所得税の予定納税

1.予定納税とは

 予定納税とは、その年の5月15日(特別農業所得者は9月15日)現在で確定している前年分の所得金額、税額などを基に計算した下記2の予定納税基準額が15万円以上である場合、その年の所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納付するという制度です。あらかじめ納付した予定納税額については、確定申告において精算されます。

 なお、特別農業所得者とは、その年において農業所得の金額が総所得金額の7割を超え、かつ、その年9月1日以後に生じる農業所得の金額がその年の農業所得の金額の7割を超える者をいいます。

2.予定納税基準額の計算方法

  予定納税基準額は、次の(1)又は(2)のようになります。

(1) 次のいずれにも該当する者は、その者の前年分の申告納税額がそのまま予定納税基準額となります。

① 前年分の所得金額のうちに、山林所得、退職所得等の分離課税の所得(分離課税の上場株式等の配当所得等を除きます)及び譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得の金額がないこと。
② 前年分の所得税について災害減免法の規定の適用を受けていないこと。

(2) 上記(1)に該当しない者については、次の算式により予定納税基準額を計算します(前年に災害減免法の適用を受けている場合は、その適用がなかったものとして計算します)。

 予定納税基準額={(①+②)-前年の税額控除額-③}×102.1%

① 前年の課税総所得金額(譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得を除いて計算)に対する税額
② 前年の分離課税の上場株式等に係る課税配当所得等の金額に対する税額
③ 前年の所得税に係る源泉徴収税額(上記①及び②の計算対象所得に係るものに限ります)

3.予定納税額等の通知

 上記2の予定納税基準額が15万円以上になる者に対しては、所轄の税務署長から、その年の6月15日(特別農業所得者の場合は10月15日)までに予定納税基準額及び予定納税額が書面で通知されます。

4.予定納税額及び納付期間

 予定納税額は、上記2の予定納税基準額の3分の1相当額を、第1期分として7月1日から7月31日までに、第2期分として11月1日から11月30日までに納めることになっています(特別農業所得者以外)。

 前年において特別農業所得者である者及びその年に特別農業所得者として見込まれるとして承認を受けた者は、予定納税基準額の2分の1相当額を第2期分として11月1日から11月30日までに納めることになっています。

5.予定納税の減額申請

 その年の6月30日の現況で所得税及び復興特別所得税の申告納税見積額が、下記6の事由により予定納税基準額よりも少なくなる者は、7月15日までに所轄の税務署長に「予定納税額の減額申請書」を提出して承認されれば、予定納税額は減額されます。
 また、第2期分の予定納税額だけの減額申請は11月15日までとなります(この場合には、10月31日の現況において見積ることとなります)。
 なお、これらの期限が土曜日、日曜日又は祝日に当たるときは、その翌日が期限とみなされます。

※ 申告納税見積額は、該当年分の税制に基づき計算します。退職所得、源泉分離課税の利子所得や配当所得及び確定申告をしないことを選択する配当等は含めません。

6.予定納税の減額申請の対象事由

 減額申請ができる場合の事由としては、以下のようなものが挙げられます。

(1) 廃業、休業、失業
(2) 業況不振などのため所得が前年より明らかに少なくなる
(3) 災害や盗難、横領により事業用資産や山林に損害を受け資産損失が生じる
(4) 災害や盗難、横領による損失で雑損控除を受ける
(5) 多額の医療費の支出による医療費控除の適用又はその増加
(6) 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、寡夫控除の対象者の増加
(7) 社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除の控除額の増加や、一定の寄附金の支出による寄附金控除の適用
(8) (特定増改築等)住宅借入金等特別控除、政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除などの税額控除の適用又はその増加

7.予定納税の減額申請が認められる場合

 次の(1)又は(2)に該当する場合は、減額申請は認められます。

(1) 申告納税見積額の計算の基準日(6月30日又は10月31日)までに生じた事業の全部若しくは一部の廃止、休止若しくは転換、失業、災害、盗難若しくは横領による損害又は医療費の支払があったことにより、申告納税見積額が予定納税基準額に満たない場合
(2) 申告納税見積額の計算基準日の現況による申告納税見積額が予定納税基準額の70%相当額以下となる場合

