医師の指示に基づいて購入した治療目的のサプリメントは医療費控除の対象となるか?

 医療費控除の対象となる医療費には、医師または歯科医師による診療または治療の対価がありますが、治療または療養に必要な医薬品の購入の対価も医療費控除の対象となります。

 医薬品の購入費用については、治療または療養に必要なものであれば医療費控除の対象となります。
 例えば、風邪をひいた場合の風邪薬などの購入費用は、風邪の治療に必要ですので医療費控除の対象となります。
 一方、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入費用は、治療が目的ではないため医療費控除の対象となりません。

 ビタミン剤などと同様に、病気の予防や健康増進のために用いられるものにサプリメントがありますが、このようなサプリメントも治療が目的ではないため医療費控除の対象となりません。

 では、治療や療養のためにサプリメントを購入した場合、その購入費用は医療費控除の対象となるのでしょうか?
 さらに、そのサプリメントは購入前に診療(カウンセリング)が必要な医療機関専用のもので、自分の判断ではなく医師の指示に基づいて購入したものだったとしたらどうでしょうか?

 今回は、この点について確認します。

1.漢方薬やビタミン剤の購入費用

 医師の指示に基づくサプリメントの購入費用が医療費控除の対象となるか否かについて考えるとき、次の国税庁ホームページ・質疑応答事例が参考になります(下線は筆者による)。

【照会要旨】
 漢方薬やビタミン剤の購入費用は、医療費控除の対象になりますか。

【回答要旨】
 治療又は療養に必要な場合には、医療費控除の対象となります。

 医薬品の購入費用で医療費控除の対象となるものは、治療又は療養に必要なものであることが必要です(所得税法施行令第207条)。
 漢方薬やビタミン剤は、治療又は療養のために効能があるほか、疾病の予防や健康の増進にも効能があり、これらの購入費用について医療費控除を受けるためには、その漢方薬やビタミン剤が医薬品であることに加え、その費用が治療又は療養に必要なものであることが必要となります。

注)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品に該当しない漢方薬等の購入費用は、医療費控除の対象とはなりません(所得税基本通達73-5)。

 上記質疑応答事例にあるように、漢方薬やビタミン剤は治療や療養だけでなく、病気の予防や健康増進にも効能があります。
 これらが医療費控除の対象となるためには、次の要件をどちらも満たす必要があります。

(1) 医薬品であること
(2) 治療または療養に必要なもの

 サプリメントも、治療や療養だけでなく、病気予防や健康増進にも効能があります。
 このようなサプリメントが医療費控除の対象となるかどうかについては、実は上記の2要件を満たすかどうかというシンプルな判断基準があることがわかります。

※ 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「医薬品に関する法律」といいます)第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品に該当する必要があります(「薬事法」が2014(平成26)年に改正されて現在の名称に変更されました)。

2.医師の指示に基づくサプリメントの購入

 では、医師の指示に基づく治療目的のサプリメントは医療費控除の対象となるのでしょうか?

 ここでは、以下の説例をもとに考えてみます。

【設例】
・患者は、医師の指示により、医師の指定したサプリメントを治療のために購入した。
・このサプリメントは医療機関専用のもので、購入前に診療(カウンセリング)を受けることが必須条件となっている。

 「医師の指示」、「医師の指定した」、「治療のため」、「医療機関専用」、「購入前に診療を受ける」など、医療費控除を連想させるいろんな修飾語がついていますが、惑わされてはいけません。

 これらの修飾語の中で、医療費控除の対象を考える上で重要なのは「治療のため」だけです。

 そして、もう一つ重要なのは、そのサプリメントが「医薬品であるかどうか」です。

 上記設例において、そのサプリメントが医薬品に関する法律上の医薬品であれば、2要件を満たしますので医療費控除の対象となります。
 そのサプリメントが医薬品に関する法律上の医薬品に該当せず、「食品」に分類されるものであれば、医療費控除の対象となりません。

 また、サプリメントが医薬品に関する法律上の医薬品であっても、病気の予防や健康増進のために購入したのであれば、医療費控除の対象となりません。
 
 サプリメントが医療費控除の対象となるか否かについて迷ったときは、2要件(「治療」のための「医薬品」)を満たすかどうかで判断することになります。

※ 関連記事:「迷いやすい医療費控除の例」、「マスク、PCR検査、オンライン診療は医療費控除の対象になるか?」、「文書料は医療費控除の対象となるか?」、「医療費のお知らせ(医療費通知)で医療費控除を受ける際の注意点





セルフメディケーション税制における「一定の取組」の留意点

1.「一定の取組」の具体例

 2017年(平成29年)1月1日よりセルフメディケーション税制が施行され、従来の医療費控除との選択適用ができるようになりました。
 この税制を利用するためには、次の要件を満たす必要があります。

(1) 所得税及び住民税の課税対象者であること
(2) 年間でスイッチOTC医薬品を1万2千円超購入していること(同一生計者の購入額を合算可能)
(3) 確定申告を行う者が健康の保持増進及び疾病の予防への一定の取組を行っていること

