複数の課税文書に該当する場合の「所属の決定」

1.複数の課税文書に該当する場合

 契約書に貼る印紙の額は、印紙税額一覧表(課税物件表)を見ればわかります(参考:国税庁ホームページ「印紙税額一覧表」)。
 例えば、不動産売買契約書なら第1号文書、工事請負契約書なら第2号文書に該当しますので、これらの契約書に記載された金額によりそれぞれの印紙税額が決まります。

 しかし、実際の商取引の現場で作成される契約書には、複数の課税文書の要件に当てはまるケースも少なくありません。
 例えば、1年間の保守契約を締結する場合、保守作業を請け負うという契約は「請負に関する契約書」となり第2号文書に該当します。また、1年間継続して保守作業を行うという契約ですから「継続的取引の基本となる契約書」となり第7号文書にも該当します。 

 このように複数の課税文書に該当する場合は、最終的にどちらか一方の文書に該当することとされています(どちらの文書に該当するかの判定を「所属の決定」といいます)。
 所属の決定については、印紙税法別表第一課税物件表の適用に関する通則及び印紙税法基本通達に規定されています(参考:国税庁ホームページ「印紙税法別表第一課税物件表の適用に関する通則」、「印紙税法基本通達」)。 

2.所属の決定の具体例

 複数の課税文書の要件を満たす場合、最終的にどの課税文書に該当するかについての判定の仕方は、上記の印紙税法別表第一課税物件表の適用に関する通則及び印紙税法基本通達に規定されていますが、おおむね印紙税額が大きくなる方の文書に該当するように措置されているようです。

 以下に、実際の契約書でよくあるケースについて、所属の決定例を紹介します。

(1)第1号又は第2号文書と第3号から第17号までの文書に該当する場合(ただし、下記(2)又は(3)に該当する文書は除く)・・・第1号又は第2号文書

(例1)不動産及び売掛債権の譲渡契約書(第1号文書と第15号文書)→第1号文書
(例2)請負工事の内容とその代金の受領事実を記載した契約書(第2号文書と第17号文書)→第2号文書

(2)第1号又は第2号文書で契約金額の記載のないものと第7号文書に該当する場合・・・第7号文書

(例)継続する物品運送についての基本的な事項を定めた記載金額のない契約書(第1号文書と第7号文書)→第7号文書

(3)第1号文書と第2号文書に該当する場合(ただし、(4)に該当する文書は除く)・・・第1号文書

(例)機械製作及びその機械の運送契約書(第2号文書と第1号文書)→第1号文書

(4)第1号文書と第2号文書に該当する文書で、その文書にそれぞれの契約金額が区分記載されており、第2号文書についての契約金額が第1号文書についての契約金額を超えるもの・・・第2号文書

(例)機械製作費200万円及びその機械の運送料10万円とが区分記載されている請負及び運送契約書→第2号文書