国民年金保険料が免除される所得基準の計算方法~確定申告書との違いに注意!

 国民年金保険料の納付が経済的に困難な場合は、本人の申請により保険料の納付が免除される制度があります。

 免除される額には、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4つの区分があり、所得に応じて免除の区分が承認(決定)されます。

 以下では、国民年金保険料の免除を受けるための所得基準の計算方法と、計算の際に注意を要する確定申告書の控除額との違いについて確認します。

※ 本記事の前編である保険料免除制度の内容については、「国民年金保険料の免除・納付猶予の申請について」をご参照ください。

1.日本年金機構が公表している所得基準の計算式

 国民年金保険料の免除を受けるためには、本人、配偶者(別世帯の配偶者を含む)、世帯主それぞれの前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下でなければなりません。

 この「一定額以下」という所得基準については、日本年金機構ホームページにおいて次の計算式が公表されています。

(1) 全額免除
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円

(2) 4分の3免除
88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(3) 半額免除
128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(4) 4分の1免除
168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等


 本人、配偶者(別世帯の配偶者を含む)、世帯主それぞれの前年所得が、上記計算式で計算した金額以下であれば、保険料の免除を受けることができます。

 ところが、実際に計算しようとすると、いくつかの疑問が生じます。

 例えば、計算式(1)における「扶養親族等の数」の「等」には配偶者や事業専従者も含まれるのか、(2)~(4)における「扶養親族等控除額」や「社会保険料控除額等」の「等」には所得税における扶養控除や社会保険料控除以外に何が含まれるのか、などです。

 しかし、日本年金機構のホームページでは、これらの内容に関する詳細な記載は見当たりません。

 保険料が免除される所得を計算する際のベースとなるのは、確定申告書の数字です。そこで、確定申告書との異同点を中心に「扶養親族等の数」、「扶養親族等控除額」、「社会保険料控除額等」の内容について、以下で確認していきます。

2.計算式の「扶養親族等の数」とは?

 全額免除の所得基準は、「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」の計算式で求められます。

 この計算式における「扶養親族等の数」は、扶養控除の対象親族(控除対象扶養親族)だけではなく、16歳未満の扶養親族(年少扶養親族)と同一生計配偶者(控除対象配偶者)も該当します。

 一方、青色事業専従者として給与の支払を受けている人または白色事業専従者は該当しません。

3.計算式の「扶養親族等控除額」とは?

 一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)の所得基準は、「〇〇万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等」の計算式で求められます。

 この計算式における「扶養親族等控除額」は、以下のものが該当します。

(1) 老人控除対象配偶者(70歳以上の同一生計配偶者)または老人扶養親族1人につき48万円
(2) 16歳以上23歳未満の扶養親族1人につき63万円
(3) それ以外の同一生計配偶者または扶養親族1人につき38万円

 ここで注意を要するのは、所得基準の計算式における「扶養親族等控除額」は、必ずしも確定申告書の控除額と一致しないということです。

 具体的な相違点は、次のとおりです。

所得基準の計算式 確定申告書の控除額との違い
老人控除対象配偶者(70歳以上の同一生計配偶者)または老人扶養親族1人につき48万円 老人扶養親族のうち、同居老親等については1人につき58万円の控除額となるが、計算式では同居老親等についても48万円の控除額となる。
16歳以上23歳未満の扶養親族1人につき63万円 16歳以上19歳未満の一般控除対象扶養親族については1人につき38万円の控除額となるが、計算式では一般控除対象扶養親族についても63万円の控除額となる(19歳以上23歳未満の特定扶養親族と同額)。
それ以外の同一生計配偶者または扶養親族1人につき38万円 16歳未満の年少扶養親族については扶養控除の対象外であるが、計算式では年少扶養親族についても38万円の控除額となる。

4.計算式の「社会保険料控除額等」とは?

