経費(販管費)に関する勘定科目の内容と税務上の注意点

1.どの勘定科目を使う?

 日々の取引をどの勘定科目で記録したらいいのか迷うことがあります。例えば、ガソリン代なら「旅費交通費」「燃料費」「車両費」などが該当しそうですが、実際はどれが正しいのでしょうか?

 実はどれも正しいのです。一般的に妥当だと判断される勘定科目が何種類かあったら、どれを選択してもOKです。また、会社によっては、業種や規模によって勘定科目を追加し、独自の勘定科目体系を整えているところもあります。

 どの勘定科目を使用してもいいのですが、例えばガソリン代について「燃料費」を使うというルールを決めたら、みだりに(正当な理由なく)変更してはいけません。この一貫性を保つことが、正確な会計処理と適切な財務諸表作成につながります。

2.経費科目の内容と注意点

 以下では、販売費及び一般管理費に属する主な経費科目とその内容及び税務上の注意点について確認します。経費科目の適切な使用は、正確な会計処理と適切な税務申告のために重要ですので、各勘定科目の特徴を理解し、取引の実態に即した適切な科目を選択することが求められます。

(1) 役員報酬

 役員に対して支給する給与や賞与を処理するための勘定です。損金算入できる役員報酬には、定期同額給与、事前確定届出給与及び業績連動給与があります。

 役員報酬の決定や変更には、慎重な対応が求められます。特に、定期同額給与の改定には注意が必要です。また、事前確定届出給与を支給する場合は、適切な届出手続きが不可欠です。

 役員報酬に関する注意点等については、本ブログ記事「定期同額給与の類型と改定」、「役員報酬の前払いは定期同額給与(経費)になりません」、「『事前確定届出給与に関する届出書』等の書き方と記載例」、「事前確定届出給与を支給しなかった場合のリスクを回避するための手続き」等をご参照ください。

(2) 給料手当・雑給

 従業員に対して支給する給与や賞与を処理するための勘定です。
 具体的には、基本給、諸手当、家族手当、住宅手当、時間外勤務手当、休日勤務手当、役付手当、職務手当、食事手当などです(通勤手当については下記(7)旅費交通費をご参照ください)。
 時間給制のアルバイトやパート等に対する給与は給料手当で処理しますが、区別して管理する場合は雑給で処理します。

 給料手当・雑給の勘定科目を用いる際は、適切な給与計算と源泉徴収を行うことが重要です。特に、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の計算には注意が必要です。さらに、給与所得の源泉徴収票や給与支払報告書の作成など、給与に関連する税務申告にも留意が必要です。

 給料手当・雑給に関する注意点等については、本ブログ記事「源泉徴収税額表の『月額表』『日額表』の使い方と『甲欄』『乙欄』『丙欄』」、「パートやアルバイトの給与を丙欄で源泉徴収するときの注意点と建設業の特例」、「令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方と記載例」、「使用人賞与を未払計上する場合の注意点」等をご参照ください。

(3) 法定福利費

 法定福利費とは、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料、子ども・子育て拠出金などの会社が負担することが法律で定められている保険料のことをいいます。

 全従業員を被保険者として会社が契約した損害保険料などは、法定福利費ではなく福利厚生費や保険料などで処理します。

 法定福利費に関する注意点等については、本ブログ記事「決算日が月末以外の会社は社会保険料の会社負担分を未払計上できない」、「未払計上した決算賞与に係る社会保険料は未払計上できない」をご参照ください。

(4) 広告宣伝費

 不特定多数の人に対する宣伝効果を目的として支出した項目を処理する勘定です。
 具体的には、雑誌掲載料、テレビCM、インターネット広告、折込チラシ、カタログ、パンフレット、社名入りの手帳やタオル・カレンダー、展示会出展費用、大会協賛金、団体名簿掲載料、電話帳掲載料、ダイレクトメール、見本品、試供品、賞品(景品)、粗品、会社案内などです。

 新商品の発売を記念したキャンペーンの賞品(景品)として当選者を旅行に招待する場合は、不特定多数を対象にした宣伝活動にかかる経費として広告宣伝費で処理します。
 しかし、得意先の役員等を新商品の販売促進のために旅行へ招待する場合は、交際費で処理します。
 また、社員旅行の場合は、福利厚生費で処理します。

(5) 接待交際費

 得意先、仕入先、株主など事業に関連ある者に対して「お付き合い」のために支出した項目を処理する勘定です。
 具体的には、御歳暮、御中元、お土産、接待、贈答品、商品券、お礼、接待ゴルフ、お車代取引先との親睦旅行、慶弔金、開店祝金、ご祝儀、忘年会、新年会、餞別、花輪、ロータリークラブ・ライオンズクラブの会費※1などです。

 法人税法では、一定の要件の下に損金算入限度額(経費にできる上限額)が定められており、その限度額を超えると法人税の課税対象となります。
 得意先社員との打合せや会議の際に支払う少額(1人当たり10,000円以下※2)の飲食費については、一定の要件※3の下に交際費から除かれ、別勘定の会議費等で処理するか、別表15の「交際費等の額から控除される費用の額」に記載して交際費から除きます。。

※1 参考記事「ロータリークラブ、ライオンズクラブの会費は法人と個人で経理処理が異なる!

