白色申告に関する誤解~現金主義と収支内訳書

 所得税の確定申告には青色申告と白色申告があります。青色申告を行う場合は、税務署に期限までに青色申告承認申請書を提出したり、55万円(電子申告等をすれば65万円)の青色申告特別控除を適用するためには複式簿記による記帳が必要であったりしますので、青色申告の特典を受けるためには手続きや会計処理に若干の煩雑さが伴います。
 白色申告を行う場合は、税務署への届出も必要ありませんし、単式簿記による記帳でも構いませんので、青色申告に比べれば煩雑さはありません。そのため、白色申告はシンプルで簡単というイメージがありますが、このことが白色申告に関する以下のような誤解を生んでいるのかもしれません。

1.白色申告は現金主義でよい?

 発生主義に比べると現金主義は簡単なイメージがあるため、このような誤解があるのかもしれませんが、青色申告も白色申告も、原則として発生主義による記帳を行わなければなりません※1
 現金主義による記帳は、一定の要件※2を満たす青色申告者のみに認められた特典であり、白色申告者に現金主義の適用はありません。

※1 令和4年分以後の業務に係る雑所得(サラリーマンが行うアフィリエイトなど、いわゆる副業)については、その年の前々年分の収入金額が300万円以下である人は、業務に係る雑所得の金額の計算上総収入金額および必要経費に算入すべき金額は、その年において収入した金額および支出した費用の額とすることができます。ただし、この特例を受けるには、確定申告書にこの特例を受ける旨を記載しなければなりません。

※2 不動産所得と事業所得について、その年の前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額(事業専従者給与(控除)の額を必要経費に算入しないで計算した金額)の合計額が300万円以下であり、「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を、適用を受けようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に新たに開業した場合には、開業した日から2月以内)に提出する必要があります。

2.白色申告の事業所得は収支内訳書を添付しなくてよい?

 収支内訳書を確定申告書に添付して提出する義務のある人は、次のいずれにも該当する人です。

(1) 事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行っている人
(2) 青色申告をしていない人
(3) 確定申告書を提出する人

 また、収支内訳書を添付する確定申告書には、次の申告書も含まれます。

① 還付を受けるための申告書
② 損失申告用の申告書
③ 準確定申告書

 したがって、確定申告書を提出する義務がある場合だけではなく、確定申告書が提出される限り、要件に該当すれば収支内訳書を添付することになります。
 つまり、事業所得や不動産所得がある白色申告者は、確定申告書に収支内訳書を添付しなければなりません※3

※3 業務に係る雑所得のある人(アフィリエイトを行うサラリーマンなど)は上記の要件を満たさないため、これまでは収支内訳書の添付は不要でした。
 しかし、令和4年分以後の所得税においては、業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える人は、確定申告書を提出する際に総収入金額や必要経費の内容を記載した収支内訳書を添付する必要があります。