所得税の予定納税

1.予定納税とは

 予定納税とは、その年の5月15日(特別農業所得者は9月15日)現在で確定している前年分の所得金額、税額などを基に計算した下記2の予定納税基準額が15万円以上である場合、その年の所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納付するという制度です。あらかじめ納付した予定納税額については、確定申告において精算されます。

 なお、特別農業所得者とは、その年において農業所得の金額が総所得金額の7割を超え、かつ、その年9月1日以後に生じる農業所得の金額がその年の農業所得の金額の7割を超える者をいいます。

2.予定納税基準額の計算方法

  予定納税基準額は、次の(1)又は(2)のようになります。

(1) 次のいずれにも該当する者は、その者の前年分の申告納税額がそのまま予定納税基準額となります。

① 前年分の所得金額のうちに、山林所得、退職所得等の分離課税の所得(分離課税の上場株式等の配当所得等を除きます)及び譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得の金額がないこと。
② 前年分の所得税について災害減免法の規定の適用を受けていないこと。

(2) 上記(1)に該当しない者については、次の算式により予定納税基準額を計算します(前年に災害減免法の適用を受けている場合は、その適用がなかったものとして計算します)。

 予定納税基準額={(①+②)-前年の税額控除額-③}×102.1%

① 前年の課税総所得金額(譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得を除いて計算)に対する税額
② 前年の分離課税の上場株式等に係る課税配当所得等の金額に対する税額
③ 前年の所得税に係る源泉徴収税額(上記①及び②の計算対象所得に係るものに限ります)

3.予定納税額等の通知

 上記2の予定納税基準額が15万円以上になる者に対しては、所轄の税務署長から、その年の6月15日(特別農業所得者の場合は10月15日)までに予定納税基準額及び予定納税額が書面で通知されます。

4.予定納税額及び納付期間

 予定納税額は、上記2の予定納税基準額の3分の1相当額を、第1期分として7月1日から7月31日までに、第2期分として11月1日から11月30日までに納めることになっています(特別農業所得者以外)。

 前年において特別農業所得者である者及びその年に特別農業所得者として見込まれるとして承認を受けた者は、予定納税基準額の2分の1相当額を第2期分として11月1日から11月30日までに納めることになっています。

5.予定納税の減額申請

 その年の6月30日の現況で所得税及び復興特別所得税の申告納税見積額が、下記6の事由により予定納税基準額よりも少なくなる者は、7月15日までに所轄の税務署長に「予定納税額の減額申請書」を提出して承認されれば、予定納税額は減額されます。
 また、第2期分の予定納税額だけの減額申請は11月15日までとなります(この場合には、10月31日の現況において見積ることとなります)。
 なお、これらの期限が土曜日、日曜日又は祝日に当たるときは、その翌日が期限とみなされます。

※ 申告納税見積額は、該当年分の税制に基づき計算します。退職所得、源泉分離課税の利子所得や配当所得及び確定申告をしないことを選択する配当等は含めません。

6.予定納税の減額申請の対象事由

 減額申請ができる場合の事由としては、以下のようなものが挙げられます。

(1) 廃業、休業、失業
(2) 業況不振などのため所得が前年より明らかに少なくなる
(3) 災害や盗難、横領により事業用資産や山林に損害を受け資産損失が生じる
(4) 災害や盗難、横領による損失で雑損控除を受ける
(5) 多額の医療費の支出による医療費控除の適用又はその増加
(6) 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、寡夫控除の対象者の増加
(7) 社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除の控除額の増加や、一定の寄附金の支出による寄附金控除の適用
(8) (特定増改築等)住宅借入金等特別控除、政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除などの税額控除の適用又はその増加

7.予定納税の減額申請が認められる場合

 次の(1)又は(2)に該当する場合は、減額申請は認められます。

(1) 申告納税見積額の計算の基準日(6月30日又は10月31日)までに生じた事業の全部若しくは一部の廃止、休止若しくは転換、失業、災害、盗難若しくは横領による損害又は医療費の支払があったことにより、申告納税見積額が予定納税基準額に満たない場合
(2) 申告納税見積額の計算基準日の現況による申告納税見積額が予定納税基準額の70%相当額以下となる場合

8.死亡又は出国の場合の予定納税

 予定納税額を納付する居住者(総合課税の適用を受ける非居住者を含みます)に該当するか否かは、その年6月30日(特別農業所得者はその年10月31日)の現況によります。そのため、同日以前に死亡した者及び同日以前に出国した者で総合課税の適用を受けない非居住者は、予定納税額の納付義務はありません。

 一方、予定納税基準額が15万円以上の居住者がその年7月1日以後(特別農業所得者はその年11月1日以後)に死亡又は出国した場合は、予定納税額の納付義務があります。この場合、準確定申告の際に、第1期分、第2期分(特別農業所得者は第2期分)を予定納税額の欄に記載し、これらを控除した金額が第3期分となります。

 なお、予定納税額を納付すべき者が出国する場合には、出国後に納期限が到来する税額についても、その出国の日までに納付する必要があります。ただし、出国時までに納税管理人の届出をすれば所得税法上の出国とはならないため、通常どおり、第1期、第2期の納期限までにそれぞれ納付することになります。