企業や個人事業者の節税対策として、中小企業倒産防止共済が利用されることがあります。
決算間近になって利益が予想よりも多く出ていた場合、中小企業倒産防止共済に加入し1年分の掛金を前納することで、最大で240万円の経費を計上することができます。
1.損金算入要件
ただし、この掛金は本来は積立金ですので、経費にするためには明細書の添付が必要です。
法人の場合は、「別表10(7)」と「適用額明細書」の添付が必要です。具体的には、別表10(7)の「Ⅲ 特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」欄 に、次のように記載します。
① 基金に係る法人名 → 独立行政法人中小企業基盤整備機構
② 基金の名義 → 中小企業倒産防止共済
③ 告示番号 → 記入しません
④ 当期に支出した負担金等の額 → 掛金の支出金額
⑤ 同上のうち損金の額に算入した金額 → 掛金の支出金額
個人事業者の場合は、中小企業基盤整備機構ホームページにある様式例「中小企業倒産防止共済掛金の必要経費算入に関する明細書」を任意の用紙で作成し、確定申告書に添付する必要があります※。
※ 2021(令和3)年分の確定申告から、国税庁ホームページで公表されている新様式「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を添付することとなりました。
2.前納申出書の提出期限
この節税対策は加入初年度のみ効果がありますが、次年度以降も前納を希望する場合は、事前に前納申出書の提出が必要です。
この前納申出書は、前納を希望する月の5日(土曜・日曜・祝日の場合は翌営業日)までに中小機構に届くように提出しないといけないのですが、委託団体を通して中小機構に提出する場合は、前納希望月の前月中に委託団体に提出する必要がありますので注意して下さい。
なお、前納申出書を提出しない場合や残高不足で口座振替できなかった場合は、月払いになります。
3.個人事業の場合の注意点
このように中小企業倒産防止共済の掛金は、法人の場合は「損金」に、個人事業の場合は「必要経費」に算入できます。
ただし、個人事業の場合は、事業所得以外の収入(不動産所得等)は必要経費としての算入が認められていません。
4.解約手当金
掛金の一部を引き出すことはできませんが、解約はいつでもできます。解約の手続きをすることで、掛金の納付月数と掛金総額に応じた解約手当金(最大で800万円)を受け取ることができます。
ただし、納付月数が12か月未満の場合、解約手当金は受け取れません。また、納付月数が40か月未満の場合は、受け取れる金額が掛金総額を下回りますのでご注意ください。
なお、解約手当金は税法上、法人の場合は益金の額、個人の場合は事業所得の収入金額となります。
※ 中小企業倒産防止共済の掛金の損金算入については、2024(令和6)年度税制改正で制限が設けられました。詳しくは本ブログ記事「中小企業倒産防止共済の再加入後の損金算入制限に注意」をご参照ください。