譲渡所得の短期と長期の判定基準

 譲渡所得とは資産の譲渡による所得をいい、短期譲渡所得と長期譲渡所得では適用される税率が異なります。

 短期譲渡所得の税率(所得税及び復興特別所得税と住民税の合計税率)は39.63%ですが長期譲渡所得は20.315%であり、短期と長期のどちらに該当するかで課される税金の額も大きく変わります。

 短期と長期の区分は、資産を取得した日からの期間が5年を超えるか否かで判定し、その期間の考え方に「所有期間」と「保有期間」があります。

 以下では、「所有期間」と「保有期間」について確認します。

1.譲渡所得の5区分

 譲渡所得は、譲渡する資産の種類とその資産の所有期間(保有期間)によって、以下のように区分されます。

(1)分離短期譲渡所得
 土地(借地権を含む)、建物、構築物等の譲渡で、譲渡年の1月1日における所有期間が5年以下のものをいいます。

(2)分離長期譲渡所得
 土地(借地権を含む)、建物、構築物等の譲渡で、譲渡年の1月1日における所有期間が5年超のものをいいます。

(3)株式等に係る譲渡所得等
 株式等の譲渡で、所有期間は関係ありません。

(4)総合短期譲渡所得
 上記(1)~(3)以外の資産の譲渡で、保有期間が5年以下のものをいいます。

(5)総合長期譲渡所得
 上記(1)~(3)以外の資産の譲渡で、保有期間が5年超のものをいいます。

2.所有期間と保有期間

 上記1より、分離課税の譲渡所得は所有期間が5年を超えるか否かで短期と長期の判定をします。
 一方、総合課税の譲渡所得は保有期間が5年を超えるか否かで短期と長期の判定をします。

 これらを図解すると、次のようになります。

 つまり、所有期間とは取得した日から譲渡した年の1月1日までの期間をいい、保有期間とは取得した日から譲渡した日までの期間をいいます。

3.「取得した日」、「譲渡した日」とは?

 譲渡所得の短期と長期の判定は、上記2のように分離課税は所有期間、総合課税は保有期間で行います。

 では、「取得した日」と「譲渡した日」とはいかなるものをいうのでしょうか?

 譲渡所得の収入を計上すべき時期は、原則として「資産の引渡しがあった日」となりますが、「売買契約の効力発生日」を収入すべき時期として選択することもできます(所得税基本通達36-12)。

 つまり、買い手の「取得した日」と売り手の「譲渡した日」は、原則として「資産の引渡しがあった日」となりますが、「売買契約の効力発生日」とすることもできます。

 また、資産を「取得した日」と「譲渡した日」の判定基準は、異なっても差し支えないこととされています。
 例えば、取得した日は契約日で、譲渡した日は引渡し日とすることも可能です。

 なお、「売買契約の効力発生日」を選択して申告した後、修正申告または更正の請求等で収入すべき時期を「資産の引渡しがあった日」に変更することはできません。