国民年金保険料を前納した場合の社会保険料控除の取扱い

 納税者が、自己または自己と生計を一にしている配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合は、その支払った金額の全額について社会保険料控除の適用を受けることができます。

 未納のものについては控除できませんが、これまで未納となっていた過去の社会保険料を一括して支払った場合は、支払った年分において、その支払った金額の全額(延滞金は除く)について社会保険料控除の適用を受けることができます

 では逆に、社会保険料を前納した場合、その前納した金額の全額について社会保険料控除の適用を受けることはできるのでしょうか?

 今回は、この点について確認します。

詳細については、「滞納していた国民健康保険料・国民年金保険料と延滞金は社会保険料控除の対象となるか?」をご参照ください。

1.前納分を期間按分して控除する

 社会保険料を前納した場合は、次の算式により計算した金額をその年において支払った金額として、社会保険料控除を適用します(所得税基本通達74・75-1)。

前納した社会保険料等の総額(前納により割引された場合には、その割引後の金額)×前納した社会保険料等に係るその年中に到来する納付期日の回数/前納した社会保険料等に係る納付期日の総回数

 上記算式より、前納した社会保険料の金額を期間按分して、各年分の保険料に相当する額を各年に控除することがわかります。

 なお、上記算式の「社会保険料等」には、小規模企業共済等掛金も含まれます。したがって、小規模企業共済等掛金を前納した場合も、上記算式により期間按分して小規模企業共済等掛金控除を適用します。

2.前納した社会保険料等の特例

 一方、所得税基本通達74・75-2には、前納した社会保険料等について次のように規定されています。

 前納した社会保険料等のうちその前納の期間が1年以内のもの及び法令に一定期間の社会保険料等を前納することができる旨の規定がある場合における当該規定 に基づき前納したものについては、その前納をした者がその前納した社会保険料等の全額をその支払った年の社会保険料等として確定申告書又は給与所得者の保険料控除申告書に記載した場合には、74・75-1の(2)にかかわらず、その全額をその年において支払った社会保険料等の金額として差し支えない。
 なお、この前納した社会保険料等の特例(以下この項において「特例」という。)を適用せずに確定申告書を提出した場合には、その後において更正の請求をするときにおいても、この特例を適用することはできないことに留意する。

 すなわち、前納分については、前納期間が1年以内のもの及び法令に一定期間の社会保険料を前納することができる旨の規定がある場合は、その前納した年に社会保険料控除を適用することができます。

 国民年金保険料は、国民年金法第93条により2年分を前納することができるとされています。
 したがって、国民年金保険料を2年分前納した場合は、その前納した金額の全額が、その支払った年分の社会保険料控除の対象となります

 なお、上記1のように、各年分の保険料に相当する額を各年に控除する方法を選択することもできます。

小規模企業共済等掛金については、1年分の掛金を前納した場合はその全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となりますが、13か月以上の掛金を前納した場合は、その年の掛金に充当される分だけが控除の対象になります。

個人事業者が個人に支払う家賃の支払調書は提出が必要か?

 法定調書は、「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定により、税務署への提出が義務づけられている資料です。

 2025(令和7)年12月31日時点において63種類の法定調書があり、そのうち所得税法に規定するものは43種類あります。

 この43種類のうち不動産関係の支払調書は3種類ありますが、なかでも「不動産の使用料等の支払調書」については、支払調書を提出しなければならない人の範囲が判然としないケースもあり、ネット上でも誤った情報が散見されます。

 以下では、個人事業者(借主)が個人(貸主)に対して家賃を支払った場合において、不動産関係の支払調書を提出する必要があるのか否かについて確認します。

1.不動産の使用料等の支払調書

 個人事業者が、事務所や店舗等の家賃を支払った場合に、まず提出が想定されるのが「不動産の使用料等の支払調書」です。

 国税庁の「令和7年分給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」(以下「手引き」といいます)には、「提出する必要がある方」と「支払調書の提出範囲」が次のように記載されています。

出所:国税庁ホームページ

 支払調書の提出範囲については、「同一の方に対する令和7年中の支払金額の合計が15万円を超えるもの」とされていますので、15万円という金額を基準に提出範囲を判定する点に疑義は生じないものと思われます。

 一方、支払調書を提出する必要のある方については、手引きに明確に記載されているにもかかわらず誤った情報が散見されます。

 例えば、「個人事業者が個人に対して支払った家賃が年間15万円を超える場合は、その個人事業者は支払調書を提出しなければならない」とか、「支払った相手先の個人が不動産業者である場合は支払調書を提出しなければならない」などです。

 ここでもう一度、手引きの文言を確認します(太字と下線は筆者による)。

 令和7年中に不動産、不動産の上に存する権利、船舶(総トン数20トン以上のものに限ります。)、航空機の借受けの対価や不動産の上に存する権利の設定の対価(以下これらの対価を「不動産の使用料等」といいます。)の支払をする法人(国、都道府県等の公法人や人格のない社団等を含みます。)不動産業者である個人の方(主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方は除きます。)です。
 また、法人に支払う不動産の使用料等については、賃借料を除く、権利金、更新料等のみを提出してください。