 一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)の所得基準の計算式における「社会保険料控除額等」は、以下のものが該当します。

(1) 障がい者1人につき27万円
(2) 特別障がい者1人につき40万円
(3) 寡婦または寡夫1人につき27万円
(4) 特別寡婦1人につき35万円
(5) 勤労学生1人につき27万円
(6) 雑損控除額
(7) 医療費控除額
(8) 社会保険料控除額
(9) 小規模企業共済等掛金控除額
(10) 配偶者特別控除額
(11) 純損失及び雑損失の控除額 など

 ここでも注意を要するのは、確定申告書の控除額との違いです。具体的には次のとおりです。

所得基準の計算式 確定申告書の控除額との違い
特別障がい者1人につき40万円 同居特別障害者については1人につき75万円の控除額となるが、計算式では同居特別障害者についても40万円の控除額となる。

 なお、確定申告書の所得控除のうち、以下のものは保険料免除を受けるための所得基準の計算式には含まれません。

(1) 生命保険料控除
(2) 地震保険料控除
(3) 基礎控除
(4) 寄附金控除

5.所得基準の計算方法と免除の区分

 国民年金保険料の免除を受けるための所得基準を計算するにあたっては、上記2,3、4における「扶養親族等の数」、「扶養親族等控除額」、「社会保険料控除額等」の範囲を把握し、確定申告書の控除額との違いに注意する必要があります。

 例えば、次の家族構成を例にした場合、免除を受けるための所得基準の計算方法と免除の区分は以下のようになります。

【家族構成5人】
① 本人・・・・・令和5年分の事業所得295万円(青色申告)、世帯主
② 配偶者・・・・青色事業専従者で令和5年分の給与所得41万円、46歳
③子ども・・・・小学生(12歳)と高校生(16歳)、無収入
④母親・・・・・令和5年分の年金所得15万円、71歳、同居
⑤所得控除・・・社会保険料控除30万円、生命保険料控除10万円、寄附金控除5万円
【所得基準の計算と免除の区分】

A.全額免除
所得基準:(3(子ども2人、母親)+1)×35万円+32万円=172万円
→本人の所得295万円>所得基準172万円のため、全額免除は受けられない。

B.4分の3免除
所得基準;88万円+48万円(同居老親)+38万円(年少扶養)+63万円(一般扶養)+30万円(社保控除)=267万円
→本人の所得295万円>267万円のため、4分の3免除は受けられない。

C.半額免除
所得基準:128万円+48万円(同居老親)+38万円(年少扶養)+63万円(一般扶養)+30万円(社保控除)=307万円
→本人の所得295万円≦307万円のため、半額免除を受けられる。

※ 配偶者の所得は41万円であるため、A、B、Cにおける所得基準をクリアしている。

 最後に、上記の例における本人の確定申告書を以下に示します。青枠で囲んだ箇所が所得基準の計算対象となりますが、確定申告書の控除額との違いに注意してください。

(1) 確定申告書では扶養控除が96万円(同居老親58万円+一般扶養親族38万円)となりますが、所得基準の計算では149万円(同居老親48万円+年少扶養親族38万円+一般扶養親族63万円)となります。

(2) 確定申告書では生命保険料控除10万円、基礎控除48万円、寄附金控除5万円が記載されていますが、所得基準の計算では対象外となります。

ふるさと納税の一足早い駆け込み需要

 例年であれば、年末に集中するふるさと納税ですが、今年(2023(令和5)年)は9月中に駆け込みでふるさと納税をする人が増えているようです。その背景には、総務省が今年の6月に行ったふるさと納税の自治体側のルールの見直しが影響しているものと思われます。
 今回は、ふるさと納税についてどのような改正があったのかを確認します。

1.自治体側のルール改正

 ふるさと納税をしようとする人は、ふるさと納税ポータルサイトなどでその年の自分の所得に応じた「ふるさと納税限度額」を確認した上で、ふるさと納税をしています。
 今回総務省が見直しを行ったのは、ふるさと納税をする寄附側のルールではなく、寄附を募る自治体側のルールです。