※2 2024(令和6)年度改正で、従前の5,000円以下から10,000円以下に引き上げられました。

※3 次に掲げる事項を記載した領収書等の保存が必要です。
① 飲食等の年月日
② 飲食等に参加した得意先等の氏名又は名称、その関係
③ 飲食等に参加した人数
④ その費用の金額、飲食店等の名称及び所在地
⑤ その他参考となるべき事項

(6) 福利厚生費 

 従業員のために支出した項目で、健康診断等の医療費、社宅などの家賃、従業員に対する慶弔費、親睦費、制服代、夜食代などを処理する勘定です。
 具体的には、忘年会、新年会、親睦会、送別会、歓迎会、社員旅行、社内行事、作業服、クリーニング代、従業員用菓子代、残業夜食代、給食、医療用品(体温計、包帯)、健康診断費用、常備薬、雑貨、従業員への祝い金(結婚、出産など)、慶弔金、見舞金、香典、永年勤務者表彰金などです。

 福利厚生費の計上にあたっては、適切な勘定科目の選択と、税務上の取り扱いに十分注意する必要があります。特に、福利厚生費として処理できる項目と、給与として扱われる項目の区別を明確にすることが重要です。

 福利厚生に関する注意点等については、本ブログ記事「福利厚生費が給与課税されないための要件」、「慰安旅行費が福利厚生費となるための3要件と注意点」、「永年勤続表彰金は社会保険・労働保険・所得税の対象となるか?」をご参照ください。

(7) 旅費交通費

 旅費と交通費を処理する勘定です。
 具体的には、外出交通費、タクシー代一時的な駐車代、高速代、回数券、指定席券、特急券、航空券、出張に際して支給した出張旅費、出張宿泊料、出張手当(日当)、通勤手当などです。また、ガソリン代を含めることもあります。

 タクシー代については、取引先を接待したときに渡す「お車代」は交際費で処理しますが、飲食店等の接待場所まで移動するための自社のタクシー代は旅費交通費で処理します。
 駐車代については、コインパーキングなどの一時的な駐車代は旅費交通費で処理しますが、月極駐車場の場合は地代家賃で処理します。
 出張手当(日当)については、出張旅費規程(社員区分(役員や従業員)に応じた交通費・宿泊費・日当などを定めた規定)に基づかない支給は給与とみなされ、所得税(及び住民税)が課税されます。

 通勤手当については、本ブログ記事「通勤手当の非課税限度額に注意」、「交通費込み給与の交通費部分は確定申告でも非課税にできない」をご参照ください。

(8) 荷造運賃

 商品、製品を販売し、取引先まで届けるための諸費用を処理する勘定です。
 具体的には、梱包費、包装材料費、梱包費用、配送料金、小包代、宅配便、発送運賃などです。

(9) 通信費

 社内・社外の相手と連絡をとるための費用を処理する勘定です。
 具体的には、固定電話料金、携帯電話料金、切手代、ハガキ代、郵送料、速達、簡易書留料、書留封筒、インターネット利用料、FAX使用料、私書箱使用料、電報料金などです。
 また、最近では、オンライン会議システムの利用料やクラウドストレージのサブスクリプション料金なども通信費として計上されることがあります。

(10) 消耗品費

 耐用年数が1年未満で取得価額が10万円未満の物品を購入した時に処理する勘定です。
 具体的には、常備品(蛍光灯、電池、電球、祝儀袋など)、事務用机、椅子、書棚、掲示版、ロッカー、合鍵、名刺、大工工具、コップ代、ガムテープ、プリント代などです。事務用に使用するボールペンやノートなどの消耗品は、事務用品費で処理する場合もあります。

 ただし、耐用年数が1年以上かつ取得価額が10万円以上の備品や工具は、原則として有形固定資産として資産計上しなければなりません。

 特例として、青色申告書を提出する中小企業者等は、取得価額が30万円未満のものについては固定資産として処理しないことができます(つまり、全額損金算入することができます)。ただし、損金算入額の上限は、その事業年度において取得価額の合計額300万円までとされています※3

※3 参考記事「30万円未満の少額減価償却資産の損金算入制度と別表16(7)の記載例

(11) 水道光熱費

 電気、ガス、水道料金などを処理する勘定です。
 具体的には、電気代、ガス代、プロパンガス料金、水道代、灯油代、石油、重油、石炭などです。

(12) 修繕費

 資産の維持補修(原状回復)に要する費用を処理する勘定です。
 具体的には、建物の修理、事務所修理、水道修理、電話移設工事、事務器の修理、AV機器補修、プログラム修理、機械等の保守費用、パソコン保守料、定期点検、メンテナンス料、保守契約料、車検費用、車修理、オイル交換、タイヤ交換、部品交換などです。車検費用等の車関係の諸経費は、車両費で処理する場合もあります。

