令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、特定親族特別控除の創設等が行われました※。

 以下では、これらの税制改正により、従前からあった給与所得者の年収の壁がどのように変わったのかについて確認します。

※ 令和7年度税制改正の内容については、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)」、「特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)」、「扶養親族等の所得要件・住宅借入金等特別控除・生命保険料控除の見直し(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

1.110万円の壁(住民税)

 改正で給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられたことにより、住民税が非課税となる年収が、従前の100万円から110万円に変わりました。

 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。

 例えば、兵庫県宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると110万円(45万円+給与所得控除65万円)となります。

2.123万円の壁(所得税)

 従前の103万円の壁は、年収の壁として広く一般に認識されていたものと思われます。

 改正で基礎控除と給与所得控除最低保障額がそれぞれ10万円ずつ引き上げられたことにより、この103万円の壁が123万円の壁に変わりました。

 また、改正により、配偶者控除や扶養控除の対象となる合計所得金額が48万円以下から58万円以下に変わりましたので、配偶者や扶養親族の年収が123万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となります(給与収入123万円-給与所得控除65万円=58万円)。

 ただし、123万円の壁は配偶者控除や扶養控除の対象となる給与収入を意味するものであり、従前の103万円の壁が持っていた納税者本人に所得税がかからない給与収入という意味はありません。

 納税者本人に所得税がかからない年収の壁については、下記4をご参照ください。

3.150万円の壁(所得税):2つの意味

 従前からあった150万円の壁は、配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁でしたが、改正により、150万円の壁の意味は以下のように変わりました。

 扶養親族の年収が123万円を超えると扶養控除の対象から外れますので(上記2)、年齢19歳以上23歳未満の扶養親族(以下「大学生年代」といいます)についても、年収が123万円を超えると63万円の扶養控除を適用することができません。

 しかし、大学生年代については、年収が123万円を超えても、令和7年度税制改正で新設された特定親族特別控除を適用することができ、年収が150万円以下であれば、特定親族特別控除について満額の63万円を適用することができます。

 また、大学生年代の年収が150万円を超えても188万円以下であれば、納税者本人は段階的に逓減する特定親族特別控除を受けることができます。

 なお、勤労学生本人が受けられる勤労学生控除の合計所得金額の要件が、改正により従前の75万円以下から85万円以下に変わりましたので、勤労学生本人の給与収入が150万円以下であれば、勤労学生控除27万円を受けることができます(給与収入150万円-給与所得控除65万円=85万円)。

4.160万円の壁(所得税):2つの意味

 改正後の年収160万円の壁については、以下の二つの意味があります。

 第一に、納税者本人に所得税がかからない従前の103万円の壁が、160万円の壁に変わりました。

 改正により基礎控除の10万円の引き上げが行われましたが、さらに低~中所得者層の税負担への配慮から、特例として最大95万円の基礎控除が設けられました。

 したがって、給与所得控除最低保障額65万円と合わせて、年収160万円以下であれば、納税者本人に所得税はかかりません(給与収入160万円-給与所得控除65万円-基礎控除95万円=給与所得0円)。

 第二に、配偶者特別控除について満額の38万円を適用できる年収の壁が、従前の150万円から160万円に変わりました。

 満額の38万円を適用できる合計所得金額の上限は従前どおりの95万円ですが、給与所得控除最低保障額が10万円引き上げられたことにより、配偶者の年収が160万円以下であれば、納税者本人は配偶者特別控除38万円の適用を受けることができます(ただし、納税者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。

 また、配偶者の年収が160万円を超えても201万円以下(正確には201万5,999円以下)であれば、納税者本人は段階的に逓減する配偶者特別控除を受けることができます。

5.188万円の壁(所得税)

 大学生年代の年収が150万円を超えると段階的に特定親族特別控除が減っていきますが、年収188万円を超えると特定親族特別控除はゼロとなります(上記3)。

 188万円の壁とは、特定親族特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいい、改正後に新しくできた年収の壁です。

6.201万円の壁(所得税)

 配偶者の年収が160万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていきますが、年収201万円(正確には201万5,999円)を超えると配偶者特別控除はゼロとなります(上記4)。

 201万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいますが、改正後もこの部分は変わっていません。

7.106万円の壁(社会保険)

 令和7年度税制改正は社会保険制度には影響がありませんので、社会保険制度上の年収の壁である106万円の壁は従前と変わっていません。

 ①従業員が51人以上(2024(令和6)年10月以降)、②週の労働時間が20時間以上、③月収8.8万円以上(年収106万円以上)、④2か月を超える雇用の見込、⑤学生でない、といった条件を満たす場合は、パートやアルバイトで働く人が自ら社会保険被保険者となり社会保険の扶養から外れます(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

8.130万円の壁(社会保険)

 令和7年度税制改正は社会保険制度には影響がありませんので、社会保険制度上の年収の壁である130万円の壁についても従前と変わっていません。

 130万円の壁とは、社会保険被保険者である給与所得者(例えば夫)が扶養する者(例えば妻)については、夫が負担する社会保険料のみで妻の健康保険料及び国民年金保険料まで賄われるという年収の分岐点のことをいいます。

 従業員が51人以上(2024(令和6)年10月以降)の企業では106万円、それより規模の小さい企業では130万円が年収の壁となっています。

特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、、特定親族特別控除の創設等が行われました。

 これらの改正は、原則として2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税から適用されます。

 前回は基礎控除と給与所得控除の引き上げについて確認しましたので、今回は新設された特定親族特別控除の内容と、この特定親族特別控除が2025(令和7)年の源泉徴収事務に与える影響について確認します。

※ 基礎控除と給与所得控除の引き上げについては、「基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

1.特定親族とは?