 上記手引きの文言から、支払調書を提出しなければならないのは、端的にいうと、法人と不動産業者である個人です。

 したがって、例えば、飲食店を営む個人事業者が、個人に対して年間15万円を超える家賃を支払ったとしても、その個人事業者は「不動産の使用料等の支払調書」を提出する必要はありません。

 また、不動産業者である個人事業者でも、建物の賃貸借の代理や仲介を主な業務としている場合は、個人に対して年間15万円を超える家賃を支払ったとしても、その個人事業者は「不動産の使用料等の支払調書」を提出する必要はありません。

 ここで気になるのは、個人事業者が、貸主である個人から事務所や店舗を借りる際に、不動産業者に仲介手数料を支払った場合です。
 この場合、仲介手数料を支払った個人事業者は、年間の家賃支払額が15万円を超えたとしても「不動産の使用料等の支払調書」を提出する必要はありませんが、「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」は提出しなければならないのでしょうか?

2.不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

 「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」について、「提出する必要がある方」と「支払調書の提出範囲」が手引きに記載されています。

出所:国税庁ホームページ

 上記1と同様に、15万円という金額を基準に支払調書の提出範囲を判定することが記載されています。
 また、提出する必要がある方についても、次のように記載されています(太字と下線は筆者による)。

 令和7年中に不動産、不動産の上に存する権利、船舶(総トン数20トン以上のものに限ります。)、航空機の売買又は貸付けのあっせん手数料(以下これらの手数料を「不動産売買等のあっせん手数料」といいます。)の支払をする法人(国、都道府県等の公法人や人格のない社団等を含みます。)不動産業者である個人(主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方を除きます。)の方です。

 上記文言から明らかなように、支払調書を提出しなければならないのは、端的にいうと、法人と不動産業者である個人です。

 したがって、例えば、飲食店を営む個人事業者が、店舗を借りる際に不動産業者に15万円を超える仲介手数料を支払ったとしても、その個人事業者は「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」を提出する必要はありません。

3.まとめ

 今回は、個人事業者が個人に対して家賃を支払った場合に、その個人事業者が支払調書を提出する必要があるのか否かについて確認しました。
 また、個人事業者が店舗等を借りる際に仲介手数料を支払った場合に、その個人事業者が支払調書を提出する必要があるのか否かについても確認しました。

 いずれの場合も、家賃や仲介手数料の金額の多寡にかかわらず、個人事業者は支払調書を提出する必要はありません。
 
 不動産業者である個人事業者で不動産の売買等を主な業務としている場合は、15万円という金額を基準として支払調書の提出の要否を判定します。

※ 関連記事:「『不動産の使用料等の支払調書』の注意事項」、「『不動産の使用料等の支払調書』に定額の水道代・電気代は含まれるか?」、「返還されない敷金・保証金と『不動産の使用料等の支払調書』」、「支払調書の提出の要否で迷いやすいケース

個人の申告漏れ所得金額が高額な上位10業種(令和6事務年度)

 国税庁は2025(令和7)年12月に、2024(令和6)事務年度(令和6年7月~令和7年6月)における「所得税及び消費税調査等の状況」を報道発表資料として公表しました。

 以下では、2024(令和6)事務年度について、所得税の調査等の状況と事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種についてみていきます。

1.所得税の調査等の状況

 国税庁の公表資料によると、調査の選定にAIを活⽤するなどして効率的に調査を⾏った結果、追徴税額の総額は、前事務年度に引き続き過去最高を記録しています。

 「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた「調査等」の合計件数は、73万6千件(対前年比121.7%)で、そのうち申告漏れ等の⾮違があった件数は36万9千件(同118.5%)となっています。

 「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた「調査等」による申告漏れ所得⾦額は、9,317億円(同93.5%)となっています。

 「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた「調査等」による追徴税額は、1,431億円(同102.4%)と、過去最⾼となっています。

  実地調査 簡易な接触 調査等合計
特別・一般 着眼
調査等件数(件) 36,404(98.1%) 10,492(100.5%) 46,896(98.7%) 689,440(123.7%) 736,336(121.7%)
申告漏れ等の非違件数(件) 32,001(97.9%) 7,177(96.4%) 39,178(97.6%) 329,549(121.5%) 368,727(118.5%)
申告漏れ所得金額(億円) 5,411(106.5%) 404(92.9%) 5,815(105.4%) 3,502(78.7%) 9,317(93.5%)
追徴税額(億円) 1,090(107.0%) 42(89.4%) 1,132(106.2%) 299(90.1%) 1,431(102.4%)
1件当たり追徴税額(万円) 299(108.7%) 40(88.9%) 241(107.6%) 4(66.7%) 19(82.6%)

(備考)
(1) 上表のカッコ内の数字は、対前年比の割合を示しています。

(2) 実地調査(特別調査・一般調査)とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものです。

(3) 実地調査(着眼調査)とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。

(4) 簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

2.直近5年間の申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

 国税庁は、公表している「所得税及び消費税調査等の状況」の中で、「参考計表」として「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」を挙げています。
 
 2024(令和6)事務年度(令和6年7月~令和7年6月)から2020(令和2)事務年度(令和2年7月~令和3年6月)までの直近5事務年度における上位10業種は、以下のとおりです。

