JAの建物更生共済の掛金の内訳は必ず共済掛金領収証で確かめましょう

掛金が同じでも内訳は変わる

 JAの建物更生共済の掛金の内訳(必要経費・損金算入部分と積立部分)は、掛金が同額でも毎年一定ではないので注意しなければなりません。
 例えば、法人が掛金50万円を支払ったとき、前年に次のような仕訳をしていたとします。

借方 金額 貸方 金額
保 険 料 275,000 現金預金 500,000
保険積立金 225,000    

 この法人が今年も50万円の掛金を支払った場合、掛金が前年と同額なので仕訳も前年と同じでいいかというと、そうではありません。 

内訳は共済掛金領収証に載っている

 共済掛金領収証には、支払った共済掛金のうち必要経費・損金への対象となる額が「必要経費・損金対象額」として表示されています。
 この額が前年は275,000円でしたが、今年は280,000円になっていたとしたら、今年の仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
保 険 料 280,000 現金預金 500,000
保険積立金 220,000    

 法人の場合の仕訳は上記のようになりますが、個人事業主の場合は上記仕訳の「保険積立金」が「事業主貸」になります(保険料280,000円は事業割合100%を前提としています)。

非課税所得と勘違いしやすい給付金

 所得税が課税されないものとして、雇用保険法の「失業給付」や「再就職手当」などがよく知られています。
 また、求職者支援制度に基づき厚生労働省から支給される「職業訓練受講給付金」なども非課税所得です。
 これらの非課税所得のイメージ(役所から支給されるもの=非課税)から、本来は課税所得であるにもかかわらず、次のように非課税所得と混同されやすいものがあります(参考:国税庁ホームページ・文書回答事例)。

1.厚生労働省から支給される「訓練・生活支援給付金」は雑所得

 緊急人材育成支援事業による職業訓練等を受講する者に支給される訓練・生活支援給付金は、非課税ではなく雑所得となります。

2.厚生労働省による「訓練・生活支援資金融資による貸付金の返済免除益」は一時所得

 厚生労働省では、上記1の給付金の支給のみでは生活費が不足する者等を対象に、訓練・生活支援資金融資を実施し、生活に必要な資金を貸し付けています。
 この訓練・生活支援資金の融資を受けた訓練受講者が、訓練受講後に一定の要件を満たすこととなったときには、貸付元本額の50%に相当する額の返済が免除されます。
 この返還債務が免除されたことによる経済的利益は、非課税ではなく一時所得となります。

中小企業等経営強化法の認定が必要な設備投資税制

 2017(平成29)年度税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019(平成31)年3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。

 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 前回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べました。今回は、認定が必要な②中小企業経営強化税制と③固定資産税の特例について述べていきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、(中小企業経営強化法による)固定資産税の特例と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限の到来をもって廃止されています。

1.中小企業経営強化税制

 まず、中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得し指定事業の用に供した場合、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用するこ とができます。

(2) 適用期間

 2017(平成29)年4月1日~2019(平成31)年3月31日に取得した資産

※2019(平成31)年度税制改正によって、適用期限が2021(平成33)年3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 ① 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
  ロ.測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ハ.器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)
 ホ.ソフトウェア(情報を収集・分析・指示する機能)・・・70万円以上(5年以内に販売開始)

 ② 収益力強化設備(B類型)・・・投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
 イ.機械及び装置・・・160万円以上
 ロ.工具・・・30万円以上
 ハ.器具備品・・・30万円以上
 ニ.建物附属設備・・・60万円以上
 ホ.ソフトウェア・・・70万円以上

※2019(平成31)年度税制改正によって、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外するとともに、売電を予定している場合には計画の申請時に一定の書類添付が義務付けられることとなりました。

(5) 確認者

 ① A類型・・・工業会等の証明
 ② B類型・・・経済産業局の確認
 なお、A類型・B類型ともにその業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 即時償却又は税額控除(取得価額×10%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%の税額控除のみ)