8.死亡又は出国の場合の予定納税

 予定納税額を納付する居住者(総合課税の適用を受ける非居住者を含みます)に該当するか否かは、その年6月30日(特別農業所得者はその年10月31日)の現況によります。そのため、同日以前に死亡した者及び同日以前に出国した者で総合課税の適用を受けない非居住者は、予定納税額の納付義務はありません。

 一方、予定納税基準額が15万円以上の居住者がその年7月1日以後(特別農業所得者はその年11月1日以後)に死亡又は出国した場合は、予定納税額の納付義務があります。この場合、準確定申告の際に、第1期分、第2期分(特別農業所得者は第2期分)を予定納税額の欄に記載し、これらを控除した金額が第3期分となります。

 なお、予定納税額を納付すべき者が出国する場合には、出国後に納期限が到来する税額についても、その出国の日までに納付する必要があります。ただし、出国時までに納税管理人の届出をすれば所得税法上の出国とはならないため、通常どおり、第1期、第2期の納期限までにそれぞれ納付することになります。

配偶者控除が適用される給与収入限度額が150万円に引き上げられた?

 2017年度(平成29年度)税制改正で、就業調整を意識せずにすむような環境づくりを目指して、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが行われました。この改正は、2018年分(平成30年分)の所得税から適用されます。

1.給与収入限度額はあくまでも103万円

 配偶者控除の改正点は、配偶者控除を受けることができる納税者本人に所得制限が設けられたという点のみであり、当時の一部報道等に見受けられた「配偶者控除の適用を受けられる給与収入限度額が150万円に引き上げられた」とされる点は、配偶者特別控除においての改正点です。
 つまり、配偶者控除の適用を受けられる配偶者の給与収入限度額はあくまでも103万円以下であり、38万円の配偶者特別控除が適用される給与収入限度額が150万円以下に引き上げられたものです(ただし、納税者本人の給与収入が1,120万円以下であることが必要です)。

 以下で、配偶者控除と配偶者特別控除の改正点について述べていきます。

2.配偶者控除の改正点

 配偶者控除の額は、改正前は配偶者控除の適用を受ける納税者本人の所得の多寡にかかわらず38万円でしたが、改正後は納税者本人の合計所得金額に応じ、次のようになりました。

(1) 納税者の合計所得金額が900万円以下・・・控除対象配偶者38万円、老人控除対象配偶者48万円
(2) 納税者の合計所得金額が900万円超950万円以下・・・控除対象配偶者26万円、老人控除対象配偶者32万円
(3) 納税者の合計所得金額が950万円超1,000万円以下・・・控除対象配偶者13万円、老人控除対象配偶者16万円
(4) 納税者の合計所得金額が1,000万円超・・・適用なし

 なお、合計所得金額900万円は給与収入では1,120万円に、950万円は1,170万円に、1,000万円は1,220万円になります。
 また、この改正により、納税者と生計を一にする配偶者で合計所得金額が38万円以下の配偶者は「同一生計配偶者」と定義され、同一生計配偶者のうち合計所得金額が1,000万円以下である納税者の配偶者は「控除対象配偶者」と定義されました。

3.配偶者特別控除の改正点

 2017年度(平成29年度)税制改正で、配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額の範囲が38万円超(給与収入で103万円超)から123万円以下(給与収入で201万円以下)とされ、配偶者特別控除額を納税者及び配偶者の合計所得金額に応じて、次のとおりとされました。

(1) 納税者の合計所得金額が900万円以下
① 配偶者の合計所得金額が38万円超85万円以下・・・38万円
② 配偶者の合計所得金額が85万円超90万円以下・・・36万円
③ 配偶者の合計所得金額が90万円超95万円以下・・・31万円
④ 配偶者の合計所得金額が95万円超100万円以下・・・26万円
⑤ 配偶者の合計所得金額が100万円超105万円以下・・・21万円
⑥ 配偶者の合計所得金額が105万円超110万円以下・・・16万円
⑦ 配偶者の合計所得金額が110万円超115万円以下・・・11万円
⑧ 配偶者の合計所得金額が115万円超120万円以下・・・6万円
⑨ 配偶者の合計所得金額が120万円超123万円以下・・・3万円
⑩ 配偶者の合計所得金額が123万円超・・・適用なし

