不動産業者や建設業者などが顧客や物件の紹介を受けたときに、紹介者(紹介をしてくれた人)に対して紹介料(情報提供料)を支払うことがあります。
この場合、その紹介料は交際費に該当するケースもありますが、一定の要件を満たせば交際費にならないケースもあります。
今回は、紹介料が交際費にならないための要件を確認します。
1.紹介者が情報提供を業とする場合
情報提供を業とする者とは、例えば不動産仲介業のように仲介、代理、斡旋を行う業者(法人・個人)が考えられます。また、不動産売買を主たる業務とする事業者が、自身の販売網を活かして情報提供を行う場合も考えられます。
これらの者に支払う紹介料については、紹介者が業務として紹介を行っていますので交際費とはならず、支払手数料等として全額が損金になります。
交際費の問題が生じるのは、情報提供を業としない者へ紹介料を支払った場合です。
2.紹介者が情報提供を業としない場合
情報提供を業としない者(法人・個人)に対して紹介料を支払った場合は、その紹介料は原則として交際費になります。
現行制度では、資本金1億円以下の中小企業の場合、年間800万円までの交際費は損金算入されますが、800万円を超える部分は損金算入不可です。交際費とすべき紹介料を支払手数料として処理していた場合に、その紹介料が税務調査の際に交際費と認定されて、結果的に交際費が年間800万円を超えてしまうこともあります。
しかし、次の要件をすべて満たす場合は、情報提供を業としない者に支払った紹介料は交際費に該当しないこととされています(租税特別措置法通達61の4(1)-8)。
(1) その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること
(2) 提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること
(3) その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること
(1)の「あらかじめ締結された契約に基づくもの」という要件については、契約そのものは口頭でも成立しますが、税務調査の際に証拠を示すためにも、文書による契約が望ましいといえます。しかし、紹介者が情報提供を業とする者なら別ですが、そうでない者との間にあらかじめ文書による契約を交わすことは稀であると思われます。
そこで、契約書でなくても、例えば、紹介料の支払基準を記載したポスターやチラシなどを、社内その他所要の場所に掲示する方法でも構いません。
(2)の「役務の提供を受けていること」という要件については、何をもって役務の提供を受けたとするかを明らかにしておく必要があります。
例えば、建設会社が紹介を受けた見込客と交渉した結果、他の建設会社の方が条件がよいとされ成約しなかった場合、役務の提供を受けたか否かが問題となります。役務の提供の程度がどうであるかは、契約の具体的内容がどのようになっているかに係る問題であると解されるため、成約したら支払うのか、確かな情報だけに支払うのか、いわゆるガセネタでも支払うのか等を明らかにしておく必要があります。
(3)の「提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること」という要件については、(2)で明示された役務の提供の程度(成約したら支払う、確かな情報だけに支払う、ガセネタでも支払う等)を考慮して判断されます。
しかし、紹介料には統一的な相場はなく、業種や規模、内容等によって異なりますので、同業他社の相場情報が参考になると思われます。
注意しなければならないことは、同程度の役務の内容なのに紹介をしてくれた相手によって支払額が変わったりすると、単なる謝礼として交際費とみなされる可能性があるということです。税務調査で否認されないためにも、合理的な支払基準を作成する必要があります。