順位 R6 R5 R4 R3 R2
1 キャバクラ 経営コンサルタント 経営コンサルタント 経営コンサルタント プログラマー
2 眼科医 ホステス、ホスト くず金卸売業 システムエンジニア 畜産農業(肉用牛)
3 ホステス、ホスト コンテンツ配信 ブリーダー ブリーダー 内科医
4 経営コンサルタント くず金卸売業 焼肉 商工業デザイナー キャバクラ
5 太陽光発電 ブリーダー タイル工事 不動産代理仲介 太陽光発電
6 バー 焼き鳥 冷暖房設備工事 外構工事 建築士
7 コンテンツ配信 太陽光発電 鉄骨、鉄筋工事 型枠工事 経営コンサルタント
8 ブリーダー 内科医 太陽光発電 機械部品受託加工 小売業・犬
9 スナック スナック バー 一般貨物自動車運送 不動産代理仲介
10 システムエンジニア 西洋料理 電気通信工事 司法書士、行政書士 商工業デザイナー

※ 上記調査事績は、特別調査及び一般調査に基づく実施結果です。

令和7年12月に給与・賞与の支給がない従業員の年末調整は旧法令で行います

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、以下の所得税の改正が行われました。

(1) 基礎控除の引き上げ※1
(2) 給与所得控除の引き上げ※1
(3) 特定親族特別控除の創設※2
(4) 扶養親族等の所得要件の引き上げ※3

 これらの改正は、原則として2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税から適用されます。

 したがって、上記(1)~(4)の改正は、2025(令和7)年11月までに支給する給与の源泉徴収事務には影響がなく、同年12月に行う年末調整で適用されることになります。

 具体的には、(1)については、改正後の基礎控除額に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

 (2)については、改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

 (3)については、年末調整で特定親族特別控除の適用を受けようとする人から、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出してもらう必要があります。

 (4)については、12月1日以後に支給する給与から適用し、この改正により扶養親族等の要件を満たすこととなった親族等に係る扶養控除等の適用を受ける人から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう必要があります。

 このように、12月に行う年末調整においては、令和7年度税制改正による改正後の「基礎控除」、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」、「特定親族特別控除」及び「扶養親族等の所得要件」(以下「新法令」といいます)が適用されることになります。

 ここで注意を要するのは、年末調整は、給与の支払者がその年最後に給与の支払をする際に行うこととされている点です。

 そのため、令和7年11月30日までに死亡退職した人、退職はしていませんが12月に給与・賞与の支給がなかったアルバイト・パートの人や休職中の正規社員、海外の支店等への転勤などにより非居住者となり居住者としての給与・賞与の支給が12月になかった人などの年末調整においては、新法令は適用されません。

 この場合は、改正前の旧法令により年末調整を行うこととなりますのでご注意ください(例えば、年末調整の対象となる給与収入2,000万円以下の人の基礎控除額は48万円となります)。

 なお、新法令(改正後の控除等)の適用を受けることができなかった人が新法令の適用を受けるためには、確定申告をする必要があります。

※1 基礎控除・給与所得控除の改正については、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

※2 特定親族特別控除の創設については、「特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

※3 扶養親族等の所得要件の改正については、「扶養親族等の所得要件・住宅借入金等特別控除・生命保険料控除の見直し(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

未払の給与は年末調整の対象となるか?

 年末調整を行うにあたっては、いつからいつまでの給与が対象になるのかを確認しなければなりません。

 例えば、給与計算期間が前月の21日から当月の20日までで支給日が当月の25日の場合は、1月25日支給分から12月25日支給分までの給与が年末調整の対象となります。

 また、給与計算期間が当月の1日から当月の31日(月末)までで支給日が翌月の10日の場合は、1月10日支給分から12月10日支給分までの給与が年末調整の対象となります。
 このとき、給与計算期間が12月1日から12月31日までで支給日が翌年の1月10日である給与は、本年の年末調整の対象とはなりません※1

 つまり、年末調整の対象となる給与は、給与計算期間ではなく支給日で判断するということです※2

 では、支給日が到来しているにもかかわらず、何らかの理由(例えば資金繰りなどの都合)で未払となっている給与がある場合、その未払となっている給与は年末調整の対象となるのでしょうか?

 年末調整は、その年最後に給与を支払うときまでに「給与所得者の扶養控除等申告書※3」を提出している一定の人について行います。

 年末調整の対象となる給与は、その年の1月1日から12月31日まで(年の中途で死亡により退職した人等については、その退職等の時まで)の間に支払うことが確定した給与です。

 そのため、実際に支払ったかどうかに関係なく未払の給与もその年の年末調整の対象となります。
 したがって、支給日が到来しているにもかかわらず未払となっている給与がある場合は、その未払となっている給与も含めて年末調整を行います。

 逆に、前年に未払になっている給与を今年になって支払っても、その支払った年の年末調整の対象となる給与には含まれませんのでご注意ください。

※1 翌月払いの給与の年末調整については、「翌月に支給する給与は年末調整の対象となるか?」をご参照ください。

※2 年末調整は、本年中に支払の確定した給与、すなわち給与の支払を受ける人にとっては収入の確定した給与の総額について行います。
 この場合の収入の確定する日(収入すべき時期)は、契約または慣習により支給日が定められている給与についてはその支給日、支給日が定められていない給与についてはその支給を受けた日をいいます(所得税基本通達36-9(1))。

