最近はベトナムなどから外国人技能実習生を受け入れる企業が増えています。外国人技能実習生に支給する研修手当は、雇用契約に基づく労働の対価(給与)に該当しますので、所得税を源泉徴収しなければなりません。また、このような外国人技能実習生に対する給与は、年末調整の対象になります。
今回は、年末調整の際に、外国人技能実習生が非居住者である親族(日本国外に居住する親族)に係る扶養控除等の適用を受けるための手続きについて紹介します。
1.扶養控除等申告書に必要事項を「親族関係書類」から記載する
給与等の源泉徴収において、非居住者である親族に係る扶養控除、配偶者控除、障害者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける居住者(外国人技能実習生)は、当該親族に係る「親族関係書類」を源泉徴収義務者に提出する扶養控除等申告書に添付し、又はその申告書等の提出の際に提示しなければなりません。
「親族関係書類」とは、次の(1)又は(2)のいずれかの書類で、その非居住者がその居住者(外国人技能実習生)の親族であることを証するものをいいます。
(1) 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し
(2) 外国政府又は外国の地方公共団体(以下、「外国政府等」といいます)が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります)
「親族関係書類」に関する注意事項は次のとおりです。
① 親族関係書類が外国語により作成されている場合には、訳文を添付等する必要があります。
② 親族関係書類は、国外居住親族の旅券の写しを除き、原本の提出又は提示が必要です。
③ 上記(2)の外国政府等が発行した書類は、例えば次のような書類が該当します。
イ.戸籍謄本
ロ.出生証明書
ハ.婚姻証明書
④ 外国政府等が発行した書類について、一つの書類に国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所のすべてが記載されていない場合は、複数の書類を組み合わせることにより氏名、生年月日及び住所又は居所を明らかにする必要があります。
⑤ 一つの書類だけでは国外居住親族が居住者(外国人技能実習生)の親族であることを証明できない場合には、複数の書類を組み合わせることにより、居住者(外国人技能実習生)の親族であることを明らかにする必要があります。
⑥ 16歳未満の非居住者である扶養親族(扶養控除の対象とならない扶養親族)であっても障害者控除を受ける場合には、親族関係書類及び送金関係書類の提出又は提示が必要です。
2.年末調整では国外居住親族への「送金関係書類」を確認する
給与等の年末調整において、非居住者である親族に係る扶養控除、配偶者控除、障害者控除の適用を受ける居住者(外国人技能実習生)は、「送金関係書類」を源泉徴収義務者に提出する扶養控除等申告書に添付し、又はその申告書の提出の際に提示しなければなりません。
非居住者である配偶者に係る配偶者特別控除の適用を受ける居住者(外国人技能実習生)は、「親族関係書類」及び「送金関係書類」を源泉徴収義務者に提出する配偶者特別控除申告書に添付し、又はその申告書の提出の際に提示しなければなりません。
「送金関係書類」とは次の書類で、その居住者(外国人技能実習生)がその非居住者である親族の生活費又は教育費に充てるための支払を、必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。
(1) 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類
(2) クレジットカード発行会社の書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入したこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者(外国人技能実習生)から受領した、又は受領することとなることを明らかにする書類
「送金関係書類」に関する注意事項は次のとおりです。
① 送金関係書類が外国語により作成されている場合には、訳文を添付等する必要があります。
② 送金関係書類については、原本に限らずその写しも送金関係書類として取り扱うことができます。
③ 送金関係書類は、具体的には次のような書類が該当します。
イ.外国送金依頼書の控え
その年において送金をした外国送金依頼書の控え
ロ.クレジットカードの利用明細書
クレジットカードの利用明細書とは、居住者(外国人技能実習生)がクレジットカード発行会社と契約を締結し、国外居住親族が使用するために発行されたクレジットカードで、その利用代金を居住者(外国人技能実習生)が支払うこととしているもの(いわゆる家族カード)に係る利用明細書をいいます。
この場合、その利用明細書は家族カードの名義人となっている国外居住親族の送金関係書類として取り扱います。
クレジットカードの利用明細書は、クレジットカードの利用日の年分の送金関係書類となります(クレジットカードの利用代金の支払(引落し)日の年分の送金関係書類とはなりません)。
なお、現金での手渡しの場合は、国外居住親族に係る扶養控除等を適用できません。
④ 国外居住親族が複数いる場合には、送金関係書類は扶養控除等を適用する国外居住親族の各人ごとに必要となります。
例えば、国外に居住する配偶者と子がいる場合で、配偶者に対してまとめて送金している場合には、その送金に係る送金関係書類は、配偶者(送金の相手方)のみに対する送金関係書類として取り扱い、子の送金関係書類として取り扱うことはできません。
⑤ 送金関係書類については、扶養控除等を適用する年に送金等を行ったすべての書類を提出又は提示する必要があります。
複数年分をまとめて送金している旨の申立てがあった場合でも、複数年にわたる送金関係書類として使用することはできません。
同一の国外居住親族への送金等が年3回以上となる場合には、一定の事項を記載した明細書の提出と各国外居住親族のその年最初と最後に送金等をした際の送金関係書類の提出又は提示をすることにより、それ以外の送金関係書類の提出又は提示を省略することができます。この場合、提出又は提示を省略した送金関係書類については、居住者(外国人技能実習生)本人が保管する必要があります。
⑥ 送金額の基準は特に定められていませんが、送金の目的(生活費又は教育費に充てるためのものかどうか)を確認する必要があります。
⑦ 16歳未満の非居住者である扶養親族(扶養控除の対象とならない扶養親族)であっても障害者控除を受ける場合には、親族関係書類及び送金関係書類の提出又は提示が必要です。