 一方、資産の改良(修理によって資産の価値が増加したり耐用年数が延びたりする場合)に要する費用は有形固定資産として計上し、減価償却費がその事業年度の損金となります。

 修繕費と資本的支出の区別は、税務上の重要な判断ポイントとなります。例えば、従来から所有している建物について、壁のひび割れや雨漏りしている天井を修復するための費用は、基本的には資産の維持補修に該当するため修繕費として処理できますが、壁を増築して建物を拡張する場合は資産の改良(資本的支出)となり、有形固定資産として計上する必要があります。

 修繕費に関する注意点については、本ブログ記事「店舗の蛍光灯100本を単価1万円のLEDに取替えた場合の費用は修繕費?」、「新紙幣発行に伴うシステム改修費の税務上の取扱い」、「資本的支出に少額減価償却資産の損金算入の特例は適用できるか?」をご参照ください。

(13) 支払手数料

 事務委託手数料や業務委託手数料などを処理する勘定です。
 具体的には、公認会計士手数料、税理士手数料、弁護士手数料、書籍作成手数料、代理店手数料、斡旋手数料、紹介料、カード手数料、各種役所手数料、各種銀行手数料(振込手数料、為替手数料、夜間金庫手数料、残高証明発行料、FAX手数料、ファームバンキング手数料)、メンテナンス料などです。

 紹介料は、単なる謝礼の場合は交際費で処理します。紹介料を支払手数料で処理するための要件については、本ブログ記事「紹介料が交際費とならないための要件」をご参照ください。

(14) 車両費

 車にかかる諸経費全般を処理する勘定です。
 具体的には、ガソリン代、オイル交換代、高速代、修理代、車検費用、自動車保険、自賠責保険、一時的な駐車代などです。高速代や一時的な駐車料は旅費交通費で、またガソリン代は燃料費や旅費交通費で処理することもあります。

(15) 保険料

 保険契約にもとづく支払いを処理する勘定です。
 具体的には、火災保険、自動車保険、自賠責保険、損害保険、役員生命保険、経営者保険、団体定期保険、郵便保険、盗難保険、倒産防止掛金などです。

 保険料に関する注意点等については、本ブログ記事「法人向け節税保険の改正後の税務取扱い」、「中小企業倒産防止共済掛金の損金算入要件等」、「中小企業倒産防止共済の再加入後の損金算入制限に注意」をご参照ください。

(16) 地代家賃

 不動産賃借契約にもとづく賃借料を処理する勘定です。
 具体的には、事務所家賃、店舗・工場・倉庫・車庫・材料置場の賃借料、月極駐車場代などです。

 地代家賃に関する注意点等については、本ブログ記事「注意!フリーレント契約の支払家賃の計上時期と経理処理」をご参照ください。

(17) 会議費

 会社の業務に関連して、社内又は社外で行われる商談や打ち合わせなどの会議の時に支出した項目を処理する勘定です。
 具体的には、会議室利用料、会議中の弁当代、昼食代、喫茶代、茶菓子代などです。

 会議に伴う昼食代は、福利厚生費ではなく会議費で処理します。ただし、議事録を残すなど会議の内容を記録しておくことが重要です。

(18) 租税公課

 国や地方自治体に支払った税金のうち、経費として認められる項目を処理する勘定です。
 具体的には、印紙代、店舗や倉庫などの事業用にかかる固定資産税(償却資産税)などです。

 租税公課に関する注意点については、本ブログ記事「印紙が必要な領収書とは?」、「請求書に印紙は必要?不要?」、「海外企業との契約書に印紙を貼る?貼らない?」、「変更契約書に貼る印紙はいくら?」、「印紙の消印方法~意外に知らないことが多い!?」、「契約書・領収書の記載金額における消費税の特例」、「事務所・店舗等を移転した場合の償却資産申告書の記載例」等をご参照ください。

(19) 雑費

 雑費は、まれにしか発生せず、金額的にも小さく、どの勘定科目にも属さない支出を処理する勘定です。
 具体的には、ソフトバージョンアップ代、ゴミ捨て代、清掃代などです。

(20) 領収書のない経費

 領収書がもらえない香典や祝い金、従業員の慶弔見舞金の支払いなどは、その事実が証明できるものを証拠書類として保管します。
 例えば、案内状や礼状、パーティーの招待状などは証拠書類として有用です。また、出金伝票を作成して、証拠書類と一緒に保存する場合もあります。

役員報酬月額を低額に抑えて賞与を支給する社会保険料節約術の税務上のリスク

1.社会保険料節約スキーム

 社会保険料の負担を軽減するため、役員の報酬月額を極端に低く抑え、その代わりに賞与(事前確定届出給与)を支給するという方法を、数年前から耳にするようになりました。
 この方法では社会保険料の負担を減らすことができますが、それは、賞与に係る健康保険料と厚生年金保険料に上限が設けられているためです。