※3 扶養控除等申告書の書き方と記載例については、「令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方と記載例」をご参照ください。

 

マイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました

 電車やバスなどの交通機関を利用している役員や従業員に対して支給する通勤手当は、月額15万円以下であれば所得税および復興特別所得税(以下「所得税等」といいます)が非課税となっています

 一方、電車やバスなどの交通機関を利用せずに、マイカー等の交通用具で通勤する場合の通勤手当にも、所得税等の非課税限度額が設けられています。

 このマイカー等で通勤する場合の非課税限度額が、改正により引き上げられました。

 以下では、改正後の非課税限度額について確認します。

通勤手当を区分せず給与に含めて支給する場合については、「交通費込み給与の交通費部分は確定申告でも非課税にできない」をご参照ください。

1.電車やバスなどの交通機関で通勤している場合(改正なし)

 電車やバスなどの交通機関を利用して通勤している場合の非課税限度額は、月額15万円以下とされています。
 これは、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。

 新幹線や特急列車を利用した場合の運賃等の額も、その通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路および方法」に該当する場合は非課税の通勤手当に含まれますが、グリーン料金は最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは認められないため、非課税の通勤手当に含まれません。

 したがって、通勤手当が月額15万円以下だったとしても、そこにグリーン料金が含まれている場合は、グリーン料金部分については給与として課税されます。

2.マイカーや自転車などで通勤している場合(改正あり)

 2025(令和7)年11月19日に所得税法施行令の一部を改正する政令が公布され、マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤している人に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられました。
 
 この改正は、2025(令和7)年11月20日に施行され、2025(令和7)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されます

 マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤している場合の1か月当たりの非課税限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)に応じて定められています。
 改正後の1か月当たりの非課税限度額は、次のとおりです。

片道の通勤距離 1か月当たりの非課税限度額
改正後 改正前
2キロメートル未満 全額課税 同左
2キロメートル以上10キロメートル未満 4,200円 同左
10キロメートル以上15キロメートル未満 7,300円 7,100円
15キロメートル以上25キロメートル未満 13,500円 12,900円
25キロメートル以上35キロメートル未満 19,700円 18,700円
35キロメートル以上45キロメートル未満 25,900円 24,400円
45キロメートル以上55キロメートル未満 32,300円 28,000円
55キロメートル以上 38,700円  31,600円

 上表の1か月当たりの非課税限度額を超えて通勤手当を支給する場合は、超える部分の金額が給与として課税されます。

改正後の非課税限度額は、2025(令和7)年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されますが、次に掲げる通勤手当については、改正後の非課税限度額は適用されません。

(1) 令和7年3月31日以前に支払われた通勤手当
(2) 令和7年3月31日以前に支払われるべき通勤手当で同年4月1日以後に支払われるもの
(3) (1)又は(2)の通勤手当の差額として追加支給されるもの

 なお、改正前に既に支払われた通勤手当については、改正前の非課税限度額を適用したところで所得税等の源泉徴収が行われていますが、改正後の非課税限度額を適用した場合に過納となる税額がある場合には、令和7年分の年末調整の際に精算することになります。
 ただし、次に該当する人については、令和7年分の年末調整での精算は不要です。

イ.既に支払われた通勤手当が改正前の非課税限度額以下である人
ロ.年の中途に退職した人など令和7年分の年末調整の際に精算する機会のない人(確定申告により精算します)

3.交通機関とマイカー等を併用して通勤している場合(改正なし)

 電車やバスなどの交通機関とマイカーや自転車などの交通用具を併用して通勤している場合は、両者の合計額が月額15万円までなら所得税等が非課税となります。

 具体的には、次の(1)と(2)を合計した金額が月額15万円以内であれば、非課税の通勤手当となります。

(1) 電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額
(2) マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する片道の距離で定められている1か月当たりの非課税限度額(上記2参照)

 例えば、自宅から自宅の最寄駅まではマイカーを使用し(片道距離10キロメートル)、自宅の最寄駅から勤務先の最寄駅までは電車を利用する(1か月定期券15,000円)場合は、7,300円+15,000円=22,300円が非課税の通勤手当となります。

滞納していた国民健康保険料・国民年金保険料と延滞金は社会保険料控除の対象となるか?

 個人事業者が、自分や家族(同一生計)の分の国民健康保険料(税)や国民年金保険料を支払った場合は、その支払った金額について、確定申告の際に社会保険料控除を受けることができます。

 給与所得者が、給与から差し引かれた健康保険料や厚生年金保険料以外に、自分や家族(同一生計)の分の国民健康保険料(税)や国民年金保険料を支払った場合も、その支払った金額について、年末調整や確定申告の際に社会保険料控除を受けることができます。

 では、滞納していた前年分以前の国民健康保険料(税)や国民年金保険料及びその延滞金を支払った場合は、その支払った金額について社会保険料控除を受けることができるのでしょうか?

