1.納税地
確定申告書は、納税地の所轄税務署長に提出します。所得税法では、下表のように納税地を定めています。
判定基準 | 納税地 | 納税者 | |
---|---|---|---|
原則 | 特例 | ||
① 国内に住所を有する場合※1 | 住所地 | 居所、事業所等を納税地として選択する場合※3 | 居住者※4 |
② 国内に住所を有せず、居所を有する場合※2 | 居所地 | ||
③ 国内に恒久的施設(事務所、事業所等)を有する場合 | 恒久的施設の所在地 | — | 非居住者※4 |
④ かつて住所又は居所を有していた場所に親族等が現在居住している場合 | 当時の住所地又は居所地 | ||
⑤ 上記③④に該当しない場合で、国内にある不動産の貸付け等の対価を受ける場合 | 貸付資産の所在地 | ||
⑥ 上記③④⑤に該当しないで、納税地を選択した場合 | その者の選択した場所 | ||
⑦ 上記③④⑤⑥に該当しない場合 | 麴町税務署 |
※1 住所とは生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実により判定します(所得税基本通達2-1)。
※2 居所とは相当期間継続して居住している場所をいい、住所といえる程度に達していないものをいいます(神戸地裁平14.10.7判決)。
※3 納税地の特例を選択する場合は、変更前の所轄税務署長に対して「納税地の変更に関する届出書」を提出する必要があります(所得税法第16条)。
※4 納税者の区分(居住者・非居住者)は、次のとおりです。
納税者の区分 | 定義 | |
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居住者 | 永住者 | 日本国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人 |
非永住者 | 居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人 | |
非居住者 | 居住者以外の個人 |
確定申告書は納税地の所轄税務署長に提出しますが、居住者については、国内に住所を有する場合は、原則として住所地が納税地となります。
住所とは生活の本拠をいい、客観的事実によって判定します。一般的には住民票の登録をしている住所が納税地になりますので、確定申告書は原則として住民票のある住所地の所轄税務署長に提出します。
会社員等の給与所得者でも、医療費控除やふるさと納税等の寄附金控除を受ける場合などは確定申告をする必要があります。基本的には住民票のある住所地と現住所は一致しますので、確定申告書の提出先を迷うことはありません。
しかし、引越しや転勤などで住所が変わったにもかかわらず、住民票異動の手続きをしていないため、住民票に記載されている住所と現住所が異なることがあります。
このような場合は、住民票のある住所地と現住所のどちらに確定申告書を提出すればいいのか疑問が生じますが、現住所の所轄税務署長に確定申告書を提出すればよいことになっています。
また、個人事業主が住所地や居所地以外の地で事業をしている場合は、事業所の所在地を納税地とすることができます。この納税地の特例を選択する場合は、変更前の所轄税務署長に対して「納税地の変更に関する届出書」を提出する必要があります。
2.住民税は二重課税されないか?
住民票のある住所と実際の現住所が異なる場合は、現住所の所轄税務署長に確定申告書を提出することになりますが、この場合に心配なのが、住民票のある住所地と現住所で住民税が二重課税されないか、ということです。
住民税は住民票のある市町村が課税しますが、今回のケースのように住民票のある市町村と現住所の市町村が異なっている場合は、現住所の市町村が課税することになっています(地方税法294条3項・4項)。したがって、住民税が二重課税されるということはありません。
ただし、市町村内に事業所等を有する個人事業主で当該市町村内に住所(生活の本拠)を有しない者は、原則として住民税の均等割が課税されます。
しかし、前年の合計所得金額が市町村の条例で定める金額以下の場合は、均等割は非課税となります(地方税法294条1項2号)。