1.残価設定ローンの残価は減価償却の対象となるか?
自動車をローンで購入する場合、通常のローン以外に残価設定ローンという方法があります。
残価設定ローンの「残価」とは、自動車の販売会社があらかじめ設定した数年後の買取保証額のことです。残価設定ローンは、この買取保証額を車両価格から差し引いて残りの金額をローンで支払うものです。
例えば480万円の車を5年ローンで購入する場合、5年後の残価(買取保証額)を120万円とすると、毎月の支払額は(480万円-120万円)÷60回=6万円になります。通常のローンであれば、毎月の支払額は480万円÷60回=8万円となりますので、残価設定ローンは毎月の支払額を安くすることができます。
さて、ここで問題になるのが、残価設定ローンの「残価」は減価償却の対象になるか?ということです。
通常のローンで車を購入した場合は、車両価格の480万円をベースに減価償却することに何ら疑問を生じません。
しかし、残価設定ローンで購入した場合は、車両価格の480万円から残価120万円を差し引いた360万円をベースに減価償却すべきではないのかという疑問が生じます。
結論を先に述べると、残価設定ローンの場合も通常のローンの場合も車両価格の480万円をベースに次のように減価償却をします(定率法、耐用年数6年)。
経過年数 | 期首帳簿価額 | 減価償却費 | 期末帳簿価額 |
---|---|---|---|
1年 | 4,800,000円 | 1,598,400円 | 3,201,600円 |
2年 | 3,201,600円 | 1,066,132円 | 2,135,468円 |
3年 | 2,135,468円 | 711,110円 | 1,424,358円 |
4年 | 1,424,358円 | 475,735円 | 948,623円 |
5年 | 948,623円 | 475,735円 | 472,888円 |
6年 | 472,888円 | 472,887円 | 1円 |
残価設定ローンは、冒頭でも述べたとおり、自動車販売会社が数年後の買取額を保証して車を売る仕組みです。
上記の例では、480万円で売った車を5年後に120万円で買取ることを自動車販売会社が保証しています。購入者側から見れば、480万円で買った車を5年後に120万円で買い戻してもらえるので、差額の360万円をローンで支払うということです。
勘違いしてはいけないのが、買った車はあくまでも480万円であって、360万円の車を買ったのではないということです。
減価償却は取得価額をベースとします。したがって、購入者の取得価額は残価部分も含めた480万円ですので、480万円をベースに減価償却することになります。
2.買取時と返却時の経理処理
(1) 480万円の車を5年ローン、残価120万円で購入したときの仕訳は次のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
車両運搬具 | 4,800,000 | 未 払 金 | 3,600,000 |
長期未払金 | 1,200,000 |
(2) 5年ローンの返済後に車を買い取ったときの仕訳は次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
長期未払金 | 1,200,000 | 現金預金 | 1,200,000 |
残価120万円を支払うと、車は会社の所有になりますので、残価支払後も車両価格の480万円をベースに減価償却を継続します。
(3) 5年ローンの返済後に車を返却(売却)したときの仕訳は次のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
長期未払金 | 1,200,000 | 車両運搬具 | 472,888 |
車両売却益 | 727,112 |
5年経過後の車の帳簿価額は472,888円となっていますが、残価(買取保証額)は120万円ですので売却益が生じます。