 賞与に係る社会保険料の上限は、賞与の支給額が健康保険料については年間累計で573万円、厚生年金保険料については1回の支給につき150万円となっています。
 つまり、賞与の支給額がこれらの上限を超える場合、例えば1,000万円の賞与を支給したとしても、健康保険料については573万円、厚生年金保険料については150万円をベースに社会保険料が計算されることになります。
 したがって、毎月の役員報酬を低く抑える一方、上限を超える役員賞与を支給すると、上限を超える部分の社会保険料は支払わなくてよいことになるので、社会保険料の節約になります。

 例えば、毎月100万円(年間1,200万円)の役員報酬の支給を、毎月10万円の役員報酬と1080万円の役員賞与の支給に変更した場合は、どれくらいの節約になるでしょうか?
 以下において、次の前提の下でシミュレーションをしてみます。

【前提】
・年齢50歳(配偶者あり)
・健康保険組合は協会けんぽ(兵庫)、一般の事業
・2021(令和3)年4月時点の税率、保険料に基づいて計算

 毎月100万円(年間1,200万円)の役員報酬を支給した場合の社会保険料(会社負担分+個人負担分)は、次のとおりです。

健康保険料 117,992円
厚生年金保険料 118,950円
子ども・子育て拠出金 2,340円
合計(月額) 239,282円
合計(年額) 2,871,384円

 毎月10万円の役員報酬と1,080万円の役員賞与を支給した場合の社会保険料(会社負担分+個人負担分)は、次のとおりです。

  役員報酬10万円 役員賞与1,080万円
健康保険料 11,799.2円 689,892円
厚生年金保険料 17,934円 274,500円
子ども・子育て拠出金 353円 5,400円
合計(月額) 30,086円 969,792円
合計(年額) 361,032円 969,792円

 以上の結果から、毎月100万円(年間1,200万円)の役員報酬の支給を、毎月10万円の役員報酬と1,080万円の役員賞与の支給に変更した場合は、2,871,384円-(361,032円+969,792円)=1,540,560円の社会保険料の節約(年額)になります。

2.税金を考慮しても有利?

 役員報酬月額を低く抑えて役員賞与を支給する方法は、上記のとおり社会保険料の節約になりますが、社会保険料が減るということは、会社の利益や個人の所得から控除できる額も減ることになりますので、その分の法人税等や所得税、住民税が増えることになります。

 社会保険料は、会社と個人が折半して負担しますので、1,540,560円を節約することにより、会社の利益と個人の所得がそれぞれ770,280円ずつ増えることになります。
 この増えた部分に対して税金がどれくらいかかるのかをシミュレーションすると、下表のようになります。税率は、法人税等31%、所得税33%、住民税10%としています。

法人税等 238,786円
所得税 254,192円
住民税 77,028円
合計 570,006円

 社会保険料を1,540,560円節約した結果、税金が570,006円増えますが、それでも1,540,560円-570,006円=970,554円だけ社会保険料の節約効果の方が大きいことがわかります。税金を考慮しても、この社会保険料節約スキームは有利であるといえます。

3.税務上のリスク

 この社会保険料節約スキームを実行するには、税務署に事前確定届出給与に関する届出をし、その届出通りの支給をしなければなりません。
 では、届出通りの支給をしている場合、役員賞与は損金の額に算入できるのでしょうか?

 法人が役員に対して支給する給与の額については、定期同額給与、事前確定届出給与及び業績連動給与に該当する場合は、原則として損金の額に算入されますので、事前確定届出給与の届出をし、そのとおりに給与と賞与を支給しているのであれば、その点では損金の額に算入することが認められます(法人税法34条1項2号)。

 一方、法人税法34条2項は、役員給与のうち不相当に高額な部分の金額は損金に算入しない旨を規定しています。
 ここで懸念されるのは、各月の役員報酬の支給額と役員賞与の支給額に大きな差がある場合、その差額部分の金額は不相当に高額であるとして損金の額に算入されないのではないか、ということです。
 先の例では、年間の給与総額が120万円で賞与の額が1,080万円、合計で1,200万円ですが、税法が定める不相当に高額な給与とは、各月の給与の支給額や個々の賞与の額で判定するのか、年間の支給総額で判定するのか、について疑問が生じます。

 この不相当に高額な部分の判定基準は、以下の実質基準と形式基準の2つが規定されており、これらの基準により算出される超過金額のうち、多い方の額を過大とすることとされています(法人税法施行令70条)。

(1) 法人が各事業年度においてその役員に支給した給与の額が、その役員の職務の内容、その法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況その法人と同種の事業を営む法人で事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、その役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(実質基準)
(2) 定款の規定又は株主総会等の決議により役員に対する給与として支給することができる金銭の額の限度額若しくは算定方法等を定めている法人が、各事業年度においてその役員に対して支給した給与の額の合計額がその事業年度に係るその限度額及びその算定方法により算定された金額等を超えるにはその超える部分の金額(形式基準)

