1.事前確定届出給与の意義
事前確定届出給与とは、その役員の職務につき、所定の時期に確定額を支給する定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び業績連動給与を除く)で、一定の日までに納税地の所轄税務署長に対して、あらかじめ確定している支給時期、支給金額の他、必要事項を記載した届出をしている場合の当該給与をいいます(法人税法34条1項2号、法人税法施行令69条3項)。
従来は臨時的な役員賞与は損金算入が認められていませんでしたが、この事前確定届出給与の制度を利用すれば、臨時的な給与(賞与)であっても損金算入が可能です。
この事前確定届出給与については、国税庁ホームページにもその意義が次のように記載されています(下線は筆者、一部省略)。
事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(カッコ内省略)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式若しくは特定新株予約権を交付する旨の定め(カッコ内省略)に基づいて支給される給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの(承継譲渡制限付株式又は承継新株予約権による給与を含み、次に掲げる場合に該当する場合には、それぞれ次に定める要件を満たすものに限ります。)をいいます。
(1) その給与が次のいずれにも該当しない場合 事前確定届出給与に関する届出をしていること
イ 定期給与を支給しない役員に対して同族会社に該当しない法人が支給する金銭による給与
ロ 省略
2.非同族会社が非常勤役員に支給する給与は届出不要
ここで気になるのが、(1)の部分です。(1)では「定期給与を支給しない役員(非常勤役員)に対して同族会社に該当しない法人(非同族会社)が支給する金銭による給与」に該当しない場合は、「事前確定届出給与に関する届出をしていること」が事前確定届出給与の要件とされています。
裏を返せば「非常勤役員に対して非同族会社が支給する金銭による給与」に該当する場合は、「事前確定届出給与に関する届出をしていること」が事前確定届出給与の要件ではないということです。
つまり、非同族会社が非常勤役員に支給する金銭による給与は、届出をしていなくても事前確定届出給与になるということです。
このことは、次の法人税基本通達9-2-12(定期同額給与の意義)の注意書きにも記載されています(下線筆者)。
9-2-12 法第34条第1項第1号《定期同額給与》の「その支給時期が1月以下の一定の期間ごと」である給与とは、あらかじめ定められた支給基準(慣習によるものを含む。)に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給されるものをいうのであるから、例えば、非常勤役員に対し年俸又は事業年度の期間俸を年1回又は年2回所定の時期に支給するようなものは、たとえその支給額が各月ごとの一定の金額を基礎として算定されているものであっても、同号に規定する定期同額給与には該当しないことに留意する。
(注) 非常勤役員に対し所定の時期に確定した額の金銭を交付する旨の定めに基づいて支給する年俸又は期間俸等の給与のうち、次に掲げるものは、同項第2号《事前確定届出給与》に掲げる給与に該当する。
(1) 同族会社に該当しない法人が支給する給与
(2) 同族会社が支給する給与で令第69条第4項《事前確定届出給与》に定めるところに従って納税地の所轄税務署長に届出をしているもの
上記基本通達は、非常勤役員に対して所定の時期に支給する給与は定期同額給与に該当しないことを述べています(同族会社・非同族会社を問わず)。
そのうえで、注意書きの(1)において、非同族会社が非常勤役員に対して所定の時期に支給する確定した額の金銭による給与は、届出をしていなくても事前確定届出給与に該当することを述べています。
なお、同族会社が非常勤役員に対して所定の時期に支給する確定した額の金銭による給与は、届出をしていないと事前確定届出給与に該当しないことを(2)において述べています。