令和6年度雇用保険料率・労災保険料率・子ども子育て拠出金率について

 2024(令和6)年4月から厚生労働省関係の制度変更が実施されますので、給与計算ソフトを使用している場合等はその設定を見直す必要があります。
 以下では、2024(令和6)年度の雇用保険料率、労災保険料率、子ども・子育て拠出金率について確認します。

1.令和6年度の雇用保険料率

 2024(令和6)年度の雇用保険料率は据え置きとなり、2023(令和5)年度の料率から改定はありません。
 2024(令和6)年4月1日~2025(令和7)年3月31日の雇用保険料率は、次のとおりです。

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 6.0/1000 7.0/1000 7.0/1000
事業主負担率 9.5/1000 10.5/1000 11.5/1000
合計負担率 15.5/1000 17.5/1000 18.5/1000

 園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖及び特定の船員を雇用する事業については、一般事業の率が適用されます。

2.令和6年度の労災保険料率

 「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」が施行されたことに伴い、2024(令和6)年4月1日から労災保険料率が改定されます。
 したがって、2024(令和6)年度の労災保険の概算保険料は新しい料率で、2023(令和5)年度の改定保険料はこれまでの料率で申告しなければなりません(関連記事:「7月10日期限の労働保険・社会保険・納期特例の給与集計は発生ベース?支払ベース?」)。
 なお、改定後の保険料率は業種によって異なり、前年度と変わっていない業種もあります。
 2024(令和6)年度と2023(令和5)年度の労災保険料率は、次のとおりです(単位:1/1,000)。

事業の種類の分類 番号 事業の種類 令和6年度料率 令和5年度料率
林業 02・03 林業 52 60
漁業 11 海面漁業 18 18
12 定置網漁業又は海面魚類養殖業 37 38
鉱業 21 金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業 88 88
23 石灰石鉱業又はドロマイト鉱業 13 16
24 原油又は天然ガス鉱業 2.5 2.5
25 採石業 37 49
26 その他の鉱業 26 26
建設事業 31 水力発電施設、ずい道等新設事業 34 62
32 道路新設事業 11 11
33 舗装工事業 9 9
34 鉄道又は軌道新設事業 9 9
35 建築事業 9.5 9.5
38 既設建築物設備工事業 12 12
36 機械装置の組立て又は据付けの事業 6 6.5
37 その他の建設事業 15 15
製造業 41 食料品製造業 5.5 6
42 繊維工業又は繊維製品製造業 4 4
44 木材又は木製品製造業 13 14
45 パルプ又は紙製造業 7 6.5
46 印刷又は製本業 3.5 3.5
47 化学工業 4.5 4.5
48 ガラス又はセメント製造業 6 6
66 コンクリート製造業 13 13
62 陶磁器製品製造業 17 18
49 その他の窯業又は土石製品製造業 23 26
50 金属精錬業 6.5 6.5
51 非鉄金属精錬業 7 7
52 金属材料品製造業 5 5.5
53 鋳物業 16 16
54 金属製品製造業又は金属加工業 9 10
63 洋食器、刃物、手工具又は一般金属製造業 6.5 6.5
55 めつき業 6.5 7
56 機械器具製造業 5 5
57 電気機械器具製造業 3 2.5
58 輸送用機械器具製造業 4 4
59 船舶製造又は修理業 23 23
60 計量器、光学機械、時計等製造業 2.5 2.5
64 貴金属製品、装身具、皮革製品等製造業 3.5 3.5
61 その他の製造業 6 6.5
運輸業 71 交通運輸事業 4 4
72 貨物取扱事業 8.5 9
73 港湾貨物取扱事業 9 9
74 港湾荷役業 12 13
電気、ガス、水道又は熱供給の事業 81 電気、ガス、水道又は熱供給の事業 3 3
その他の事業 95 農業又は海面漁業以外の漁業 13 13
91 清掃、火葬又はと畜の事業 13 13
93 ビルメンテナンス業 6 5.5
96 倉庫業、警備業、消毒又は害虫駆除の事業又はゴルフ場の事業 6.5 6.5
97 通信業、放送業、新聞業又は出版業 2.5 2.5
98 卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業 3 3
99 金融業、保険業又は不動産業 2.5 2.5
94 その他の各種事業 3 3
船舶所有者の事業 90 船舶所有者の事業 42 47

3.令和6年度の子ども・子育て拠出金率

 2024(令和6)年度の子ども・子育て拠出金率は据え置きとなり、2023(令和5)年度の拠出金率(3.600/1000)から改定はありません。

令和5年度雇用保険料率が改定されます

1.厚生労働省関係の制度変更

 2023(令和5)年4月に実施される厚生労働省関係の制度変更には、中小企業等の雇用・労働関係に影響を与える事項も含まれています。
 例えば、「中小企業の月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の25%から50%への引上げ」や「雇用保険料率の引上げ」などの事項です。
 以下では、雇用保険法等の一部を改正する法律の施行により改定される2023(令和5)年度の雇用保険料率を確認します。

※ 中小企業の月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げの詳細については、本ブログ記事「令和5年4月から中小企業も月60時間超の残業割増賃金率が50%になります」をご参照ください。

2.令和5年度の雇用保険料率

 雇用保険法等の一部を改正する法律の施行により、2023(令和5)年度の雇用保険料率が改定されます(適用開始:2023(令和5)年4月1日)。
 改定前(2023(令和5)年3月まで)と改定後(2023(令和5)年4月~2024(令和6)年3月)の雇用保険料率は、以下のとおりです。