(7) 留意事項

 中小企業経営強化税制は、適用できない業種(映画業を除く娯楽業、電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業等)があります。
 太陽光発電などのいわゆる売電は電気業に該当しますので、そのための設備は対象になりません。
 太陽光発電システム自体は対象設備ですので、自社工場用など売電ではないもの等については対象となります。
(太陽光発電設備の優遇税制については、本ブログ記事「中小企業等経営強化法に基づく太陽光発電設備の優遇税制について」を参照)

2.固定資産税の特例

 上記の中小企業経営強化税制と同じく、2017(平成29)年度税制改正により中小企業等経営強化法に係る固定資産税の特例も拡充され、従来は対象設備が機械装置に限定されていたのに対し、高効率の冷蔵陳列棚、省エネ空調等の器具備品、建物附属設備が対象設備に追加されました。
 以下では、固定資産税の特例(経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置)について、その概略を記していきます。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員1,000人以下の個人事業主を含む)が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の新品設備を取得等した場合、固定資産税(償却資産税)が3年間にわたって2分の1に軽減されます。
 要件や手続きは中小企業経営強化税制のA類型とほぼ同じため、一緒に手続きをすることが可能です。

(2) 適用期間

 2016(平成28)年7月1日~2019(平成31)年3月31日に取得した資産

(3) 指定事業

 中小企業投資促進税制の対象事業及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業

(4) 対象設備

 生産性向上設備(A類型)・・・生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備
 ① 機械及び装置・・・160万円以上(10年以内に販売開始)
 ② 測定工具及び検査工具・・・30万円以上(5年以内に販売開始)
 ③ 器具備品・・・30万円以上(6年以内に販売開始)
 ④ 建物附属設備・・・60万円以上(14年以内に販売開始)

 中小企業経営強化税制の対象設備であるソフトウェアは、固定資産税(償却資産税)の課税客体ではありません。

 2017(平成29)年度税制改正により対象に追加された設備(2017(平成29)年4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 業種が限定される地域は、最低賃金が全国平均以上の7都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大 阪)です。上記以外の40道県においては全業種が対象です。
 機械装置については、引き続き全国・全業種で対象になります。

(5) 確認者

 工業会等の証明
 なお、その業種を所轄する主務大臣に対し、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定が必要です。

(6) 措置内容

 固定資産税の課税標準が、3年間 2分の1に軽減。

(7) 留意事項

 2017(平成29)年度税制改正により対象に追加された設備(2017(平成29)年4月1日以降に取得した測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備)については、対象地域・対象業種が一部限定されます。
 いわゆる売電用の太陽光発電システムも対象設備になります。

 なお、経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置は、2019(平成31)年3月31日をもって終了します(期限の延長は行われません)。
 2019(平成31)年4月1日以降に取得等をした設備は、この特例措置の対象外となりますのでご注意ください。

※固定資産税の特例の廃止に伴い、2018(平成30)年度税制改正で創設された新固定資産税の特例については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。

中小企業等経営強化法の認定が不要の設備投資税制

 2017年度(平成29年度)税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
 この中小企業経営強化税制をはじめ、2019年(平成31年)3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。
 ①中小企業投資促進税制
 ②中小企業経営強化税制
 ③固定資産税の特例
 ④商業・サービス業・農林水産業活性化税制
 上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
 今回から2回に分けて、①~④の税制の概要を記していきます。今回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べていきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、固定資産税の特例と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限の到来をもって廃止されています。

1.中小企業投資促進税制

 まず、中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制に商業・サービス業・農林水産業活性化税制を盛り込む形で制度を一本化した上で、中小企業投資促進税制の適用期限が2023(令和5)年3月31日まで延長されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

(1) 制度概要

 青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の機械装置等を取得等し指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
 ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。
 なお、従来の上乗せ措置(生産性向上設備等を取得した場合の即時償却又は10%(7%)税額控除)が改組されて、中小企業経営強化税制が創設されました。

(2) 適用期間

 1998年(平成10年)6月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 製造業、建設業、農業、卸売業、小売業、サービス業等の一定の事業
不動産業、物品賃貸業、電気業、水道業、娯楽業(映画業を除く)、飲食店業のうち料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業、等は対象になりません。
 また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。

(4) 対象設備

 ① 機械及び装置・・・1台160万円以上
 ② 測定工具及び検査工具・・・1台120万円以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上
 ③ 一定のソフトウェア・・・一のソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上
 ④ 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
 ⑤ 内航船舶(取得価格の75%が対象)

