電子申告したのに青色申告特別控除額が55万円?

 2018年度(平成30年度)改正で、2020年(令和2年)分の所得税確定申告から、青色申告特別控除額が65万円から55万円に変わります。
 ただし、e-Taxによる申告(電子申告)又は電子帳簿保存を行うと、引き続き65万円控除を受けることができます。
 そこで、令和2年分は是非とも電子申告を行って65万円控除を受けたいところですが、電子申告の方法を誤ると55万円控除しか受けられない場合があります。
 今回は、この電子申告をはじめ、青色申告に関する間違いやすい事例を3点確認します。

1.電子申告と65万円控除

 令和2年分の確定申告において、青色申告者(電子帳簿保存法に係る承認は受けていません)が確定申告書を電子申告により期限内に提出し、青色申告決算書を別途書面(郵送)により提出しました。この場合、65万円控除を受けることができるでしょうか?

 答えは「否」です。
 青色申告特別控除額65万円を適用することができるのは、次のいずれかの要件を満たす場合です(措法25の2③④⑥)。

(1) 所定の期限内に電子帳簿保存法第4条第1項又は第5条第1項の承認申請書を提出し、その年中の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について税務署長の承認を受けて、電磁的記録による備付け及び保存を行い、かつ、期限内に貸借対照表及び損益計算書等を添付した確定申告書を提出した場合
(2) 期限内に電子申告により確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等を送信(提出)した場合

 (1)は電子帳簿の保存、(2)は電子申告に関する規定ですが、(2)の太字部分に注目すると、確定申告書だけではなく貸借対照表と損益計算書も電子申告しなければならないことがわかります。
 本事例の場合、青色申告決算書(貸借対照表及び損益計算書)は書面により提出していますので要件を満たさず、55万円控除しか受けることができません。意外と見落としやすいポイントかもしれませんので、注意が必要です。

※ 2022(令和4)年1月1日から施行される改正電子帳簿保存法では、税務署長の事前承認は不要になります。

関連記事:「税務署・確定申告会場で電子申告しても65万円控除は受けられない」

2.貸倒引当金は青色申告者の特典?

 白色申告者が、貸倒引当金は青色申告者でなければ適用できないと判断しましたが、この判断は妥当でしょうか?

 答えは「否」です。
 貸倒引当金は青色申告の特典の一つですが、個別評価による貸倒引当金については、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を営む者であれば、青色申告者でなくても適用を受けることができます(所法52①)。
 なお、一括評価による貸倒引当金については、事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者のみが適用を受けることができます(所法52②)。

3.青色申告の純損失を翌年の白色申告で繰越控除できる?

 前年に青色申告者の純損失の金額が生じた場合で、翌年分が白色申告(給与所得のみ)の場合は、繰越控除ができるでしょうか?

 答えは「正」です。
 純損失の繰越控除の要件に、連続して確定申告書を提出していることとありますが、翌年以後については青色申告書の提出は要件ではないので、白色申告でも繰越控除ができます(所法70①④)。
 
 なお、白色申告者に純損失の金額が生じた場合、一切繰越控除が認められないということではありません。
 白色申告者であっても、純損失の金額のうち、変動所得の損失と被災事業用資産の損失については、その純損失の発生した年分の確定申告書を提出していれば、繰越控除ができます(所法70②)。
 さらに、当初申告要件及び期限内提出要件はないため、期限後申告又は更正の請求でも繰越損失を生じさせることができます(所法70④)。