(2) 納税者の合計所得金額が900万円超950万円以下
① 配偶者の合計所得金額が38万円超85万円以下・・・26万円
② 配偶者の合計所得金額が85万円超90万円以下・・・24万円
③ 配偶者の合計所得金額が90万円超95万円以下・・・21万円
④ 配偶者の合計所得金額が95万円超100万円以下・・・18万円
⑤ 配偶者の合計所得金額が100万円超105万円以下・・・14万円
⑥ 配偶者の合計所得金額が105万円超110万円以下・・・11万円
⑦ 配偶者の合計所得金額が110万円超115万円以下・・・8万円
⑧ 配偶者の合計所得金額が115万円超120万円以下・・・4万円
⑨ 配偶者の合計所得金額が120万円超123万円以下・・・2万円
⑩ 配偶者の合計所得金額が123万円超・・・適用なし

(3) 納税者の合計所得金額が950万円超1,000万円以下
① 配偶者の合計所得金額が38万円超85万円以下・・・13万円
② 配偶者の合計所得金額が85万円超90万円以下・・・12万円
③ 配偶者の合計所得金額が90万円超95万円以下・・・11万円
④ 配偶者の合計所得金額が95万円超100万円以下・・・9万円
⑤ 配偶者の合計所得金額が100万円超105万円以下・・・7万円
⑥ 配偶者の合計所得金額が105万円超110万円以下・・・6万円
⑦ 配偶者の合計所得金額が110万円超115万円以下・・・4万円
⑧ 配偶者の合計所得金額が115万円超120万円以下・・・2万円
⑨ 配偶者の合計所得金額が120万円超123万円以下・・・1万円
⑩ 配偶者の合計所得金額が123万円超・・・適用なし

 なお、合計所得金額900万円は給与収入では1,120万円に、950万円は1,170万円に、1,000万円は1,220万円になります。

ふるさと納税制度の見直し

1.寄附金控除の概要

 個人が国や地方公共団体、公益社団法・公益財団法人などに「特定寄附金」を支払った場合には、寄附金控除として所得から控除することができます。

 特定寄附金とは、以下のものをいいます。

(1) 国、地方公共団体に対する寄附金
(2) 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金のうち財務大臣が指定したもの
(3) 特定公益増進法人に対する寄附金
(4) 特定公益信託に支出した金銭
(5) 政治活動に関する寄附金
(6) 認定特定非営利活動法人(いわゆる認定NPO法人)に対する寄附金
(7) 特定新規株式を払込みにより取得した場合の取得金額(1,000万円が限度)

 なお、上記(3)のうち公益社団法人・公益財団法人、私立学校法人(学校の設置等を主たる目的とする法人)、社会福祉法人、更正保護法人に対するもの、(5)のうち政党、政治資金団体に対するもの、(6)については、寄附金控除(所得控除)に代えて税額控除を選択することができます。

 寄附金控除額は、次の算式で計算します。

(1) 寄附金の金額-2,000円
(2) 総所得金額等×40%-2,000円
(3) 寄附金控除額((1)と(2)の金額のいずれか少ない方の金額)

 上記算式の総所得金額等とは、純損失、雑損失、その他の各種損失の繰越控除後の申告書第一表の所得の合計額、申告書第三表の株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等の配当所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、土地等の譲渡所得の金額(特別控除前)、退職所得の金額、山林所得の金額を合計した金額をいいます(参考記事:「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」)。 

2.ふるさと納税の概要

 ふるさと納税制度は、上記1.(1)の特定寄付金のうち自分の選んだ自治体(都道府県・市区町村)、自分の住所地の都道府県共同募金会、自分の住所地の日本赤十字社支部などに対する寄附金で、所得税の寄附金控除(所得控除)と住民税の税額控除(住民税所得割額の20%相当額を限度)の両方を受けることができる制度です。
 寄附金のうち、2,000円を超える部分について、一定限度額まで所得税と住民税から原則として全額が控除されます。
 2,000円を除く全額が控除できる寄附金の限度額(ふるさと納税限度額)については、ふるさと納税に関する各種サイトでシミュレーションすることができます。

 なお、確定申告が不要の給与所得者でふるさと納税先が5団体以内の場合は、「ふるさと納税ワンストップ特例」を選択することにより、確定申告をしなくても住民税の税額控除を受けることができます。

3.ふるさと納税ワンストップ特例の注意点

 2015年(平成27年)4月1日以後に都道府県・市区町村に対して寄附金を支払った場合は、ワンストップで住民税の税額控除を受けられる特例制度が適用可能となりました。
 適用対象者と適用要件、注意点は次のとおりです。

