土地と建物を一括で譲渡した場合は、土地の譲渡は消費税の非課税売上となり、建物の譲渡は課税売上となります。
このように土地と建物を一括譲渡した場合、両者を合理的に区分した対価の額が契約書に記載されているときは、その区分によりそれぞれの売上高とします。
合理的な区分が行われていない場合は、その譲渡代金について、土地の対価部分と建物の対価部分に区分する必要があります。
1.譲渡対価の区分方法
土地付建物を一括譲渡した場合の課税売上高と非課税売上高に計上する金額は、それぞれ次のとおりです。
(1) 契約書の記載金額の区分が合理的な場合
① 契約書に土地と建物の価額が区分されている場合は、その価額によります。
② 契約書に建物に係る消費税等の額が記載されている場合は、その消費税率から割返して建物の対価の額を区分します。
〈消費税税率10%の場合〉
イ. 建物の価額=契約書に記載された消費税等の額÷10%×110%
ロ. 土地の価額=取引総額―建物の価額
(2) 契約書の記載金額の区分が合理的でない場合
① 近隣の取引事例を参考に計算した建物及び土地の時価の比により按分計算します。
② 不動産鑑定評価額により区分します。
③ 相続税評価額や固定資産税評価額をもとに按分計算します。
④ 土地や建物の原価をもとに按分計算します。
⑤ 建物の標準的な建築価額表により区分します。
イ.「建物の標準的な建築価額表」により建物の取得価額を算出
ロ. 建物の価額=建物の取得価額―減価償却費
ハ. 土地の価額=取引総額―建物の価額
※ 建物と土地を一括譲渡した場合に、租税特別措置法に規定する法人税の土地の譲渡等に係る課税の特例の計算における取扱いによって建物と土地の価格を区分しているときには、消費税の計算においてもその区分したところによらなければなりません(消費税法基本通達10-1-5)。
〈参考〉
法人税の土地の譲渡等に係る課税の特例について規定している租税特別措置法第62条の3及び第63条は、1998年(平成10年)1月1日から2020年(令和2年)3月31日までに行う土地の譲渡等について適用しないこととされています。
2.区分方法の計算例
簡単な数値を用いて、譲渡対価の主な区分方法の計算例を以下に示します。
(1) 契約書に建物の消費税額の記載がある場合(記載金額の区分が合理的な場合)
土地建物譲渡契約書 第1条 土地付建物を5,000万円(うち消費税200万円)で譲渡する。 |
① 建物の価額:200万円÷10%×110%=2,200万円
② 土地の価額:5,000万円―2,200万円=2,800万円
(2) 契約書に取引総額のみの記載がある場合(記載金額の区分が合理的な場合)
土地建物譲渡契約書 第1条 土地付建物を5,000万円で譲渡する。 |
固定資産税課税明細書 固定資産税評価額 土地1,000万円 建物1,500万円 |
ここでは固定資産税評価額をもとに按分します。
① 建物の価額:5,000万円×1,500万円÷(1,000万円+1,500万円)=3,000万円
② 土地の価額:5,000万円×1,000万円÷(1,000万円+1,500万円)=2,000万円
(3) 契約書の記載金額の区分が合理的でない場合
土地建物譲渡契約書 第1条 土地付建物を下記のとおり譲渡する。 (1) 土地の譲渡代金 4,000万円 (2) 建物の譲渡代金 1,000万円 |
固定資産税課税明細書 固定資産税評価額 土地1,000万円 建物1,500万円 |
契約書記載金額が合理的に区分されていない場合は、譲渡時の時価の比(ここでは固定資産税評価額)で按分します。
① 建物の価額:5,000万円×1,500万円÷(1,000万円+1,500万円)=3,000万円
② 土地の価額:5,000万円×1,000万円÷(1,000万円+1,500万円)=2,000万円