 2025(令和7)年度税制改正で、居住者が特定親族を有する場合には、その居住者の総所得金額等から、その特定親族1人につき、その特定親族の合計所得金額に応じて63万円~3万円を控除する特定親族特別控除が創設されました。

 特定親族とは、居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が58万円超123万円以下の人をいいます。

 収入が給与だけの場合には、その年中の収入金額が123万円超188万円以下であれば、合計所得金額が58万円超123万円以下となります(給与収入123万円-給与所得控除65万円=58万円、給与収入188万円-給与所得控除65万円=123万円)。

 なお、親族の合計所得金額が58万円以下の場合は、特定親族特別控除の対象とはなりませんが、扶養控除の対象となります。

 居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます)で合計所得金額が58万円以下の人は特定扶養親族に該当しますので、これまで通り扶養控除額は63万円となります。

2.特定親族特別控除額

 所得税の特定親族特別控除額は、下表のとおりです。

特定親族の合計所得金額
※カッコ内は収入が給与だけの場合の収入金額
特定親族特別控除額
58万円超 85万円以下 (123万円超 150万円以下) 63万円
85万円超 90万円以下(150万円超 155万円以下) 61万円
90万円超 95万円以下(155万円超 160万円以下) 51万円
95万円超 100万円以下(160万円超 165万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下(165万円超 170万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下(170万円超 175万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下(175万円超 180万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下(180万円超 185万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下(185万円超 188万円以下)  3万円

 上の表のとおり、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族の収入が給与のみの場合は、年収150万円までは特定扶養控除と同額の63万円の控除が受けられ、年収150万円を超えても188万円までは、控除額が逓減する配偶者特別控除と同様の仕組みとなっています(いわゆる年収の壁については、「令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください)。

3.源泉徴収事務への影響

 上記の税制改正は、原則として、2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税及び2026(令和8)年度以後の住民税について適用されます。

 そのため、2025(令和7)年12月に行う年末調整など、2025(令和7)年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません

 したがって、2025(令和7)年分の給与の源泉徴収事務においては、2025(令和7)年12月に行う年末調整の際に、特定親族特別控除を適用します。

 なお、年末調整において特定親族特別控除の適用を受けようとする人は、給与の支払者に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出する必要があります。

4.住民税の特定親族特別控除(参考)

 個人住民税における特定親族特別控除額は、下表のとおりです。

特定親族の合計所得金額
※カッコ内は収入が給与だけの場合の収入金額
特定親族特別控除額
58万円超 95万円以下(123万円超 160万円以下) 45万円
95万円超 100万円以下(160万円超 165万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下(165万円超 170万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下(170万円超 175万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下(175万円超 180万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下(180万円超 185万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下(185万円超 188万円以下)  3万円

 上の表のとおり、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族の収入が給与のみの場合は、年収160万円までは特定扶養控除と同額の45万円の控除が受けられ、年収160万円を超えても188万円までは、控除額が逓減する配偶者特別控除と同様の仕組みとなっています。

基礎控除・給与所得控除の引き上げと源泉徴収事務・年収の壁への影響(令和7年度税制改正)

 2025(令和7)年度税制改正において、物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、、特定親族特別控除の創設等が行われました。

 これらの改正は、原則として2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税から適用されます。

 以下では、基礎控除と給与所得控除の引き上げの内容と、これらの引き上げが2025(令和7)年の源泉徴収事務や、いわゆる年収の壁に与える影響について確認します。

※ 特定親族特別控除については、「特定親族特別控除の創設と源泉徴収事務への影響(令和7年度税制改正)」をご参照ください。

1.基礎控除の引き上げ

 令和7年度税制改正により、合計所得金額が2,350万円以下である個人の基礎控除額が48万円から10万円引き上げられ、58万円となりました。

 さらに、低~中所得者層の税負担への配慮から、基礎控除の特例として、所得額に応じて58万円に37万円~5万円の上乗せが行われています。

 なお、基礎控除の改正は所得税のみの改正であり、住民税の基礎控除額は従前通りの43万円です。

 改正後の所得税の基礎控除額は、下表のとおりです。

合計所得金額
※カッコ内は収入が給与だけの場合の収入金額※2
基礎控除額
改正前 令和7・8年分 令和9年分以後
132万円以下
(200万3,999円以下)
48万円 95万円※1 95万円※1
132万円超~336万円以下
(200万3,999円超~475万1,999円以下)
88万円※1 58万円
336万円超~489万円以下
(475万1,999円超~665万5,556万円以下)
68万円※1
489万円超~655万円以下
(665万5,556円超~850万円以下)
63万円※1
655万円超~2,350万円以下
(850万円超~2,545万円以下)
58万円
2,350万円超~2,400万円以下
(2,545万円超~2,595万円以下)
48万円※3
2,400万円超~2,450万円以下
(2,595万円超~2,645万円以下)
32万円※3
2,450万円超~2,500万円以下
(2,645万円超~2,695万円以下)
16万円※3
2,500万円超
(2,695万円超)
0円※3