(1) 適用対象者(次のいずれにも該当)
① 寄附金を支出する年の所得税の確定申告義務がない者又は申告不要制度の適用を受ける者
② 住民税の寄附金税額控除を受ける目的以外に申告書の提出を要しない者

(2) 適用要件
① 地方団体に対する寄附が年間5以下であること
② 寄附の都度、ワンストップ特例申請書を地方団体に提出すること

(3) 注意点
① 同一年に同一の地方団体に複数回寄附をするときで寄附の都度申請を行う場合の地方団体のカウント数は1となります。
② 提出済の申請書の内容に変更があった場合(住所、氏名等の変更等)は、翌年1月10日までに寄附先の地方団体に変更届出書を提出します。

4.ふるさと納税制度の見直し

 2019年度(平成31年度)改正では、ふるさと納税制度の健全な発展に向けて、一定のルールの中で地方公共団体が創意工夫することにより全国各地の地域活性化に繋げるため、過度な返礼品を送付し、制度の趣旨を歪めているような団体については、ふるさと納税の対象外にすることができるように制度が見直されました。

 今後は、総務相が地方財政審議会の意見を聴いた上で、次の基準に適合する地方公共団体をふるさと納税の対象として指定されます。

(1) 寄附金の募集を適正に実施する地方公共団体
(2) ((1) の地方公共団体で)返礼品を送付する場合には、返戻割合が3割以下で地場産品とする地方公共団体

 なお、制度の見直しは、2019年(令和元年)6月1日以後に支出される寄附金について適用されます。指定対象外の団体に対して同日以後に支出された寄附金については、特例控除の対象外となりますのでご注意ください。

※ 新制度の対象として指定されなかった大阪府泉佐野市、静岡県小山(おやま)町、和歌山県高野(こうや)町、佐賀県みやき町の4つの市町と、新制度利用を申し込まなかった東京都に寄付しても税制の優遇はなくなります。
(2019年(令和元年)5月14日更新)

※ 2020年(令和2年)6月30日最高裁第三小法廷判決(泉佐野市の逆転勝訴)を受けて、総務省は指定から除外していた大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町を指定してふるさと納税の特例控除の対象としました。
(2020年(令和2年)7月4日更新)

改元で気づいた源泉所得税納付書の書き方

1.新元号と源泉所得税納付書の書き方

 2019年(平成31年)4月1日に、5月1日以降の新元号「令和」が発表されました。この改元に伴い、「平成」が印字された源泉所得税の納付書の記載のしかたが国税庁ホームページで公表されました。

 公表された「改元に伴う源泉所得税の納付書の記載のしかた(リーフレット)」によると、改元後においても「平成」が印字された源泉所得税納付書は使用できるようです。
 新元号が印字された納付書は、税務署で本年 10月以降に順次配布予定とのことですので、それまでの間は現在手元にある「平成」が印字された納付書を使用することになります(10月以降も「平成」が印字された納付書の使用は可能です)。

 「平成」が印字された納付書の記載にあたっては、以下の点に注意しなければなりません。

(1) 現在手元にある納付書に印字されている「平成」の二重線による抹消や新元号の「令和」の追加記載などにより補正をする必要はありません。

(2) 2019年(平成 31 年)4月1日から2020年(令和2年)3月末日の間に納付する場合、納付書左上「年度欄」は「31」と記載します。

 上記2点について、リーフレットでは【「平成」が印字された納付書の記載にあたってのお願い】となっていますが、(1)はしてはいけないこと、(2)はしなければならないこと、と認識しておく必要があります。 

 (1)については、補正をすると数字の読み取りが難しくなることもあるため、それを避けるための措置だと思われます。
 (2)については、例えば2019年(令和元年)5月10日に納付する場合でも「年度欄」には「31」と記載し、「01」と記載してはいけないということです(税務署側の管理上の都合でしょうか?)。
 「平成」が印字された納付書の具体的な記入方法については上記リーフレットに載っていますので、そちらを参照してください。 

2.ずっと間違っていた源泉所得税納付書の書き方

 納付書の書き方をリーフレットで確認していて、気づいたことがありました。リーフレットには、2020年(令和2年)3月10日に2月支給給与の源泉所得税を納付する場合の記入例が載っていたのですが、「年度欄」には上記1.(2)で確認したとおり「31」と記入されています。

 ここでハッと気づきました。 納付する場合?納付?

