消費税は国内において消費される商品の販売やサービスを課税対象としますので、国外で消費される輸出取引については消費税が免除されます。これを輸出免税といいます。
輸出免税は、輸出売上げに係る消費税を免除する一方で、その仕入れに係る消費税を仕入税額控除の対象としますので、輸出取引が多い事業者の場合は消費税の還付を受けることができます。
一例として輸出免税を挙げましたが、消費税は納付するだけではなく還付を受けるケースもあるということです。
消費税の還付を受ける場合、法人税法や所得税法との関係から、その還付申告となった課税期間を含む事業年度または年の益金または総収入金額に算入しなければならないように思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。
還付額をどのタイミングでどのように計上するかについては、以下のように消費税の経理方法によって異なります。
1.税抜経理方式の場合
消費税の経理処理には税抜経理方式と税込経理方式があり、どちらの方法を選択するかは事業者の任意とされており、また、選択した方法によって納付する消費税額や還付を受ける消費税額に差異が生じることは基本的にはありません。
税抜経理方式を選択した場合の経理処理は、次のようになります(還付申告のケース)。
(1) 仕入時
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 3,000 | 買掛金 | 3,300 |
仮払消費税等 | 300 |
(2) 売上時
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 2,200 | 売上 | 2,000 |
仮受消費税等 | 200 |
(3) 決算時
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
仮受消費税等 | 200 | 仮払消費税等 | 300 |
未収消費税等 | 100 |
(4) 還付時
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金預金 | 100 | 未収消費税等 | 100 |
事業者がすべての取引について税抜経理方式を選択した場合、上記のように消費税が課される取引については税抜金額で計上し、課税売上げに対する消費税額は仮受消費税等、課税仕入れに対する消費税額は仮払消費税等とします。
決算時には上記(3)のように、その課税期間の仮受消費税等の金額から仮払消費税等の金額を控除し、納付すべき税額は未払消費税等、還付を受ける税額は未収消費税等として計上しますが、原則として法人税または所得税の課税所得金額には影響しません。
2.税込経理方式の場合
税込経理方式を選択した場合の経理処理は、次のようになります(還付申告のケース)。
(1) 仕入時
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 3,300 | 買掛金 | 3,300 |
(2) 売上時
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 2,200 | 売上 | 2,200 |
事業者がすべての取引について税込経理方式を選択した場合には、上記のように課税売上げに対する消費税額は収益の額または収入金額に含まれ、また、課税仕入れに対する消費税額は仕入金額や経費などの額に含まれます。
このため、納付すべき消費税額は租税公課として損金の額または必要経費に算入し、還付を受ける消費税額は雑収入などとして益金の額または総収入金額に算入しますので、法人税または所得税の課税所得金額に影響します。
ということは、消費税の納付税額や還付税額を計上するタイミングによって、法人税額や所得税額が変わるということです。
では、どのタイミングでこれらを計上すればよいのでしょうか?決算時でしょうか、それとも納付時(還付時)でしょうか?
結論を先に述べると、納付すべき消費税額および還付を受ける消費税等額の計上時期は、原則として「納付時(還付時)」です。
納付税額または還付税額の計上時期については、申告に係るものはその申告書が提出された日の属する事業年度または年(更正または決定に係るものはその更正または決定があった日の属する事業年度または年)とされています。
したがって、決算時と還付時の経理処理は、原則として次のようになります。
(3) 決算時
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
仕訳なし |
(4) 還付時
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金預金 | 100 | 雑収入 | 100 |
しかし、税込経理方式を選択していても、実務では消費税の納付税額または還付税額を未払計上・未収計上することはよくあります。
これについては、法人が申告期限未到来の納税申告書に記載すべき消費税額を損金経理により未払金に計上した場合または収益の額として未収入金に計上した場合には、その計上した事業年度の損金の額または益金の額に算入することができるとされており、個人事業者が申告期限未到来の納税申告書に記載すべき消費税額を未払金または未収入金に計上した場合には、その計上した年の必要経費または総収入金額に算入することができるとされているためです。
したがって、税込経理方式を選択した場合は、消費税還付金を還付時に雑収入として経理処理するのが原則であり、決算時に必ずしも未収計上する必要はないということです。