注システム:1,000万円
・受注システム:150万円
※受注システム・発注システム両方の場合は1,000万円

(5) 完了期限-要件が緩和されました

2019年(令和元年)9月30日までに「契約等の手続き」が完了していること
※受発注システムの改修B型の中には事前申請期限が経過したものもあります

(6) 申請期限

2019年(令和元年)12月16日までに交付申請書を提出(消印有効)

3.C型:請求書管理システムの改修等支援

 「区分記載請求書等保存方式」に対応するために、事業者間取引における請求書等の作成に係るシステムの開発・改修やパッケージ製品、事務機器の導入等を行う際の支援です(事業者間取引の支援:B to B)。

(1) 補助対象者

軽減税率制度の実施に伴い請求書管理システムの改修等を行う必要がある中小の小売事業者、卸売事業者等

(2) 補助対象経費

① 区分記載請求書等保存方式に対応する請求書等の作成・発行を行うシステム等の開発・改修等に要する経費
② パッケージ製品の導入に要する経費
③ 対応する事務処理機器の導入経費

(3) 補助率

3/4以内(他の機能と一体的なパッケージ製品・対応機器の場合は、初期費用の1/2を補助対象経費します)

(4) 補助限度額

1事業者あたり150万円以内

(5) 完了期限-要件が緩和されました

2019年(令和元年)9月30日までに「契約等の手続き」が完了していること

(6) 申請期限

2019年(令和元年)12月16日までに交付申請書を提出(消印有効)

2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される税制改正項目

 今日から2019年度(平成31年度)が始まります。新元号も「令和」に決まりましたので、2019年5月1日以降の和暦は「令和」と表記します。

 2019年度(平成31年度)税制改正大綱は、2018年(平成30年)12月14日に発表され同年12月21年に閣議決定されました。
 今回は、この2019年度(平成31年度)税制改正項目と2018年度(平成30年度)以前の税制改正項目のうち、新年度から適用開始される項目(創設、改正、延長)について、法人税、所得税、消費税の税目別に整理します。

1.法人税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(創設、改正、延長)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 創設される項目

① 防災・減災設備の特別償却制度

 改正中小企業等経営強化法施行日から2021年(令和3年)3月31日までに、青色申告書を提出する中小企業者のうち中小企業等経営強化法の認定を受けたものが一定の防災・減災設備等を取得等した場合は、取得価額の20%の特別償却が可能となります。

② 法人が有する仮想通貨に係る整備

 2019年(平成31年)4月1日以後終了事業年度分から、法人が期末に保有する仮想通貨について、時価法等により評価損益を計上等することとされます。

(2) 改正される項目

① 研究開発税制の見直し

 試験研究を行った一定のベンチャー企業の税額控除限度額が25%から40%に引き上げられます。
 オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)における税額控除上限が、法人税額の5%から10%に引き上げられます。

② みなし大企業の範囲の見直し

 100%グループ法人内の複数の大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等)に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている法人も、みなし大企業の範囲を決める大規模法人に該当することになります。

③ 業績連動給与の手続き要件の見直し

 「業務執行役員が報酬委員会等の委員ではないこと」の要件が除外等されます(経過措置あり)。

④ 地域未来投資促進税制の見直し

 一定の要件を満たす場合は、機械装置及び器具備品の特別償却率を40%から50%に、税額控除率を4%から5%にそれぞれ引き上げられます。

(3) 延長される項目

① 中小企業者等の法人税の軽減税率特例

 中小企業者等に対する法人税の軽減税率15%(年800万円以下の所得に対する税率。本則は19%)の特例が、2021年(令和3年)3月31日まで2年延長されます。

② 中小企業向け設備投資減税

 中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制について、2021年(令和3年)3月31日まで2年延長されます(本ブログ記事「税制改正による2019年4月1日以降の設備投資税制」を参照)。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限(2021(令和3)年3月31日)の到来をもって廃止されています。

2.所得税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(改正)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 改正される項目

① 住宅ローン控除の拡充等

 消費税率が2019年(令和1年)10月1日以降、8%から10%に引き上げられます。
 これに伴い、消費税率10%が適用される住宅取得等のうち2019年(令和1年)10月1日から2020年(令和2年)12月31日までに取得等する住宅については、現行10年の控除期間が3年延長されて13年間控除できるようになります。

② 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の延長等

 被相続人から相続した居住用家屋等の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例の適用要件が、次のように緩和されます。

イ.被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ相続の開始の直前まで老人ホーム等に入居していたこと

ロ.被相続人が老人ホーム等に入所をしたときから相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ事業の用、貸付の用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと

 上記要件を満たす場合は、相続の開始直前まで被相続人が対象の家屋を居住の用に供していたものとみなされ、被相続人が相続の開始直前に老人ホーム等に入居している場合でも、特例を受けることができます(2019年(平成31年)4月1日以降の譲渡に適用されます)。

3.消費税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(改正)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 改正される項目(2019年度(平成31年度)改正)

① 輸出物品販売場制度の見直し

 既に輸出物品販売場の許可を受けている事業者に限り、臨時販売場での免税販売が認められます。2019年(令和1年)7月1日から適用されます。

② 金地金等の密輸に対応するための仕入税額控除制度の見直し

 2019年(平成31年)4月1日以降、密輸と知りながら行った課税仕入れの仕入税額控除が認められないほか、本人確認書類の写しの保存が要件に加わります。
 本人確認書類の写しの保存要件は、2019年(令和1年)10月1日以後に行う課税仕入れから適用されます。