 これまでもふるさと納税を受ける自治体側には、「返礼品は寄附額の3割以内でなければならない」とか「地場産品でなければならない」などの他に、「返礼品を含む必要経費は寄附額の5割以下」というルールがありました。
 このルールは、ふるさと納税の過度な返礼品競争を防ぐため、返礼品の調達費用や送料など、自治体が寄附を募る経費の総額を寄附額の5割以下とする基準です。

 ところが、総務省によると、寄附を受領したことを示す書類の発送費用などを含めると5割を超えるケースが相次いで確認されたことから、今回の改正(基準の厳格化)に至りました。
 改正内容は次のとおりで、2023(令和5)年10月1日から2024(令和6)年9月30日まで適用されます。

(1) 募集に要する費用について、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄付金額の5割以下とする(募集適正基準の改正)
(2) 加工品のうち熟成肉と精米について、原材料がふるさと納税の対象となる地方団体と同一の都道府県産であるものに限り、返礼品として認める(地場産品基準の改正)

※ 熟成肉などを返礼品としていながら、原料は別の都道府県から仕入れ、その自治体で熟成させたケースなどがあったため、熟成肉と精米については原材料がその都道府県で生産されたものに限るとしています。

2.返礼品の実質的な値上げ

 上記1.(1)の改正により、返礼品だけではなく、送料、書類代、送付の人件費や広告宣伝費なども含めて寄付額の5割以下にするには、寄附額に占める返礼品の割合を下げたり、寄附額を引き上げるなどの方策が考えられますが、いずれにしても返礼品の実質的な値上げと言えそうです。
 このような事情を背景に、9月中にふるさと納税をしようとする人が増えたため、一足早い駆け込み需要につながっているものと思われます。

ふるさと納税返礼品を一時所得で申告する際の収入金額(時価)とは?

1.返礼品が一時所得となる根拠

 一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の臨時・偶発的な所得で、労務やその他の役務又は資産の譲渡による対価としての性質を有しないものをいい、例えば、次のようなものが該当します。

・福引や懸賞の当選金品(業務に関して受けるものを除く)
・競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く)
・生命保険契約等の一時金(業務に関して受けるものを除く)
・損害保険契約や建物更生共済等と満期返戻金、解約返戻金
・法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除く)
・売買契約の解除に伴い取得する違約金(業務に関して受けるものを除く)
・ 逸失物拾得者や埋蔵物発見者が受ける報奨金や新たに所有権を取得する資産
・時効により取得した土地等

 ふるさと納税をした人が地方公共団体から受ける特産品等の返礼品は、一時所得に該当します。
 所得税法上、各種所得の金額の計算上収入すべき金額には、金銭以外の物又は権利その他経済的利益の価額も含まれますが、ふるさと納税の謝礼として受ける特産品等に係る経済的利益については、所得税法第9条に規定する非課税所得のいずれにも該当せず、また、地方公共団体は法人とされていますので(地方自治法第2条第1項)、法人からの贈与により取得するものと考えられます。
 したがって、特産品等に係る経済的利益は一時所得に該当します。

2.返礼品の時価は「返礼品調達価格」だけど・・・

 一時所得の金額は次のように計算しますので、ふるさと納税以外に一時所得に該当するものがないときは、受け取った返礼品の価格が50万円までなら課税関係は生じません。

 一時所得の金額=一時所得に係る総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(50万円が上限)

 この算式において、一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額は受け取った返礼品の価格になりますが、返礼品の価格とはいかなるものをいうのでしょうか?
 一時所得の総収入金額には、金銭によるもののほか金銭以外の物又は権利その他経済的利益の価額も含まれ、経済的利益の価額は時価により計算します。
 では、返礼品という経済的利益の時価は、どのように算出するのでしょうか?

