変更契約書における「重要な事項」の変更とは?

1.印紙税額一覧表における「契約書」は7項目

 収入印紙を貼るべき課税文書は、印紙税額の一覧表に掲げられている20項目のうち、非課税文書に該当しない文書です。
 これらの文書のうち、「契約」に関する文書(契約書)を抽出すると、次の各項目が該当します。

文書の種類
第1号文書 1 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
2 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
3 消費貸借に関する契約書
4 運送に関する契約書
第2号文書 請負に関する契約書
第7号文書 継続的取引の基本となる契約書
第12号文書 信託行為に関する契約書
第13号文書 債務の保証に関する契約書
第14号文書 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書
第15号文書 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書

2.変更契約に関する「重要な事項」の一覧表

 上記1の契約書を作成した後に、原契約書の内容を変更する文書(以下「変更契約書」といいます)を作成する場合があります。この変更契約書が課税文書に該当するかどうかは、その変更契約書に「重要な事項」が含まれているかどうかにより判定することとされています。
 すなわち、重要な事項を変更するために作成した変更契約書は課税文書となり、印紙の貼付けが必要です。一方、重要な事項を含まない変更契約書は課税文書に該当しないことになり、印紙の貼付けは不要です。
 この場合の「重要な事項」とは、次の印紙税法基本通達別表第2「重要な事項の一覧表」において、文書の種類ごとに例示されています。

(1) 第1号の1文書
第1号の2文書のうち、地上権又は土地の賃借権の譲渡に関する契約書
第15号文書のうち、債権譲渡に関する契約書
①目的物の内容
②目的物の引渡方法又は引渡期日
③契約金額
④取扱数量
⑤単価
⑥契約金額の支払方法又は支払期日
⑦割戻金等の計算方法又は支払方法
⑧契約期間
⑨契約に付される停止条件又は解除条件
⑩債務不履行の場合の損害賠償の方法
(2) 第1号の2文書のうち、地上権又は土地の賃借権の設定に関する契約書
①目的物又は被担保債権の内容
②目的物の引渡方法又は引渡期日
③契約金額又は根抵当権における極度金額
④権利の使用料
⑤契約金額又は権利の使用料の支払方法又は支払期日
⑥権利の設定日若しくは設定期間又は根抵当権における確定期日
⑦契約に付される停止条件又は解除条件
⑧債務不履行の場合の損害賠償の方法
(3) 第1号の3文書
①目的物の内容
②目的物の引渡方法又は引渡期日
③契約金額(数量)
④利率又は利息金額
⑤契約金額(数量)又は利息金額の返還(支払)方法又は返還(支払)期日
⑥契約期間
⑦契約に付される停止条件又は解除条件
⑧債務不履行の場合の損害賠償の方法
(4) 第1号の4文書
第2号文書
①運送又は請負の内容(方法を含む。)
②運送又は請負の期日又は期限
③契約金額
④取扱数量
⑤単価
⑥契約金額の支払方法又は支払期日
⑦割戻金等の計算方法又は支払方法
⑧契約期間
⑨契約に付される停止条件又は解除条件
⑩債務不履行の場合の損害賠償の方法
(5) 第7号文書
①令第26条《継続的取引の基本となる契約書の範囲》各号に掲げる区分に応じ、当該各号に掲げる要件
②契約期間(令第26条各号に該当する文書を引用して契約期間を延長するものに限るものとし、当該延長する期間が3か月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものを除く。)

 

※具体的には、以下の事項が該当します。
①目的物の種類
②取扱数量
③単価
④対価の支払方法
⑤債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格、契約期間

(6) 第12号文書
①目的物の内容
②目的物の運用の方法
③収益の受益者又は処分方法
④元本の受益者
⑤報酬の金額
⑥報酬の支払方法又は支払期日
⑦信託期間
⑧契約に付される停止条件又は解除条件
⑨債務不履行の場合の損害賠償の方法
(7) 第13号文書
①保証する債務の内容
②保証の種類
③保証期間
④保証債務の履行方法
⑤契約に付される停止条件又は解除条件
(8) 第14号文書
①目的物の内容
②目的物の数量(金額)
③目的物の引渡方法又は引渡期日
④契約金額
⑤契約金額の支払方法又は支払期日
⑥利率又は利息金額
⑦寄託期間
⑧契約に付される停止条件又は解除条件
⑨債務不履行の場合の損害賠償の方法
(9) 第15号文書のうち、債務引受けに関する契約書
①目的物の内容
②目的物の数量(金額)
③目的物の引受方法又は引受期日
④契約に付される停止条件又は解除条件
⑤債務不履行の場合の損害賠償の方法

3.「重要な事項」の留意点等

 印紙税法は、契約上重要な事項を変更する変更契約書を課税対象とすることとし、その重要な事項の範囲は上記2の 印紙税法基本通達別表第2「重要な事項の一覧表」 に定められていますが、ここに掲げられているものは例示事項であり、これらに密接に関連する事項や例示した事項と比較してこれと同等、若しくはそれ以上に契約上重要な事項を変更するものも課税対象になります。
 また、変更契約書は、変更する事項がどの号に該当する重要な事項であるかにより文書の所属を決定することになるのですが、2以上の号の重要な事項が2以上併記又は混合記載されている場合とか、一つの重要な事項が同時に2以上の号に該当する場合には、それぞれの号に該当する文書として原契約書の所属の決定方法と同様に所属を決定することになります。

※ 所属の決定については、本ブログ記事「複数の課税文書に該当する場合の「所属の決定」をご参照ください。

変更契約書に貼る印紙はいくら?

