個人が太陽光発電設備の設置によって得られる売電収入は、次の場合は確定申告が必要になります。
・売電収入が雑所得に該当する場合は所得が20万円を超えるとき
・売電収入が事業所得又は不動産所得に該当する場合は所得が38万円を超えるとき
このように、売電収入の所得区分によって確定申告の要否が異なります。以下では、太陽光発電設備の設置場所と売電方法という観点から、売電収入の所得区分と必要経費について述べていきます。
1.自宅に設置した場合
(1) 余剰売電
太陽光発電は設置容量10kWを境に売電方法が変わります。10kW未満(住宅用)の場合は、その設備の中で発電した電力のうち、実際に使用して余った分を売電する「余剰売電」になります。10kW以上(産業用)の場合は、「余剰売電」又は発電した電気を全て売電する「全量売電」のうち任意の方法を選択できます。
太陽光発電設備を自宅(自宅の屋根や駐車場スペースなど)に設置して売電方法が余剰売電の場合、売電収入の所得区分は大規模なものを除き「雑所得」になります。
大規模なものは「事業所得」となりますが、例えば発電量が50kW以上であったり、太陽光発電設備に対してフェンスを設置するなど一定の管理を行ったりしている場合などが該当します。
また、売電収入を得るための必要経費として以下のものが考えられます。
①減価償却費
②ローン利息
③固定資産税
④遠隔監視システムや通信などにかかる管理費
⑤太陽光発電設備に対する損害保険料
⑥メンテナンス費用
⑦パワーコンディショナーの電気代
余剰売電の場合は、これらの経費の全額を必要経費にすることはできません。例えば、減価償却費については本年分の普通償却費の全額ではなく、全発電量のうち売却した電力量の占める割合に対応する部分に限られます。これは、太陽光発電設備を家事の用にも同時に供していることから、事業供用割合として「電力量」を基準とするためです。
減価償却費の必要経費算入額=本年分の普通償却費×売電した電力量/全発電量 |
(2) 全量売電
太陽光発電設備を自宅に設置して売電方法が全量売電の場合、売電収入の所得区分は大規模なものは「事業所得」、それ以外のものは「雑所得」になります。
全量売電の場合は、減価償却費等の経費は全額が必要経費に算入されます。全量売電の場合は自家消費分がなく、事業供用割合が100%となるからです。
2.賃貸物件に設置した場合
(1) 余剰売電
太陽光発電設備を賃貸物件(賃貸物件の屋根や外壁など)に設置して余剰売電の場合、売電収入の所得区分は「不動産所得」(付随所得)になります。
余剰売電ですが、上記1.(1)と異なり、減価償却費等の経費は全額が必要経費に算入されます。これは、消費された電力量についても不動産事業の用に供されているため、按分の必要がないからです。
(2) 全量売電
太陽光発電設備を賃貸物件に設置して全量売電の場合、不動産所得の付随所得となることはなく、自宅に設置した場合と同様に規模に応じて「事業所得」又は「雑所得」になります。
全量売電の場合は、上記1.(2)と同様に、減価償却費等の経費は全額が必要経費に算入されます。全量売電の場合は自家消費分がなく、事業供用割合が100%となるからです。
3.自宅兼賃貸物件に設置した場合
(1) 余剰売電
太陽光発電設備を自宅兼賃貸物件(自宅兼アパートの屋根など)に設置して余剰売電(自宅・賃貸物件の使用分の余りを売却)の場合、売電収入の所得区分は「不動産所得」(付随所得)になります。
経費については、全発電量のうち売電した電力量及び賃貸物件で消費した電力量の合計に対応する部分を必要経費に算入します。自宅で消費した電力量に対応する部分は必要経費に算入できません。
(2) 全量売電
太陽光発電設備を自宅兼賃貸物件に設置して全量売電の場合、不動産所得の付随所得となることはなく、自宅に設置した場合と同様に規模に応じて「事業所得」又は「雑所得」になります。
経費についても、上記2.(2)と同様に、減価償却費等の経費は全額が必要経費に算入されます。
最後に太陽光発電による売電収入の所得区分をまとめると次のようになります。
売電方法 | 設置場所 | 所得区分 |
---|---|---|
余剰売電 | 自宅 | 事業所得又は雑所得 |
賃貸物件 | 不動産所得 | |
自宅兼賃貸物件 | ||
全量売電 |
自宅 | 事業所得又は雑所得 |
賃貸物件 | ||
自宅兼賃貸物件 |