住民税非課税世帯とは?

 住民税非課税世帯には、低所得者を救済する目的で多くの恩恵(例えば、国民健康保険料・介護保険料・高額療養費が軽減される、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化による臨時特別給付金の支給など)が用意されています。
 今回は、これらの恩恵を受けることができる住民税非課税世帯について確認します。

1.個人住民税の概要

 個人住民税とは、都道府県や市区町村の住民がその地方団体に納付する税金で、道府県民税(都民税を含みます)と市町村民税(特別区民税を含みます)を総称したものです。
 個人住民税は、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」※1、定額で課税される「均等割」※2から成ります※3
 その年の1月1日現在において、市区町村内に住所を有する者については均等割と所得割が課税され、市区町村内に事務所、事業所又は家屋敷を有する者でその市町村内に住所を有しない者には均等割が課税されます※4

※1 標準税率は、道府県民税4%(2%)、市町村民税6%(8%)です。( )内は指定都市に住所を有する者の2018(平成30)年度分以後の税率です。

※2 市町村民税・道府県民税均等割(標準税率)は次のとおりです。

  標準税率 復興特別税 合計
市町村民税 3,000円 500円 3,500円
道府県民税 1,000円 500円 1,500円
合計 4,000円 1,000円 5,000円

注)2014(平成26)年度から2023(令和5)年度までの10年間は、東日本大震災被災地の復興財源に充てるため、均等割額に500円ずつが加算されます。
 また、例えば大阪府では森林環境税を確保するため、大阪府税条例の規定により2016(平成28)年度から2023(令和5)年度までの8年間は、個人府民税の均等割額に300円が加算されます(大阪府民税の均等割は1,800円になります)。

※3 他に、預貯金の利子等に課税される「利子割」、一定の上場株式等の配当等に課税される「配当割」、源泉徴収特定口座内の株式等の譲渡益に課税される「株式等譲渡所得割」がありますが、本記事では省略します。

※4 市区町村の属する都道府県においても道府県民税が課税されますが、個人住民税は市町村が市町村民税と道府県民税を併せて課税します。

2.個人住民税が非課税となる者

 個人住民税が課税されない者は、次のとおりです。

(1) 均等割・所得割ともに非課税となるケース

① 生活保護法の規定によって生活扶助を受けている者(教育扶助や医療扶助を受けているだけではこれに該当しません)
② 障害者、未成年者、寡婦又はひとり親で、前年の合計所得金額の合計が135万円以下の者(前年の所得が給与所得のみの場合は収入金額が2,044,000円未満の者)
③ 前年の合計所得金額が各地方自治体の条例で定める金額以下の者(例えば大阪市や神戸市の場合は、次の算式で求めた額以下の者)
  35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+21万円
  ただし、21万円は同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合のみ加算します。

(2) 均等割が非課税となるケース

 均等割のみを課すべき者のうち、前年の合計所得金額が各地方自治体の条例で定める金額以下の者(例えば大阪市や神戸市の場合は、次の算式で求めた額以下の者)
  35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+21万円
  ただし、21万円は同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合のみ加算します。

(3) 所得割が非課税となるケース

 前年の総所得金額等が次の算式で求めた額以下の者
 35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+32万円
 ただし、32万円は同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合のみ加算します。

3.個人住民税の非課税世帯とは?

 均等割と所得割の両方が非課税の場合は、「住民税非課税」となります。そして、世帯全員が住民税非課税であれば、「住民税非課税世帯」ということです。

給与の支払がない場合の法定調書合計表と給与支払報告書の提出の要否

 年末調整が終われば、その後の処理として「法定調書」「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」(以下「合計表」といいます)と「給与支払報告書(個人別明細書、総括表)」(以下「報告書」といいます)を提出しなければなりません。
 基本的には、それぞれ税務署から郵送されてくる「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の作成と提出の手引」と「給与支払報告書等の作成及び提出についての手引書」に従って作業を進めていきます。
 この作業は、従業員に給与を支払っていることが前提になりますが、事業者(個人事業主)によっては、従業員を雇っておらず給与の支払がない場合もあります。このような事業者においては、従業員の年末調整という作業は必要ありませんが、その後の合計表と報告書の提出についてはどうでしょうか?
 今回は、給与の支払がない場合の合計表と報告書の提出の要否について確認します。

1.合計表の提出について

 個人事業主の中には、従業員を雇わず1人で事業を行っている場合があります。また、開業後間もない時期のため、青色事業専従者に給与を支払っていない個人事業主もいることと思います。
 このような場合、合計表を税務署に提出する必要はあるのでしょうか?
 これについては、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の作成と提出の手引」に記載があります。令和2年分であれば手引の32ページ右下に、次のように書かれています(太字加工は筆者による)。

 税務署へ提出する法定調書がない場合は、合計表の「(摘要)」欄に「該当なし」と記載の上、提出をお願いします。
 なお、e-Taxのメッセージボックス及びマイナポータルに「法定調書提出期限のお知らせ」(以下「お知らせ」といいます。)が届いている方で、お知らせを通じて「提出義務なし」と回答した場合には、上記の合計表の提出は必要ありません(おしらせは11月下旬から12月上旬に送信される予定です。)。

 つまり、給与の支払がない場合でも合計表の「1 給与所得の源泉徴収票合計表(375)」の摘要欄に「該当なし」と記載して提出する必要がありますが、メッセージボックスのお知らせを通じて「提出義務なし」と回答した場合は提出する必要はないということです。いずれにせよ、税務署に対する意思表示は必要であり、それを怠ると税務署から連絡がきますのでご注意ください。
 なお、合計表を提出しなかったり虚偽記載をした場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(所得税法242条5号)。

2.報告書の提出について

 一方、個人住民税の基礎資料となる報告書は市町村に提出します。報告書は税務署に提出する源泉徴収票と提出範囲が異なり、前年中に給与等を支払ったすべての従業員等(パート・アルバイト、役員等を含む)について提出が必要です。
 では、前年中に給与の支払がなかった場合、報告書は提出するのでしょうか?
 答えは「否」です。給与の支払がない場合、報告書は提出不要です。個人別明細書に0と記載して提出することも、総括表に0と記載して提出することも、市町村は求めていないようです。ただし、市町村によって対応が異なることもありますので、当該市町村に確認した方が良いかもしれません(連絡先については、「給与支払報告書等の作成及び提出についての手引書」の「市町村所在地一覧表」に載っています)。

住民税・事業税における青色申告特別控除の取扱い

1.住民税のみの申告でも青色申告特別控除を適用できるか?

 所得税の申告義務がない人も住民税の申告は必要です。
 給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度は、所得税(国税)における規定であり、住民税(地方税)にはこの規定はありません。そのため、所得税では申告不要とされた20万円以下の所得は、住民税では申告が必要です。
 
 では、所得税の確定申告書を提出していない人が住民税の申告をする場合、青色申告特別控除の適用はできるのでしょうか?

 青色申告特別控除については、所得税申告書の提出は要件となっていません。したがって、所得税の申告義務がない人が住民税の申告のみを行う場合、当該年分について青色申告の承認を受けていれば、住民税においても青色申告特別控除額(10万円)を控除できます(租税特別措置法25の2①、地方税法313条②)。

2.事業税における青色申告特別控除

 事業税では、青色申告特別控除の特例措置が講じられていないので、課税標準となる事業の所得は、青色申告特別控除額を控除しないで算定します。