 建設業を営むA社から、次のような問い合わせがありました。

「請負契約の金額を減額することになり覚書を交わすことになったが、この覚書に印紙を貼らなければならないか?」

 すでに成立している契約の内容を変更する場合には、A社のように覚書や念書を作成して後々のトラブルを未然に防ぐ必要があります。その際、印紙を貼るべきか、また、貼るならいくらの印紙を貼らなければならないか、という疑問が生じます。
 そこで、このような事例における印紙の取扱いについて述べていきます。

1.印紙税法上の契約書とは

 今回のように「覚書」や「念書」等の表題を用いて原契約書の内容を変更する文書を作成する場合がありますが、これらの文書は印紙税法上の「契約書」にあたるのでしょうか?
 印紙税法上の契約書とは、契約の成立、更改、内容の変更又は補充の事実を証明する目的で作成する文書をいいます。したがって、文書のタイトルが「覚書」や「念書」となっていても、そこに内容の変更(請負契約金額の変更)に関する事項が書かれているのであれば、印紙税法上は「契約書」と判断されます。
 収入印紙が必要かどうかは、あくまでも文書の内容によって判断されますので、タイトルは関係ないということです。

2.変更契約書に印紙を貼るのはどんな場合?

 A社が今回作成する覚書は、印紙税法上の契約書(以下、「変更契約書」といいます)にあたります。では、変更契約書であれば必ず印紙を貼らなければならないのでしょうか?
 印紙を貼るべき文書を課税文書といいますが、変更契約書が課税文書に該当するかどうかは、その変更契約書に「重要な事項」が含まれているかどうかにより判定します。
 つまり、原契約書により証されるべき事項のうち、重要な事項を変更するために作成した変更契約書は課税文書となり、印紙を貼る必要があります。重要な事項を含まない場合は課税文書に該当しませんので、印紙を貼る必要はありません。

3.重要な事項とは

 請負に関する契約書(第2号文書)の変更についての重要な事項は以下のとおりです。

(1) 請負の内容
(2) 請負の期日または期限
(3) 契約金額(消費税額を含む)
(4) 取扱数量
(5) 単価
(6) 契約金額の支払方法又は支払期日
(7) 割戻金等の計算方法又は支払方法
(8) 契約期間
(9) 契約に付される停止条件又は解除条件
(10) 債務不履行の場合の損害賠償の方法

 したがって、A社が作成する覚書(請負契約金額の減額)は上記(3)の重要な事項を含むため、印紙を貼らなければなりません。
 なお、第2号文書以外の文書に関する「重要な事項」については、本ブログ記事「変更契約書における『重要な事項』の変更とは?」をご参照ください。

4.記載金額を変更する場合の印紙

 では、A社はいくらの印紙を貼ればいいのでしょうか?これについては、変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていること、及び変更契約書において変更金額が明らかであるか否かによって、次のようなルールがあります。

(1) 変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかな場合

①変更金額が明らかである場合

 変更金額が明らかで増額変更の場合は、増額した金額が記載金額になり、その増額した金額に応じた印紙を貼ります。例えば、次のような変更契約書を作成した場合です。

               変更契約書

 注文者甲と請負者Aは、令和元年11月25日に締結した建築工事請負契約について、以下のように変更する。

 既定金額   5,000万円
 変更金額   6,000万円
 増額     1,000万円

 この変更契約書には、変更前契約書の締結年月日(令和元年11月25日)が記載されていますので、変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかであり、かつ、変更金額(6,000万円)の記載があることから変更金額も明らかです。したがって、増額した金額(1,000万円)が記載金額となり、貼る印紙は5,000円となります。

 また、変更金額が明らかで減額変更の場合は、記載金額なしとなり、契約金額の記載のないもの(第2号文書)として200円の印紙を貼ります。例えば、次のような変更契約書を作成した場合です。

               変更契約書

 注文者甲と請負者Aは、令和元年11月25日に締結した建築工事請負契約について、以下のように変更する。

 既定金額   5,000万円
 変更金額   4,000万円
 減額     1,000万円

 この変更契約書には、変更前契約書の締結年月日(令和元年11月25日)が記載されていますので、変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかであり、かつ、変更金額(4,000万円)の記載があることから変更金額も明らかです。したがって、減額(1,000万円)した場合は記載金額なしとなり、貼る印紙は200円となります。
 A社はこのケースに該当しますので、A社の貼るべき印紙は200円になります。

②変更金額が明らかでない場合

 変更金額が明らかでない場合は、変更後の契約金額が記載金額となり、その変更後の金額に応じた印紙を貼ります。例えば、次のような変更契約書を作成した場合です。

               変更契約書

 注文者甲と請負者Aは、令和元年11月25日に締結した建築工事請負契約について、仕様変更に伴い契約金額を6,000万円に変更する。

 この変更契約書には、仕様を変更したことに伴い契約金額を6,000万円に変更したことが記載されています。
 先の2つの例のように、原契約書に記載された契約金額がわかれば6,000万円との差額がこの変更契約書の記載金額となります。しかし、この契約書からは変更前の金額がわからないため、増減額が明らかではありません。したがって、この変更契約書の記載金額は6,000万円と判断され、貼る印紙は30,000円となります。

(2) 変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかでない場合

①変更金額のみが記載されている場合

 増額・減額を問わず、その変更金額が記載金額となります。

②契約金額の記載がある場合

 変更後の契約金額が記載金額となります。