※1 基礎控除の特例として、58万円にそれぞれ37万円、30万円、10万円、5万円を加算した金額となります(この加算は居住者についてのみ適用があります)。
 なお、合計所得金額132万円以下の低所得者層への特例は恒久的措置となりますが、132万円超~655万円以下の中所得者層への特例は令和7年分及び令和8年分の期間限定となります。
※2 特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合は、表の金額とは異なります。
※3 合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません(合計所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください)。

2.給与所得控除の引き上げ

 令和7年度税制改正により、給与の収入金額が190万円以下の個人について、給与所得控除額の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。

 給与所得控除の改正は、所得税だけではなく住民税にも適用されます(令和7年分以後の所得税及び令和8年度以後の住民税)。

 改正後の給与所得控除額は、下表のとおりです。

給与の収入金額(A) 改正前 令和7年分以後
162万5,000円以下 55万円 65万円
162万5,000円超~180万円以下 A×40%-10万円
180万円超~190万円以下 A×30%+8万円
190万円超~360万円以下 同左
360万円超~660万円以下 A×20%+44万円
660万円超~850万円以下 A×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

3.源泉徴収事務と年収の壁への影響

 上記1及び2の税制改正は、原則として、2025(令和7)年12月1日に施行され、2025(令和7)年分以後の所得税及び2026(令和8)年度以後の住民税について適用されます。

 そのため、2025(令和7)年12月に行う年末調整など、2025(令和7)年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じますが、11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。

 したがって、2025(令和7)年分の給与の源泉徴収事務においては、2025(令和7)年12月に行う年末調整の際に、改正後の基礎控除額と「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

 なお、基礎控除と給与所得控除の改正により、所得税が課税されない給与収入(いわゆる年収の壁)が、これまでの103万円から令和7年分は160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)に変わります

 また、給与所得控除の改正により、住民税が課税されない給与収入については、これまでの概ね100万円から2026(令和8)年度は110万円(45万円+給与所得控除65万円)に変わります(各自治体によって異なります)

※ 年収の壁については、「令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

不足額給付の申請受付開始時期と提出書類(兵庫県宝塚市の場合)

 宝塚市では2024(令和6)年8~10月に、定額減税しきれないと見込まれる方へ給付金(調整給付)が支給されました※。

 調整給付は2023(令和5)年の課税情報に基づき算定されていましたので、2024(令和6)年分所得税や定額減税の実績額が確定した際に、調整給付に不足が生じる方がいます。

 また、青色事業専従者など、税制度上定額減税の対象外であった方もいます。

 今回は、現時点の情報に基づいて、これらの方に対して行われる宝塚市の不足額給付について確認します。

※ 調整給付の詳細については、「調整給付金(定額減税補足給付金)の算定方法と疑問点の検証」をご参照ください。

1.不足額給付の対象者と手続き

 不足額給付の対象者は、2025(令和7)年1月1日時点で宝塚市に住民登録がある、下記の表A~Cに該当する方です。
 対象者には、2025(令和7)年8月下旬~9月に宝塚市から書面が送付される予定ですので、案内に従い申請手続きをしてください。

対象者 不足額給付 実施時期 実施自治体
A
・所得税の実績値と推計値が異なることにより調整給付額に不足が生じる人
・税額修正により令和6年度住民税所得割額が減少したことにより不足が生じる人
調整給付(当初)と調整給付(実績)の差額を支給(端数は1万円単位に切上げ) 令和7年8月以降(予定) 令和7年1月1日の課税自治体
B
税制度上、定額減税の扶養親族の対象外(合計所得48万円超の者、青色事業専従者、事業専従者(白色)など)で諸要件を満たす人
原則、4万円を支給(令和6年1月1日に国外居住であった場合は3万円)
C
・令和5年の合計所得が1805万円超で当初調整給付の対象外だったが、令和6年の合計所得が1805万円以下だった人
・令和6年1月1日時点で非居住だったが、令和7年1月1日以前に入国して居住者となり、令和6年分の所得税が発生した人
所得税分(3万円)のみを基礎として不足額給付を算定して支給(住民税は対象外)

Aの詳細については、「定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例」をご参照ください。
Bの詳細については、「所得税・住民税が非課税でも青色事業専従者等は定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる!」をご参照ください。

2.転入者の場合の手続き

 不足額給付の対象となる方のうち、転入者(2024(令和6)年1月2日~2025(令和7)年1月1日に宝塚市へ転入した方)については、転入前の自治体で発行された調整給付支給要件確認書(調整給付額の算出根拠となる資料)を添えて、2025(令和7)年9月~10月末(予定)にご自身で申し出・申請を行う必要があります。

 転入者については、当初調整給付に関する情報を宝塚市で把握できず、対象者を特定できないことから宝塚市から通知書面などは送付されませんのでご注意ください。

3.申請時に提出する書類

 不足額給付の申請受け付けは、2025(令和7)年9月頃に開始される予定です。申請をするにあたって、提出が必要な書類は以下のとおりです(宝塚市の場合)。

(1) 青色事業専従者等(上記1の表のBに該当する人)

