補助金を受けた場合の住宅ローン控除と圧縮記帳の方法・記載例

1.住宅ローン控除の概要

 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、個人が住宅ローンを利用して住宅を新築、取得、増改築等をして、2022(令和4)年1月1日から2025(令和7)年12月31日までの間に自己の居住の用に供した場合で一定の要件に当てはまるときに、借入金残高の一定額を所得税額から控除するという制度です。
 この特例は、住宅等の区分および居住年に応じて、借入限度額や控除期間が異なります。
 また住宅ローン控除の適用を受けた場合に、所得税から控除しきれなかった控除額を翌年度分の個人住民税から控除する制度もあります。

 この住宅ローン控除の適用を受けるためには、納税地の所轄税務署長にこの特例を適用する旨の確定申告書と一定の書類を提出しなければなりません。
 なお、給与所得者であれば、最初の年だけ確定申告すれば、翌年以降は勤務先の年末調整で住宅ローン控除を受けることができます。

2.補助金を受けた場合の計算明細書の書き方

 住宅の取得等に際し、国または地方公共団体から交付される補助金または給付金その他これらに準ずるものの交付を受ける場合があります。
 この場合は、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」において、住宅の取得価額からその補助金等の額を控除しなければなりません。
 例えば、2023(令和5)年に「こどもエコすまい支援事業補助金」(申請タイプ:新築分譲住宅の購入)100万円の交付を受けた場合の計算明細書の書き方は次のとおりです。

3.個人の圧縮記帳の方法

 上記のこどもエコすまい支援事業補助金100万円は所得税の課税対象ですので、一時所得として申告しなければなりません。
 この場合の所得金額は(100万円-50万円)×1/2=25万円となり、この25万円に対して所得税が課税されます。
 
 せっかく補助金を受けたにもかかわらず、その補助金を住宅ローン控除額の計算から除外しなければならず、さらに一時所得として課税されることにもなります。
 ところが、補助金の交付を受けた年に補助金に課税されないようにする方法があります。
 法人ではおなじみの圧縮記帳という方法が、個人の場合でも使えます。
 本補助金は、所得税法第42条第1項(国庫補助金等の総収入金額不算入)に規定する国庫補助金等に該当しますので、圧縮記帳が可能です。
 ただし、圧縮記帳は課税を先送りするものであって課税が免除されるわけではなく、いずれこの補助金100万円には税金がかかります。具体的にいうと、住宅売却時にこの100万円に対して税金がかかります。この点を踏まえて圧縮記帳をするかどうかを決める必要があります。

 個人の場合の圧縮記帳は、「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を確定申告書と一緒に提出します。
 例えば、2023(令和5)年に交付を受けたこどもエコすまい支援事業補助金100万円について、圧縮記帳を適用する場合の明細書の書き方は次のとおりです。

 書き方の留意点は次のとおりです。

① 「交付を受けた年月日」欄には、交付決定日の日付を記入します。
 こどもエコすまい支援事業事務局から「こどもエコすまい支援事業振込確定のお知らせ」というハガキが届きますが、このハガキには「交付決定日」「交付確定日」「補助金振込予定日」が記載されています。これらのうち、交付決定日を記入します。

② 「交付を受けた国庫補助金等をもって取得または改良をした固定資産に関する明細」欄の「種類」と「細目」は、減価償却資産の耐用年数表の「種類」と「細目」を記入します。

③ 「国庫補助金等の返還を要しないことが確定した日」欄には、①のハガキの交付確定日を記入します。

月次支援金の事前確認項目(不正受給抑止)

 月次支援金の申請に当たっては、登録確認機関による事前確認が必要です。ただし、一時支援金を受給している場合は、月次支援金の申請の際に改めて事前確認を受ける必要はありません。
 一時支援金を受給していない場合は、月次支援金を初めて申請する際に事前確認が必要ですが、2回目以降の申請では事前確認は不要です。
 登録確認機関が行う月次支援金の事前確認の内容等は、基本的には一時支援金のときと変わりませんが、月次支援金で新たに追加された確認項目もあります。
 今回は、不正受給抑止に関する登録確認機関の事前確認項目について確認します。

※ 月次支援金の制度詳細については、本ブログ記事「月次支援金の申請受付が令和3年6月より開始されます」をご参照ください。

1.追加された不正受給抑止項目

 申請希望者が給付対象や宣誓・同意事項等を正しく理解していることを確認するため、登録確認機関は申請希望者に対して数項目の確認をします。その中の一つに、次の項目があります。これは、持続化給付金のときに横行した不正受給に対する歯止めとして、月次支援金の事前確認項目として新たに追加されたものです。