(5) 措置内容

 特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)

(6) 留意事項

 中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。

2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

 次に、商業・サービス業・農林水産業活性化税制(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概要を記していきます。

※ 2021(令和3)年度税制改正で、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は適用期限の到来をもって廃止され、中小企業投資促進税制に一本化されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。

(1) 制度概要

 認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)から経営改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の経営改善に資する器具備品や建物附属設備を導入した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
 なお、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。

(2) 適用期間

 2013年(平成25年)4月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産

※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

(3) 指定事業

 卸売業、小売業、農林水産業、サービス業等
製造業、建設業、医療業、娯楽業(映画業を除く)、等は対象になりません。
 また、風俗営業法上の風俗営業に該当する料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業については、生活衛生同業組合の組合員が事業を行う場合に限り対象となります。
 なお、性風俗関連特殊営業に該当する事業については対象となりません。

(4) 対象設備

 ① 器具備品・・・1台の取得価額が30万円以上
 ② 建物附属設備・・・一の取得価額が60万円以上

(5) 確認者

 認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)

※2019年度(平成31年度)税制改正で、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることが適用要件に加わりました。
 この改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されます。
 なお、同日前に交付を受けた経営改善指導助言書類に係る経営改善設備のうち同年9月30日までに取得等をしたものについては、上記の確認を受けることを不要とする経過措置が講じられます。

(6) 措置内容

 特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
 税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
 (資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)

(7) 留意事項

 中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。

給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度の注意点

 2019年(平成31年)の確定申告期間は、2019年2月18日(月)~3月15日(金)です。この期間内に2018年分(平成30年分)の確定申告を行いますが、給与所得者と年金受給者には、他に所得があった場合でも確定申告を不要とする制度があります。
 今回は、この申告不要制度の主な注意点を述べていきます。

1.給与所得者の確定申告不要制度

 給与の収入金額が2,000万円以下の給与所得者は、通常はその給与について源泉徴収や年末調整が行われるため、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。
 しかし、給与所得者がこの申告不要規定を適用するにあたっては、以下の注意が必要です。

(1) この場合の確定申告不要の給与とは、居住者に対し国内において支払われる給与(源泉徴収された又はされるべき場合)をいいますので(所得税法121条1項)、給与所得及び退職所得以外の所得が20万円以下であっても確定申告が必要なケースがあります(所得税基本通達121-5)。
 例えば、国外から直接支払を受けた給与所得と10万円の雑所得がある場合は、給与所得及び退職所得以外の所得が20万円以下であっても確定申告をしなければなりません。

(2) この規定は確定申告を行う場合にも、20万円以下の所得を申告しなくてもよいという規定ではありません。確定申告を行う場合は、20万円以下の所得も申告しなければなりません。
 例えば、医療費控除を受けるため等の還付申告を行う場合は、その20万円以下の所得も併せて確定申告をする必要があります。

(3) 20万円以下所得の申告不要規定を適用するにあたって注意しなければならないのは、20万円以下の所得が一時所得の場合です。
 一時所得の金額は、次の算式で計算します。

 一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額

 例えば、年末調整をした給与所得者が、給与所得者本人が保険料を負担する生命保険の満期返戻金を受け取り、特別控除後の一時所得の金額が40万円となった場合に、20万円を超えているので確定申告が必要と考えるのは誤りです。
 一時所得の場合は、課税対象額(所得金額の2分の1に相当する金額)が20万円以下であれば、申告不要とすることができます。したがって、一時所得の金額が40万円でも、その2分の1の金額が20万円以下ですので、確定申告は不要です。

(4) 同族会社の役員及びその親族等が、その同族会社から給与の他に貸付金の利子や不動産の賃貸料、機械・器具の使用料などを受け取っている場合は、これらの所得金額が20万円以下であっても確定申告が必要になります(所得税法施行令262の2)

2.公的年金等受給者の確定申告不要制度

 年金受給者の確定申告の負担を減らすため、公的年金等についても確定申告不要制度が設けられています。
 この制度の対象になるのは、次の2要件を満たす年金受給者です。

(1) 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
(2) 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である