 この業界に入って以来、これまでずっと源泉所得税を「納付する年月」ではなく、給与を「支給した年月」でこの欄を記入していたのです。

 例えば、2018年(平成30年)1月から12月までに支給する給与に係る源泉所得税納付書には「30」と記入し、年が変わった2019年(平成31年)1月に支給する給与に係る源泉所得税納付書から「31」と記入していました(実際、今年(2019年)の1月分納付書(納期限2月12日)の「年度欄」にも「31」と記入しています)。

 国税庁ホームページで調べてみると、「納付書の記載のしかた(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)」に次のことが書いてありました。

「年度」(会計年度(平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間に納付する場合には、「30」)を記載します。)・・・・・・

 ということは、平成31年1月分は平成31年3月31日までに納付しますので、年度は「31」ではなく「30」を記入することになります。

 税務署から間違いを指摘されたことはありませんが、これまで当たり前に行っていたことが、実は間違っていたということです。

2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される税制改正項目

 今日から2019年度(平成31年度)が始まります。新元号も「令和」に決まりましたので、2019年5月1日以降の和暦は「令和」と表記します。

 2019年度(平成31年度)税制改正大綱は、2018年(平成30年)12月14日に発表され同年12月21年に閣議決定されました。
 今回は、この2019年度(平成31年度)税制改正項目と2018年度(平成30年度)以前の税制改正項目のうち、新年度から適用開始される項目(創設、改正、延長)について、法人税、所得税、消費税の税目別に整理します。

1.法人税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(創設、改正、延長)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 創設される項目

① 防災・減災設備の特別償却制度

 改正中小企業等経営強化法施行日から2021年(令和3年)3月31日までに、青色申告書を提出する中小企業者のうち中小企業等経営強化法の認定を受けたものが一定の防災・減災設備等を取得等した場合は、取得価額の20%の特別償却が可能となります。

② 法人が有する仮想通貨に係る整備

 2019年(平成31年)4月1日以後終了事業年度分から、法人が期末に保有する仮想通貨について、時価法等により評価損益を計上等することとされます。

(2) 改正される項目

① 研究開発税制の見直し

 試験研究を行った一定のベンチャー企業の税額控除限度額が25%から40%に引き上げられます。
 オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)における税額控除上限が、法人税額の5%から10%に引き上げられます。

② みなし大企業の範囲の見直し

 100%グループ法人内の複数の大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等)に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている法人も、みなし大企業の範囲を決める大規模法人に該当することになります。

③ 業績連動給与の手続き要件の見直し

 「業務執行役員が報酬委員会等の委員ではないこと」の要件が除外等されます(経過措置あり)。

④ 地域未来投資促進税制の見直し

 一定の要件を満たす場合は、機械装置及び器具備品の特別償却率を40%から50%に、税額控除率を4%から5%にそれぞれ引き上げられます。

(3) 延長される項目

① 中小企業者等の法人税の軽減税率特例

 中小企業者等に対する法人税の軽減税率15%(年800万円以下の所得に対する税率。本則は19%)の特例が、2021年(令和3年)3月31日まで2年延長されます。

② 中小企業向け設備投資減税

 中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制について、2021年(令和3年)3月31日まで2年延長されます(本ブログ記事「税制改正による2019年4月1日以降の設備投資税制」を参照)。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限(2021(令和3)年3月31日)の到来をもって廃止されています。

2.所得税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(改正)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 改正される項目

① 住宅ローン控除の拡充等

 消費税率が2019年(令和1年)10月1日以降、8%から10%に引き上げられます。
 これに伴い、消費税率10%が適用される住宅取得等のうち2019年(令和1年)10月1日から2020年(令和2年)12月31日までに取得等する住宅については、現行10年の控除期間が3年延長されて13年間控除できるようになります。

② 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の延長等

 被相続人から相続した居住用家屋等の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例の適用要件が、次のように緩和されます。

イ.被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ相続の開始の直前まで老人ホーム等に入居していたこと

ロ.被相続人が老人ホーム等に入所をしたときから相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ事業の用、貸付の用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと

