損失申告をした翌年の確定申告書の記載例(繰越損失を全額控除した場合)

 青色申告を行う個人事業者は、事業で赤字が出た場合は、その赤字を他の所得と損益通算(控除)することができ、損益通算しても控除しきれない赤字が残るときは翌年に繰り越すことができます。

 この控除しきれない赤字(損失)を繰り越すために行う確定申告のことを損失申告といいます

 以下では、損失申告をした翌年に、繰越損失を全額控除した場合の確定申告書の記載例を確認します。

※ 損失申告については、「損失申告と確定申告書第四表の記載例」をご参照ください。

1.前年の確定申告書第四表

 前年の途中に事業を開業して、会社員時代の給与所得850,000円と開業後の事業所得の赤字が1,000,000円あるケースを想定します。

 この場合、前年において給与所得850,000円と事業所得の赤字1,000,000円を損益通算しても、控除しきれない赤字が150,000円残ります。

 この赤字を翌年に繰り越すために、確定申告書第一表・第二表と一緒に、次の第四表(一)と(二)を税務署に提出します。

2.損失申告の翌年の確定申告書第一表

 今年は開業2年目で、事業所得は4,000,000円の黒字となったケースを想定します(青色申告特別控除650,000円控除後)。

 この場合、前年から繰り越されてきた赤字(損失)が150,000円ありますので、確定申告書第一表の記載は次のようになります。

 事業所得以外に所得がない場合は、通常であれば、上図の「合計⑫」欄の金額は事業所得と同額の4,000,000円になります。

 しかし、前年から繰り越されてきた赤字(損失)が150,000円ありますので、「合計⑫」欄の金額は4,000,000円-150,000円=3,850,000円となります。

 ここで、若干の疑問が生じます。今年の確定申告において、前年に損失申告をしたときと同じように確定申告書第四表の記載はしなくてもいいのでしょうか?

 答えは、「第四表は不要」です。

 上図の「合計⑫」欄には、前年から繰り越されてきた赤字(損失)を今年の事業所得から控除した結果の3,850,000円が記載されています。

 つまり、繰越損失を控除してもなお所得が残りますので、今年は損失申告ではないということです。したがって、第四表は不要です。

 しかし、今年の確定申告で第四表を提出しないということは、前年の繰越損失の金額を第三者はどうやって確認するのか疑問が生じるかもしれません。

 この場合、第一表の「その他」の「本年分で差し引く繰越損失額62」欄に控除した繰越損失額を記載しますので、ここで確認することができます。

 なお、前年の繰越損失額が全額控除できずに一部が残る場合は、第四表が必要となります。

損失申告と確定申告書第四表の記載例

 志を持って起業しても、事業が軌道に乗るまでに時間を要することがあります。特に起業初年度は赤字となることもあります。

 事業で赤字が出た場合は、その赤字を他の所得と損益通算(控除)することができ、損益通算しても控除しきれない赤字が残るときは翌年に繰り越すこともできます。

 この控除しきれない赤字(損失)を繰り越すために行う確定申告のことを損失申告といいます。

 以下では、青色申告を行う個人事業者の損失申告と、その際に提出が必要な確定申告書第四表の記載例を示します。

※ 損失申告をした翌年の確定申告については、「損失申告をした翌年の確定申告書の記載例(繰越損失を全額控除した場合)」をご参照ください。

1.損失申告とは?

 純損失の金額とは、事業所得、不動産所得、総合譲渡所得、山林所得の4つの所得の損失のうち、損益通算しても控除しきれない損失の金額をいいます。

 この純損失の金額※1を、純損失の生じた年の翌年から3年間繰り越すために行う確定申告のことを損失申告といいます。

 繰り越した純損失の金額は、翌年以降の総所得金額※2、退職所得金額または山林所得から控除することができ、これを純損失の繰越控除といいます。

 純損失の繰越控除を受けるためには、純損失の生じた年分について青色申告書を提出し、翌年以降の年分について連続して確定申告書を提出する必要があります。

※1 青色申告の場合は、純損失の金額のすべてが対象になります。白色申告の場合は、純損失の金額のうち、変動所得の損失と被災事業用資産の損失の金額が対象となります(関連記事:「白色申告に関する誤解~損益通算・繰越控除・青色申告承認後の白色申告」)。

