2024(令和6)年1月1日から、すべての事業者は電子取引を電子データのまま保存しなければなりませんが、単に保存するのではなく保存要件に従った保存をしなければなりません。
今回は、FM宝塚「インボイス制度ってな~に?パート2」※で本日の8:15からオンエアした内容を、Q&A形式でお伝えします。
※ 番組の概要については、本ブログ記事「FM宝塚で今年もインボイス制度等の解説をします」をご参照ください。
1.保存要件―真実性の確保
Q.保存要件とは?
A.電子データの保存要件には、真実性の確保と可視性の確保があります。真実性の確保とは「保存されたデータが改ざんされていないこと」をいい、可視性の確保とは「保存されたデータを検索・表示できること」をいいます。
Q.真実性を確保するためには、どのような方法がありますか?
A.真実性確保(改ざん防止)のためには、3つの方法があります。1つ目は「電子データにタイムスタンプを付与する方法」、2つ目は「訂正・削除の履歴を確認できるシステム又は訂正・削除を行うことができないシステムで保存を行う方法」、3つ目が「改ざん防止に関する事務処理規程に沿った運用を行う方法」です。
Q.タイムスタンプとは何でしょうか?
A.例えば、書類を社内で回覧する場合のような紙での手続きでは、正式に処理された証として印鑑が利用されてきましたが、その印鑑に代わって電子データに付与されるものがタイムスタンプです。
Q.タイムスタンプは誰でも付与できますか?
A.タイムスタンプは保存されたデータの正当性を裏付けるものとなりますので、事業者が勝手に付与することはできません。第三者機関である「時刻認証局」を通じてタイムスタンプを付与する仕組みとなっています。そのため、タイムスタンプを付与するためには、新たなシステムの導入が必要です。
Q.2つ目の「訂正・削除の履歴を確認できるシステム又は訂正・削除を行うことができないシステムで保存を行う方法」もタイムスタンプが必要ですか?
A.こちらについてはタイムスタンプは不要ですが、そもそもこのような要件を満たしたシステムの導入が必要です。
Q.ということは、改ざん防止策の1つ目と2つ目の方法は新たなシステムの導入が必要になりますので、導入コストやランニングコストなどを考えると、中小企業や個人事業主には対応し難い面がありますね。
A.その通りです。そこでお勧めしたいのが3つ目の「改ざん防止に関する事務処理規程に沿った運用を行う方法」です。この方法でしたら現状のシステムで対応可能ですので、新たなコストもかかりません。ただし、改ざん等の不正をどうすれば防止できるのかについて社内で検討し、事務処理規程を作成する必要があります。
Q.事務処理規程の作成は難しそうなので、専門家に依頼した方がいいですか?
A.いいえ。国税庁ホームページに法人用と個人用のひな型が用意されていますので、それを自社用にアレンジすることで容易に作成できます※。
※ 事務処理規程の作成については、本ブログ記事「事務処理規程の書き方と記載例:電子取引データ保存」をご参照ください。
2.保存要件―可視性の確保
Q.もう1つの保存要件である可視性を確保するためには、どうすればいいですか?
A.可視性を確保するためには、概ね2点の対応が必要です。1点目はパソコンやディスプレイ、プリンタを設置し、これらの操作マニュアルと概要書を備え付けて、データを画面上や書面で確認できるようにしておくことです。
Q.パソコン等の周辺に説明書を置いておくだけで簡単に対応できそうですね。もう1点の対応とは何ですか?
A.保存したデータの検索機能を確保することです。この検索機能の確保には3つの要件がありすべてを満たす必要があったのですが、令和5年度の改正で大幅に緩和されました。
Q.どのように緩和されたのですか?
A.詳細な説明は省略して結論だけを言いますと、税務調査の際に税務職員によるダウンロードの求めに応じることができて2年前の売上高が5,000万円以下の場合は、検索機能の確保自体が不要(つまり3つの要件すべてが不要)とされました。さらにダウンロードの求めに応じることを前提に、整然かつ明瞭な状態で印刷され日付と取引先ごとに整理された書面を提示・提出できる場合も検索機能の確保が不要となりました。
Q.要件を満たせば検索機能の確保が不要になるということですが、ダウンロードの求めには応じないといけないのですね。ということは、電子データの保存は必要ということですね?
A.その通りです。あくまでも可視性の要件の1つである検索機能の確保が不要となるだけであって、真実性と可視性が確保された状態で電子データを保存しなければなりません。具体的には、事務処理規程を作成・運用して真実性を確保し、パソコン等の周辺に説明書を置いて可視性を確保します。