 今回は、この点について確認します。

1.滞納分の国民健康保険料・国民年金保険料を支払った場合

 社会保険料控除を受けることができる金額は、その年に実際に支払った金額または給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。

 したがって、前年以前の滞納分(過去の未納分)の保険料を支払った場合は、その支払った年においてその全額について社会保険料控除を受けることができます。

 国民健康保険料(税)について年末調整や確定申告で社会保険料控除を受ける場合は、原則として領収証書や納付証明書類を添付する必要はありません(これは滞納分であったとしても同じです)。

 一方、国民年金保険料について年末調整や確定申告で社会保険料控除を受ける場合は、「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」の添付が必要です(家族の国民年金保険料も支払っている場合は、家族の控除証明書も必要です)。

 滞納分の保険料を追加で支払うなどした場合に、実際に支払った金額が控除証明書の証明欄にある「①納付済額」や「②見込額」以上になることがあります。

 この場合は、12月31日までに支払った保険料の全額が支払った年の社会保険料控除の対象となりますので、控除証明書の①納付済額(②見込額がある場合は、③合計額)に追加で支払った保険料の金額を合算し、控除証明書に加えて、追加で支払った保険料の領収証書を添付して申告を行ってください。

※ 「②見込額」とは、11月発送の控除証明書を作成した時点の納付方法で、引き続き、12月31日まで納付した場合の納付見込額が表示されています。2月発送の対象者は、納付済額が確定しているため、見込額欄はありません。

2.延滞金を支払った場合

 滞納分の国民健康保険料(税)・国民年金保険料を支払った場合は、その全額がその支払った年において社会保険料控除の対象となります。

 しかし、滞納分の保険料に係る延滞金は社会保険料控除の対象となりませんので、延滞金については社会保険料控除を受けることはできません。

※ 法人の場合の社会保険料の延滞金については、「社会保険料の延滞金は損金算入できます」をご参照ください。

個人事業者が押さえておきたい令和7年度税制改正の内容

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、扶養親族等の所得要件の見直し、特定親族特別控除の新設等が行われました。

 これらの改正は、2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税から適用されます。

 以下では、これらの改正のうち、個人事業者が令和7年分の所得税の確定申告をするにあたって、押さえておきたい主な改正項目の内容を確認します。

1.収入(年収)と所得の違い

 改正の内容を確認する前に、混同しやすい「収入(年収)」と「所得」の違いを確認します。

(1) 給与所得者(会社員、パート、アルバイトなど)の場合

 収入-給与所得控除=所得 → 所得-所得控除=課税所得

 給与所得者の場合、「収入」は会社から支払われる1年間の給与等の総支給額(いわゆる「額面」)をいい、源泉徴収票の「支払金額」欄に記載されています。
 この「収入」から給与所得控除を引いたものが「所得」であり、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄に記載されています。

(2) 個人事業者(青色申告の自営業など)の場合

 収入-必要経費-青色申告特別控除=所得 → 所得-所得控除=課税所得

 個人事業者の場合、「収入」は事業活動で得た1年間の売上高をいい、青色申告決算書・損益計算書の「売上(収入)金額(雑収入を含む)①」欄に記載されています。
 この「収入」から必要経費と青色申告特別控除を引いたものが「所得」であり、損益計算書の「所得金額㊺」欄に記載されています。

 (1)(2)ともに、「収入」から必要経費(給与所得控除は給与所得者の必要経費)を引いたものが「所得」となります。

 なお、(1)(2)ともに「所得」から「所得控除」(社会 保険料控除、生命保険料控除、配偶者控除、基礎控除、医療費控除など)を引いたものが「課税所得」であり、この「課税所得」に税率を掛けて所得税を算出します。

 「所得」とは、「収入」から必要経費等を引いた後の金額であり、各所得を合計した「合計所得金額」は扶養親族等を判定する際に用いられます(確定申告書第一表・所得金額等の「合計⑫」欄の金額)

 
 「課税所得」とは、「所得」から社会保険料控除などの所得控除を引いた後の金額であり、所得税を算出する際に用いられます(確定申告書第一表・税金の計算の「課税される所得金額㉛」欄の金額)。


※ 合計所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。

2.押さえておきたい令和7年度税制改正:基礎控除

 令和7年度税制改正で、基礎控除が下表のように変わりました。

 なお、基礎控除の改正は所得税のみの改正であり、住民税の基礎控除額は従前通りの43万円です。

本人の合計所得金額 基礎控除額
改正前 令和7・8年分 令和9年分以後
132万円以下
(200万3,999円以下)
48万円 95万円 95万円
132万円超~336万円以下
(200万3,999円超~475万1,999円以下)
88万円 58万円
336万円超~489万円以下
(475万1,999円超~665万5,556万円以下)
68万円
489万円超~655万円以下
(665万5,556円超~850万円以下)
63万円
655万円超~2,350万円以下
(850万円超~2,545万円以下)
58万円
2,350万円超~2,400万円以下
(2,545万円超~2,595万円以下)
48万円
2,400万円超~2,450万円以下
(2,595万円超~2,645万円以下)
32万円
2,450万円超~2,500万円以下
(2,645万円超~2,695万円以下)
16万円
2,500万円超
(2,695万円超)
0円

※カッコ内の金額は収入が給与だけの場合の収入金額

 確定申告をする個人事業者(以下「本人」といいます)の合計所得金額(確定申告書第一表・所得金額等の「合計⑫」欄の金額)が、上表の合計所得金額のどの区分に当てはまるかに応じて、基礎控除額を算定します。