 青色事業専従者、事業専従者(白色)、合計所得48万円超の者など、上記1の表のBに該当する人については、以下の書類の提出が必要です。

① 申請者の令和6年分源泉徴収票(または令和6年分確定申告書)
② 申請者の令和6年度税額決定通知書(または令和6年度(非)課税証明書)
③ 住民票の写し(世帯全員)
④ 世帯全員の令和5年度および令和6年度課税証明書
⑤ 低所得世帯向け給付および当初調整給付を受給していない旨の確認書(後日ホームページで公開されます)
⑥ 事業主の令和6年分確定申告書、青色事業専従者給与に関する届出書(または青色申告決算書)
※ ⑥は専従者のみ
※ 提出書類の概要については、「所得税・住民税が非課税の青色事業専従者等が不足額給付を申請する際に必要な書類」をご参照ください。

(2) 転入者

 転入者については、以下の書類の提出が必要です。

① 転入前の自治体で発行された調整給付支給要件確認書(調整給付額の算出根拠となる資料)
※ 紛失した場合は、調整給付を受給した自治体へご自身で再発行依頼をしてください。
※ 税額修正や扶養是正があった場合はその旨が分かる資料も必要です。
② 所得税分控除不足額(令和6年分の実績)が分かる資料
※ 令和6年分の源泉徴収票と、確定申告していない旨の誓約書(後日ホームページで公開されます)
※ 令和6年分確定申告書 など
③ 住民票(令和7年1月1日以降さらに転居があった場合)

所得税・住民税が非課税の青色事業専従者等が不足額給付を申請する際に必要な書類

 定額減税の調整給付(不足額給付)の給付方法には、プッシュ型給付と申請型給付があります。

 プッシュ型給付とは、市区町村が支給要件を確認し、給付対象者に2025(令和7)年6月頃~7月頃に通知を発送する方法です。
 したがって、原則として自ら申請する必要はありません(プッシュ型給付の詳細については、「定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例」をご参照ください)。

 一方、申請型給付とは、下記の支給要件をすべて満たす人が、自ら申請書を使用して申請する方法です。

(1) 2025(令和7)年1月1日時点で当該市区町村に住民票がある
(2) 2024(令和6)年分所得税及び2024(令和6)年度個人住民税所得割ともに定額減税前税額がゼロ(≒本人として定額減税対象外)
(3) 税制度上、「扶養親族」から外れてしまう(≒扶養親族等としても定額減税対象外)
(4) 低所得世帯向け給付の対象世帯の世帯主・世帯員に該当していない(≒一体措置の対象外)


 上記要件を満たして申請型給付に該当する可能性があるのは、事業専従者(青色事業専従者、白色申告者の事業専従者)と合計所得が48万円を超えている人です(申請型給付の詳細については、「所得税・住民税ともに非課税の青色事業専従者等は定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となるか?」をご参照ください)。

 これらの人が申請によって不足額給付を受ける際に、申請書と一緒に提出が必要となるのは以下の書類です。

提出書類 確認事項
①申請者の令和6年分源泉徴収票又は令和6年分確定申告書の控え 令和6年分所得税の税額・合計所得金額を把握するための資料
②申請者の令和6年度税額決定通知書又は令和6年度(非)課税証明書 令和6年度個人住民税所得割の税額・合計所得金額を把握するための資料
③事業主の令和6年分確定申告書の控え、青色事業専従者給与に関する届出書又は青色申告決算書の控え 青色事業専従者・事業専従者(白色)を把握するための資料
④住民票の写し(世帯全員) 世帯員を把握するための資料
⑤世帯全員の令和5年度及び令和6年度(非)課税証明書 世帯主及び世帯員の令和5年度及び令和6年度個人住民税の税額を把握するための資料
⑥低所得世帯向け給付、調整給付(当初)を受給していない旨の確認書(誓約書) 受給していないことを確認するための資料(書類がなく確認できない場合の誓約書含む)

 提出書類を対象者ごとにまとめると、下表のようになります。

対象者 支給要件の確認
所得税・個人住民税所得割がゼロ 制度上、扶養親族対象外 低所得世帯向け給付の受給なし
青色事業専従者・事業専従者(白色) ①②⑥ ①③ ④⑤⑥
合計所得金額48万円超の人 ①②⑥ ①② ④⑤⑥

 上記書類のうち、申請者の市区町村間の異動がない場合など、市区町村で容易に把握できる情報については提出不要とされることがあります(例えば、②、④、⑤や①、③の一部)。

 現時点では、多くの市区町村が申請スケジュールや申請方法等を公表していませんが、不足額給付の対象となる人はご自身がお住いの市区町村への確認が必要です。

 なお、すでに申請の受付を開始し、申請期限を2025(令和7)年5月下旬に設定している市区町村もありますので、早めに確認することをお勧めします。

所得税・住民税が非課税でも青色事業専従者等は定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる!

