会社が役員から無利息又は低利率で借入れをした場合

 会社が役員に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合には、通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際収受した利息の額との差額に相当する金額は、その役員に供与した経済的利益となり給与課税されます。(本ブログ記事「役員に金銭を貸し付けた場合の所得税法上の問題」を参照)
 では、その逆の場合はどうでしょうか? 

1.役員側の課税関係

 つまり、役員が会社に対して無利息又は低利率で貸付けをした場合、課税上の問題は生じるのでしょうか?
 
 答は「否」です。
 会社が役員に対して金銭の貸付けをした場合と異なり、役員が会社に金銭を貸し付けた場合においては、無利息又は低利率により利息の計算を行ったとしても、適正な利率による利息との差額を徴収しなければならないということはありません。
 会社は利益の追求を目的としているため、その取引について常に経済的合理性が求められるのに対し、個人は必ずしも利益の追求のみを目的としているわけではないからです。
 したがって、貸し付けた役員側において、利息相当額の認定という課税上の問題が生じることは通常はありません(ただし、「同族会社の行為又は計算の否認」の規定(所得税法157条)が適用され、代表者に収受されるべき利息相当額として、約500億円の雑所得の認定課税が行われた事件(いわゆる平和事件)がありました)。

2.会社側の課税関係

 一方、役員から無利息又は低利率により借入れをした会社は、利息相当額の支払いを免除されたことによる利益(債務免除益)が計上されますが、これと同額の支払利息も計上されますので、やはり課税上の問題が生じることはありません

福利厚生費が給与課税されないための要件

 福利厚生の一環として支給した食事や記念品が、税務調査の際に給与と認定されることがあります。この場合、会社は源泉所得税の徴収漏れを指摘され、従業員にはその源泉所得税の負担が生じます。
 従業員の労をねぎらうという本来の趣旨が税務調査で不本意な結果とならないように、給与課税されないための要件を以下で確認します。

1.残業又は宿日直に伴う食事支給は給与課税されない?

 福利厚生の一環として役員や使用人に対して支給する食事は、次の2要件を満たせば給与課税されません。

(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること
(2)会社の負担額(食事の価額-役員や使用人が負担している金額)が1ヶ月当たり3,500円(税抜き)以下であること
 ここでいう食事の価額は、次の金額になります。
 ① 仕出し弁当などを取り寄せて支給する場合は、業者に支払う金額
 ② 社員食堂などで会社が作った食事を支給する場合は、食事の材料費や調味料等に要した、いわゆる直接費の額 

 また、現金で食事代の補助をする場合は、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合を除き、補助をする全額が給与課税されます
 なお、通常の勤務時間外に残業又は宿日直をした人に支給する食事は、無料で支給しても給与課税されません。しかし、深夜勤務を本来の職務とする人がその勤務に伴い食事の支給を受ける場合には、その支給額は給与課税されます。  

2.創業記念品等の支給と給与課税

 創業記念、増資記念、工事完成記念又は合併記念等に際して支給する記念品などは、次の要件をすべて満たす場合は給与課税されません。ただし、建築業者、造船業者等が請負工事又は造船の完成等に際し支給するものについては、この限りではありません。

(1)支給する記念品が社会通念上記念品としてふさわしいものであること
(2)記念品の処分見込価額による評価額が1万円(税抜き)以下であること
(3)創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給するものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること 

 なお、上記3要件を満たしても、本人が自由に記念品を選択できる場合は、その記念品の価額が給与として課税されます。

3.永年勤続表彰記念として旅行券を支給すると給与課税される?

 永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品又は旅行や観劇への招待費用は、次の要件をすべて満たす場合は給与課税されません。

(1)その人の勤続年数や地位などに照らして、社会通念上相当な金額以内であること
(2)勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること
(3)同じ人を2回以上表彰する場合は、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること 

 なお、上記3要件を満たしても、記念品の支給又は旅行や観劇への招待費用の負担に代えて、現金や商品券などを支給する場合は、その全額(商品券の場合は券面額)が給与課税されます。 旅行の招待費用に代えて支給される旅行券も、原則として給与課税されます。これは、一般的に旅行券には有効期限がなく、換金性があり、実質的に金銭を支給したことと同様になるためです。
 ただし、次の要件を満たしている旅行券の支給は、給与課税されません。

(1)旅行の実施は、旅行券の支給後1年以内であること
(2)旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含みます)であること
(3)旅行券の支給を受けた人が、当該旅行券を使用して旅行を実施した場合には、所定の報告書に必要事項(旅行実施者の所属・氏名・旅行日・旅行先・旅行社等への支払額等)を記載し、これに旅行先等を確認できる資料を添付して会社に提出すること
(4)旅行券の支給を受けた人が、当該旅行券の支給後1年以内に旅行券の全部又は一部を使用しなかった場合には、当該使用しなかった旅行券を会社に返還すること

役員に金銭を貸付けた場合の所得税法上の問題

 会社が役員に対して金銭を貸し付けた場合には、収受すべき利息の額が適正か否かが問題となります。
 その貸付けが通常の利率よりも高い利率で行われた場合は、特殊なケースを除き、課税上の問題が生じることはありません。 

1.役員に対する金銭の貸付けの適正利率は?