 税法の規定振りを見ると、「 各事業年度においてその役員に支給した給与の額 」又は「 各事業年度においてその役員に対して支給した給与の額の合計額 」とされており、各月の給与の支給額とも個々の賞与の額とも書かれていません。
 つまり、不相当に高額な部分の金額は、 各月の給与の支給額や個々の賞与の額で判定するのではなく、年間の支給総額で判定する ことになります。先の例では、報酬月額10万円や賞与1,080万円で判定するのではなく、支給総額の1,200万円で判定します。

 したがって、各月の役員報酬の支給額と役員賞与の支給額に大きな差があったとしても、事前確定届出給与の届出のとおりに支給されており、その支給した給与の合計額が不相当に高額であると認められない場合には、損金の額に算入されます
 結局のところ、この問題は、役員に支給した給与と賞与の総額が不相当に高額であるか否かという点に帰結します。

被災地に義援金を送金した場合等の税務上の取扱い

 個人又は法人が、災害により被害を受けられた方を支援するために、被災地の地方公共団体に設置される災害対策本部等に義援金や支援金を支払った場合等の税務上の取扱いについて確認します。
 なお、義援金は「お悔やみや応援の気持ちを込めて被災者に直接届けるお金」のことをいい、支援金は「自分が応援したい団体に寄付し、被災地の支援活動に役立ててもらうお金」のことをいいますが、本稿では両者を合わせて「義援金」といいます。

1.被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して義援金を支払った場合

 個人又は法人が、被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して義援金を支払った場合の税務上の取扱いは、次のとおりです。

個人  個人の方が、被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して支払った義援金は「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
 なお、当該義援金は、地方公共団体に対する寄附金として個人住民税の寄附金税額控除の対象となり、原則としてふるさと納税に該当します(ワンストップ特例制度の適用ができますが、通常は返礼品はありません)。
法人  法人が、被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して支払った義援金は「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金の額に算入されます。

2.日本赤十字社又は社会福祉法人中央共同募金会等に対して義援金を支払った場合

 個人又は法人が、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等が被災者への支援を目的として設けた専用口座に対して義援金を支払った場合の税務上の取扱いは、次のとおりです。

個人  個人が、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に地方公共団体(義援金配分委員会等)に対して拠出されるものであるときは、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
 なお、当該義援金は、地方公共団体に対する寄附金として個人住民税の寄附金税額控除の対象となり、原則としてふるさと納税に該当します(ワンストップ特例制度の適用ができますが、通常は返礼品はありません)。
法人  法人が、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に義援金配分委員会等に対して拠出されることが募金趣意書等において明らかにされているものであるときは、「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金の額に算入されます。

※ 日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等に対して支払った義援金であっても、例えば、日本赤十字社や社会福祉法人中央共同募金会等の事業資金として使用されるなど、最終的に地方公共団体に拠出されるものでないものについては、上記と異なる取扱いになる場合がありますので、義援金の支払先に確認する必要があります。

3.被災地の救援活動等を行っている認定NPO法人等に対して義援金を支払った場合

 被災地の救援活動や被災者への救護活動を行っているNPO法人が「認定NPO法人等」であり、支払った義援金がその認定NPO法人等の行う特定非営利活動に係る事業に関連するものであるときには、その義援金は「認定NPO法人等に対する寄附金」に該当します。
 個人又は法人が、認定NPO法人に対して義援金を支払った場合の税務上の取扱いは、次のとおりです。

個人  個人の方が、「認定NPO法人等に対する寄附金」として支払った義援金は、寄附金控除(所得控除)又は寄附金特別控除(税額控除)の対象となります(選択適用)。ふるさと納税には該当しません。
法人  法人が、「認定NPO法人等に対する寄附金」として支払った義援金は、「特定公益増進法人に対する寄附金」に含めて損金算入限度額を計算し(特別損金算入限度額)、その範囲内で損金の額に算入されます。

4.被災地の救援活動等を行っている認定NPO法人等以外の法人等に対して義援金を支払った場合

 個人又は法人が、認定NPO法人等以外の法人等に対して義援金を支払った場合(※)には、次に掲げるような支払先の区分に応じて、税務上の取扱いが異なります。
 支払先の区分や支払った義援金の税務上の取扱いについては、直接支払先の法人等に確認する必要があります。

※ 「国等に対する寄附金」及び「指定寄附金」に該当するものを支払った場合を除きます。

支払先

公益社団法人・公益財団法人の場合(その法人の主たる目的である業務に関連するものに限ります)

NPO法人(認定NPO法人等でないもの)、職場の有志で組織した団体などの人格のない社団等の場合
個人  寄附金控除(所得控除)の対象となります。
 支払先が一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人である場合には、寄附金特別控除(税額控除)との選択適用が可能です。
 寄附金控除等の対象となりません。
法人  特定公益増進法人に対する寄附金として、特別損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入できます。  一般の寄附金として、損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入できます。

