個人が法人から財産の贈与を受けた場合は、所得税の対象となります。一方、個人が個人から財産の贈与を受けたときは、贈与税の対象となります。
贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがありますが、今回は贈与税の基本的な制度である暦年課税について紹介します。
1.贈与とは
贈与とは、自分の財産を無償で相手方に贈るという意思表示をし、相手方がこれを承認することによって成立する民法上の契約をいいます。
つまり、贈与というのは「あげましょう」「もらいます」の2つの意思表示があってはじめて成立するものです。この2つの意思をはっきりとしておくために、贈与契約書を必ず作っておくことが重要です。
2.贈与税がかかるケース
贈与税は、贈与者(贈与をした人)から受贈者(贈与を受けた人)へ財産が無償で移ったときに受贈者にかかります。財産が無償で移るケーズとして、次の4つがあります。
(1) 個人から個人へ
(2) 個人から法人へ
(3) 法人から個人へ
(4) 法人から法人へ
上記のうち、贈与税がかかるケースは、原則として(1)の個人から個人へのケースだけです。他の3つのケースでは原則として贈与税はかかりませんが、下表のように法人税、所得税が受贈者に課されます。
財産が無償で移った場合の課税関係
贈与者 | 受贈者 | 課税関係 |
---|---|---|
個人 | 個人 | 贈与税 |
個人 | 法人 | 法人税 |
法人 | 個人 | 所得税 |
法人 | 法人 | 法人税 |
3.贈与税がかかる財産
贈与税は、原則として、個人から贈与によって取得した財産で、金銭で見積もることができる経済的価値のあるものすべてについて課税されます。例えば、土地、家屋、借地権、現預金、株式などがあります。これらの財産は、当然に贈与税がかかるものとして本来の贈与財産といいます。
また、本来の贈与に基づかない場合であっても、例えば次のようなものは贈与があったものとみなして贈与税が課税されます。これを本来の贈与財産に対して、みなし贈与財産といいます。
(1) 親族から時価1,000万円の土地を300万円で買った場合
低額譲受けとして、差額の700万円の贈与があったものとして課税されます。
(2) 親が建築資金を全額拠出した二世帯住宅の名義が親子共有となっている場合
建築資金を拠出していない子の共有持分の贈与があったものとして課税されます。
(3) 親子間の金銭の貸し借りで返済期日や利息が決められていない場合
実態が贈与であるものとして課税されます(真に金銭の貸借と認められるものは課税されません)。
(4) 債務免除を受けた場合
債務免除額に対して課税されます。
(5) 保険料支払人が夫、被保険者が夫の満期保険金を妻が受け取った場合
夫から妻への贈与として満期保険金に対して課税されます(死亡保険金の場合は相続税が課されます)。
なお、扶養義務者相互間(親から子など)での通常必要と認められる生活費や教育費の贈与や、個人から受けた社会通念上相当と認められる香典、花輪代、年末年始の贈答、祝い物、見舞いなどの金品については、贈与税の非課税財産とされています。
4.贈与税の計算方法
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に個人から贈与を受けた財産で課税対象となるものの価額(評価額)の合計額を課税価格とし、その課税価格から基礎控除額110万円を差し引き、その残額に税率を乗じて税額を計算します。
また、20歳以上の者が直系尊属(父母、祖父母など)から受ける贈与については、特例贈与として一般贈与(特例贈与以外の贈与)より税率が軽減されます。(参考:国税庁ホームページ)
(1) 一般贈与又は特例贈与のいずれかのみにより財産を取得した場合
本来の贈与財産+みなし贈与財産-非課税財産=課税価格
(課税価格-基礎控除額110万円)×税率-速算表の控除額=贈与税額
(2) 一般贈与と特例贈与により財産を取得した場合
課税価格合計-基礎控除額110万円=基礎控除後の課税価格(A)
①((A)×一般贈与の税率-一般贈与の速算表の控除額)×一般贈与財産の課税価格÷課税価格合計
②((A)×特例贈与の税率-特例贈与の速算表の控除額)×特例贈与財産の課税価格÷課税価格合計
①+②=贈与税額
5.贈与税の申告
贈与税申告書を提出しなければならない人は、納めなければならない贈与税額がある人です。贈与によって財産をもらっても、贈与税額がない人は申告する必要がありません。
すなわち、課税価格が基礎控除額110万円以下であれば、申告する必要はありません(ただし、2,000万円の配偶者控除の特例や住宅取得等資金贈与の非課税特例、相続時精算課税制度の特例を受けるためには、贈与税額がゼロの場合でも申告書を提出しなければなりません)。
贈与税申告書は、受贈者の住所地を所轄する税務署へ提出しなければなりません(贈与者の住所地を所轄する税務署ではありません)。
また、提出期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間です。