ミニマムタックスは、2023(令和5)年度税制改正で創設され、2025(令和7)年分の所得から適用されています。
2026(令和8)年度税制改正では、ミニマムタックスが早くも課税強化され、2027(令和9)年分の所得から適用されます。
ミニマムタックスは超富裕層を対象とした新しいルールとして導入されましたので、これまでは自分には関係ないと思っていた人も多いかもしれません。
しかし、2026(令和8)年度税制改正によりミニマムタックスの対象範囲が広がりましたので、これまで想定していなかった層にも影響が及ぶ可能性があります。
以下では、ミニマムタックスについて確認します。
1.ミニマムタックスの概要
ミニマムタックスは、極めて高額な所得を持つ個人、いわゆる超富裕層を対象とした所得税の追加課税措置です。
正式名称は「特定の基準所得金額の課税の特例(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化に係る措置)」といい、通常の所得税額よりも一定の税率で計算した金額が高い場合、その差額を追加で納付する仕組みになっています(租税特別措置法第41条の19)。
端的に言えば、超高額の所得がある人に最低限の税負担を求める制度です。
2.導入の背景
日本の所得税は累進課税制度を採用しており、給与所得や事業所得の最高税率は45%(住民税を合わせると55%)です。
一方、株式の配当や譲渡益などの金融所得には、一律20.315%の税率が適用されます。
このため、所得が増えるにつれて金融所得の割合が高まる富裕層ほど実効税率が下がる傾向がありました。
財務省のデータでは、所得が1億円を超えたあたりから実効税率が低下し始めるため、いわゆる「1億円の壁」問題が生じていました。
ミニマムタックスはこの不公平を是正する目的で導入されました 。
3.現行制度の計算方法
現行制度では、年間の基準所得金額から3.3億円を控除した金額に22.5%の税率を掛けた金額が通常の所得税額を上回る場合、その差額を追加で納税します。
計算式は以下の通りです。
(基準所得金額 − 3.3億円)× 22.5% − 通常の所得税額 = 追加納税額
基準所得金額とは、申告不要制度を適用せずに計算した合計所得金額をいいます。
一般に合計所得金額とは、給与所得・事業所得・不動産所得・譲渡所得などを合算した金額をいい、申告不要制度を適用した上場株式等の配当所得や譲渡所得は合計所得金額に含まれません。
しかし、ミニマムタックスにおける基準所得金額には、申告不要制度を適用した上場株式等の配当所得や譲渡所得が含まれますので注意が必要です(NISA(少額投資非課税制度)やエンジェル税制(一定のスタートアップ再投資)による非課税所得は含まれません)。
4.令和9年分から適用となる改正
2026(令和8)年度税制改正により、2027(令和9)年分の所得から適用される改正項目には以下の2つがあります。
(1) 特別控除額が3.3億円から1.65億円へ
2027(令和9)年分の所得からは、特別控除額が3.3億円から1.65億円に引き下げられ、より低い所得水準からミニマムタックスの課税対象となります。
特別控除額が従前の半分になりますので、会社株式売却や不動産売却で一時的に高額所得を得た人も対象となる可能性があります。
(2) 税率が22.5%から30%へ
ミニマムタックスにおける税率が、従前の22.5%から30%に引き上げられます。
5.まとめ
2027(令和9)年分の所得から、特別控除額の引き下げと税率の引き上げが同時に行われますので、超富裕層にとっては追加納税額の負担が重くなります。
また、特別控除額が半分に引き下げられましたので、ミニマムタックスの対象がこれまでの超富裕層だけではなく、普通の富裕層や一時的に高額所得を得た一般の人にも広がる可能性があります。