個人の申告漏れ所得金額が高額な上位10業種(令和5事務年度)

 国税庁は毎年11月に、各事務年度における「所得税及び消費税調査等の状況」を報道発表資料として公表しています。

 以下では、2023(令和5)事務年度(令和5年7月~令和6年6月)について、所得税の調査等の状況と事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種についてみていきます。

1.所得税の調査等の状況

 国税庁の公表資料によると、調査の選定にAIを活⽤するなどして効率的に調査を⾏った結果、申告漏れ所得⾦額の総額及び追徴税額の総額は過去最高を記録しています。

 「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた「調査等」の合計件数は、60万5千件(対前年比94.9%)で、そのうち申告漏れ等の⾮違があった件数は31万1千件(同92.0%)となっています。

 「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた「調査等」による申告漏れ所得⾦額は、9,964 億円(同110.2%)となっています。

 「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた「調査等」による追徴税額は、1,398億円(同102.2%)と、過去最⾼となっています。

  実地調査 簡易な接触 調査等合計
特別・一般 着眼
調査等件数(件) 37,092(103.8%) 10,436(98.9%) 47,528(102.6%) 557,549(94.3%) 605,077(94.9%)
申告漏れ等の非違件数(件) 32,685(104.5%) 7,446(104.1%) 40,131(104.5%) 271,133(90.4%) 311,264(92.0%)
申告漏れ所得金額(億円) 5,081(97.6%) 435(111.5%) 5,516(98.6%) 4,448(129.0%) 9,964(110.2%)
追徴税額(億円) 1,019(104.0%) 47(134.3%) 1,066(105.0%) 332(94.1%) 1,398(102.2%)
1件当たり追徴税額(万円) 275(100.4%) 45(136.4%) 224(102.3%) 6(100.0%) 23(109.5%)

(備考)
(1) 上表のカッコ内の数字は、対前年比の割合を示しています。

(2) 実地調査(特別調査・一般調査)とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものです。

(3) 実地調査(着眼調査)とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。

(4) 簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

2.直近5年間の申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

 国税庁は、公表している「所得税及び消費税調査等の状況」の中で、「参考計表」として「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」を挙げています。
 
 2023(令和5)事務年度(令和5年7月~令和6年6月)から2019(令和1)事務年度(令和1年7月~令和2年6月)までの直近5事務年度における上位10業種は、以下のとおりです。

順位 R5 R4 R3 R2 R1
1 経営コンサルタント 経営コンサルタント 経営コンサルタント プログラマー 風俗業
2 ホステス、ホスト くず金卸売業 システムエンジニア 畜産農業(肉用牛) 経営コンサルタント
3 コンテンツ配信 ブリーダー ブリーダー 内科医 キャバクラ
4 くず金卸売業 焼肉 商工業デザイナー キャバクラ 太陽光発電
5 ブリーダー タイル工事 不動産代理仲介 太陽光発電 システムエンジニア
6 焼き鳥 冷暖房設備工事 外構工事 建築士 土木工事
7 太陽光発電 鉄骨、鉄筋工事 型枠工事 経営コンサルタント ダンプ運送
8 内科医 太陽光発電 機械部品受託加工 小売業・犬 タイル工事
9 スナック バー 一般貨物自動車運送 不動産代理仲介 冷暖房設備工事
10 西洋料理 電気通信工事 司法書士、行政書士 商工業デザイナー 清掃業

※ 上記調査事績は、特別調査及び一般調査に基づく実施結果です。