 国税不服審判所の令和2年8月6日裁決や令和4年2月7日裁決では、返礼品の時価は「地方公共団体が返礼品の調達に当たって現に支出した金額(返礼品調達価格)」とされています(令和4年2月7日裁決は公表裁決事例(裁決事例集No.126)で閲覧できます)。

 以下は、返礼品の時価を争点とする令和4年2月7日裁決の要約です。

(1) 返礼品は、ふるさと納税を受けた地方公共団体が、その謝礼として当該ふるさと納税をした個人に送付するものであるから、当該地方公共団体は、募集に要する費用の額や当該返礼品について、予算計画、返礼品の選定、調達個数、市場調査、事業者との折衝などを踏まえて、ふるさと納税の金額に応じた返礼品を選定し調達するものと推測することができる。このため、当該返礼品を選定し調達を行う地方公共団体が、当該返礼品の価値を最も理解しているものと考えられる。

(2) また、ふるさと納税をした個人は、地方公共団体からの贈与により返礼品を取得するのであるが、ふるさと納税制度における返礼品の提供が当該個人に対する謝礼であることからすれば、当該贈与による当該個人に供与されることとなる経済的利益の価額は、地方公共団体が謝礼(返礼品の調達・提供)のために支出した返礼品調達価格をその算定の基礎とすることが相当である(以下、ふるさと納税を受けた地方公共団体が返礼品の調達に当たって現に支出した金額を「返礼品調達価格」といい、当該調達先の事業者を「調達事業者」という)。
 そして、返礼品調達価格については、地方公共団体と調達事業者との合意により成立したものであり、地方公共団体がふるさと納税の金額に応じた返礼品をホームページ等で公開していることを踏まえると、当該合意された金額について、地方公共団体と調達事業者との間に特別な動機を挟む余地はなく、通常、地方公共団体が当該返礼品をその調達時における時価を超える金額で調達することはないと考えられる。
 なお、返礼品について、地方公共団体と調達事業者との間で不当に高額又は低額で取引されたといった事情は見受けられない。

(3) さらに、地方公共団体は、通常、調達事業者による返礼品の発送をもって、当該調達事業者へその代金(返礼品調達価格)を支払っているものと考えられ、当該代金は当該発送により確定するものと認められる。そうすると、地方公共団体が返礼品を調達した時期とふるさと納税をした者が当該返礼品を取得する時期は、近接していると認められ、この二つの時期を同時期であるとみても特段不合理ではない。

(4) これらのことからすると、返礼品に係る返礼品調達価格は、地方公共団体が返礼品を調達した時における当該返礼品の客観的交換価値(時価)を示すものと評価することができる。

 裁決では返礼品調達価格を時価としていますが、この返礼品調達価格を一般の納税者が知るのは困難であると思われます。
 税務署の調査担当職員だからこそ、地方公共団体に対して返礼品に係る照会を行って回答を得ることができるのであり、同様の照会を一般の納税者が行ったとしても、対応してくれる地方公共団体があるのかどうかは疑問です。

被災地に義援金を送金した場合等の税務上の取扱い

 個人又は法人が、災害により被害を受けられた方を支援するために、被災地の地方公共団体に設置される災害対策本部等に義援金や支援金を支払った場合等の税務上の取扱いについて確認します。
 なお、義援金は「お悔やみや応援の気持ちを込めて被災者に直接届けるお金」のことをいい、支援金は「自分が応援したい団体に寄付し、被災地の支援活動に役立ててもらうお金」のことをいいますが、本稿では両者を合わせて「義援金」といいます。

1.被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して義援金を支払った場合

 個人又は法人が、被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して義援金を支払った場合の税務上の取扱いは、次のとおりです。

個人  個人の方が、被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して支払った義援金は「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
 なお、当該義援金は、地方公共団体に対する寄附金として個人住民税の寄附金税額控除の対象となり、原則としてふるさと納税に該当します(ワンストップ特例制度の適用ができますが、通常は返礼品はありません)。
法人  法人が、被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して支払った義援金は「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金の額に算入されます。

2.日本赤十字社又は社会福祉法人中央共同募金会等に対して義援金を支払った場合

 個人又は法人が、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等が被災者への支援を目的として設けた専用口座に対して義援金を支払った場合の税務上の取扱いは、次のとおりです。