 例えば、本人の合計所得金額が400万円の場合、令和7年・8年分の基礎控除は68万円、令和9年分以後の基礎控除は58万円となります。

 なお、給与所得控除についても改正されましたが、給与所得のある個人事業者が確定申告をする際には、給与の支払者(会社など)から発行された源泉徴収票の内容を転記するだけですので、給与所得控除の改正内容については省略します。

3.押さえておきたい令和7年度税制改正:扶養親族等の所得要件

 令和7年度税制改正で、扶養親族等の所得の範囲(所得要件)が以下のように変わりました。ただし、所得要件以外の要件(同一生計である、事業専従者ではないなど)は変わっていません。

(1) 扶養控除・配偶者控除・ひとり親控除

 扶養控除・配偶者控除・ひとり親控除の対象となる扶養親族等の所得要件が、改正前の48万円以下(給与収入だけの場合は年収103万円以下)から58万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円以下)に変わりました。

 この所得要件を満たす扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子がいる場合は、本人の所得控除額は次のようになります。

対象者の区分 所得控除の種類 所得控除額
一般の扶養親族(16歳以上) 扶養控除 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(70歳以上の同居老親等) 58万円
老人扶養親族(70歳以上の同居老親等以外) 48万円
同一生計配偶者(70歳未満) 配偶者控除 38万円
同一生計配偶者(70歳以上) 48万円
ひとり親の生計を一にする子 ひとり親控除 35万円

※ 扶養親族(一般・特定・老人)は、本人と同一生計であることが必要です。同一生計については、「所得控除における『生計を一にする』の判定基準」をご参照ください。※ 配偶者控除は、本人の合計所得金額が900万円以下の場合の控除額です。

(2) 配偶者特別控除

 配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得要件が、改正前の48万円超133万円以下(給与収入だけの場合は年収103万円超201万5,999円以下)から58万円超133万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円超201万5,999円以下)に変わりました。

 この所得要件を満たす同一生計配偶者がいる場合は、本人の配偶者特別控除額は次のようになります。

配偶者の合計所得金額 本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超950万円以下 950万円超1,000万円以下
58万円超95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超133万円以下 3万円 2万円 1万円
133万円超 0円 0円 0円

 配偶者の合計所得金額が58万円以下の場合は配偶者控除を適用し、58万円超133万円以下の場合は配偶者特別控除を適用します。

4.押さえておきたい令和7年度税制改正:特定親族特別控除の新設

 令和7年度税制改正で、特定親族特別控除が新設されました。

 特定親族とは、本人と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が58万円超123万円以下(給与収入だけの場合は年収123万円超188万円以下)の人をいいます。

 この特定親族がいる場合は、本人の特定親族特別控除額は次のようになります。

特定親族の合計所得金額 特定親族特別控除額
58万円超 85万円以下 (123万円超 150万円以下) 63万円
85万円超 90万円以下(150万円超 155万円以下) 61万円
90万円超 95万円以下(155万円超 160万円以下) 51万円
95万円超 100万円以下(160万円超 165万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下(165万円超 170万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下(170万円超 175万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下(175万円超 180万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下(180万円超 185万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下(185万円超 188万円以下) 3万円

※カッコ内の金額は収入が給与だけの場合の収入金額

 19歳以上23歳未満の扶養親族の合計所得金額が58万円以下の場合は扶養控除を適用し、58万円超123万円以下の場合は特定親族特別控除を適用します。

5.年収の壁(参考)

 令和7年度税制改正により、従前からあった給与所得者の年収の壁も変わっています。
 新たな年収の壁については、「令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

青色申告決算書の作成上の注意点とチェックポイント

 青色申告をする個人事業者が、所得税の確定申告をするにあたって、まず作成しなければならないものが青色申告決算書です。

 正しい経営判断を行うためにも、正しい税金の計算・申告を行うためにも、青色申告決算書は正確に作成しなければなりません。

 以下では、青色申告決算書の損益計算書の項目を中心に、作成上の注意点を○×形式で解説し、チェックポイントについても確認します。

1.売上(収入)金額

(1)「 12 月に売った商品(あるいは提供したサービス)100,000円の入金が来年1 月になるため、12月の「 売上金額①」に含めていない」 → ×

⇒12月に売った商品の代金が来年の1月に振り込まれるとしても、12月の売上として計上しなければなりません。仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売掛金 100,000 売上 100,000

(2) 「来年1 月に発送する商品の手付金10,000円を12月に現金で受け取ったため、12月の売上に含めた」 → ×

⇒商品の引渡しをしていないため、まだ売上を計上しません。12月に受け取った手付金は前受金として、次のように仕訳します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 10,000 前受金 10,000

(3) 「定額減税の不足額給付金40,000円が10月に市役所から振り込まれたため、雑収入に含めた」 → ×

不足額給付金に所得税は課税されませんので(非課税)、雑収入として計上する必要はありません。事業専用口座に振り込まれた場合は、次のように仕訳します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 40,000 事業主借 40,000

