給与規定により、前月の21日から当月の20日までの勤務実績に基づき、当月の25日に給与を支給することになっている場合は、年末調整の対象となる給与は1月分(1月25日支給)~12月分(12月25日支給)となります。
では、当月の1日から当月末日までの勤務実績に基づき、翌月の10日に給与を支給することになっている場合は、年末調整の対象となる給与はどのようになるのでしょうか?
以下では、いわゆる「当月締め・翌月払い」の給与の年末調整について確認します。
1.年末調整の対象となる給与とは?
冒頭で挙げた「当月20日締め・当月25日払い」の給与の場合は、1月分(1月25日支給)~12月分(12月25日支給)の給与が年末調整の対象となります。
ここで一つの疑問が生じます。
「1月分」給与の計算の基となる期間は、前年12月21日~当年1月20日であり、ここには前年の12月21日~12月31日分が含まれています。この給与を純粋に「1月分」と呼べるでしょうか?
また、「12月分」給与の計算の基となる期間は、当年11月21日~当年12月20日であり、当年の12月21日~12月31日分が含まれていません。この給与を純粋に「12月分」と呼んでしまっていいのでしょうか?
これらの疑問は、「給与の計算の基となる期間」を基準に「〇月分」給与をとらえようとすることに起因しています。
しかし、年末調整の対象となる給与を「給与の計算の基となる期間」を基準に考えてはいけません。
結論を先に述べると、年末調整の対象となる給与は、その年の1月~12月に「支給」する(「支給日」が到来する)給与です。
年末調整は、本年中に支払の確定した給与、すなわち給与の支払を受ける人からみれば収入の確定した給与の総額について行います。
この場合の収入の確定する日(収入すべき時期)は、契約又は慣習により支給日が定められている給与についてはその支給日、支給日が定められていない給与についてはその支給を受けた日をいいます(所得税基本通達36-9(1))。
したがって、給与規定により25日が支給日と定められている場合は、1月から12月までの毎月25日に支払われる給与が年末調整の対象となります(「〇月分」という呼称は関係ありません)。
2.翌月支給の場合の年末調整の対象となる給与
そうすると、当月の1日から当月末日までの勤務実績に基づき、翌月の10日に給与を支給する場合、いわゆる「当月締め・翌月払い」の給与の年末調整にも、おのずと答えが出ます。
例えば、前年の12月1日~12月31日を給与の計算期間とし、当年の1月10日に支給する給与は、当年の年末調整の対象となります(この給与を「12月分」と呼ぶか「1月分」と呼ぶかにかかわらずです※)。
また、当年の12月1日~12月31日を給与の計算期間とし、翌年の1月10日に支給する給与は、当年ではなく翌年の年末調整の対象となります。
つまり、「当月締め・当月払い」の場合でも「当月締め・翌月払い」の場合でも、年末調整の対象となる給与は、その年の1月~12月に「支給」する(「支給日」が到来する)給与です。
※ 給与の計算期間(12月1日~12月31日)に着目すると「12月分」になり、発生主義に基づいた呼称といえます。また、支給日(1月10日)に着目すると「1月分」になり、現金主義的な呼称といえます。
3.給与計算期間に応じた会計処理
年末調整の対象となる給与については以上のとおりですが、ここで新たな疑問が生じます。
当年の12月1日~12月31日を給与の計算期間とし、翌年の1月10日に支給する給与は、当年ではなく翌年の年末調整の対象となりますが、例えば12月決算の法人は、この給与をどのように会計処理したらいいのでしょうか?当年の年末調整の対象とならないので会計処理をしなくてもいいのでしょうか?
答えは、発生主義に基づき「未払計上をする」です。
12月1日~12月31日を計算期間とする給与は「12月分」として発生(債務確定)していますので、「未払金」を計上することになります。
一方、「当月20日締め・当月25日払い」の場合、例えば11月21日~12月20日を計算期間とする給与は12月25日に支給されますので、未払計上はしません(資金繰り等の何らかの事情で年内に支給されなかった場合は、未払計上します※)。
ただし、12月21日~12月31日分の給与については、毎期継続適用を要件として、経過勘定項目の「未払費用」を計上することができます。
※ 年末調整の対象となる給与は、1月1日から12月31日までの間に支払うべきことが確定した給与をいいますので、当年中に支給期の到来した給与は、未払のものがあっても、これを含めたところで年末調整を行うことになります。
この場合、「給与所得の源泉徴収票」の作成日現在で未払の給与がある場合には、その未払額及び徴収未済の税額を、「支払金額」欄及び「源泉徴収税額」欄に内書することになっています。