個人  個人が、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に地方公共団体(義援金配分委員会等)に対して拠出されるものであるときは、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
 なお、当該義援金は、地方公共団体に対する寄附金として個人住民税の寄附金税額控除の対象となり、原則としてふるさと納税に該当します(ワンストップ特例制度の適用ができますが、通常は返礼品はありません)。
法人  法人が、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に義援金配分委員会等に対して拠出されることが募金趣意書等において明らかにされているものであるときは、「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金の額に算入されます。

※ 日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等に対して支払った義援金であっても、例えば、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等の事業資金として使用されるなど、最終的に地方公共団体に拠出されるものでないものについては、上記と異なる取扱いになる場合がありますので、義援金の支払先に確認する必要があります。

3.被災地の救援活動等を行っている認定NPO法人等に対して義援金を支払った場合

 被災地の救援活動や被災者への救護活動を行っているNPO法人が「認定NPO法人等」であり、支払った義援金がその認定NPO法人等の行う特定非営利活動に係る事業に関連するものであるときには、その義援金は「認定NPO法人等に対する寄附金」に該当します。
 個人又は法人が、認定NPO法人に対して義援金を支払った場合の税務上の取扱いは、次のとおりです。

個人  個人の方が、「認定NPO法人等に対する寄附金」として支払った義援金は、寄附金控除(所得控除)又は寄附金特別控除(税額控除)の対象となります(選択適用)。ふるさと納税には該当しません。
法人  法人が、「認定NPO法人等に対する寄附金」として支払った義援金は、「特定公益増進法人に対する寄附金」に含めて損金算入限度額を計算し(特別損金算入限度額)、その範囲内で損金の額に算入されます。

4.被災地の救援活動等を行っている認定NPO法人等以外の法人等に対して義援金を支払った場合

 個人又は法人が、認定NPO法人等以外の法人等に対して義援金を支払った場合(※)には、次に掲げるような支払先の区分に応じて、税務上の取扱いが異なります。
 支払先の区分や支払った義援金の税務上の取扱いについては、直接支払先の法人等に確認する必要があります。

※ 「国等に対する寄附金」及び「指定寄附金」に該当するものを支払った場合を除きます。

支払先

公益社団法人・公益財団法人の場合(その法人の主たる目的である業務に関連するものに限ります)

NPO法人(認定NPO法人等でないもの)、職場の有志で組織した団体などの人格のない社団等の場合
個人  寄附金控除(所得控除)の対象となります。
 支払先が一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人である場合には、寄附金特別控除(税額控除)との選択適用が可能です。
 寄附金控除等の対象となりません。
法人  特定公益増進法人に対する寄附金として、特別損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入できます。  一般の寄附金として、損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入できます。

5.募金団体を通じて地方公共団体に対して義援金を支払った場合

 関係する個人、法人から義援金を集め、これを取りまとめた上で、一括して地方公共団体に対して支払う場合(※)、義援金を取りまとめる団体(以下「募金団体」といいます)に寄附した個人、法人の税務上の取扱いは、次のとおりです。

※ 税務署において、募金団体に対して支払う義援金が、最終的に国、地方公共団体に拠出されるものであるかどうかの確認が行われます。

個人  個人が、募金団体に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に地方公共団体(義援金配分委員会等)に対して拠出されることが募金団体が発行する預り証において明らかにされているものであるときは、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
 なお、当該義援金は、地方公共団体に対する寄附金として個人住民税の寄附金税額控除の対象となり、原則としてふるさと納税に該当します(ワンストップ特例制度の適用ができますが、通常は返礼品はありません)。
法人  法人が、募金団体に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に義援金配分委員会等に対して拠出されることが募金団体が発行する預り証において明らかにされているものであるときは、「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金の額に算入されます。

6.法人が被災した取引先に対して義援金を支払った場合

 法人が、被災した取引先に対し、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間において支出する災害見舞金は、交際費等に該当せず損金の額に算入されます。

7.法人が自社製品を被災者に提供した場合

 法人が、不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、寄附金又は交際費等には該当せず、広告宣伝費に準ずるものとして損金の額に算入されます。