税務調査の際に、契約書等の印紙の貼り忘れを指摘されることがあります。印紙の貼り忘れ(印紙税の納付もれ)には、過怠税というペナルティーが科されます。
今回は、印紙税の過怠税について確認します。
1.印紙の貼り忘れ・消印忘れ
印紙税は、課税文書を作成するときに、その文書に所定の額面の収入印紙を貼り付け、印章又は署名で消印することによって納付します。
もし、税務調査の際に、収入印紙を貼るべき課税文書に印紙を貼っていないことがわかると、その納付しなかった印紙税の額に加えて、その2倍に相当する金額(つまり、本来納付すべきだった印紙税額の3倍)が過怠税として徴収されます(印紙税法20条1項)。
また、正しく印紙を消印していなかったときには、その印紙の額面金額に相当する金額が過怠税として徴収されます(印紙の消印方法については、本ブログ記事「印紙の消印方法~意外に知らないことが多い!?」をご参照ください)。
2.自主的に申し出れば過怠税は1.1倍
ただし、税務調査で納付漏れが明らかになる前に、所轄税務署長に対して印紙税を納めていない旨を自ら申し出た場合、過怠税は本来納めるべきだった印紙税額の1.1倍に軽減されます(印紙税法20条2項)。
過怠税が3倍になるか1.1倍で済むか、この差は大きいと言えますが、実際の税務調査では、うっかりミスや誤認識による納付漏れであれば、過怠税は1.1倍になるケースが多いようです。
3倍の過怠税が徴収されるのは、収入印紙の使い回しや仮装隠ぺい等の脱税行為など、悪質なケースに限られるようです。
3.過怠税は損金不算入
過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されません。
前述したように、過怠税はその納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、つまり、本来納付すべき印紙税額の3倍になります。
例えば、本来納付すべき印紙税額が1万円の場合、その2倍に相当する2万円との合計額である3万円が過怠税になります。
ここで注意を要するのは、あくまでも損金不算入となる過怠税は3万円であるということです。本来納付すべき印紙税額1万円が本税、その2倍に相当する2万円が過怠税ということではありません。
なお、印紙税の不納付に加算税や延滞税は課されません。
4.印紙税の時効は5年
印紙税に限らず、法人税や所得税、相続税等の国税の徴収権は、その国税の法定納期限から5年間行使しないことによって時効により消滅します(国税通則法72条)。
印紙税の場合、納期限はその課税文書を作成する時までですから、その課税文書を作成した時から5年が過ぎれば時効ということになります。
もし、契約書等に印紙を貼り忘れていたことに気づいたとしても、あわてて印紙を貼るのではなく、時効が過ぎていないかどうか、まずその作成日を確認してみてください。