 上記要件を満たす場合は、相続の開始直前まで被相続人が対象の家屋を居住の用に供していたものとみなされ、被相続人が相続の開始直前に老人ホーム等に入居している場合でも、特例を受けることができます(2019年(平成31年)4月1日以降の譲渡に適用されます)。

3.消費税

 2019年(平成31年)4月1日以後に適用開始される項目(改正)のうち、主要な項目とその概要は、次のとおりです。

(1) 改正される項目(2019年度(平成31年度)改正)

① 輸出物品販売場制度の見直し

 既に輸出物品販売場の許可を受けている事業者に限り、臨時販売場での免税販売が認められます。2019年(令和1年)7月1日から適用されます。

② 金地金等の密輸に対応するための仕入税額控除制度の見直し

 2019年(平成31年)4月1日以降、密輸と知りながら行った課税仕入れの仕入税額控除が認められないほか、本人確認書類の写しの保存が要件に加わります。
 本人確認書類の写しの保存要件は、2019年(令和1年)10月1日以後に行う課税仕入れから適用されます。

(2) 改正される項目(2018年度(平成30年度)以前改正)

 2019年(令和1年)10月1日以降、消費税率が8%から10%に引き上げられます。
これに伴い、軽減税率制度(概要は省略)、区分記載請求書等保存方式(概要は省略)、簡易課税制度の事後選択特例、簡易課税制度のみなし仕入率の見直しが行われます。

① 簡易課税制度の事後選択特例

 「簡易課税制度選択届出書」を提出した課税期間から同制度を適用できる時限的措置です。
 2019年(令和1年)10月1日から2020年(令和2年)9月30日までの日の属する課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば適用されます。

② 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し

 2019年(令和1年)10月1日以降、第3種事業である農業・林業・漁業のうち、軽減税率が適用される飲食料品の譲渡を行う事業が第2種事業とされ、そのみなし仕入率は80%が適用されます。

セミナー講師料を支払った場合の源泉徴収

 セミナーや社内研修などで、外部から弁護士等を講師として招き、講演を依頼する企業も多いと思います。セミナー等を開催した企業は、その支払う講師料から所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。

 源泉徴収の対象は、原則として消費税を含めた金額ですが、請求書等で報酬と消費税が明確に区分されている場合は、その報酬の額のみを源泉徴収の対象とすることができます。
 例えば、弁護士に講師料54,000円(消費税4,000円を含む)を支払う場合、50,000円×10.21%=5,105円を源泉徴収し、講師には54,000円-5,105円=48,895円を渡します。

 また、源泉徴収した企業は、その所得税及び復興特別所得税5,105円を、支払った月の翌月10日までに税務署に納めなければなりません。納期の特例の対象にはなりませんので、ご注意下さい。

退職所得の受給に関する申告書を提出した人が還付を受けるためにする確定申告

1.退職金支給時の源泉徴収

 従業員の方に退職金を支給する場合には、その支給額から所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
 源泉徴収の方法は、退職する従業員の方から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けているかどうかにより異なります。

(1) 「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合

 退職金の支給額から下記算式で計算した退職所得控除額を控除した残額を2分の1にした額(1,000円未満の端数は切り捨てます。)が課税退職所得金額となります。

① 勤続年数が20年以下の場合
  勤続年数×40万円(80万円未満の場合には80万円)
② 勤続年数が20年超の場合
(勤続年数-20年)×70万円+800万円

 上記算式において、長期欠勤や休職中の期間は勤続年数に含めますが、丙欄適用期間は除きます。また、勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げます。さらに、障害者になったことに基因して退職した場合は、上記の金額に100万円を加算します。
 ここで計算した課税退職所得金額に、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」の「税額」欄の算式に従い計算した額が、源泉徴収する税額になります。

(2) 「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けていない場合

 退職金の支給額に20.42%の税率を乗じて計算した額を源泉徴収します。この場合、退職金を受給した従業員ご本人が確定申告をして、(1)と同様の計算を行い源泉徴収税額を精算することになります。

2.退職所得を確定申告して所得税の還付を受ける

 上記1(1)のように、退職金の支給を受けた人で、その勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出した人については、源泉徴収だけで課税関係が完結し、退職所得に関しての確定申告は原則不要とされています。

 しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出した人でも、以下のように確定申告することによって所得税の還付を受けることができます。