一時支援金又は月次支援金の給付の申請について、いずれかの申請が不給付となった場合には、全ての一時支援金及び月次支援金について受給資格を失って返還等の義務を負うなどすることを(申請希望者が)認識しているか。

 これは、例えば、一時支援金の申請が正しく行われ一時支援金を正当に受給していたとしても、月次支援金の申請で不正が発覚して不給付となった場合には、過去に正当に受給した一時支援金も含めて全ての一時支援金及び月次支援金の返還義務が生ずるということです。
 しかし、不給付には不正申請による場合だけではなく、単純な計算ミスなどによる場合もあります。計算ミスなどによる不給付の場合(不正受給の目的をもって申請したのではない場合)は、正しく申請受給した過去の一時支援金や月次支援金の返還まで求められるものではありません。

2.元々あった不正受給抑止項目

 不正受給の予防策としては、もうひとつ一時支援金のときと同じように次の事前確認項目があります。

月次支援金の不正受給又は無資格受給を行った場合や書類の保存義務・提出義務を遵守しなかった場合、事務局等の調査に応じなかった場合、宣誓・同意書に違反した場合には、全ての一時支援金及び月次支援金について受給資格を失って返還等の義務を負うなどするほか、特に不正受給の場合には受給額に延滞金及び2割の加算金を加えて返還する義務を負うことや、氏名等の公表及び刑事告発され得ることを(申請希望者が)認識しているか。

 不正受給を抑制するという点で、上記1の追加項目と内容的にはほぼ同じであるにもかかわらず、なぜこの項目をここで掲げているのか(なぜ、上記1の項目を追加したのか)、その違いがわかりにくかったので、月次支援金事務局に聞いてみました。
 事務局によると、ここで再度不正受給の場合の措置を挙げているのは、不正が悪質な場合は延滞金や加算金、氏名等の公表、刑事告発の対象となり得ることを強調するためとのことでした(悪質であるか否かについては、月次支援金事務局で判断されるようです)。



一時支援金の申請書類提出期限と事前確認期限が延長されます

1.書類提出期限は2週間程度延長

 一時支援金の申請期限は2021(令和3)年5月31日(月)ですが、申請に必要な書類の準備に時間を要するなど、申請期限に間に合わない合理的な理由がある方については、「申請に必要な書類の提出期限」が2週間程度延長されることになりました。
 ただし、申請する前に必要な「登録確認機関での事前確認」が受けられるのは、「申請に必要な書類の提出期限」の数日前までとなりますので、ご注意ください。
 なお、延長後の書類の提出期限及び事前確認期限の具体的な期日については、決まり次第、改めて発表されます。
※ 2021(令和3)年5月18日付で、一時支援金の申請に必要な書類の提出期限及び事前確認期限の延長に関するリーフレットが公表されています。
※ 「申請に必要な書類の提出期限」は、6月15日(火)まで延長されています。申請する前に必要な登録確認機関での事前確認」が受けられるのは6月11日(金)までとなっていますので、ご注意ください。

2.期限延長の手順

 これらの期限延長を希望する場合は、以下の(1)~(3)の手順に従って、2021(令和3)年5月31日(月)までに、「申請IDの発行」及びマイページ上からの「書類の提出期限延長の申込」両方を行う必要があります。
 なお、下記(2)及び(3)(書類の提出期限延長の申込)については、2021(令和3)年5月25日(火)から可能となります。

(1) マイページボタンから「初めて登録する方はこちら」をクリックして、登録手続き(申請ID発番)を行います。
(2) 登録完了後にマイページにログインして、マイページ画面上の「書類の提出期限延長をご希望の方は、こちら」から申込ページに移動します。
(3) 申込ページにおいて、申請期限に間に合わない理由などの必要事項の記載等を行った上で、2021(令和3)年5月31日(月)までに申し込みをします。

 電子申請が困難な場合には、申請サポート会場を予約し、2021(令和3)年5月31日(月)までに、同会場で「書類の提出期限延長の申込」手続を行ってください。

月次支援金の申請受付が令和3年6月より開始されます

 一時支援金の申請受付は、2021(令和3)年5月31日(月)で終了しますが、この一時支援金とは別に、新たに「月次支援金」の制度概要が経済産業省から公表されました。
 月次支援金は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策として2021(令和3)年4月以降に実施される緊急事態措置やまん延防止等重点措置により、「飲食店の休業・時短営業」や「外出自粛等」の影響を受けている中小法人と個人事業者に向けた継続的な支援制度です。
 月次支援金の給付にあたっては、一時支援金の仕組みを用いることで、事前確認や提出資料の簡略化が図られており、申請者の利便性を高めるように措置されています。
 そのため、登録確認機関の事前確認を経て一時支援金を受給した方にとっては、月次支援金の申請はしやすいものと思われます。
 制度の詳細は5月中旬に公表される予定ですが、4月30日付で公表されている制度概要は次のとおりです。