(1) 改定前(2023(令和5)年3月まで)

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 5.0/1000 6.0/1000 6.0/1000
事業主負担率 8.5/1000 9.5/1000 10.5/1000
合計負担率 13.5/1000 15.5/1000 16.5/1000

(2) 改定後(2023(令和5)年4月~2024(令和6)年3月)

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 6.0/1000 7.0/1000 7.0/1000
事業主負担率 9.5/1000 10.5/1000 11.5/1000
合計負担率 15.5/1000 17.5/1000 18.5/1000

 なお、労働保険は労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険に分かれますが、改定されるのは雇用保険料率であり、労災保険料率は前年(2022(令和4)年度)の料率から改定されていません。
 また、令和5年度雇用保険料は、2023(令和5)年4月1日以降に到来する給与締め日を基準に改定を行います。給与支払日ではありませんので、改定のタイミングにご注意ください。

※ 労働保険の年度更新については、本ブログ記事「労働保険の年度更新の仕組みと会計処理(仕訳)」をご参照ください。



令和4年度雇用保険料率が段階的に改定されます

1.改定内容

 2022(令和4)年3月30日に「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が国会で成立しました。
 これにより、2022(令和4)年度の雇用保険料率が、2022(令和4)年4月と10月に段階的に改定されます。改定内容は次のとおりです。

(1) 2022(令和4)年4月1日から、事業主負担の保険料率が変更になります(0.5/1000引き上げ)。
(2) 2022(令和4)年10月1日から、労働者(被保険者)負担・事業主負担の保険料率が変更になります(4.0/1000引き上げ)。

 なお、2022(令和4)年度の労災保険料率は、2022(令和3)年度の料率から改定はありません。

2.令和4年度の雇用保険料率

 改定前(2022(令和4)年3月まで)と改定後(2022(令和4)年4月~9月及び2022(令和4)年10月以降)の雇用保険料率は、以下のとおりです。

改定前(2022(令和4)年3月まで)

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 3.0/1000 4.0/1000 4.0/1000
事業主負担率 6.0/1000 7.0/1000 8.0/1000
合計負担率 9.0/1000 11.0/1000 12.0/1000

改定後(2022(令和4)年4月~9月)
※ 被保険者負担率は据え置き、事業主負担率のみ「0.5/1000」引き上げられます。

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 3.0/1000 4.0/1000 4.0/1000
事業主負担率 6.5/1000 7.5/1000 8.5/1000
合計負担率 9.5/1000 11.5/1000 12.5/1000

改定後(2022(令和4)年10月以降)
被保険者負担率・事業主負担率ともに「2.0/1000」引き上げられます。

事業の種類 一般事業 農林水産業・清酒製造業 建設業
被保険者負担率 5.0/1000 6.0/1000 6.0/1000
事業主負担率 8.5/1000 9.5/1000 10.5/1000
合計負担率 13.5/1000 15.5/1000 16.5/1000



雇用保険を遡って加入できるか?

1.雇用保険の加入要件

 雇用保険の被保険者は、 常用・パート・アルバイト・派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、 次の要件をいずれも満たす方です。

 (1) 1 週間の所定労働時間が 20時間以上であり、
 (2) 31 日以上の雇用見込みがある場合

 (1)の要件は、例えばアルバイトの方が1日あたり5時間で週3日勤務する場合は、1週間の所定労働時間が15時間となりますので加入要件を満たしませんが、週4日勤務の場合は1週間の所定労働時間が20時間となりますので加入要件を満たします。

 この所定労働時間は「雇用契約書」の内容により判断します。
 1日5時間週3日勤務という雇用契約を結んでいた場合に、たまたま忙しい日が続いたため1週間の労働時間が20時間以上になったとしても、(1)の要件を満たしたことにはなりません。
 もし、1週間の所定労働時間が20時間以上となることが常態となった場合は(1)の要件を満たすことになりますが、その場合は雇用契約を変更する必要があります。

 (2)の要件は、具体的には以下の場合を指します。
 ① 期間の定めがなく雇用される場合
 ② 雇用期間が31日以上である場合
 ③ 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
 ④ 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合

 上記(1)と(2)の加入要件を満たす場合は、本人が希望するか否かにかかわらず被保険者となり、雇用保険料の申告納付が必要です。

 なお、65歳以上の新規雇用者の雇用保険については、本ブログ記事「65歳からの老齢基礎年金と雇用保険」を参照してください。

2.雇用保険の加入手続きを失念していた場合

 労働保険申告書の作成過程で、雇用保険の加入要件を満たす従業員がいるにもかかわらず、事業主が加入手続きを失念していたことが判明することがあります。
 この場合、雇用保険を遡って加入することはできるのでしょうか?

 次の加入要件を満たす場合は、原則として2年間遡って加入することができます。

(1) 1 週間の所定労働時間が 20時間以上であり、
(2) 31 日以上の雇用見込みがある場合

 さらに、2010年(平成22年)10月からは雇用保険料が給与から天引きされていたことが明らかで ある場合は、特例として2年を超えて遡って雇用保険の加入手続きができるようになりました。

 手続きとしては、雇用保険被保険者資格取得届に加えて遅延理由書(書式は任意ですがハローワークで入手することもできます)の提出が必要です。
 また、賃金台帳や給与明細、タイムカード等の提出も必要です。