会計事務所の1月の主要業務のひとつに支払調書の提出があります。支払調書は、原則として法人・個人を問わず、一定額を超える給与や報酬、家賃などを支払っていれば提出しなければならないものです。
以下では、支払調書を提出すべきか否か、迷いやすいケースについて述べていきます。
1.行政書士に報酬を支払った場合
支払調書(「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」)を提出すべき報酬については、所得税法第204条第1項に限定列挙されており、例えば、弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士等に対する報酬がこれに該当します。
では、これらと同じ士業である行政書士に報酬を支払った場合は、支払調書の提出は必要なのでしょうか?
答は、「原則として提出不要」です。一般的に行政書士の業務に関する報酬は、所得税法第204条第1項に規定する報酬には該当しませんので、支払調書を提出する必要はありません。
ところが、国税庁ホームページの質疑応答事例には次のような記載があります。
「依頼した業務が建築基準法第6条等に定める『建築に関する申請若しくは届出』の書類の作成のような場合には、その業務が建築代理士の行う業務に含まれるため、支払調書の提出が必要になります。」
ここでいう「建築に関する申請若しくは届出」とは何でしょうか?
建築基準法第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)を見ると、行政書士が行う建築確認申請のような建築そのものの申請であればこれに該当するものと考えられるため、支払調書の提出が必要となります。
しかし、単に建設業の許可申請や経営事項審査などはこれに該当しないものと考えられるため、支払調書の提出は不要となります。
行政書士に依頼した業務の内容によって、支払調書の提出の要否が異なりますので、注意が必要です。
2.個人事業者に提出義務のない支払調書
先に述べたように、支払調書は法人・個人を問わず、一定額を超える報酬や家賃などを支払っていれば提出しなければならないものです。しかし、なかには個人事業者に提出義務がない支払調書もあります。
例えば、「不動産の使用料等の支払調書」は法人のみに提出義務があり、個人事業者には提出義務がありません。ただし、不動産業者である個人事業者には提出義務があるのですが、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方は提出義務がありません。
また、個人事業者で「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出していない場合(つまり、源泉徴収義務者でない場合)は、報酬の源泉徴収と「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出は不要です。