(4) 「小規模事業者持続化補助金750,000円が振り込まれたので、雑収入に含めた」 → ○

小規模事業者持続化補助金は所得税の課税対象となっていますので、雑収入として計上します。

(5) 「事業専用の普通預金口座に利息1,000円がついていたので、受取利息として雑収入に含めた」 → ×

預貯金の利子は「利子所得」に該当し、口座に入金される際に一律15.315%の所得税・復興特別所得税と5%の道府県民税利子割が源泉徴収され、これにより納税が完結する源泉分離課税の対象となりますので、確定申告をすることはできません。
 事業専用口座の場合は、次のように仕訳します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 1,000 事業主借 1,254
事業主貸 254    

(6) 「事業で使用していた営業車を売ったら売却益が200,000 円出たので、固定資産売却益として雑収入に含めた」 → ×

営業車の売却益は「譲渡所得」に該当し「譲渡所得」として申告しますので、事業所得の計算上は売却益を計上しません。
 簿価300,000円の営業車を500,000円で売って売却益が200,000円出た場合の仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 500,000 車両運搬具 300,000
    事業主借 200,000

チェックポイント:決算書1ページの「売上金額①」は、決算書2ページの「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の「 売上(収入)金額」の計の金額、決算書3ページの「売上(収入)金額の明細」の「売上(収入)金額」の計の金額確定申告書第一表アの金額と一致していますか?

2.売上原価

(1) 「12月の仕入代金80,000円の支払いが来年1月のため、12月の仕入金額に含めていない」 → ×

⇒12月に仕入れた商品代金の支払いが来年の1月であったとして、12月の仕入として計上しなければなりません。仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入 80,000 買掛金 80,000

チェックポイント:決算書1ページの「仕入金額③」は、決算書2ページの「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の「仕入金額」の計の金額、決算書3ページの「仕入金額の明細」の「仕入金額」の計の金額と一致していますか?

3,経費

(1) 「所得税を支払ったので、租税公課として計上した」 → ×
(2) 「住民税を支払ったので、租税公課として計上した」 → ×
(3) 「事業税を支払ったので、租税公課として計上した」 → ○

所得税と住民税は経費になりませんが、事業税は経費になります。所得税と住民税を支払ったときは原則として仕訳不要ですが、事業用の現金や事業専用口座で支払った場合の仕訳は次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
事業主貸 ××× 現金又は普通預金 ×××

(4) 「国民健康保険料・国民年金保険料を支払ったので、租税公課として計上した」 → ×

国民健康保険料と国民年金保険料は経費になりませんが、所得控除(社会保険料控除)として確定申告書第一表で合計所得から控除します。
 国民健康保険料と国民年金保険料を支払ったときは、原則として仕訳不要ですが、事業用の現金や事業専用口座で支払ったときの仕訳は、次のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
事業主貸 ××× 現金又は普通預金 ×××

(5) 「店舗兼住宅の固定資産税200,000円を現金で支払ったので、全額を租税公課として計上した」 → ×

⇒店舗兼住宅の固定資産税のうち、事業割合に応じた金額を計上しなければなりません。
 例えば、面積比で家事按分した事業割合が50%の場合は、次のように仕訳します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
租税公課 100,000 現金 100,000

(6) 「ライオンズクラブの会費を支払ったので、接待交際費として計上した」 → ×

個人事業者が支払ったライオンズクラブやロータリークラブの会費は、経費になりません(法人の場合は、交際費として経費になります)。※ 関連記事「ロータリークラブ、ライオンズクラブの会費は法人と個人で経理処理が異なる!

(7) 「12月10日に車両(新車)を2,400,000円で購入して営業車として使用しているので、全額を車両費として計上した」 → ×

⇒車両は資産として計上し、耐用年数にわたって減価償却することによって費用化していきます。
 この例では、減価償却費の計算は次のようになります。

 減価償却費=2,400,000円×0.167×1か月/12か月=33,400円

 0.167は、耐用年数6年の場合の定額法の償却率です。また、年内の使用期間は12/10から12/31までの22日間ですが、日割計算はせずに月割計算をしますので、1か月/12か月を掛けます。仕訳は次のようになります。※ 関連記事「自家用車を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費の計算

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 33,400 車両運搬具 33,400

チェックポイント:決算書1ページの「減価償却費⑱」は、決算書3ページの「減価償却費の計算」の「(リ)本年分の必要経費算入額」の計の金額と一致していますか?

(8) 「同一生計の夫が所有者である自宅(一戸建て)の一室を事業用に使用しているため、自宅の固定資産税のうち事業割合に応じた金額を租税公課として計上した」 → ○

⇒上記(5)と同じパターンです。

(9) 「同一生計の夫が所有者である自宅(一戸建て)の一室を事業用に使用しているため、夫に事業割合に応じた家賃を支払って地代家賃として計上した」 → ×

⇒同一生計の夫が所有している自宅(一戸建て)の一室を事業用に使用していることを理由に、夫に家賃を支払ったとしても、経費にはなりません。夫の方でも不動産収入になりません。家計の中で資金が移動したに過ぎません。※ 関連記事「個人事業主が同一生計親族に支払う家賃は必要経費にできない

チェックポイント:決算書1ページの「地代家賃㉓」は、決算書2 ページの「地代家賃の内訳」の「左の賃借料のうち必要経費算入額」の計の金額と一致していますか?