 ここで注意しなければならないのは、(1)の「その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる」という点です。
 例えば、外国の制度に基づき国外において支払われる年金等は、源泉徴収の対象となりません。そのような源泉徴収の対象とならない年金を含む公的年金等の収入金額が400万円以下の場合は、上記(2)の要件を満たしても、確定申告をする必要があります。 

 なお、税務署に確定申告書を提出して所得税を納めた後に、確定申告不要制度の対象であることに気づいた場合は、提出した確定申告書の撤回の手続をすることができ、納めた所得税の還付を受けることができます(所得税基本通達121-2)。

3.住民税の申告は必要

 給与所得者と公的年金等受給者の確定申告不要制度は、所得税(国税)における規定であり、住民税(地方税)にはこの規定はありません。
 したがって、所得税では申告不要とされた20万円以下の所得は、住民税では申告が必要です。

妻が契約者でも夫の生命保険料控除の対象にできるか?

 生命保険料控除は、保険料を支払った人自身が受けることができます。通常は生命保険料は契約者が支払うものですが、契約者でない人が保険料を支払う場合もあります。
 例えば、妻が契約者である生命保険契約について夫が保険料を支払っている場合などです。
 このような場合、夫が支払った保険料は夫の生命保険料控除の対象となるのでしょうか?それとも契約者である妻の生命保険料控除の対象となるのでしょうか?

契約者ではなく保険金受取人が重要

 保険の契約には、その契約に関する一切の権利と義務を持つ「契約者」、その保険の対象とされる「被保険者」、契約者から保険金の受取人に指定された「保険金受取人」の3つの名義があります。これらのうち、生命保険料控除の対象となるかどうかを考えるうえで重要なのは「保険金受取人」です。 

 生命保険料控除の対象となるのは、一般の生命保険契約等については保険金受取人のすべてがその保険料の払込みをする人自身か又はその配偶者その他の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)となっていることが必要であり、個人年金保険契約等については保険料の払込みをする人自身か又はその配偶者となっていることが必要です(ちなみに、保険金受取人は、保険料の払込みをする人と生計を一にしていなくても差し支えありません)。
 つまり、生命保険料控除の対象になるかどうかは、保険金受取人が誰になっているかが重要であり、契約者が誰であるかは要件とされていません。
 したがって、妻が契約者である生命保険契約であっても、夫が支払った保険料はその事実が明らかである限り、夫の生命保険料控除の対象となります。

 なお、妻が契約者である保険の保険料を実際に夫が支払っているかどうかについては、夫名義の口座から保険料が引き落とされていれば問題ありません。
 しかし、妻名義の口座から保険料が引き落とされている場合は、たとえ夫が保険料を負担していたとしても外見上疑義が生じかねませんので、支払い口座を夫名義のものに変更してはいかがでしょうか?

個人年金保険契約等は贈与税に注意

 一方、妻が契約者の個人年金保険契約等を夫の生命保険料控除の対象とした場合は、贈与税に注意が必要です。 夫の生命保険料控除の対象とすることによって、保険料負担者(夫)と受取人(妻)が異なることが明確になってしまうからです。
 その結果、保険料負担者(夫)から年金の受取人(妻)に対して、年金を受け取る権利が贈与されたものとみなされ、給付事由発生時点(受給開始時)で妻に贈与税が課税されます。

福利厚生費が給与課税されないための要件

 福利厚生の一環として支給した食事や記念品が、税務調査の際に給与と認定されることがあります。この場合、会社は源泉所得税の徴収漏れを指摘され、従業員にはその源泉所得税の負担が生じます。
 従業員の労をねぎらうという本来の趣旨が税務調査で不本意な結果とならないように、給与課税されないための要件を以下で確認します。

1.残業又は宿日直に伴う食事支給は給与課税されない?