 2024(令和6)年度に実施された調整給付金(当初給付)の支給額に不足が生じる人を対象に、その不足する金額を支給する給付(不足額給付)が各市区町村(2025(令和7)年1月1日時点で住民登録がある自治体)によって行われます。

 この不足額給付の対象となる人は、次の2つのケースに分かれます。

(1) 令和5年所得等を基に推計した令和6年分推計所得税額により算定された調整給付金(当初給付)と、令和6年分所得税および定額減税の実績額等により算定した本来給付すべき金額との間で差額(不足)が生じた人

(2) 本人が非課税または扶養親族に該当しなかったため定額減税の対象外であり、低所得世帯向け給付の対象世帯主・世帯員にも該当しなかった人

 上記のうち(1)のケースについては前回の記事「定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例」で確認しましたので、今回は、(2)のケースに該当する人の要件を確認し、不足額給付の対象となる具体例を2例挙げます。

※ 調整給付金(当初給付)については、「調整給付金(定額減税補足給付金)の算定方法と疑問点の検証」をご参照ください。

1.申請型給付の対象となる要件

 先に見たように、不足額給付の対象となる人は2つのケースに分かれます。

 前回に確認した(1)のケースでは、市区町村が支給要件を確認し、給付対象者には2025(令和7)年6月頃から7月頃にかけて「支給のお知らせ」「確認書」などの通知が発送される予定です(プッシュ型給付)。

 今回確認する(2)のケースでは、下記の支給要件のいずれも満たす人が、原則として自ら申請書により申請する必要があります(申請型給付)※1

① 所得税及び個人住民税所得割ともに定額減税前税額がゼロ(≒本人として定額減税対象外)
② 税制度上、「扶養親族」から外れてしまう(≒扶養親族等としても定額減税対象外)
③ 低所得世帯向け給付※2の対象世帯の世帯主・世帯員に該当していない(≒一体措置の対象外)


 これら①~③の要件をすべて満たす人は不足額給付の対象となり、原則4万円が給付されます。
 ただし、2024(令和6)年1月1日時点で国外居住者であった場合は3万円となります(個人住民税分の1万円は給付されません)。

 不足額給付の対象となり得る可能性があるのは、次の①②の人です。

① 青色事業専従者、事業専従者(白色
② 合計所得金額48万超の人※3

 以下では、この2例について具体的にみていきます。

※1 多くの市区町村では、現時点で申請スケジュール等が公表されていませんが、すでに申請の受付を開始している市区町村もありますのでご注意ください。
 また、申請書による申請がない場合でも、課税資料等を基に上記支給要件を満たすことが確認できた場合には、給付金の通知を発送する市区町村もあります。
 申請開始時期や申請方法等は市区町村によって異なりますので、ご自身がお住いの市区町村にご確認ください。
 なお、申請に必要な書類については、「所得税・住民税が非課税の青色事業専従者等が不足額給付を申請する際に必要な書類」をご参照ください。

※2 低所得世帯向け給付金とは、令和5年度非課税世帯への給付(7万円)、令和5年度均等割のみ課税世帯への給付(10万円)、令和6年度新たに非課税世帯もしくは均等割のみ課税となった世帯への給付(10万円)をいいます。

※3 合計所得金額については、「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。

2.青色事業専従者、事業専従者(白色)

 下図における妻は、上記1の①~③の要件を満たすため、不足額給付の対象となります。

 下図における妻は、個人事業主である夫の個人商店を手伝う事業専従者ですので、税法上、配偶者控除・扶養控除の対象とならず、夫の定額減税において扶養親族等となりません(要件②)。

 また、妻自身の給与収入が概ね100万円に満たないため、所得税・住民税が課税されず、本人として定額減税の対象外となります(要件①)。

 さらに、世帯内に納税者(個人住民税所得割課税者)である夫がいるため、低所得世帯向け給付の対象に該当しません(要件③)。

 以上から、下図における妻は、不足額給付の対象となります。

3.合計所得金額48万超の人

 下図における父は、上記1の①~③の要件を満たすため、不足額給付の対象となります。

 下図における父は、年金収入が158万円以上あるため、合計所得金額が48万円を超えていますので、息子の定額減税において扶養親族等となりません(要件②)。

 また、父の年金収入は158万円~概ね170万円以下ですが、所得控除等により所得税・住民税ともに非課税となり、本人としても定額減税の対象外となります(要件①)。

 さらに、世帯内に納税者(個人住民税所得割課税者)である息子がいるため、低所得世帯向け給付の対象に該当しません(要件③)。

 以上から、下図における父は、不足額給付の対象となります。

定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例

 2024(令和6)年度に実施された調整給付金(当初給付)の支給額に不足が生じる人を対象に、その不足する金額を支給する給付(不足額給付)が各市区町村(2025(令和7)年1月1日時点で住民登録がある自治体)によって行われます。

 この不足額給付の対象となる人は、次の2つのケースに分かれます。

(1) 令和5年所得等を基に推計した令和6年分推計所得税額により算定された調整給付金(当初給付)と、令和6年分所得税および定額減税の実績額等により算定した本来給付すべき金額との間で差額(不足)が生じた人

(2) 本人が非課税または扶養親族に該当しなかったため定額減税の対象外であり、低所得世帯向け給付の対象世帯主・世帯員にも該当しなかった人

 今回は、上記のうち(1)のケースに該当する人の具体例を4例挙げ、それぞれの場合の不足額給付の計算例について確認します((2)のケースについては、次回に確認します)。

※ 調整給付金(当初給付)については、「調整給付金(定額減税補足給付金)の算定方法と疑問点の検証」をご参照ください。

1.令和5年所得よりも令和6年所得が減少した人

 令和5年所得に基づく推計所得税額が6万円、所得税分のみの定額減税額が9万円、調整給付(当初)は3万円でした。

 その後令和6年所得が確定し、所得税額(実績)が4万5千円、所得税分のみの定額減税額が9万円となり、調整給付(実績)は4万5千円となります。

 この場合、調整給付(当初)3万円と調整給付(実績)4万5千円の差額は1万5千円となりますが、端数は1万円単位で切上げされるため、2万円が不足額給付として給付されます。

