ふるさと納税の一足早い駆け込み需要

 例年であれば、年末に集中するふるさと納税ですが、今年(2023(令和5)年)は9月中に駆け込みでふるさと納税をする人が増えているようです。その背景には、総務省が今年の6月に行ったふるさと納税の自治体側のルールの見直しが影響しているものと思われます。
 今回は、ふるさと納税についてどのような改正があったのかを確認します。

1.自治体側のルール改正

 ふるさと納税をしようとする人は、ふるさと納税ポータルサイトなどでその年の自分の所得に応じた「ふるさと納税限度額」を確認した上で、ふるさと納税をしています。
 今回総務省が見直しを行ったのは、ふるさと納税をする寄附側のルールではなく、寄附を募る自治体側のルールです。

 これまでもふるさと納税を受ける自治体側には、「返礼品は寄附額の3割以内でなければならない」とか「地場産品でなければならない」などの他に、「返礼品を含む必要経費は寄附額の5割以下」というルールがありました。
 このルールは、ふるさと納税の過度な返礼品競争を防ぐため、返礼品の調達費用や送料など、自治体が寄附を募る経費の総額を寄附額の5割以下とする基準です。

 ところが、総務省によると、寄附を受領したことを示す書類の発送費用などを含めると5割を超えるケースが相次いで確認されたことから、今回の改正(基準の厳格化)に至りました。
 改正内容は次のとおりで、2023(令和5)年10月1日から2024(令和6)年9月30日まで適用されます。

(1) 募集に要する費用について、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄付金額の5割以下とする(募集適正基準の改正)
(2) 加工品のうち熟成肉と精米について、原材料がふるさと納税の対象となる地方団体と同一の都道府県産であるものに限り、返礼品として認める(地場産品基準の改正)

※ 熟成肉などを返礼品としていながら、原料は別の都道府県から仕入れ、その自治体で熟成させたケースなどがあったため、熟成肉と精米については原材料がその都道府県で生産されたものに限るとしています。

2.返礼品の実質的な値上げ

 上記1.(1)の改正により、返礼品だけではなく、送料、書類代、送付の人件費や広告宣伝費なども含めて寄付額の5割以下にするには、寄附額に占める返礼品の割合を下げたり、寄附額を引き上げるなどの方策が考えられますが、いずれにしても返礼品の実質的な値上げと言えそうです。
 このような事情を背景に、9月中にふるさと納税をしようとする人が増えたため、一足早い駆け込み需要につながっているものと思われます。