 福利厚生の一環として役員や使用人に対して支給する食事は、次の2要件を満たせば給与課税されません。

(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること
(2)会社の負担額(食事の価額-役員や使用人が負担している金額)が1ヶ月当たり3,500円(税抜き)以下であること
 ここでいう食事の価額は、次の金額になります。
 ① 仕出し弁当などを取り寄せて支給する場合は、業者に支払う金額
 ② 社員食堂などで会社が作った食事を支給する場合は、食事の材料費や調味料等に要した、いわゆる直接費の額 

 また、現金で食事代の補助をする場合は、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合を除き、補助をする全額が給与課税されます
 なお、通常の勤務時間外に残業又は宿日直をした人に支給する食事は、無料で支給しても給与課税されません。しかし、深夜勤務を本来の職務とする人がその勤務に伴い食事の支給を受ける場合には、その支給額は給与課税されます。  

2.創業記念品等の支給と給与課税

 創業記念、増資記念、工事完成記念又は合併記念等に際して支給する記念品などは、次の要件をすべて満たす場合は給与課税されません。ただし、建築業者、造船業者等が請負工事又は造船の完成等に際し支給するものについては、この限りではありません。

(1)支給する記念品が社会通念上記念品としてふさわしいものであること
(2)記念品の処分見込価額による評価額が1万円(税抜き)以下であること
(3)創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給するものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること 

 なお、上記3要件を満たしても、本人が自由に記念品を選択できる場合は、その記念品の価額が給与として課税されます。

3.永年勤続表彰記念として旅行券を支給すると給与課税される?

 永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品又は旅行や観劇への招待費用は、次の要件をすべて満たす場合は給与課税されません。

(1)その人の勤続年数や地位などに照らして、社会通念上相当な金額以内であること
(2)勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること
(3)同じ人を2回以上表彰する場合は、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること 

 なお、上記3要件を満たしても、記念品の支給又は旅行や観劇への招待費用の負担に代えて、現金や商品券などを支給する場合は、その全額(商品券の場合は券面額)が給与課税されます。 旅行の招待費用に代えて支給される旅行券も、原則として給与課税されます。これは、一般的に旅行券には有効期限がなく、換金性があり、実質的に金銭を支給したことと同様になるためです。
 ただし、次の要件を満たしている旅行券の支給は、給与課税されません。

(1)旅行の実施は、旅行券の支給後1年以内であること
(2)旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含みます)であること
(3)旅行券の支給を受けた人が、当該旅行券を使用して旅行を実施した場合には、所定の報告書に必要事項(旅行実施者の所属・氏名・旅行日・旅行先・旅行社等への支払額等)を記載し、これに旅行先等を確認できる資料を添付して会社に提出すること
(4)旅行券の支給を受けた人が、当該旅行券の支給後1年以内に旅行券の全部又は一部を使用しなかった場合には、当該使用しなかった旅行券を会社に返還すること

役員に金銭を貸付けた場合の所得税法上の問題

 会社が役員に対して金銭を貸し付けた場合には、収受すべき利息の額が適正か否かが問題となります。
 その貸付けが通常の利率よりも高い利率で行われた場合は、特殊なケースを除き、課税上の問題が生じることはありません。 

1.役員に対する金銭の貸付けの適正利率は?

 しかし、無償又は通常の利率よりも低い利率で貸付けが行われた場合には、通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際に収受した利息の額との差額に相当する金額は、その役員に供与した経済的利益(役員に対する給与)となります(法人税基本通達9-2-9(7))。 

 では、ここでいう「通常の利率」とはいかなるものでしょうか? 所得税基本通達36-49では、「利息相当額の評価」として次のように定めています。

(1)その金銭を法人が他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には、その借入金の利率によります。
(2)その他の場合は、貸付けを行った日の属する年の租税特別措置法93条2項に規定する特例基準割合による利率によります。 