2.令和5年所得がなく、令和6年所得がある人

 令和5年中は学生で所得がなかったため、令和6年分推計所得税額、定額減税額がともに0円となり(定額減税の対象外)、調整給付(当初)も0円でした。

 令和6年中に就職したことにより、令和6年所得税額(実績)が6万円となったので、定額減税額(所得税分)の3万円分が減税され、所得税額は3万円となります。したがって、定額減税しきれない所得税の金額はありません。

 一方、定額減税額(住民税分)については、令和6年度分住民税が発生していないことから減税することができないため、住民税分の1万円が不足額給付として給付されます。

3.令和6年中に扶養親族が増えた人

 令和5年の扶養状況は2人(妻、子1人)だったため、所得税分のみの定額減税額は9万円((本人+同一生計配偶者1人+扶養親族1人)×3万円)でしたが、その後令和6年中に子どもが生まれて扶養人数が1人増えたため、所得税分のみの定額減税額が12万円((本人+同一生計配偶者1人+扶養親族2人)×3万円)となりました。

 令和5年所得に基づく令和6年分推計所得税額が6万円、定額減税額が9万円で調整給付(当初)は3万円でしたが、令和6年の所得税額(実績)が6万円、定額減税額が12万円となったことで、調整給付(実績)は6万円となります。

 これより、調整給付(当初)3万円と調整給付(実績)6万円との差額の3万円が不足額給付として給付されます。

4.税額修正により、令和6年度分個人住民税所得割が減少した人

 令和6年度住民税の当初決定時には個人住民税所得割額が2万円、個人住民税分のみの定額減税額が2万円のため、調整給付(当初)は0円でした。

 その後(当初決定後)に申告の修正を行い、個人住民税所得割が1万円に減少しました。

 不足額給付の計算時には減少後の個人住民税所得割で計算するため、個人住民税所得割が1万円、個人住民税分のみの定額減税額が2万円、不足額給付時の調整給付(実績)が1万円となりますので、調整給付(当初)0円と不足額給付時の調整給付(実績)1万円との差額の1万円が不足額給付として給付されます。

調整給付金(定額減税補足給付金)の算定方法と疑問点の検証

 調整給付金は、2024(令和6)年度に実施される所得税・個人住民税所得割の定額減税を十分に受けられない人に対して、市区町村から支給される給付金(定額減税を補足する給付金)です。

 具体的には、定額減税可能額が2024(令和6)年分の推計所得税額または2024(令和6)年度分の個人住民税所得割額を上回る人に対して、当該上回る額の合計額を基礎として1万円単位で切り上げて算定した額が、2024(令和6)年7月下旬~8月に支給されます。

 今回は、調整給付金(当初給付)の算定方法と、調整給付金について想定される疑問点を検証します。

※ 2025(令和7)年度に実施される調整給付金(不足額給付)については、本ブログ記事「定額減税調整給付金(不足額給付)の対象となる人の具体例と給付額の計算例」をご参照ください。

1.調整給付金の算定方法

 先に述べたように、調整給付金は、定額減税可能額が2024(令和6)年分の推計所得税額または2024(令和6)年度分の個人住民税所得割額を上回る人に対して、当該上回る額の合計額を基礎として1万円単位で切り上げて算定した額が支給されるというものです。

 定額減税可能額は、次のとおりです。

【所得税分】 3万円 × 減税対象人数(納税者本人+同一生計配偶者+扶養親族の数)
【住民税分】 1万円 × 減税対象人数(納税者本人+控除対象配偶者+扶養親族の数)

※ 同一生計配偶者とは、納税者と生計を一にする配偶者(青色専従者等を除く)のうち、合計所得が48万円以下の人です。
※ 控除対象配偶者とは、同一生計配偶者のうち、納税者の所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円以下の人(配偶者控除の対象者)です。
※ 扶養親族には16歳未満の扶養親族も含みます。
※ 非居住者(国外居住者など)は、減税対象人数に含みません。

 調整給付金は、例えば、家族構成4人(本人、配偶者、子ども2人)、令和6年分推計所得税額10万円、令和6年度分個人住民税所得割額3万5千円の場合を前提とすると、次のように算定します。

【所得税】
定額減税可能額=3万円 × 減税対象人数4人=12万円
控除不足額=定額減税可能額12万円-推計所得税額10万円=2万円
【住民税】
定額減税可能額=1万円 × 減税対象人数4人=4万円
控除不足額=定額減税可能額4万円-住民税所得割額3万5千円=5千円
【調整給付金】
調整給付金=所得税の控除不足額2万円+住民税の控除不足額5千円=2万5千円→3万円(1万円単位に切り上げ)

2.調整給付金に関するQ&A

 調整給付金の算定方法は上記1のとおりですが、以下では調整給付金に関する疑問点をQ&A形式で検証します。

(1) 令和6年分推計所得税額はどのようにして算出しているのか?

