1.中小企業の割増賃金率も大企業と同じ50%に
現行の労働基準法では、月60時間以下の時間外労働が発生した場合の割増賃金率は、大企業も中小企業も25%以上となっています。
また、月60時間を超える時間外労働が発生した場合の割増賃金率は、大企業が50%以上、中小企業が25%以上となっています。
2023(令和5)年4月1日以降は、大企業に適用されていた月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が中小企業に対しても適用され、現行の25%以上から50%以上に引き上げられます。
2.深夜労働・休日労働との関係
深夜(22:00~5:00)の時間帯に月60時間を超える法定時間外労働が発生した場合は、深夜割増賃金率25%以上+時間外割増賃金率50%以上=75%以上となります。
また、月60時間の法定時間外労働の算定には、法定休日(例えば日曜日)に行った労働は含まれませんが、それ以外の休日(例えば土曜日)に行った法定時間外労働は含まれます。
なお、使用者は1週間に1日または4週間に4回の休日を与えなければなりません。これを「法定休日」といいます。法定休日に労働させた場合は35%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
割増賃金の種類 | 支払う条件 | 割増賃金率 |
---|---|---|
時間外手当・残業手当 | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき | 25%以上 |
時間外労働が限度時間(月45時間・年360時間等)を超えたとき | 25%以上 (努力義務) |
|
時間外労働が月60時間を超えたとき(大企業・中小企業) | 50%以上 | |
深夜手当 | 22時から5時までの間に勤務させたとき |
25%以上 |
休日手当 | 法定休日(週1日)に勤務させたとき | 35%以上 |
3.法定時間外労働時間・法定休日労働時間の具体的な算定方法
以下の例によって、法定時間外労働時間と法定休日労働時間の具体的な算定方法を確認します。
1か月の起算日である1日(月)からの時間外労働時間数を累計して、60時間以下までは25%の割増率で、60時間を超えた時点からは50%の割増率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。なお、法定休日は日曜日、所定休日は土曜日とします。
時間外労働時間 | 時間外労働時間累計 | 割増賃金率 | |
---|---|---|---|
第1週 | 5時間+5時間+2時間+3時間+5時間=20時間 | 20時間 | 25% |
第2週 | 2時間+3時間+5時間+5時間+5時間=20時間 | 40時間 | |
第3週 | 3時間+2時間+3時間+3時間+3時間=14時間 | 54時間 | |
第4週 | 3時間+3時間=6時間 | 60時間 | |
第4週 | 2時間+1時間+2時間+1時間=6時間 | 66時間 | 50% |
第5週 | 1時間+1時間+2時間=4時間 | 70時間 |
法定時間外労働時間数が60時間に達する第4週の23日(火)までは割増賃金率25%を適用し、60時間を超える第4週の24日(水)以降の10時間(累計:70時間-60時間)は割増賃金率50%を適用して割増賃金を計算します。
この法定時間外労働時間数には所定休日(土曜日)の時間は含みますが、法定休日(日曜日)の時間は含みません。
また、法定休日労働時間数は日曜日の5時間+3時間=8時間となり、この8時間に対して割増賃金率35%を適用して割増賃金を計算します。
なお、月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。
代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。