決算日が月末以外の会社は社会保険料の会社負担分を未払計上できない

 3月20日を期末(決算日)としているA社の社長から、次のようなご相談がありました。
 「3月分の給与に対する社会保険料の会社負担分を法定福利費として未払計上できるか?」

 A社は、給与計算の締め日を毎月20日、給与支給日を月末としています。3月分の給与は3月31日に支給しますが、決算日が3月20日ですので、3月分の給与は翌期の支給になります。
 そのため、3月分の給与(2月21日~3月20日)は決算時に未払計上していましたが、同時に3月分の社会保険料(4月末納付分)の会社負担分も未払計上できないか、というご相談でした。

1.社会保険料の債務確定時期

 法人税法は債務確定主義を採っており、期末までに債務が確定していたかどうかが重要です(法人税法22条3項2号、法人税基本通達2-2-12、9-3-2)。
 A社の場合、3月分の社会保険料の会社負担分を未払計上するためには、期末である3月20日までに納付義務が確定している必要があります。

 では、3月分の社会保険料の納付義務は、いつ確定するのでしょうか?

 社会保険料は、健康保険法156条3項等の規定により、被保険者が月末まで在職している場合に同者に係る保険料を翌月末日までに納付することとなっています。3月分(3月1日~3月31日分)の社会保険料の納付額は、翌月の4月に発行される納入告知書で明らかになります。
 これは、給与支給月(賞与を含む)の月末まで、被保険者(従業員)が在職していることが要件であることを意味します。例えば、3月30日に従業員が退職した場合は、その従業員の3月分については納付義務はありません。
 つまり、月末にならないと社会保険料の額が確定しないということです。

 A社の3月分の社会保険料の納付義務は、月末の3月31日にならないと確定しませんので、期末である3月20日時点では債務が確定していないことになります。
 したがって、A社の場合、3月分の社会保険料の会社負担分を法定福利費として未払計上することはできません。

 一方、A社の場合、2月分(2月1日~2月28日分)の社会保険料は3月末に納付することになりますが、期末の3月20日時点では未納付となっています。
 この2月分の社会保険料の会社負担分は法定福利費として未払計上することができます。なぜなら、2月分の社会保険料の納付義務は2月末時点で確定しているからです。

2.給与支給日を月末から20日にした場合

 A社の給与支給日を月末から20日に変更した場合、3月分の社会保険料の会社負担分を未払計上することはできるでしょうか?

 答えは「否」です。
 法人税基本通達9-3-2では、法人が負担する社会保険料の額については、当該保険料の計算の対象となった月の末日の属する事業年度において損金算入することができるとされています。
 3月分の給与を20日に支給するとしても、これに対応する社会保険料の納付義務が確定するのは3月31日ですので、3月20日の期末時点で債務が確定していません。よって、未払計上することはできません。