消費税課税事業者選択届出書の提出を失念した場合の対応方法

 例えば、高額な設備投資をした場合には、その課税期間の課税仕入高が課税売上高を上回ることがあり、課税事業者であれば申告することによって消費税の還付を受けることができますが、免税事業者は申告書を提出することができませんので、消費税の還付を受けることができません。
 このような場合には、基準期間における課税売上高及び特定期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、免税事業者は課税事業者になることを選択することにより、消費税の還付を受けることができます。
 免税事業者が課税事業者になるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署長に提出しなければなりませんが、この提出をしていなかった場合は、消費税の還付を受けるためにどのように対応すればいいでしょうか?

1.やむを得ない事情があるときの救済措置(宥恕規定)

 課税事業者を選択しようとする事業者が、やむを得ない事情により、消費税課税事業者選択届出書を期限までに提出できなかった場合には、そのやむを得ない事情がやんだ日から2か月以内に、課税事業者選択届出書と特例承認申請書(「消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」)を所轄税務署長に提出し、その承認を受けたとき(みなし承認はありません)は、承認を受けた課税期間から課税事業者になることができます。
 では、「やむを得ない事情」とは、どのような事情のことをいうのでしょうか?
 やむを得ない事情とは、以下に掲げるように災害の発生等をいい、制度の不知や提出失念等は「やむを得ない事情」に該当しません。

(1) 震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災または火災その他人的災害で自己の責任によらないものに基因する災害が発生したことにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(2) (1)の災害に準ずるような状況または、その事業者の責めに帰することができない状態にあることにより、届出書の提出ができない状態になったと認められる場合

(3) その課税期間の末日前おおむね1か月以内に相続があったことにより、その相続に係る相続人が新たに課税事業者選択届出書などを提出できる個人事業者となった場合

(4) (1)から(3)までに準ずる事情がある場合で、税務署長がやむを得ないと認めた場合

2.制度の不知や届出書の提出を忘れていた場合

 やむを得ない事情がなく、単に課税事業者選択届出書の提出を忘れていた場合等には、上記1の宥恕規定は適用されません。
 このような場合には、消費税の還付を受けるために、課税期間の短縮特例の選択決算期の変更によって対応することが考えられます。
 課税事業者選択届出書の提出を忘れていた場合、課税期間が開始してすぐに1か月短縮特例の届出書と課税事業者選択届出書を提出すれば、課税期間を短縮しない場合に比べて11か月早く課税事業者となることができます。
 ただし、その後2年間(又は3年間)は1か月ごとに申告しなければなりませんので、煩雑さが伴います。
 また、決算期を変更して、変更後の事業年度が開始する前に課税事業者選択届出書を提出する方法もあります。
 しかし、この方法によると①法人税の申告時期も変更になる、②会社の事業計画の期間に影響がある、③1年でない事業年度が生じるため法人税の欠損金の繰越期間に影響がある、などの点に注意する必要があります。

※ 特定非常災害の指定を受けた場合の届出特例については、本ブログ記事「特定非常災害に係る消費税の届出等に関する特例」をご参照ください。