令和4年分以後の「業務に係る雑所得」の書類保存・現金主義の特例・収支内訳書添付について

1.雑所得の3つの区分

 雑所得とは、他の9種類の所得(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得)のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得が該当します。
 これらの雑所得は、次の3つに区分されます。

(1) 公的年金等の雑所得
 例えば、国民年金、厚生年金、恩給、企業年金などです。

(2) 業務に係る雑所得
 業務に係る雑所得とは、副業に係る所得のうち営利を目的とした継続的なものをいいます。例えば、サラリーマンが行うアフィリエイトやUBER EATS ドライバーの報酬などです。

(3) その他の雑所得
 上記(1)(2)以外の雑所得です。例えば、非営業用貸金の利子、生命保険契約に基づく年金、還付加算金などです。

 確定申告書第一表では、次のように区分されています。

2.現金預金取引等書類の保存

 2022(令和4)年分以後の所得税において、上記1.(2)の業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人は、「現金預金取引等関係書類」」を5年間保存する必要があります。

 例えば、令和4年分の業務に係る雑所得を確定申告する場合に、2020(令和2)年分の業務に係る雑所得の収入金額(収入金額から必要経費を差引いた所得ではありません)が300万円を超えていた人は、令和4年分の現金預金取引等関係書類を保存しなければなりません。
 たとえ令和4年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円以下であったとしても、令和2年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超えていたら、書類の保存義務が生じます。

 なお、現金預金取引等書類とは、居住者等が上記1.(2)の業務に関して作成し、または受領した請求書、領収書その他これらに類する書類(自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものは、その写しを含みます)のうち、現金の収受もしくは払出しまたは預貯金の預入もしくは引出しに際して作成されたものをいいます。

3.現金主義の特例

 また、その年の前々年分の収入金額が300万円以下である人は、業務に係る雑所得の金額の計算上総収入金額および必要経費に算入すべき金額は、その年において収入した金額および支出した費用の額とすることができます(収入や費用の計上時期を現金の出し入れを基準とする、いわゆる現金主義の特例)。
 ただし、この特例を受けるには、確定申告書にこの特例を受ける旨を記載しなければなりません。

※ 青色申告の特典である現金主義の特例とは異なる制度です。青色申告における現金主義の特例は、その年の前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額(事業専従者給与(控除)の額を必要経費に算入しないで計算した金額)の合計額が300万円以下である人(青色申告者)が、税務署に届出をした場合に受けることができます。

4.収支内訳書の添付

 収支内訳書を確定申告書に添付して提出する義務のある人は、次のいずれにも該当する人です。

(1) 事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行っている人
(2) 青色申告をしていない人
(3) 確定申告書を提出する人

 したがって、業務に係る雑所得のある人(アフィリエイトを行うサラリーマンなど)は上記の要件を満たさないため、これまでは収支内訳書の添付は不要でした。
 
 しかし、令和4年分以後の所得税においては、業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える人は、確定申告書を提出する際に総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)を添付する必要があります。