 調整給付金の算定において、所得税の控除不足額は定額減税可能額から令和6年分推計所得税額を引いて算定しますが、この推計所得税額は2023(令和5)年分所得等を基に市区町村で算出しています。

 国からの通知に基づき、国の算定ツールを用いて算出するため、2023(令和5)年分確定申告書や勤務先から交付された2023(令和5)年分源泉徴収票の所得税額とは一致しない場合があります。
 特に住宅ローン控除を所得税で引ききっている場合(住民税で控除の適用がない場合)などは、算定ツールの仕様上、実際の所得税額と一致しません。

 このような場合には、次の(2)の対応になります。

(2) 調整給付金の支給額が不足していることが判明した場合は?

 調整給付金の算定に用いる令和6年分推計所得税額や令和6年度分個人住民税所得割額が実際の数値と異なる場合でも、基本的に調整給付金の変更は行われません。

 令和6年分推計所得税額は実額による算出ではないことを踏まえ、令和6年分所得税額が確定した後(年末調整または確定申告)に調整給付金の支給額に不足が生じていること(令和6年分推計所得税額>令和6年分確定所得税額)が判明した場合は、当該不足額が2025(令和7)年度に追加で給付される予定です。

(3) 調整給付金の支給額が過大となっていることが判明した場合は?

 上記(2)とは逆に、令和6年分所得税額が確定した後(年末調整または確定申告)に調整給付金の支給額に過大額が生じていること(令和6年分推計所得税額<令和6年分確定所得税額)が判明した場合は、当該過大額を返還しなければならないのでしょうか?

 答えは「否」です。調整給付金の支給額に過大額が生じていたとしても、返還は不要です。
 国は、給付しすぎた部分については返還を求めないとの方針を公表しています。

(4) 令和6年度住民税所得割も令和5年分所得税も課税されていない場合、調整給付の対象になるか?

 2024(令和6)年度住民税所得割(定額減税前の税額)も2023(令和5)年分所得税も課税されていない(0円)場合は、調整給付(当初給付)の対象となりません。

 ただし、世帯全員の令和6年度住民税所得割が非課税で、令和5年度に実施された(令和5年度個人住民税で判定)非課税世帯を対象とする給付金(7万円)、均等割のみ課税世帯を対象とする給付金(10万円)の対象となっていない世帯であれば、令和6年度低所得者支援給付金の対象となる場合がありますので、支給要件をご確認ください。

(5) 定額減税後に控除しきれない額が3,000円ある場合、均等割(5800円)から控除するのか?

 個人住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があり、所得の水準に基づき、市区町村において税額(所得割額・均等割額)が決定されます。
 今回の定額減税は「所得割」から控除するものであるため、均等割からは控除されません。

(6) 調整給付金は課税対象や差押えの対象となるか?

 調整給付金は課税対象ではありません。また、法律により差押えが禁止されています。

「合計所得金額」「総所得金額」「総所得金額等」の違いとは?

 年末調整や確定申告において所得控除を適用する場合に、適用可能かどうかを判定するための基準として所得金額が設けられています。

 例えば、配偶者控除の適用要件は配偶者の所得金額が48万円以下とされていますが、ここでいう所得は「合計所得金額」です。
 一方、寄附金控除額は寄附した金額と所得金額の40%のいずれか少ない金額から2,000円を控除した額とされていますが、ここでいう所得は「総所得金額等」です。

 また、個人住民税においては、均等割の非課税限度額は「合計所得金額」で判定するのに対して、所得割の非課税限度額は「総所得金額等」で判定します。

 このように「合計所得金額」や「総所得金額等」(さらに「総所得金額」もあります)は、所得税や個人住民税の計算に用いられています。
 どれも所得の合計を表すよく似た用語ですが、税法上少しずつ違いがありますので、それらが用いられる場面によって使い分けが必要です。

 以下では、「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」という3つの用語について確認します。

2025(令和7)年度税制改正により、配偶者控除や扶養控除などの適用要件は合計所得金額が58万円以下とされました。

1.課税所得金額の計算過程のどの金額か?

 国税庁のホームページや書籍等では、「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」について詳細な説明がされています。
 例えば、国税庁ホームページでは、「合計所得金額」について以下のように説明されています。

次の①と②の合計額に、退職所得金額、山林所得金額を加算した金額です。

※ 申告分離課税の所得がある場合には、それらの所得金額(長(短)期譲渡所得については特別控除前の金額)の合計額を加算した金額です。

① 事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
② 総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の2分の1の金額


ただし、「◆総所得金額等」で掲げた繰越控除を受けている場合は、その適用前の金額をいいます。

 確かにこの説明を読みくだいていけば「合計所得金額」がどういうものであるかがわかります。
 また、「総所得金額」と「総所得金額等」についても説明を読み解けば個々の理解はできます。
 しかし、3者の違いまでわかろうとすると、説明文を読むだけでは困難だと思われますので、ここでは図を用いて理解の一助とします。

 「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」は、課税所得金額の計算過程で出てくる用語ですので、これらの違いを理解するには、課税所得金額の計算構造を示した下図が参考になると思われます。

 課税所得金額は、各種所得の金額を一定の順序に従い損益通算し、純損失、雑損失等の繰越控除をして課税標準を求め、その課税標準から所得控除額を差し引いて計算します。
 詳細な説明は省きますが、「合計所得金額」、「総所得金額」、「総所得金額等」の違いを理解するにあたっては、これらが課税所得金額の計算過程のどの時点で出てくるかに注目することがポイントです。
 つまり、損益通算の前なのか後なのか、繰越控除の前なのか後なのか、分離課税の譲渡所得の特別控除の前なのか後なのか、所得控除の前なのか後なのか、ということです。