(10) 「『青色申告特別控除前の所得金額㊸』が50,000 円で青色申告特別控除額が650,000円(確定申告をe-Tax で行うため)だったので、所得金額㊺を△600,000 円とした」 → ×

⇒青色申告特別控除額は「青色申告特別控除前の所得金額㊸」を上限として控除しますので、青色申告特別控除を引くことにより、所得がマイナス(損失)となることはありません。この例では、所得金額㊺は0円となります。

チェックポイント:決算書1ページの「所得金額㊺」は、確定申告書第一表①の金額と一致していますか?

(12) その他のチェックポイント

チェックポイント:決算書1ページの「給料賃金⑳」は、決算書2ページの「 給料賃金の内訳」の「 支給額合計」の計の金額と一致していますか?

チェックポイント:決算書1ページの「 専従者給与㊳」は、決算書2ページの「 専従者給与の内訳」の「 支給額合計」の計の金額と一致していますか?

 以上、青色申告決算書の作成上の注意点とチェックポイントを確認しました。

 この青色申告決算書を基に、確定申告書第一表と第二表を作成して確定申告を行いますが、個人事業者が令和7年分の確定申告をするにあたっては、令和7年度税制改正の内容を押さえておく必要があります。

 次回は、個人事業者が押さえておきたい令和7年度税制改正の内容について確認します。

青色申告決算書を経営判断に活用する!

 青色申告をする個人事業者が、所得税の確定申告をするにあたって、まず作成しなければならないものが青色申告決算書です。

 青色申告決算書は、税金の計算のために必要なものですが、ご自身の経営判断に活かすこともできます。

 今回は、青色申告決算書を経営判断に活用するための基礎知識として、青色申告決算書に段階的に出てくる4つの利益の内容と、そこから得られる経営指標となり得る情報について確認します。

 青色申告決算書の構成は次のようになっており、計算過程で4つの利益が算出されます。

(1) 売上金額-売上原価=差引金額⑦(≒売上総利益)
(2) 差引金額⑦(≒売上総利益)-経費=差引金額㉝(≒営業利益)
(3) 差引金額㉝(≒営業利益)+繰戻額等-繰入額等=青色申告特別控除前の所得金額㊸( ≒経常利益)
(4) 青色申告特別控除前の所得金額㊸(≒経常利益)-青色申告特別控除額=所得金額㊺

 (1)の計算過程で算出される利益を「 売上総利益」といい、「粗利(あらり)」ともいいます。
 八百屋さんを例にすると、100円で大根を仕入れて150円で売ったら売上総利益は50円となります。
 売上総利益は、このような本業の商品やサービスそのものが持つ利益の大きさを表します(本業以外の収入である雑収入(空箱や作業くずの売却代金など)が含まれるので、厳密な意味の売上総利益と少し異なります)。

 この売上総利益が十分に確保できていない場合は、商品の仕入原価や製造コストが高すぎる、あるいは販売価格が低すぎるなど、事業の根幹にかかわる問題があるかもしれません。
 売上総利益を見ることで、現在取り扱っている商品を入れ替えたり、サービスの内容を見直したりするなどして、儲かる経営体質にするためのヒントが得られます。

 (2)の計算過程で算出される利益を「 営業利益」といいます。
 八百屋さんの売上総利益が50円でも、人件費や家賃などの経費が30円かかったら営業利益は20円となります。
 営業利益は、このような本業の収益力(本業でどれだけ稼ぐ力があるか)を表します( 経費の中に本業以外の活動から生ずる利子割引料(借入金利子など)が含まれるので、厳密な意味の営業利益と少し異なります)。

 売上総利益から引く経費( 販売費および一般管理費)は、本業の商品やサービスを売るための営業活動のための費用(販売員の給料・広告宣伝費など)や、事業を管理 ・運営するためにかかる間接的な費用 (事務員の給料・事務所の家賃 ・水道光熱費など)です。
 売上総利益がプラスとなっているのに営業利益がマイナスとなっている場合は、営業活動や事業の管理・運営方法に問題があるかもしれません。
 営業利益を見ることで、どの商品やサービスに、より多くの経営資源(ヒト(人材)・モノ(物資)・カネ(資金) ・時間・情報など)を投入していくべきかを判断するためのヒントが得られます。

 (3)の計算過程で算出される利益(青色申告特別控除前の所得金額)は、商品やサービスの販売といった営業活動等とは直接関係がない営業外収益( 本業以外の収益)と営業外費用( 本業以外の費用)を加味した利益で「 経常利益」といいます。
 八百屋さんの営業利益が20円で、空箱の売却代金が3円、銀行からの借入金利子の支払いが5円の場合、経常利益は18円となります。
 営業利益が本業の収益力(稼ぐ力)を表すのに対し、経常利益は本業以外の活動も含めた総合的な収益力を表します。

 (4)の計算過程で算出される利益(所得金額㊺)は、青色申告特別控除額(最大65万円)を引いた後の利益であり、法人にはない個人事業者特有の利益です。
 この利益(所得)を、確定申告書第一表・所得金額等の「事業・営業等①」欄に転記し、税金の計算を行います。

 以上のように、青色申告決算書からは、経営判断をする上で貴重な情報を得ることができます。
 正しい経営判断を行うためにも、正しい税金の計算・申告を行うためにも、青色申告決算書は正確に作成しなければなりません。

 次回は、青色申告決算書の作成上の注意点とチェックポイントについて確認します。