 特例基準割合は、2000年(平成12年)1月1日から2013年(平成25年)12月31日までは、貸付けを行った日の属する年の前年の11月30日の日本銀行が定める基準割引率(従来の公定歩合)に年4%の割合を加えたものです。
 2014年(平成26年)1月1日以降は、各年の前々年の10月から前年9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に年1%の割合を加えたものです。
 具体的には、次のようになります。
①平成12年1月1日~平成13年12月31日・・・4.5%
②平成14年1月1日~平成18年12月31日・・・4.1%
③平成19年1月1日~平成19年12月31日・・・4.4%
④平成20年1月1日~平成20年12月31日・・・4.7%
⑤平成21年1月1日~平成21年12月31日・・・4.5%
⑥平成22年1月1日~平成25年12月31日・・・4.3%
⑦平成26年1月1日~平成26年12月31日・・・1.9%
⑧平成27年1月1日~平成27年12月31日・・・1.8%
⑨平成28年1月1日~平成28年12月31日・・・1.8%
⑩平成29年1月1日~平成29年12月31日・・・1.7%
⑪平成30年1月1日~平成30年12月31日・・・1.6%
⑫平成31年1月1日~平成31年12月31日・・・1.6%
※平成31年は2019年

2.役員に対する無利息又は低利率による貸付けが給与課税されない場合

 上述したように、会社が役員に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合には、通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際収受した利息の額との差額に相当する金額は、その役員に供与した経済的利益となり給与課税されます。
 しかし、課税されない場合が所得税基本通達36-28に「課税しない経済的利益・・・金銭の無利息貸付け等」として定められています。
 これは、金銭の無利息又は低利率による貸付けにより受ける経済的利益であっても、次の(1)から(3)までのいずれかに該当する場合には、給与として課税しなくても差し支えないというものです。

(1)災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員に、その資金に充てるため、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合
(2)役員に貸し付けた金額につき、会社における借入金の平均調達金利(例えば、会社が貸付けを行った日の前事業年度中における借入金の平均残高に占める前事業年度中に支払うべき利息の額の割合など合理的に計算された利率)など合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって役員に対して金銭を貸し付ける場合
(3)(1)及び(2)の貸付金以外の貸付金の場合で、上記1の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円(法人の事業年度が1年に満たないときは、5,000円にその事業年度の月数(1月未満の端数は1月に切り上げた月数)を乗じて12で除して計算した金額)以下である場合

3.まとめ

 今回の記事をまとめると、会社が役員に金銭を貸し付けた場合の利率の基準は以下のようになります。

(1)会社が他から借り入れて役員に貸し付けた場合は、その借入金の利率
(2)その他の場合は、特例基準割合による利率と、借入金の平均調達金利など合理的と認められる利率のいずれか低い利率

※ 平均調達金利の計算方法については、本ブログ記事「平均調達金利と貸付金利息の計算方法」をご参照ください。

「低解約返戻金型逓増定期保険」の節税の仕組みと税務上のリスク

 節税商品として注目されている「低解約返戻金型逓増定期保険」は、契約開始から一定期間(以下、「低解約返戻金期間」といいます)経過すると返戻率が大幅にアップするところに特徴があります。
 例えば、低解約返戻金期間中は解約返戻金を払込保険料の20%程度に抑える一方で、低解約返戻金期間経過後は90%以上に設定されていたりします。
 この返戻率が激変する直前に契約者を法人から個人に名義変更すれば、保険商品で得られる個人の利益に係る所得税額を節税することができます。 以下で、簡単な数値例を使ってその節税の仕組みをみていきます。

1.節税の仕組み

<前提>
契約者・受取人:法人、被保険者:役員、保険期間:20年、年間保険料:1,000万円、返戻率は5年目をピークに徐々に下がる
(1)1年目
保険料累計:1,000万円、返戻金:0円、返戻率:0%
(2)2年目
保険料累計:2,000万円、返戻金:100万円、返戻率:5%
(3)3年目
保険料累計:3,000万円、返戻金:300万円、返戻率:10%
(4)4年目
保険料累計:4,000万円、返戻金:800万円、返戻率:20%
(5)5年目
保険料累計:5,000万円、返戻金:4,750万円、返戻率:95%

 法人契約の保険を個人に名義変更する場合、無償でその権利を移転する又は売却することが考えられますが、いずれにしてもその保険契約に関する権利の評価は「解約返戻金」となります(所得税基本通達36-37)。
 上の例で、低解約返戻金期間最終年である4年目に法人から役員に名義変更(売却の場合)するため、役員が法人に保険の評価額(解約返戻金)である800万円を支払います。
 次に役員が5年目の保険料1,000万円を支払ったうえで同保険を解約し、一時金として解約返戻金4,750万円を受け取ります(一時所得に該当します)。
 すると、役員個人の所得税の課税対象額は次のようになります。