5.募金団体を通じて地方公共団体に対して義援金を支払った場合

 関係する個人、法人から義援金を集め、これを取りまとめた上で、一括して地方公共団体に対して支払う場合(※)、義援金を取りまとめる団体(以下「募金団体」といいます)に寄附した個人、法人の税務上の取扱いは、次のとおりです。

※ 税務署において、募金団体に対して支払う義援金が、最終的に国、地方公共団体に拠出されるものであるかどうかの確認が行われます。

個人  個人が、募金団体に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に地方公共団体(義援金配分委員会等)に対して拠出されることが募金団体が発行する預り証において明らかにされているものであるときは、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
 なお、当該義援金は、地方公共団体に対する寄附金として個人住民税の寄附金税額控除の対象となり、原則としてふるさと納税に該当します(ワンストップ特例制度の適用ができますが、通常は返礼品はありません)。
法人  法人が、募金団体に対して支払った義援金については、その義援金が最終的に義援金配分委員会等に対して拠出されることが募金団体が発行する預り証において明らかにされているものであるときは、「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金の額に算入されます。

6.法人が被災した取引先に対して義援金を支払った場合

 法人が、被災した取引先に対し、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間において支出する災害見舞金は、交際費等に該当せず損金の額に算入されます。

7.法人が自社製品を被災者に提供した場合

 法人が、不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、寄附金又は交際費等には該当せず、広告宣伝費に準ずるものとして損金の額に算入されます。

事前確定届出給与(複数人支給)を特定の役員だけ届出通りに支給しなかった場合

1.全員分が損金不算入となるか?

 事前確定届出給与として当該事業年度の損金の額に算入される給与は、所定の時期に確定した額の金銭等を支給する旨の定めに基づいて支給するもの、すなわち、支給時期、支給金額が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与に限られます。
 したがって、所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、事前確定届出給与に該当しないこととなり、損金不算入となります。
 では、複数人に支給する事前確定届出給与について、ある人(役員A)には届出通りに支給をし、ある人(役員B)には届出通りに支給をしなかった場合はどうなるのでしょうか?
 届出通りに支給しなかった役員Bに対する給与が損金算入されないことは明白ですが、この場合、会社全体として事前確定届出給与を届出通りに支給していないことになりますので、届出通りに支給した役員Aに対する給与も損金不算入となるのでしょうか?

2.他の役員への影響はない

 結論を先に述べると、届出通りに支給した役員Aに対する事前確定届出給与は損金算入されます。
 法人税法第34条第1項第2号では、「その役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含みます)、新株予約権、確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式又は特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与」と規定しており、個々の役員に係る給与について規定しているものであることから、「その役員(役員B)」以外の他の役員(役員A)に対する給与に影響を与えるものとはなっていません。
 したがって、役員Bに対して届出書の記載額と異なる金額の役員給与を支給したとしても、そのことを理由として、役員B以外の他の役員に対して支給した役員給与が損金不算入になることはありません。

※ 事前確定届出給与に関する基本的な注意点については本ブログ記事「事前確定届出給与の提出期限と支給額の注意点」を、複数回支給の取扱いについては「事前確定届出給与(複数回支給)を届出通りに支給しなかった場合」をご参照ください。

不祥事による役員報酬の一時的な減額は定期同額給与になるか?

 会社や役員が不祥事を起こした場合に、役員がその不祥事の責任をとって役員報酬を一定期間減額するということがよく報道されています。
 例えば、不祥事が発覚した会社でそのイメージダウンを避けるために、役員が責任をとって役員報酬を6か月間30%減額するなどという場合です。
 このような場合、その減額された役員報酬は定期同額給与として損金算入できるのでしょうか?今回は、この点について確認します。

1.臨時改定事由とは?

 事業年度の中途で役員報酬の減額が行われた場合、それが臨時改定事由によるものであるときは、定期同額給与に該当するものとされています(法人税法施行令69条1項1号)。
 臨時改定事由とは、「役員の職制上の地位の変更、役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」をいいます。
 例えば、社長が任期途中で退任したことに伴い副社長が社長に就任する場合は、一般的には、その地位及び職務内容ともに重大な変更があると認められることから、臨時改定事由に該当するといえます。
 また、合併法人の取締役が合併後も引き続き同じ地位に留まるものの、その職務内容に大幅な変更がある場合等も臨時改定事由に該当するといえます。
 なお、ここでいう「役員の職制上の地位」とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により付与されたものをいい、いわゆる自称専務等はこれに該当しません。

2.臨時改定事由に該当するか?