※ 2021(令和3)年5月18日に公表された「緊急事態措置又はまん延防止等重点措置の影響緩和に係る月次支援金の詳細について」が6月3日に更新されました。今後、随時更新されていきます。

1.月次支援金の概要

 

給付対象

①緊急事態措置又はまん延防止等重点措置に伴う飲食店の休業・時短営業又は外出自粛等の影響を受けていること※
②2021(令和3)年の月間売上が、2019(令和1)年又は2020(令和2)年の同月比で50%以上減少していること
給付額 2019年又は2020年の基準月の売上-2021年の対象月の売上

対象月:緊急事態措置又はまん延防止等重点措置が実施された月のうち、同措置の影響を受けて、2019年又は2020年の同月比で、売上が50%以上減少した2021年の月
基準月:2019年又は2020年における対象月と同じ月
給付額上限 中小法人等:20万円/月
個人事業者等:10万円/月

※ 2021(令和3)年4月以降に実施される緊急事態措置又はまん延防止等重点措置に伴い、同措置が実施される地域において、休業または時短営業の要請を受けて休業又は時短営業を実施している飲食店と直接・間接の取引があること、又はこれらの地域における不要不急の外出・移動の自粛による直接的な影響を受けていることが必要です。
 なお、外出自粛等の影響には、人流抑制を目的とする休業又は時短営業の要請を受けた事業者に対して、商品・サービスを提供していることによる影響も含みます。
 ただし、地方公共団体による休業又は時短営業の要請に伴う協力金の支払対象の事業者については、当該協力金が新型コロナウイルス感染症対策対応地方創生臨時交付金を用いている場合には、月次支援金の給付対象外です。

2.月次支援金の申請手続き等の留意点

 月次支援金は一時支援金の仕組みを利用することから、その申請手続き等も一時支援金の場合と共通点が多いといえます。以下では、月次支援金の申請に際しての留意点を列挙します。

(1) 申請者の利便性向上のために一時支援金の仕組みを用いることから、一時支援金事務局が月次支援金事務局を兼ねることとされています。

(2) 月次支援金の申請をする際は、初回のみ登録確認機関の事前確認を受ける必要があります。事前確認を受けて月次支援金を受給すれば、2回目以降の申請では、基本的には事前確認は不要です。
 なお、事前確認を経て一時支援金を受給した事業者は、基本的には、月次支援金の申請のために改めて事前確認を受ける必要はありません

(3) 緊急事態措置又はまん延防止等重点措置が複数月に及ぶ場合や新たに同措置が実施されて対象月が増えた場合などは、それぞれの月において、売上が50%以上減少し必要な要件を満たせば、申請を行うことができます。
 ただし、1つの対象月につき、申請・受給は1回のみとされています。

(4) 初めて月次支援金の申請を行う場合は、下表の①~⑤の提出書類をすべて提出する必要がありますが、2回目以降の申請における提出書類は、基本的には、対象月の売上台帳となります(2回目以降の申請では、宣誓・同意書を改めて提出する必要はありませんが、オンライン上で宣誓・同意事項の確認がされます)。
 なお、一時支援金の受給に際して提出した書類は、改めて提出する必要はありません。
 ただし、既存の提出書類に修正・追加の必要がある場合には、修正後・追加の書類を提出します。

  一時支援金受給者の1回目の申請 一時支援金受給者の2回目以降の申請 一時支援金未受給者の1回目の申請 一時支援金未受給者の2回目以降の申請
事前確認 必要
①2019年・2020年の確定申告書 提出
②2021年の対象月の売上台帳 提出 提出 提出 提出
③通帳 提出
④宣誓・同意書 提出 オンライン上で確認 提出 オンライン上で確認
⑤履歴事項全部証明書(中小法人等)
本人確認書類(個人事業者等)
提出

(5) 提出書類の他に、緊急事態措置又はまん延防止等重点措置の影響を受けたことを示す証拠書類の保存が必要です。

(6) 証拠書類等及び給付額の算定等に関する特例が措置される予定です。