(1) 控除しきれなかった所得控除額を退職所得から差し引くための確定申告

 退職所得以外の所得の合計額が所得控除の合計額未満である場合には、控除しき
れなかった所得控除の額を退職所得の金額から差し引くことによって、所得税の還付を受けることができます。

 例えば、給与所得が129万円、所得控除額が139万円の場合には、給与所得の金額から控除することができない所得控除額10万円(139万円―129万円)を退職所得の金額から差し引くことによって、所得税の還付を受けることができます。

(2) 退職所得で損益通算を受けるための確定申告

 損益通算とは、不動産所得、事業所得、山林所得及び譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額を、一定の順序に従い他の所得の金額から差し引くことをいいます。

 退職所得は、国内の銀行預金の利子所得のような源泉分離課税とされている所得と違い、源泉徴収だけで課税関係が終わり確定申告できないものではありません。
 その年に事業所得等の損失がある場合には、確定申告をして損益通算を受けることができます。

 例えば、給与所得が129万円、事業所得の損失が139万円の場合には、事業所得の損失のうち給与所得の金額から引ききれない10万円が退職所得の金額から控除されます。
 その結果、給与所得と退職所得につき源泉徴収された所得税の還付を受けることができます。

賃貸用不動産の取得に要した借入金を借り換えた場合の借入金利子の必要経費算入額

1.借入金利子の取扱い

 賃貸用の不動産を取得するために要した借入金の利子は、その支払時期によって次のように取り扱います。

(1) 不動産賃貸業開始後で不動産使用後の場合は、必要経費に算入します。
(2) 不動産賃貸業開始後で不動産使用前の場合は、必要経費に算入するか不動産の取得価額に算入するか選択します(所得税基本通達37-27)。
(3) 不動産賃貸業開始前の場合は、不動産の取得価額に算入します。

 上記(2)のようなケースもありますが、基本的には、借入金利子は業務開始前は取得価額に算入し、業務開始後は必要経費に算入します。
(借入金利子の取扱いについては、本ブログ記事「賃貸用不動産取得に要した借入金利子の必要経費算入と損益通算」を参照)

2.借り換えた場合の必要経費算入額

(1) 減額して借り換えた場合

 賃貸用不動産を取得するために要した借入金を、返済中に借り換える場合があります。
 この場合、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する借入金利子の額はいくらにすればいいでしょうか?

 所得税基本通達38-8の4では、次のように規定されています。

 「固定資産を取得するために要した借入金を借り換えた場合には、借換え前の借入金の額(借換え時までの当該借入金に係る未払利子を含む。)と借換え後の借入金の額とのうちいずれか低い金額は、借換え後もその固定資産の取得資金に充てられたものとして取り扱う。」

 例えば、借換え前(借換え時)の借入金の残高が500万円、借換え後の借入金の額が300万円だとしたら、低い金額の300万円を借換え後も固定資産の取得資金に充てられたものとします。
 したがって、必要経費に算入する借入金利子も、借換え後の300万円に対する利子になります。

(2) 増額して借り換えた場合

 上記(1)のように減額して借り換えた場合はわかりやすいのですが、増額して借り換えた場合は少し複雑です。
 例えば、借換え前(借換え時)の借入金残高が500万円、借換え後の借入金の額が700万円だとしたら、低い金額の500万円を借換え後も固定資産の取得資金に充てられたものとします。ここまではわかります。

 では、必要経費に算入する借入金利子はいくらにすればいいでしょうか?
 旧借入金500万円の返済予定表に記載されている利子を、借換え後は支払っていないにもかかわらず、必要経費に算入するのでしょうか?
 また、旧借入金の借換え時の残りの支払期間が5年で、新借入金の借換え後の支払期間が7年だとしたら、必要経費に算入できるのは5年だけということになるのでしょうか?

