個人事業主の預貯金の受取利息に関する所得税と消費税の取扱い

 預貯金の利息や貸付金の利息を受け取ったときの会計処理は、法人と個人事業主で異なります。
 今回は、個人事業主が受け取る預貯金(事業用)の利息をピックアップして、その会計処理等について所得税法上と消費税法上の取扱いについて確認します。

1.法人は「受取利息」個人は「事業主借」

 例えば、預貯金口座に500円の利息が振り込まれたとします。この場合、法人では貸方の勘定科目を「受取利息」で会計処理をしますが、個人事業主の場合は「事業主借」で会計処理をします。
 これは、所得税法上は、預貯金の利息は事業所得ではなく「利子所得」に区分されるからです。「受取利息」で仕訳をすると預貯金の利息が事業所得の収入金額となってしまいますので、「事業主借」で仕訳をして事業所得の計算に預貯金利息を反映させないようにします。

2.「事業主借」の消費税課税区分

 勘定科目は「事業主借」にしますが、ここで気になるのが、「事業主借」の消費税課税区分(課税、非課税、免税、不課税)です。
 個人事業主が課税事業者で原則課税を適用している場合、課税売上割合を算定しなければなりません。
 受取利息の課税区分は、法人でも個人事業主でも非課税売上です。一般的に、会計ソフトでは「事業主借」勘定は不課税(対象外)で初期設定されていることが多いと思われますが、入力の際には、非課税売上に変更することを忘れないようにしなければなりません。
 所得税法上は「事業主借」として事業所得の計算から除外した預貯金利息ですが、消費税法上は事業付随行為(消費税法基本通達5-1-7)として消費税の計算に反映させなければなりません。

5-1-7 令第2条第3項《付随行為》に規定する「その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」には、例えば、事業活動の一環として、又はこれに関連して行われる次に掲げるようなものが該当することに留意する。
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(4) 利子を対価とする事業資金の預入れ

3.預貯金利息に係る源泉所得税等

 預貯金の利息が口座に振り込まれる際には、次の税金が差し引かれます。

(1) 所得税及び復興特別所得税:15.315%
(2) 道府県民税利子割:5%

 法人の場合は(1)だけですが、個人事業主の場合は(1)と(2)の合計20.315%が差し引かれます。
 例えば、預金口座に1,000円の利息が振り込まれた場合、差し引かれた税金は次のようになります。

(1) 法人の場合:1,000÷(1-0.15315)≒1,180 1,180×0.15315≒180
(2)個人の場合:1,000÷(1-0.20315)≒1,254 1,254×0.20315≒254

 ここで新たな疑問が生じます。預貯金利息の勘定科目は「事業主借」、その消費税課税区分は「非課税売上」とすることを確認しましたが、その金額は源泉徴収前と源泉徴収後のどちらにすればいいのでしょうか?
 これについては、消費税法基本通達10-1-13(源泉所得税がある場合の課税標準)に次のように規定されています。

10-1-13 事業者が課税資産の譲渡等に際して収受する金額が、源泉所得税に相当する金額を控除した残額である場合であっても、源泉徴収前の金額によって消費税の課税関係を判定するのであるから留意する。

 この通達から、消費税法上非課税売上として計上すべき受取利息の金額は、源泉徴収前の金額ということになります。
 したがって、個人事業主が預貯金の利息を受け取ったときは、勘定科目は「事業主借」、消費税課税区分は「非課税売上」、金額は「源泉徴収前」で会計処理をします。

 例えば、上記の例(源泉徴収後の利息1,000円が口座に振り込まれたとき)の個人事業主の仕訳を示すと、次のようになります(カッコ内は消費税課税区分)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金
(対象外)
1,000 事業主借
(非課税売上)
1,254
事業主貸
(対象外)
254    

 所得税法上は、次のように源泉徴収後の金額で仕訳しても問題はありません。消費税法上も免税事業者であれば問題ありませんが、課税事業者の場合は、消費税額に与える影響は小さいかもしれませんが、厳密には上記のように仕訳します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金
(対象外)
1,000 事業主借
(非課税売上)
1,000