賃貸用不動産取得に要した借入金利子の必要経費算入と損益通算

1.不動産取得に要した借入金利子は必要経費

 新たに不動産賃貸業を開始した場合に、賃貸用の不動産を取得するために要した借入金利子は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができます。
 ただし、使用開始前の期間に対応する借入金利子は、必要経費に算入するか、賃貸用不動産の取得原価に算入するかを選択できます。 

 また、土地と建物を一つの契約により同一の者から借入金で取得し、借入金の額を区分することが困難な場合は、借入金がまず建物取得に充てられたものとし、建物の取得価額を上回る部分を土地購入のための借入金とみなして計算することができます(租税特別措置法施行令26の6②)。

2.土地取得に係る借入金利子は損益通算の対象外

 損益通算とは、ある所得の赤字と別の所得の黒字を相殺して全体の所得を圧縮する制度で、これにより課税される所得税が少なくなります。
 不動産所得の金額の計算上赤字が生じた場合は損益通算できるのですが、その損失のうち、土地を取得するために要した借入金利子に相当する部分の金額は生じなかったものとされ、損益通算の対象とならないので注意が必要です(租税特別措置法施行令26の6①)。

 例えば、総収入金額が100万円、土地取得に係る借入金利子が60万円、その他の経費が80万円だとすると、不動産所得の金額は100万円-60万円-80万円=-40万円(損失)になります。
 この場合(借入金利子60万円>赤字40万円の場合)、土地取得に係る借入金利子に相当する部分の40万円の損失は生じなかったものとみなされ損益通算の対象外となります。 

 また、総収入金額が70万円、土地取得に係る借入金利子が60万円、その他の経費が80万円だとすると、不動産所得の金額は70万円―60万円―80万円=-70万円(損失)になります。
 この場合(借入金利子60万円≦赤字70万円の場合)、土地取得に係る借入金利子に相当する部分の60万円の赤字は生じなかったものとみなされ損益通算の対象外となります。

 つまり、借入金利子と赤字のうち、いずれか小さい方の金額が損益通算の対象外になります。

※ 土地取得に係る借入金利子の具体的な計算方法については、本ブログ記事「土地等の取得に要した借入金利子の計算方法と記載例」をご参照ください。