※2 総所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。

2.損失申告ではないケース

 事業から損失が生じた場合に、ただちに損失申告になるわけではありません。

 損失申告とは、他の所得と損益通算しても控除しきれない損失を繰り越すために行う申告ですので、次のような場合は損失申告に該当しません。


 上記の例は、年の途中に開業し、会社員時代の給与所得と開業後の事業所得があるケースです。

 この場合、事業所得で800,000円の損失が生じていますが、給与所得850,000円との損益通算によって、損失金額800,000円の全額が控除できています。

 つまり、他の所得と損益通算しても控除しきれない損失の金額はありませんので、損失申告には該当しません。

3.損失申告の場合の第四表記載例

 以下のようなケースは損失申告に該当します。


 上記の例では、事業所得で生じた損失1,000,000円を給与所得850,000円と損益通算しても控除しきれない損失の金額が150,000円残っています。

 この純損失の金額150,000円を翌年以降に繰り越すため、確定申告書第一表・第二表と一緒に第四表(一)と(二)を税務署に提出します。
 第四表(一)と(二)の記載例は次のとおりです。

白色申告に関する誤解~損益通算・繰越控除・青色申告承認後の白色申告

 前回(「白色申告に関する誤解~現金主義と収支内訳書」)に続いて、白色申告に関する誤解をとり上げます。

1.白色申告は損益通算できない?

 不動産所得、事業所得、山林所得及び譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、一定の順序(第一次通算、第二次通算、第三次通算)で他の所得の金額から控除することができます。
 例えば、不動産外交員など事業所得と給与所得がある人で、事業所得の損失が200万円で給与所得が60万円の場合は、給与所得は0となり、140万円の損失が残ります(60万円-200万円=△140万円)。
 このように、他の黒字の所得金額から損失の金額を差し引くことを、損益通算といいます。
 この損益通算は、その対象となる損失の金額や損益通算の順序などが厳密に決められていますが、青色申告だけに適用する旨の規定はありません。したがって、白色申告の場合でも、損益通算はできます。

2.白色申告は損失の繰越控除ができない?

 青色申告の場合は、損失の生じた年の翌年から3年間にわたってその損失を繰越控除できます。
 先の例でいえば、損益通算して生じた140万円の損失を翌年の所得から控除することができ、それでも控除しきれない損失の金額がある場合は翌々年、翌々翌年の所得から控除することができます。
 では、白色申告の場合は、損失の繰越控除ができないのでしょうか?
 この答えを出すためには、繰越控除できる損失には次の2種類があることを理解する必要があります。

(1) 純損失の繰越控除
 純損失の金額とは、事業所得、不動産所得、総合譲渡所得、山林所得の4つの所得の損失のうち、損益通算しても控除しきれない損失の金額をいいます。先の例で生じた140万円の損失は純損失です。
 青色申告の場合は、この純損失の金額のすべてを、純損失の生じた年の翌年から3年間の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除することができます。
 しかし、白色申告の場合は、純損失の金額のうち、変動所得の損失と被災事業用資産の損失の金額に限り控除することができます。先の例で生じた140万円の純損失は、繰越控除できません。

(2) 雑損失の繰越控除
 雑損控除の額がその年分の所得金額から控除できなかった場合、その控除不足額を雑損失の生じた年分の翌年以後3年間の総所得金額、分離短期(長期)譲渡所得の金額、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額、又は退職所得金額から控除することができます。
 この雑損失の金額については、青色申告の場合も白色申告の場合も、そのすべてを控除することができます。

 したがって、白色申告は雑損失の金額についてはすべて繰越控除できるが、純損失の金額については変動所得の損失と被災事業用資産の損失の金額しか繰越控除ができないということになります。

3.青色申告の承認後は白色申告できない?

 青色申告の特典を受けるためには、税務署に青色申告承認申請書を期限までに提出しなければなりません。
 では、青色申告の承認を受けた後でも、白色申告はできるのでしょうか?

 青色申告については、所得税法143条に次のように規定されています。

不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。

 いわゆる「できる」規定ですので、青色申告の承認を受けたとしても青色申告が強制されるものではありません。
 つまり、青色申告の承認後であっても白色申告をすることができます。