(2) 改正される項目(2018年度(平成30年度)以前改正)

 2019年(令和1年)10月1日以降、消費税率が8%から10%に引き上げられます。
これに伴い、軽減税率制度(概要は省略)、区分記載請求書等保存方式(概要は省略)、簡易課税制度の事後選択特例、簡易課税制度のみなし仕入率の見直しが行われます。

① 簡易課税制度の事後選択特例

 「簡易課税制度選択届出書」を提出した課税期間から同制度を適用できる時限的措置です。
 2019年(令和1年)10月1日から2020年(令和2年)9月30日までの日の属する課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば適用されます。

② 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し

 2019年(令和1年)10月1日以降、第3種事業である農業・林業・漁業のうち、軽減税率が適用される飲食料品の譲渡を行う事業が第2種事業とされ、そのみなし仕入率は80%が適用されます。

給与課税される通勤手当・切手の購入・軽油引取税の消費税の取扱い

1.所得税において給与課税される通勤手当

 通勤に通常必要であると認められる通勤手当・定期券等は、給与を支払う事業者の課税仕入れになります。
 所得税法上、非課税となる通勤手当には月額15万円の上限が設けられていますが、消費税ではこの上限にかかわりなく、通勤に通常必要であるかどうかで判断します。
 したがって、所得税において給与課税される月額15万円を超える部分の通勤手当は、通勤に通常必要なものであれば、消費税の課税仕入になります。

2.切手の購入は実務では課税仕入

 日本郵便株式会社等から購入する切手・はがきの消費税の取扱いは、原則的には購入時非課税仕入・使用時課税仕入となります。
 しかし、自社で使用する切手・はがきについては、購入と使用が繰り返し行われることから、上記のような購入時と使用時の原則処理を厳格に行っても、事務処理が煩雑になるだけです。
 そこで、以下の要件を満たす場合には、購入時に課税仕入とすることが認められています。

(1) 自ら引換給付を受けること(自社で使用すること)
(2) 継続して購入の日の属する課税期間の課税仕入としていること(継続適用すること)

3.軽油引取税が明記されていない場合

 軽油を購入した場合、軽油本体は消費税の課税取引、軽油引取税は不課税取引として会計処理します。
 例えば、消費税率を8%とすると、1,130円(税込)の軽油を購入した場合、レシートには軽油本体750円、軽油引取税320円、消費税60円などと記載されています。
 これを税込方式で仕訳すると、次のようになります(控除対象仕入税額は60円)。

(燃 料 費)810 (現金預金)1,130
(租税公課)320

 ところが、軽油引取税の額が請求書・領収書等に明記されていない場合は、軽油引取税も含めて全額が課税取引になります(消費税基本通達10-1-11)。
 この場合の仕訳は、次のようになります(控除対象仕入税額は1,130×8/108≒83円)。

(燃 料 費)1,130 (現金預金)1,130

自動車売買における消費税の取扱いーリサイクル預託金と未経過自動車税

1.自動車リサイクル預託金の譲渡は5%を課税売上割合の分母へ

 2014年度(平成26年度)税制改正で課税売上割合の計算上、金銭債権の譲渡が行われた場合、有価証券の譲渡等があった場合と同様に譲渡対価の5%を分母に含めることとされました。
 この金銭債権には自動車リサイクル預託金(リサイクル料金から資金管理料金を除く部分)も対象となっています。

 自動車リサイクル預託金は、使用済自動車から発生する廃棄物の処理やリサイクルを行うための費用として車両の購入者が支払い、廃車まで資金管理法人(自動車リサイクル促進センター)により管理運用される仕組みです。 

 リサイクル預託金は、消費税の課税実務上は次のように処理されます。

 (1) 自動車の取得時・・・不課税
 (2) 中古車の譲渡時・・・非課税売上
 (3) 自動車の廃車時・・・課税仕入

 注意を要するのは(2)です。中古車を販売した場合のリサイクル預託金は非課税売上となりますが、課税売上割合の計算上は、譲渡対価全額ではなくその5%相当額のみを分母に含めることとなります。

2.中古車売買時の未経過自動車税等の消費税の処理

 顧問先の会計担当者の方から、年に数回、車両売買時の仕訳を聞かれることがあります。その際、注意しなければならないのは、自動車税等の消費税の取扱いです。
 自動車税は、その年4月1日(賦課期日)における自動車の所有者に対し、翌年3月31日までの1年分が課税されます。年の中途で中古車の売買をする場合は、売買時から年度末までの未経過期間分の自動車税を精算することが商慣行となっています。 

 自動車税の精算金は法律等で義務付けられたものではないので、売買する中古車の譲渡対価に含めることとされています(消費税基本通達10-1-6)。つまり、自動車税の精算金は租税ではなく、車両の譲渡対価の一部を構成するものとして取扱います。
 したがって、消費税については、譲渡者が受け取る精算金は課税売上げ、購入者が支払う精算金は課税仕入れとして処理することになります。

 また、自賠責保険料の未経過期間分について精算する場合も同様です。