 ここで、今回の減額事由(不祥事の責任をとる)が「その他これらに類するやむを得ない事情」に該当するか否かがポイントになります。
 役員がとるべき不祥事の責任には、例えば法令違反により行政処分を受けるなど役員個人の行為が原因となるものや、役員は直接かかわっていなくても組織ぐるみで隠ぺいや改ざんを行うなど組織の行為が原因となるものがあります。
 いずれにせよ、これらの不祥事に対する役員の責任を問うために、一定期間役員報酬を減額することは、企業慣行として定着していると考えられます。
 そのため、役員報酬を一時的に減額する理由が、企業秩序を維持して円滑な企業運営を図るため、あるいは法人の社会的評価への悪影響を避けるために、やむを得ず行われたものであり、かつ、その処分の内容が、その役員の行為に照らして社会通念上相当のものであると認められる場合には、「やむを得ない事情」に該当するものとして、減額された期間においても引き続き同額の定期給与の支給が行われているものとして取り扱って差し支えないとされています(2006(平成18)年12月 国税庁・質疑応答事例「一定期間の減額」より)。

3.自主返還された場合

 なお、国税庁・質疑応答事例「一定期間の減額」では、不祥事の責任をとるため、いったん支給した定期給与を役員が自主的に返還した場合には、その自主返還された定期給与は定期同額給与として取り扱われるとしています。この場合、自主返還された定期給与は、雑収入等で処理することとなります。

法人向け節税保険の改正後の経理処理

1.改正案の概要

 国税庁は2019年(平成31年)4月11日、法人向けの節税保険に対応した法人税基本通達の改正案を公表しました。

 改正案では、ピーク時解約返戻率(最高解約返戻率)が50%以下の定期保険等に係る支払保険料については、契約年齢や保険期間の長さによらず全額損金算入が可能です。
 一方、ピーク時解約返戻率が50%超の定期保険等に係る支払保険料については、ピーク時解約返戻率に応じた一定の金額を資産計上し、残額を損金算入することになります。

ピーク時解約返戻率 資産計上期間 資産計上額(残額は損金)
50%以下 なし 全額損金算入
50%超70%以下 保険期間の前半4割相当の期間 支払保険料の4割
70%超85%以下 支払保険料の6割
85%超 保険期間からピーク時解約返戻率となる期間等の終了日 支払保険料×ピーク時解約返戻率の7割(保険期間開始日から10年経過日までの期間は9割)

 今回は、改正案に基づく支払保険料の経理処理を、具体的な数値を用いて確認していきます。

2.ピーク時解約返戻率に応じた経理処理

(1) ピーク時解約返戻率が50%超70%以下の場合

① 経理処理の概要
・資産計上期間(保険期間の前半4割)は支払保険料の4割資産計上6割損金算入
・資産取崩期間(保険期間の7.5割経過後)は資産計上額を取崩し
・資産計上期間と資産取崩期間の間の期間(保険期間の3.5割)は全額損金算入
 ただし、被保険者1人当たりの年換算保険料相当額(保険期間中の支払保険料総額÷保険期間の年数)が20万円以下(複数の定期保険等に加入の場合は合計額)であれば、全期間を通じて全額損金算入します。
※改正案(パブリックコメント原案)では、上記のように被保険者1人当たりの年換算保険料相当額が20万円以下とされていましたが、2019年(令和元年)6月28日に国税庁ホームページで公表された「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」では30万円以下とされました。

4割期間 3.5割期間 2.5割期間
4割資産6割損金 全額損金 全額損金+資産取崩

② 経理処理
 例えば、40歳契約・100歳満期・年払保険料100万円・ピーク時解約返戻率70%の場合の仕訳は次のとおりです。

イ.資産計上期間(4割期間):40歳~64歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 60万円 現金預金 100万円
前払保険料 40万円    

ロ.イとハの間の期間(3.5割期間):65歳~85歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 100万円 現金預金 100万円

ハ.資産取崩期間(2.5割期間):86歳~100歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 164万円 現金預金 100万円
    前払保険料 64万円

(2) ピーク時解約返戻率が70%超85%以下の場合

① 経理処理の概要
・資産計上期間(保険期間の前半4割)は支払保険料の6割資産計上4割損金算入
・資産取崩期間(保険期間の7.5割経過後)は資産計上額を取崩し
・資産計上期間と資産取崩期間の間の期間(保険期間の3.5割)は全額損金算入

4割期間 3.5割期間 2.5割期間
6割資産4割損金 全額損金 全額損金+資産取崩

② 経理処理
 例えば、40歳契約・100歳満期・年払保険料100万円・ピーク時解約返戻率85%の場合の仕訳は次のとおりです。

イ.資産計上期間(4割期間):40歳~64歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 40万円 現金預金 100万円
前払保険料 60万円    

ロ.イとハの間の期間(3.5割期間):65歳~85歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 100万円 現金預金 100万円

ハ.資産取崩期間(2.5割期間):86歳~100歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 196万円 現金預金 100万円
    前払保険料 96万円

(3) ピーク時解約返戻率が85%超の場合

① 経理処理の概要
・資産計上期間は、保険期間の当初10年間は支払保険料の「ピーク時解約返戻率×9割」、それ以降(※)は支払保険料の「ピーク時解約返戻率×7割」を資産計上
・解約返戻金額が最も高くなる時期(返戻金額ピーク)から資産計上額を取崩し
・資産計上期間と資産取崩期間の間の期間は全額損金算入
(※)「それ以降」の期間とは、10年経過後、「解約返戻率ピーク」又は「年間の解約払戻金の増加額が年換算保険料相当額に対して70%以下になるまで」のいずれか遅い方までの期間です。