 上記要件のうち(3)の「一定の取組」とは、具体的には以下のものが該当します。

① 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査
 保険事業や健康増進事業として行われる人間ドック、各種健(検)診等
② 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
 生活保護受給者等を対象とする健康診査
③ 予防接種
 高齢者の肺炎球菌感染症及びインフルエンザの予防接種並びに任意のインフルエンザの予防接種
④ 勤務先で実施する定期健康診断
 事業主検診
⑤ 特定健康診査、特定保健指導
 いわゆるメタボ検診
⑥ 市町村が健康増進事業として実施するがん検診
 市町村が健康増進事業として行う乳がん、子宮がん検診など

2.「一定の取組」の留意点

 これらの取組を行う上での留意点は次のとおりです。

(1) 申告者が任意(全額自己負担)で受けた健康診査等は「一定の取組」には含まれません。例えば、申告者が任意で受診した人間ドック(全額自己負担)は「一定の取組」には含まれません。
 なお、任意で受けたインフルエンザの予防接種は「一定の取組」に含まれます。
(2) 上記のすべての取組を行う必要はなく、いずれか1つを行えば問題ありません。
(3) 世帯全員が取組を行う必要はなく、申告者のみが取組を行えば問題ありません。

迷いやすい医療費控除の例

 年末調整をした給与所得者の確定申告で多いのは、医療費控除を受ける場合です。
 毎年、顧問先の社長や従業員の方の医療費控除のための確定申告をするのですが、お預かりした領収書の中には、医療費控除の対象となるのかどうか迷うものがあります。調べてみると、意外なものが医療費控除の対象になっていたりします。

1.脱毛症、メガネ、入れ歯、禁煙に関する医療費控除

 まずは、そのような医療費のうち、頭髪(脱毛症)、目(メガネ等)、歯(入れ歯等)、禁煙に関するものをとりあげます。医療費控除の対象となるものは〇、ならないものは✕とします。

(1) 頭髪(脱毛症)に関する費用

①円形脱毛症の人が、医師の処方を受けて購入したフロジン液などの購入費用→〇
②神経性脱毛のため、医師の勧めで購入したカツラ代→✕
育毛剤発毛剤の購入費用→✕
④脱毛症のための植毛・育毛費用→✕

(2) 目(メガネ等)に関する費用

白内障治療のためのメガネ代で医師の診断書があるもの→〇
②子供の弱視矯正用のメガネのメガネ代で医師の診断書があるもの→〇
斜視用メガネの購入費用→〇
近視乱視等のメガネを購入する前に眼科医で受けた検眼費用→✕
⑤近視、遠視、老眼のためのコンタクトレンズの購入費用→✕
視力回復センターへの支払い→✕
⑦視力回復レーザー手術(レーシック)の費用→〇
⑧有水晶体眼内レンズ(フェイキック)の手術費用→〇

(3) 歯(入れ歯等)に関する費用

入れ歯の治療費用→〇
入れ歯安定剤の購入費用→✕
③歯科医でホワイトニング治療を受けた費用→✕
④自由診療で行ったインプラント治療費用→〇
⑤小学生の歯列矯正費用→〇
美容目的の歯列矯正費用→✕(歯列矯正が治療上必要と認められる場合は〇)
⑦虫歯治療のための金歯金冠を入れた費用→〇
ポーセレンを使用した場合の歯の治療費用→〇
⑨歯科医でラミネート・ベニア法を受けた費用→✕
⑩歯科ローンの金利・手数料→✕

(4) 禁煙に関する費用

禁煙外来での医師による診療又は治療の対価→〇
②医師の治療の一環として処方された禁煙パッチ禁煙ガムの購入費用→〇(処方箋のないものは✕)

2.出産、入院、交通費に関する医療費控除

 次に、出産、入院、交通費に関する費用で医療費控除の対象となるのかどうか迷いやすいものをとりあげます。医療費控除の対象となるものは〇、ならないものは✕とします。

(1) 出産に関する費用

妊婦検査薬の購入費用→✕
不妊治療の費用→〇
③妊産婦の検診費用→〇
④出産のための里帰り費用→✕
⑤出産のためのマタニティ衣料などの購入費用→✕
⑥妊婦に行う母体血を用いた出生前遺伝子学的検査費用→✕
人工授精の費用→〇
⑧妊娠中に呼吸法等の指導を受ける無痛分娩講座への参加費用→✕
胎児教室の受講費用→✕
⑩出産のための分娩費用→〇
⑪助産師に支払った妊娠、新生児の保健指導料→〇
⑫母体保護法に基づく理由で行う妊娠中絶費用→〇
流産した場合の手術費用→〇

(2) 入院に関する費用

①入院中療養上の世話をする家政婦紹介所の手数料→〇
自己都合の差額ベッド代→✕
③病床満床のため、病院近くの民宿に宿泊し通院治療を受けた場合の宿泊費用→✕
④入院中の病院の食事代→〇(病院から提供される以外の食事代は✕)
⑤入院中の散髪費用→✕
⑥入院中の冷蔵庫等の使用料→✕
⑦入院中の水枕氷のうなどの購入費用→〇
⑧入院に際して購入する洗面器歯磨きパジャマなど→✕
⑨医師や看護師に渡した謝礼の金品→✕

(3) 交通費に関する費用

医師の送迎費→〇
②通院時の電車バスなどの交通費→〇
③通院時の高速道路の通行料駐車料金→✕
④病院に収容されるためのヘリコプター使用料→〇
親族付添人の交通費、宿泊費→✕
⑥通院の際、付添人が必要な者の付添人の交通費→〇