 しかし、無償又は通常の利率よりも低い利率で貸付けが行われた場合には、通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際に収受した利息の額との差額に相当する金額は、その役員に供与した経済的利益(役員に対する給与)となります(法人税基本通達9-2-9(7))。 

 では、ここでいう「通常の利率」とはいかなるものでしょうか? 所得税基本通達36-49では、「利息相当額の評価」として次のように定めています。

(1)その金銭を法人が他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には、その借入金の利率によります。
(2)その他の場合は、貸付けを行った日の属する年の租税特別措置法93条2項に規定する特例基準割合による利率によります。 

 特例基準割合は、2000年(平成12年)1月1日から2013年(平成25年)12月31日までは、貸付けを行った日の属する年の前年の11月30日の日本銀行が定める基準割引率(従来の公定歩合)に年4%の割合を加えたものです。
 2014年(平成26年)1月1日以降は、各年の前々年の10月から前年9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に年1%の割合を加えたものです。
 具体的には、次のようになります。
①平成12年1月1日~平成13年12月31日・・・4.5%
②平成14年1月1日~平成18年12月31日・・・4.1%
③平成19年1月1日~平成19年12月31日・・・4.4%
④平成20年1月1日~平成20年12月31日・・・4.7%
⑤平成21年1月1日~平成21年12月31日・・・4.5%
⑥平成22年1月1日~平成25年12月31日・・・4.3%
⑦平成26年1月1日~平成26年12月31日・・・1.9%
⑧平成27年1月1日~平成27年12月31日・・・1.8%
⑨平成28年1月1日~平成28年12月31日・・・1.8%
⑩平成29年1月1日~平成29年12月31日・・・1.7%
⑪平成30年1月1日~平成30年12月31日・・・1.6%
⑫平成31年1月1日~平成31年12月31日・・・1.6%
※平成31年は2019年

2.役員に対する無利息又は低利率による貸付けが給与課税されない場合

 上述したように、会社が役員に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合には、通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際収受した利息の額との差額に相当する金額は、その役員に供与した経済的利益となり給与課税されます。
 しかし、課税されない場合が所得税基本通達36-28に「課税しない経済的利益・・・金銭の無利息貸付け等」として定められています。
 これは、金銭の無利息又は低利率による貸付けにより受ける経済的利益であっても、次に掲げるものについては課税しなくても差し支えないというものです。

(1)災害、疾病等により臨時的に多額な生活資金を要することとなった役員に対 し、その資金に充てるために貸し付けた金額につき、その返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける経済的利益
(2)役員に貸し付けた金額につき、会社における借入金の平均調達金利(例えば、会社が貸付けを行った日の前事業年度中における借入金の平均残高に占める前事業年度中に支払うべき利息の額の割合など合理的に計算された利率)など合理的と認められる貸付利率を定め、これにより利息を徴している場合に生じる経済的利益
(3)(1)及び(2)の貸付金以外の貸付金につき受ける経済的利益で、法人の一事業年度における利益の合計額が5,000円(法人の事業年度が1年に満たないときは、5,000円にその事業年度の月数(1月未満の端数は1月に切り上げた月数)を乗じて12で除して計算した金額)以下のもの

3.まとめ

 今回の記事をまとめると、会社が役員に金銭を貸し付けた場合の利率の基準は以下のようになります。

(1)会社が他から借り入れて役員に貸し付けた場合は、その借入金の利率
(2)その他の場合は、特例基準割合による利率と、借入金の平均調達金利など合理的と認められる利率のいずれか低い利率

役員に社宅を貸す場合の家賃はいくらが妥当か?

 役員に社宅を貸す場合は、役員から一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます)を徴収していれば、給与課税されません。
 賃貸料相当額は、貸与する社宅の床面積により小規模住宅とそれ以外の住宅とに分け、以下のように計算します。
 ただし、この社宅が、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅である場合は、次の計算式の適用はなく、時価(実勢価額)が賃貸料相当額になります。
 いわゆる豪華社宅であるかどうかは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。
 なお、床面積が240平方メートル以下のものについては、原則として、プール等や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものを除き、次の算式によることとなります。

1.小規模住宅の場合

 賃貸料相当額は、次の①~③の合計額になります(従業員に社宅を貸す場合の計算式と同じです)。
 ①その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
 ②12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
 ③その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
 なお、小規模住宅とは、建物の耐用年数が30年以下の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、建物の耐用年数が30年を超える場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。

2.小規模住宅でない場合

 役員に貸与する社宅が小規模住宅に該当しない場合には、その社宅が自社所有の社宅か、他から借り受けた住宅等を役員へ貸与しているのかで、賃貸料相当額の算出方法が異なります。

(1) 自社所有の社宅の場合

 次の①と②の合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
  ①その年度の建物の固定資産税の課税標準額×12%
  (建物の耐用年数が30年を超える場合は12%ではなく10%を乗じます)
  ②その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%

(2) 他から借り受けた住宅等を貸与する場合

 会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記(1)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。

3.注意点

 役員に無償で社宅を貸す場合には、この賃貸料相当額の全額が給与課税されます。
 役員から賃貸料相当額より低い家賃を徴収している場合には、賃貸料相当額と徴収している家賃との差額が、給与課税されます。
 現金で支給する住宅手当や、役員が直接契約している場合に会社が負担する家賃は、社宅の貸与とは認められないので給与課税されます。

従業員に社宅を貸す場合の家賃はいくらが妥当か?

1.妥当な家賃

 従業員(使用人)に社宅を貸す場合は、従業員から一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます)を徴収していれば、給与課税されません。
 賃貸料相当額とは、次の(1)~(3)の合計額をいいます。
 (1)その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
 (2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
 (3)その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

2.注意点

 従業員に無償で社宅を貸す場合には、この賃貸料相当額の全額が給与課税されます。
 従業員から賃貸料相当額より低い家賃を徴収している場合には、賃貸料相当額と徴収している家賃との差額が、給与課税されます。
 しかし、賃貸料相当額の50%以上の家賃を従業員から徴収している場合は、賃貸料相当額と徴収している家賃との差額は、給与課税されません。
 現金で支給する住宅手当や、従業員が直接契約している場合に会社が負担する家賃は、社宅の貸与とは認められないので給与課税されます。