当初10年間 それ以降 間の期間 取崩期間
「ピーク時解約返戻率×9割」を資産計上

ピーク時解約返戻率×7割」を資産計上

全額損金 全額損金+資産取崩

② 経理処理
 例えば、40歳契約・100歳満期・年払保険料100万円・ピーク時解約返戻率90%の場合の仕訳は次のとおりです。

イ.資産計上期間(当初10年間):40歳~50歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 19万円 現金預金 100万円
前払保険料 81万円    

ロ.資産計上期間(それ以降):51歳~72歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 37万円 現金預金 100万円
前払保険料 63万円    

ハ.間の期間(返戻金額ピークまで):73歳~91歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 100万円 現金預金 100万円

ニ.資産取崩期間:92歳~100歳

借方 金額 貸方 金額
支払保険料 344万円 現金預金 100万円
    前払保険料 244万円

※資産計上期間(それ以降)の考え方

経過年数 支払総保険料 解約返戻金 解約返戻率 解約返戻金の増加率
1年 100万円 66.4万円 66.4%  
2年 200万円 158.8万円 79.4% 92.4%
24年 2,400万円 2,272.8万円 94.7% 96.7%
25年 2,500万円 2,369.1万円 94.8% 96.3%
26年 2,600万円 2,447万円 94.1% 77.9%
27年 2,700万円 2,523.6万円 93.5% 76.6%
28年 2,800万円 2,599.4万円 92.8% 75.8%
29年 2,900万円 2,674.4万円 92.2% 75.0%
30年 3,000万円 2,748万円 91.6% 73.6%
31年 3,100万円 2,820万円 91.0% 72.0%
32年 3,200万円 2,891.1万円 90.3% 71.1%
33年 3,300万円 2,960.1万円 89.7% 69.0%
34年 3,400万円 3,026.9万円 89.0% 66.8%
…   
59年 5,900万円 1,781.8万円 30.2% -901.8%
60年 6,000万円 0 0.0% -1781.8

経過年数25年で解約返戻率のピーク(94.8%)を迎える。
経過年数33年で年間の解約返戻金の増加額が年換算保険料相当額に対して70%以下になる((2,960.1万円-2,891.1万円)÷100万円=69.0%)。
25年と33年のいずれか遅い方は33年なので、72歳まで支払保険料の一部を資産計上する。

社会保険料の延滞金は損金算入できます

1.社会保険料の延滞金は損金算入可能

 国税に係る延滞税・過少申告加算税・無申告加算税、地方税法の規定による延滞金・過少申告加算金・無申告加算金などは損金算入できません。これらが損金算入できないことは、感覚的にわかります。
 では、社会保険料の延滞金も損金算入できないのでしょうか?
「延滞金」ですので、感覚的には損金算入できないように思われがちですが、社会保険料の延滞金は損金算入できます。 

2.損金算入できる根拠

 同じ「延滞金」なのに損金算入できるものとできないものがあるのはなぜでしょうか?
 根拠は次の法人税法第55条にあります。

(不正行為等に係る費用等の損金不算入)
第五五条 内国法人が、その所得の金額若しくは欠損金額又は法人税の額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装すること(以下この項及び次項において「隠蔽仮装行為」という。)によりその法人税の負担を減少させ、又は減少させようとする場合には、当該隠蔽仮装行為に要する費用の額又は当該隠蔽仮装行為により生ずる損失の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2 前項の規定は、内国法人が隠蔽仮装行為によりその納付すべき法人税以外の租税の負担を減少させ、又は減少させようとする場合について準用する。

3 内国法人が納付する次に掲げるものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 国税に係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税並びに印紙税法(昭和  四十二年法律第二十三号)の規定による過怠税
二 地方税法の規定による延滞金(同法第六十五条(法人の道府県民税に係る納期限の延長の場合の延滞金)、第七十二条の四五の二(法人の事業税に係る納期限の延長の場合の延滞金)又は第三百二十七条(法人の市町村民税に係る納期限の延長の場合の延滞金)の規定により徴収されるものを除く。)、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金

4 内国法人が納付する次に掲げるものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料
二 国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)の規定による課徴金及び延滞金
三 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定による課徴金及び延滞金(外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)
四 金融商品取引法第六章の二(課徴金)の規定による課徴金及び延滞金
五 公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)の規定による課徴金及び延滞金

5 内国法人が供与をする刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十八条(贈賄)に規定する賄賂又は不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十八条第一項(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)に規定する金銭その他の利益に当たるべき金銭の額及び金銭以外の資産の価額並びに経済的な利益の額の合計額に相当する費用又は損失の額(その供与に要する費用の額又はその供与により生ずる損失の額を含む。)は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

 法人税法第55条に「社会保険料の延滞金」は列挙されていませんので、損金算入可能ということになります。