(4,750万円ー800万円ー1,000万円ー特別控除50万円)×1/2=1,450万円

 これは、法人が役員に対して給与や賞与として4,750万円を支給する場合と比べると、明らかに所得税の税負担が軽減されており、節税効果が認められます。  

2.税務上のリスク

 一方で、この節税商品には税務上のリスクも指摘されています。
 名義変更されるまでに法人が支払った保険料4,000万円や、翌年に役員が受け取る解約返戻金4,750万円を踏まえると、形式的には通達に従った処理を行っていても、名義変更時の保険の評価額を解約返戻金800万円とすることに合理性がないとされる可能性があります。

中小企業等経営強化法に基づく太陽光発電設備の優遇税制について

1.中小企業経営強化税制

(1) 全量売電の太陽光発電設備は対象外

 中小企業経営強化税制は、2017年(平成29年)4月1日から2019年(平成31年)3月31日までの期間に対象設備の取得等をして指定事業の用に供したときに、即時償却又は7%の税額控除(資本金3,000万円以下の法人又は個人事業主は10%の税額控除)が認められるというものです。

 この対象設備には太陽光発電設備も含まれますが、売電のみを目的とする場合(全量売電)は電気業に該当するため、中小企業経営強化税制の対象外となります。

 上述したように、中小企業経営強化税制は「指定事業」の用に供したときに認められるものです。
「指定事業」とは、具体的には、製造業、建設業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育・学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、その他の事業サービス業)、農業、林業、漁業、水産養殖業、不動産業、物品賃貸業、広告業、社会保険・社会福祉・介護事業です。

 この「指定事業」に電気業は含まれていないため、全量売電型の太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象にはなりません。
 ただし、発電した電気の一部をその指定事業に使用している場合(余剰売電)や自家消費の場合は、対象となります。

(2) 2019年度(平成31年度)税制改正の内容

 2019年度(平成31年度)税制改正で、中小企業経営強化税制については、特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行った上で、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。

「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化」とは、具体的には、2分の1超の売電を見込む太陽光発電設備を対象設備から除外することを意味します。

 上記(1)でみたように、電気業は指定事業に含まれていないため全量売電を目的とした太陽光発電設備は中小企業経営強化税制の対象になりませんが、発電した電気の一部を指定事業に使用(例えば自社の製造工場で使用)し、余った電気を売電(余剰売電)する場合は対象となります。
 ところが、最近では、太陽光発電設備の敷地に自動販売機を設置し、そこにわずかな電気を使うことで形式的に指定事業に係る要件を満たすといった、制度趣旨に反するような事例がみられるようになったことから、2分の1超の売電を見込む設備については対象設備から除外されることとなりました。

 また、売電を予定している場合には、経営力向上計画の認定申請時に一定の書類(発電の用に供する設備の概要や当該設備による発電量等の見込みを記載)の添付が義務付けられました。

 以上の改正は2019年(平成31年)4月1日に施行される予定です。

 ※2019年(平成31年)3月16日記事更新 

2.固定資産税の特例

 一方、太陽光発電設備は、全量売電、余剰売電、自家消費を問わず、固定資産税の特例措置の適用対象となります。
  固定資産税の特例措置とは、2016年(平成28年)7月1日から2019年(平成31年)3月31日までの期間内に認定を受けた経営力向上計画に基づき対象となる機械装置を取得した場合、その翌年度から3年度分に限り、その機械装置に係る償却資産の課税標準が2分の1に軽減されるというものです(2017年(平成29年)4月1日から対象となる資産等が変更となっています)。

 この特例の適用を受けるためには、償却資産申告書に以下の書類を添付しなければなりません(大阪市の場合)。
 ①課税標準特例該当資産明細合計表
 ②工業会証明書
 ③経営力向上計画申請書の写し
 ④経営力向上計画認定書の写し

※この特例は2019年(平成31年)3月31日をもって終了します。期限の延長は行われません。
 2018年度(平成30年度)税制改正で創設された新固定資産税の特例については、本ブログ記事「生産性向上特別措置法による新固定資産税の特例」を参照してください。