2.合計所得金額で判定するもの

 合計所得金額を用いて判定するものには、以下のものがあります。

・配偶者控除(本人の所得1,000万円以下、配偶者の所得48万円以下等)、配偶者特別控除
・扶養控除(扶養親族の所得48万円以下等)
・寡婦、ひとり親控除(500万円以下)
・基礎控除(2,500万円以下)
・住宅借入金特別控除(2,000万円以下)
・均等割の非課税限度額
・障がい者、未成年者、寡婦、ひとり親の非課税限度額 等

2025(令和7)年度税制改正により、配偶者控除や扶養控除などの適用要件は合計所得金額が58万円以下とされました。

3.総所得金額で判定するもの

 総所得金額には分離所得が含まれていないので、判定基準として使用されることはあまりありません。

4.総所得金額等で判定するもの

 総所得金額等を用いて判定するものには、以下のものがあります。

・雑損控除
・医療費控除
・寄附金控除
・所得割の非課税限度額 等

パート・アルバイトの税制上と社会保険制度上の年収の壁

 年末が近づいてくると、パートやアルバイトで働く人の中には、ある一定の年収を超えないように就業調整をする人が出てきます。
 例えば、年収103万円を超えると配偶者控除や扶養控除の対象から外れるため、労働時間を抑制して103万円というラインを超えないようにします。
 この103万円というラインのことを一般に「年収の壁」と呼びますが、年収の壁は103万円だけではありません。
 以下においては、パートやアルバイトで働く給与所得者を前提として、税制上と社会保険制度上の年収の壁について確認します。

※ 2025(令和7)年度税制改正により、年収の壁となる給与収入金額が変わっています。詳細については、「令和7年度税制改正で年収の壁はこのように変わった!」をご参照ください。

1.100万円の壁(住民税)

 年収の壁としてまず直面するのは、住民税における100万円の壁です。給与収入が年間で100万円を超えると住民税がかかります(兵庫県宝塚市や西宮市の場合)。
 住民税は、所得金額に応じて課税される「所得割と、定額で課税される「均等割」から成りますが、住んでいる地域や家族構成によって住民税が非課税となる所得金額は異なります。
 例えば、宝塚市で均等割が非課税となる所得は、次の算式で算出します。

 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+10万円+21万円(同一生計配偶者または扶養親族を有する場合のみ)

 単身の場合は、35万円×1+10万円=45万円が非課税となる所得であり、給与収入に置き換えると100万円(45万円+給与所得控除55万円)となります。
 詳しくは本ブログ記事「住民税非課税世帯とは?」をご参照ください。

2.103万円の壁(所得税)

 年収の壁として広く一般に認識されているのは、所得税における103万円の壁です。
 配偶者控除や扶養控除の対象となるには合計所得金額が48万円以下であることが必要ですが、年収が103万円であれば、給与収入103万円-給与所得控除55万円=48万円となるので、配偶者控除や扶養控除の対象となります。
 また、年収が103万円であれば、給与収入103万円-給与所得控除55万円-基礎控除48万円=0円となるので本人にも所得税はかかりません。

3.106万円の壁(社会保険)

 社会保険制度上の年収の壁として、106万円の壁があります。
 ①従業員が101人以上(2024(令和6)年10月からは51人以上)、②週の労働時間が20時間以上、③月収8.8万円以上(年収106万円以上)、④2か月を超える雇用の見込、⑤学生でない、といった条件を満たす場合は、パートやアルバイト従業員が自ら社会保険被保険者となり社会保険の扶養から外れます(関連記事「従業員51人以上の会社で働くパート・アルバイトの社会保険加入義務(令和6年10月1日~)」)。

4.130万円の壁(社会保険)

 所得税における103万円の壁と同様に広く一般に認識されているのが、社会保険における130万円の壁です。
 130万円の壁とは、社会保険被保険者である給与所得者(例えば夫)が扶養する者(例えば妻)については、夫が負担する社会保険料のみで妻の健康保険料及び国民年金保険料まで賄われるという年収の分岐点のことをいいます。
 従業員が101人以上(2024(令和6)年10月からは51人以上)の企業では106万円、それより規模の小さい企業では130万円が年収の壁となっています(関連記事「年収130万円以上となっても社会保険の扶養のまま働ける?」)。

5.150万円の壁(所得税)

 年収103万円を超えると配偶者控除の対象から外れますが(上記2)、年収150万円以下であれば、配偶者特別控除は満額の38万円が適用されます(ただし、給与所得者の合計所得金額が900万円以下の場合です)。
 年収150万円を超えると、段階的に配偶者特別控除が減っていきます。

6.180万円の壁(社会保険)

 意外と見落とされやすいのが、社会保険における180万円の壁です。
 60歳以上や障がい者の方は、年収130万円ではなく年収180万円までは社会保険の扶養に入ることができます(関連記事「扶養判定における遺族年金の取扱いは所得税と社会保険で異なる!」)。

7.201万円の壁(所得税)

 年収150万円を超えると段階的に配偶者特別控除が減っていきますが(上記5)、年収201万円を超えると配偶者特別控除はゼロとなります。
 201万円の壁とは、配偶者特別控除が適用されるか否かの年収の分岐点のことをいいます。