ふるさと納税は、「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」、「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として創設されました。
「納税」という言葉がついていますが、実際には、都道府県、市区町村への「寄附」のことをいい、ふるさと納税の限度額をきちんと把握しておけば、ふるさと納税額から2,000円を除いた全額が寄附金控除の対象となります。
所得税からの寄附金控除は、ふるさと納税を行った年の所得税から控除され、個人住民税からの寄附金控除は、ふるさと納税を行った翌年度の個人住民税から控除されます。
以下では、個人住民税におけるふるさと納税の寄附金控除の計算方法を確認し、ふるさと納税に関するよくある誤解について解説します。
1.個人住民税からの控除額の計算方法
個人住民税からの控除には「基本分」と「特例分」があり、それぞれ次のように計算します。
① 個人住民税からの控除(基本分)=(ふるさと納税額-2,000円)×10% | ||||||||||||||||
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控除の基本分は、上記①の計算式で計算します。なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。 | ||||||||||||||||
② 個人住民税からの控除(特例分)=(ふるさと納税額-2,000円)×個人住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額を控除した金額に応じた割合 | ||||||||||||||||
控除の特例分は、この特例分が個人住民税所得割額の2割を超えない場合は、上記②の計算式で計算します。なお、「個人住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額を控除した金額に応じた割合」は、下表のとおりです。
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③ 住民税からの控除(特例分)=個人住民税所得割額×20% | ||||||||||||||||
上記②で計算した特例分が個人住民税所得割額の2割を超える場合は、上記③の計算式で計算します。このときの個人住民税からの控除額は、①(基本分)と③(特例分)の合計額となります。 |
2.個人住民税からの控除額の計算例
以下の説例で、個人住民税からの寄附金控除額を計算してみます。
・個人住民税の課税総所得金額:150万円(基礎控除43万円のみ適用あり) ・ふるさと納税額:2万5千円(ふるさと納税の限度額の範囲内) ① 個人住民税からの控除(基本分)=(25,000円-2,000円)×10%=2,300円 市民税分:2,300円×3/5=1,380円 県民税分:2,300円×2/5=920円 ② 個人住民税からの控除(特例分)=(25,000円-2,000円)×84.895%=19,525.85円 市民税分:19,525.85円×3/5=11,715.51円≒11,716円(端数切り上げ) 県民税分:19,525.85円×2/5=7,810.34円≒7,811円(端数切り上げ) したがって、個人住民税額からの寄附金控除の合計額は、①+②=21,827円(=1,380円+920円+11,716円+7,811円)となります。 |
3.ふるさと納税のよくある誤解
ふるさと納税の個人住民税からの寄附金控除額は上記のように計算しますが、この寄附金控除額に関して、納税者の方から次のような質問をよく受けます。
(1) ふるさと納税から2千円を引いた全額が住民税から控除されていないのはなぜか?
例えば、上記2の計算例では、25,000円のふるさと納税に対して、個人住民税から控除された額は21,827円となっています。このときに次の質問をよく受けます。
「ふるさと納税額25,000円から自己負担額の2,000円を引いた23,000円が個人住民税から控除されるはずなのに21,827円しか控除されていないのはなぜですか?」
これに対する回答は、次のとおりです。
「ふるさと納税は、限度額の範囲内で行う限り、所得税(復興特別所得税を含む)と個人住民税を合わせて23,000円の控除となるようになっています。
所得税から(25,000円-2,000円)×所得税率5%=1,150円、復興特別所得税から(25,000円-2,000円)×0.1021%≒23円、合計1,173円が控除されていますので、個人住民税からの控除額21,827円と合わせると23,000円になります。」
(2) ワンストップ特例を受けたら所得税から寄付金控除が受けられない?
給与所得しかない納税者の方で医療費控除などの所得控除を受けない方は、ふるさと納税のワンストップ特例を適用することができます。
この場合、所得税の確定申告をする必要はないのですが、確定申告をしないということは、個人住民税ではふるさと納税の寄附金控除を受けることができても所得税では寄附金控除を受けられないのではないか?という疑問を持つ納税者の方もいます。
確かに、ふるさと納税のワンストップ特例を適用した場合は、所得税で寄附金控除を受けることはありません。
ただし、この場合は、個人住民税から(ふるさと納税額-2,000円)の全額が控除されます(先の説例では25,000円-2,000円=23,000円が個人住民税から控除されます)。
ワンストップ特例を適用して損をするということはありませんので、ご安心ください。