 いろいろと考えだすとわからなくなってしまいましたので、税務署に聞いてみました。
 回答は、「新借入金の利子を、借換え時の旧借入金残高と新借入金残高の比で按分して、旧借入金に対応する利子部分を必要経費に算入して下さい。」というものでした。

 簡単な数値例によって、次のようなケースを想定してみます。

借換え前(旧借入金:年利率1.2%)

返済日 返済額 元金 利子 残高
1月25日 105,800円 100,000円 5,800円 5,700,000円
2月25日 105,700円 100,000円 5,700円 5,600,000円
3月25日 105,600円 100,000円 5,600円 5,500,000円
4月25日 105,500円 100,000円 5,500円 5,400,000円
5月25日 105,400円 100,000円 5,400円 5,300,000円
6月25日 105,300円 100,000円 5,300円 5,200,000円
7月25日 105,200円 100,000円 5,200円 5,100,000円
8月25日 105,100円 100,000円 5,100円 5,000,000円
合計     43,600円  


借換え後(新借入金:年利率0.6%)

返済日 返済額 元金 利子 残高
        7,000,000円
9月20日 103,500円 100,000円 3,500円 6,900,000円
10月20日 103,450円 100,000円 3,450円 6,800,000円
11月20日 103,400円 100,000円 3,400円 6,700,000円
12月20日 103,350円 100,000円 3,350円 6,600,000円
合計     13,700円  

 このケースでは、必要経費に算入する借入金利子は次のようになります。

 43,600円+13,700円×5,000,000円/7,000,000円≒53,385円

不動産の貸付けでも事業所得となる場合

 不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得をいいます。
 不動産の貸付けによる所得は、事業として行われている場合でも事業所得とはならずに不動産所得となります。
  一方で不動産の貸付けによる所得は、人的役務の提供が主になるものや事業に付随して行われるものについては、事業所得や雑所得に区分されるものもあります。
 不動産の貸付けから生じる所得で、その所得区分を迷いやすい例を以下に挙げます。

1.不動産所得となるもの

(1) アパート、賃貸マンション、貸家、駐車場などの家賃収入
(2) 地上権、借地権などの貸付け、設定による収入(借地権等の設定のうち、一定金額以上の権利金を収入し た場合は、譲渡所得となります)
(3) 総トン数20トン以上の船舶の貸付収入
(4) 広告等のため、土地、家屋の屋上や側面などを使用させる場合の賃貸収入

2.事業所得又は雑所得となるもの

(1) ホテル、賄いつき下宿、時間貸し駐車場や自転車預り業の収入(事業又は雑)
(2) 従業員宿舎の収入(事業)
(3) 総トン数20トン未満の船舶の貸付収入(事業又は雑)
(4) 浴場業、飲食業における広告の掲示による収入(事業)

賃貸期間の経過に応じて返還しないこととなる敷金

1.不動産所得の収入計上時期

 不動産を賃貸したことにより収受する地代・家賃、共益費などは、契約や慣習などにより支払日が定められている場合はその定められた支払日、支払日が定められていない場合は実際に支払を受けた日(ただし、請求があったときに支払うべきものと定められているものは、その請求の日)に不動産所得の収入金額に算入します。
 また、不動産を賃貸することにより一時に受け取る権利金や礼金は、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、引渡しを必要としないものについては、契約の効力発生の日に収入金額に算入します。

 一方、敷金や保証金は本来は預り金ですから、受け取っても収入にはなりませんが、返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した日にその金額を収入金額に算入する必要があります。

2.賃貸期間の経過に応じて返還しないこととなる敷金

 不動産の賃貸の際に収受する敷金や保証金は、原則として退去時に借主に返還しますので、不動産所得の計算上その預かった年分の収入金額には算入しません。
 しかし、敷金・保証金について、賃貸期間の経過に応じて返還しない金額が増加する定めとなっている場合は、その増加する部分の金額をそれぞれの年分の収入金額に算入する必要があります。
 以下の具体例で、収入金額に算入する部分の金額を確認します。

(1) 賃貸借契約の内容

 2019年(平成31年)3月6日に収受した敷金が400,000円で、敷金の返還条件が次の場合。

①1年以内に解約したときは、敷金の10%を返還しない
②2年以内に解約したときは、敷金の15%を返還しない
③2年を超えて解約したときは、敷金の20%を返還しない

(2) 収入金額に算入する部分の金額

①の場合
400,000円×10%(居住期間にかかわりなく返還しない割合を乗じます)=40,000円を、2019年(平成31年分)の収入金額に算入します。

②の場合
400,000円×(15%-10%)=20,000円を、2020年(平成32年分)の収入金額に算入します。

③の場合
400,000円×(20%-10%-5%)=20,000円を、2021年(平成33年分)の収入金額に算入します。

 不動産所得の計算をするときは、敷金のすべてを預り金として処理する前に、敷金の返還条件を契約書で確認しておく必要があります。