福利厚生費が給与課税されないための要件

 福利厚生の一環として支給した食事や記念品が、税務調査の際に給与と認定されることがあります。この場合、会社は源泉所得税の徴収漏れを指摘され、従業員にはその源泉所得税の負担が生じます。
 従業員の労をねぎらうという本来の趣旨が税務調査で不本意な結果とならないように、給与課税されないための要件を以下で確認します。

1.残業又は宿日直に伴う食事支給は給与課税されない?

 福利厚生の一環として役員や使用人に対して支給する食事は、次の2要件を満たせば給与課税されません。

(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること
(2)会社の負担額(食事の価額-役員や使用人が負担している金額)が1ヶ月当たり3,500円(税抜き)以下であること
 ここでいう食事の価額は、次の金額になります。
 ① 仕出し弁当などを取り寄せて支給する場合は、業者に支払う金額
 ② 社員食堂などで会社が作った食事を支給する場合は、食事の材料費や調味料等に要した、いわゆる直接費の額 

 また、現金で食事代の補助をする場合は、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合を除き、補助をする全額が給与課税されます
 なお、通常の勤務時間外に残業又は宿日直をした人に支給する食事は、無料で支給しても給与課税されません。しかし、深夜勤務を本来の職務とする人がその勤務に伴い食事の支給を受ける場合には、その支給額は給与課税されます。  

2.創業記念品等の支給と給与課税

 創業記念、増資記念、工事完成記念又は合併記念等に際して支給する記念品などは、次の要件をすべて満たす場合は給与課税されません。ただし、建築業者、造船業者等が請負工事又は造船の完成等に際し支給するものについては、この限りではありません。

(1)支給する記念品が社会通念上記念品としてふさわしいものであること
(2)記念品の処分見込価額による評価額が1万円(税抜き)以下であること
(3)創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給するものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること 

 なお、上記3要件を満たしても、本人が自由に記念品を選択できる場合は、その記念品の価額が給与として課税されます。

3.永年勤続表彰記念として旅行券を支給すると給与課税される?

 永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品又は旅行や観劇への招待費用は、次の要件をすべて満たす場合は給与課税されません。

(1)その人の勤続年数や地位などに照らして、社会通念上相当な金額以内であること
(2)勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること
(3)同じ人を2回以上表彰する場合は、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること 

 なお、上記3要件を満たしても、記念品の支給又は旅行や観劇への招待費用の負担に代えて、現金や商品券などを支給する場合は、その全額(商品券の場合は券面額)が給与課税されます。 旅行の招待費用に代えて支給される旅行券も、原則として給与課税されます。これは、一般的に旅行券には有効期限がなく、換金性があり、実質的に金銭を支給したことと同様になるためです。
 ただし、次の要件を満たしている旅行券の支給は、給与課税されません。

(1)旅行の実施は、旅行券の支給後1年以内であること
(2)旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含みます)であること
(3)旅行券の支給を受けた人が、当該旅行券を使用して旅行を実施した場合には、所定の報告書に必要事項(旅行実施者の所属・氏名・旅行日・旅行先・旅行社等への支払額等)を記載し、これに旅行先等を確認できる資料を添付して会社に提出すること
(4)旅行券の支給を受けた人が、当該旅行券の支給後1年以内に旅行券の全部又は一部を使用しなかった場合には、当該使用しなかった旅行券を会社に返還すること