社会保険料を給与から天引きするタイミングの原則と例外

 先日、顧問先の社長さんから次のような質問がありました。

 「6月1日に雇用した新入社員の給与を6月25日に支給したところ、その新入社員から『社会保険料が天引きされているのはおかしい』と指摘されたが、当社の処理は間違っているのか?」

 この会社の給与の締め日は毎月20日で、給与の支給日は当月の25日です。この会社では新しく従業員を雇用したときの社会保険料については、入社後初めて支給する給与から天引きすることにしています。

 今回の例もこれまで通りの処理をしただけなのですが、この処理は間違っているのでしょうか?

1.原則的な処理は「翌月徴収」

 この新入社員の方は6月1日に入社しましたので、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格取得日は6月1日となり、6月分の社会保険料が発生します。

 その6月分の社会保険料を、翌月の7月25日に支給する給与から天引きして、7月末に納付するというのが原則的な流れとなります。

 この原則的な流れからすると、新入社員の方の指摘は正しく会社の処理は間違っているようにも見えます。

 なぜなら、6月分の社会保険料を当月の6月25日に支給する給与から天引きして7月末に納付することになりますので、原則的な流れと比べると天引きするタイミングが1か月早くなっているからです。

 しかし、結論を先に述べると、このような処理が一概に間違っているとはいえません。

2.例外的な処理は「当月徴収」

 上記1でみたように、原則的な処理においては、当月分(6月分)の社会保険料を翌月(7月)に支給する給与から天引きして翌月末(7月末)に納付することになります。

 この場合、数年後にこの従業員が退職したとき、例えば、数年後の10月31日に退職したときは、10月分の社会保険料が発生しますので、その10月分の社会保険料を翌月の11月25日に支給する最後の給与から天引きします。

 また、10月30日に退職したときは、10月分の社会保険料は発生しませんので、翌月の11月25日に支給する最後の給与から社会保険料は天引きしません。

 一方、今回のように、6月分の社会保険料を、当月の6月25日に支給する給与から天引きして、7月末に納付するという例外的な処理も認められます。

 原則的な処理より1か月早い天引きになりますが、違法ではなく採用している事業所も多くあります。

 この例外的な処理において、数年後にこの従業員が退職したとき、例えば、数年後の10月31日に退職したときは、10月分の社会保険料が発生しますので、その10月分の社会保険料を当月の10月25日に支給する給与から天引きします。
 この場合、11月25日に支給する最後の給与からは社会保険料を天引きしません。

 また、10月30日に退職したときは、10月分の社会保険料は発生しませんので、当月の10月25日に支給する給与から社会保険料は天引きしません。
 この場合、11月25日に支給する最後の給与からも社会保険料を天引きしません。

 このような例外的な処理が認められるのは、原則的な処理と社会保険料を天引きするタイミングにズレがあったとしても、不合理が生じないからです。

 原則的な処理に比べて、例外的な処理は社会保険料の天引きを開始するタイミングが1か月早くなりますが、その分、天引きを終了するタイミングも1か月早くなります。

 従業員の入社から退職までを考えると、給与から天引きする社会保険料の額や回数は、原則的な処理でも例外的な処理でも同じになり、不合理は生じません。