2017年度(平成29年度)税制改正によって、中小企業投資促進税制の上乗せ措置が改組され、新たに「中小企業経営強化税制」が創設されました。
この中小企業経営強化税制をはじめ、2019年(平成31年)3月31日までに取得した資産に適用される設備投資税制には以下のものがあります。
①中小企業投資促進税制
②中小企業経営強化税制
③固定資産税の特例
④商業・サービス業・農林水産業活性化税制
上記のうち、中小企業等経営強化法の認定が必要な税制は②と③、認定がなくても活用できる税制は①と④です。
今回から2回に分けて、①~④の税制の概要を記していきます。今回は、認定がなくても活用できる①中小企業投資促進税制と④商業・サービス業・農林水産業活性化税制について述べていきます。
※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の見直しが行われています。改正内容については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」及び「令和3年度改正後の中小企業経営強化税制」をご参照ください。なお、固定資産税の特例と商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、適用期限の到来をもって廃止されています。
1.中小企業投資促進税制
まず、中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概略を記していきます。
※ 2021(令和3)年度税制改正で、中小企業投資促進税制に商業・サービス業・農林水産業活性化税制を盛り込む形で制度を一本化した上で、中小企業投資促進税制の適用期限が2023(令和5)年3月31日まで延長されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。
(1) 制度概要
青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の機械装置等を取得等し指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
ただし、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。
なお、従来の上乗せ措置(生産性向上設備等を取得した場合の即時償却又は10%(7%)税額控除)が改組されて、中小企業経営強化税制が創設されました。
(2) 適用期間
1998年(平成10年)6月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産
※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。
(3) 指定事業
製造業、建設業、農業、卸売業、小売業、サービス業等の一定の事業
※不動産業、物品賃貸業、電気業、水道業、娯楽業(映画業を除く)、飲食店業のうち料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業、等は対象になりません。
また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。
(4) 対象設備
① 機械及び装置・・・1台160万円以上
② 測定工具及び検査工具・・・1台120万円以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上
③ 一定のソフトウェア・・・一のソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上
④ 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
⑤ 内航船舶(取得価格の75%が対象)
(5) 措置内容
特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
(資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)
(6) 留意事項
中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。
2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制
次に、商業・サービス業・農林水産業活性化税制(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除)について、その概要を記していきます。
※ 2021(令和3)年度税制改正で、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は適用期限の到来をもって廃止され、中小企業投資促進税制に一本化されました。改正内容等については、本ブログ記事「令和3年度改正後の中小企業投資促進税制」をご参照ください。
(1) 制度概要
認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)から経営改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数1,000人以下の個人事業主を含む)が、新品の経営改善に資する器具備品や建物附属設備を導入した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できます。
なお、資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません。
(2) 適用期間
2013年(平成25年)4月1日~2019年(平成31年)3月31日に取得した資産
※2019年度(平成31年度)税制改正によって、適用期限が2021年(平成33年)3月31日まで2年延長されることになりました。
(3) 指定事業
卸売業、小売業、農林水産業、サービス業等
※製造業、建設業、医療業、娯楽業(映画業を除く)、等は対象になりません。
また、風俗営業法上の風俗営業に該当する料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブその他これらに類する事業については、生活衛生同業組合の組合員が事業を行う場合に限り対象となります。
なお、性風俗関連特殊営業に該当する事業については対象となりません。
(4) 対象設備
① 器具備品・・・1台の取得価額が30万円以上
② 建物附属設備・・・一の取得価額が60万円以上
(5) 確認者
認定経営革新等支援機関等(認定を受けた税理士、公認会計士、商工会議所等)
※2019年度(平成31年度)税制改正で、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることが適用要件に加わりました。
この改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されます。
なお、同日前に交付を受けた経営改善指導助言書類に係る経営改善設備のうち同年9月30日までに取得等をしたものについては、上記の確認を受けることを不要とする経過措置が講じられます。
(6) 措置内容
特別償却(取得価額×30%)又は税額控除(取得価額×7%)
税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。
(資本金3,000万円超1億円以下の法人は、税額控除の適用はありません)
(7) 留意事項
中小企業等経営強化法の認定がなくても活用できます。