1.インボイスの登録をしたものの・・・
インボイス制度がスタートしてから1か月余りが経ちましたが、「インボイスの登録をやめることはできないか?」というご相談を受ける機会が増えています。
これらのご相談者は、本来は免税事業者なのに、インボイス制度が導入されたが故にインボイス発行事業者の登録をされた個人事業主の方々です。
多くの方が税理士の関与を受けておらず、インボイスの登録にあたって適切なアドバイスを受けることができなかったため、取引先に言われるがままに登録をしたケースがほとんどでした。
ところが、インボイス制度が始まって蓋を開けてみたら、登録をしていない免税事業者も多いことを報道などで知って、冒頭のご相談に至ったようです。
2.最短では令和6年1月1日から免税事業者に戻れる
上記の個人事業主の方々の場合、2023(令和5)年は、10月1日から12月31日までの3か月分については消費税の申告義務がありますが、2年縛りの制限がないため※1、最短では2024(令和6)年1月1日から免税事業者に戻ることができます※2。
※1 「2年縛り」については、本ブログ記事「免税事業者がインボイスの登録を受ける場合の2年縛りに注意!」をご参照ください)。
※2 基準期間(2022(令和4)年1月1日~同年12月31日)の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、インボイスの登録をやめても2024(令和6)年は課税事業者となりますのでご注意ください。
3.登録をやめる場合は取引先と相談を
ただし、インボイスの登録をやめて免税事業者に戻る場合は、その旨を取引先に伝えて登録をやめた後の取引がどうなるかについて確認しておくことが必要です。
もし、登録をやめるなら取引も打ち切るとか、消費税分は払わないというようなことを先方が通告してきた場合は(これらの行為は下請法や独占禁止法上問題となるおそれがありますので、面と向かって言われることはないと思いますが※3)、例えば、経過措置がある間は消費税分の20%を値引きする代わりに免税事業者のままでの取引継続を打診するなど※4、多少の妥協を含みながらも双方が納得できる着地点を探ることが大事です。
※3 独占禁止法・下請法上問題となる事例については、本ブログ記事「インボイス制度後の免税事業者との取引は独占禁止法・下請法違反に注意」をご参照ください。
※4 経過措置については、本ブログ記事「インボイス制度導入後の免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の特例(経過措置)」をご参照ください。
4.登録取消届出書を期限までに提出
取引先との交渉がまとまって、インボイスの登録をやめることができる場合は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(登録取消届出書)を、翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに税務署に提出します。
具体的には、2023(令和5)年12月17日(日)までに登録取消届出書を提出すれば、2024(令和6)年1月1日から免税事業者に戻ることができます。
なお、2023(令和5)年12月17日は日曜日ですので、税務署の窓口に提出する場合は12月15日(金)の閉庁時間(17:00)までに提出し、郵送の場合は12月17日(日)の通信日付印のあるものまでが有効です。e-Taxの場合は12月17日(日)の23:59:59までの受付となります。
取引先との交渉がまとまらず、インボイスの登録を継続する場合は、消費税分も堂々と請求しましょう。
そして消費税の申告をする際は、2026(令和8)年分までは「2割納税の特例」を適用することができますので、税負担・事務負担の軽減を図りましょう※5。
※5 「2割納税の特例」については、本ブログ記事「インボイス制度に係る支援措置:売上税額の2割納税」「売上税額の2割納税の特例と簡易課税制度はどちらが有利か?」をご参照ください。