1.扶養控除等申告書の用途は年末調整だけではない
年末調整では、勤務先に各種申告書(扶養控除等申告書、基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書)を提出することで、いろいろな控除を受けることができます。
これらの申告書のうち、令和4年分扶養控除等申告書については、昨年(令和3年)の年末調整時に勤務先に提出(令和4年中に途中入社した方は入社時に提出)していると思いますが、今年(令和4年)の年末調整時に修正事項(結婚や出産により扶養者が増えた等)の有無を確認するため、勤務先より再度配布されます。
また、令和5年分扶養控除等申告書は、来年(令和5年)1月から支払う給与の計算に使用するため、今年(令和4年)の年末調整時に勤務先に提出します。
年末調整のタイミングで扶養控除等申告書を提出することが多いので、なんとなく扶養控除等申告書は年末調整で所得控除を受けるために提出するものと思われがちですが、そうではありません。
扶養控除等申告書の用途は年末調整だけではなく、毎月の給与から天引きする所得税額(源泉徴収税額)を計算する際にも使用します。つまり、源泉徴収税額は扶養控除等申告書に記載された内容を反映するものでなければなりません。
以下では、扶養控除等申告書に障害者等の記載があった場合の源泉徴収税額の求め方について確認します。
2.甲欄の「扶養親族等の数」
扶養控除等申告書の提出があった人の源泉徴収税額は、源泉徴収税額表より次のステップで求めます。
(1) まず、その人のその月の給与等の金額から、その給与等の金額から控除される社会保険料等の金額を控除した金額を求めます。
(2) 次に、上記(1)により求めた金額に応じて「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」欄の該当する行を求め、その行と扶養控除等申告書により申告された扶養親族等の数に応じた甲欄の「扶養親族等の数(0人~7人)」欄との交わるところに記載されている金額を求めます。この金額が源泉徴収税額です。
ここで注意しなければならないのが、源泉徴収税額表における「扶養親族等」の意味です。
源泉徴収税額表における「扶養親族等」とは、控除対象扶養親族※1だけではなく源泉控除対象配偶者※2も含みます。つまり「扶養親族等の数」とは、源泉控除対象配偶者と控除対象扶養親族(老人扶養親族又は特定扶養親族を含みます)との合計数をいいます。
※1 控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、年齢16歳以上の人をいいます。
扶養親族とは、給与等の支払を受ける人と生計を一にする親族等(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者(以下「青色事業専従者等」といいます)を除きます)で、令和 4年中の所得の見積額が48万円以下の人をいいます。
ここにいう親族等には、児童福祉法の規定により養育を委託されたいわゆる里子や、老人福祉法の規定により養護を委託されたいわゆる養護老人も含まれます。
※2 源泉控除対象配偶者とは、給与等の支払を受ける人(合計所得金額が900万円以下である人に限ります)と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除きます)で、令和 4 年中の所得の見積額が95万円以下の人をいいます。
また、提出された扶養控除等申告書に障害者等の記載がある場合は、その内容を次のように源泉徴収税額表の「扶養親族等の数」に反映させなければなりません。
(3) 扶養控除等申告書に、給与等の支払を受ける人本人が障害者(特別障害者を含みます)、寡婦、ひとり親又は勤労学生に該当する旨の記載があるときは、扶養親族等の数にこれらの一に該当するごとに1人を加算した数を、上記(2)における「扶養親族等の数」とします。
(4) 扶養控除等申告書に、給与等の支払を受ける人の同一生計配偶者※3や扶養親族(年齢16歳未満の人を含みます)のうちに障害者(特別障害者を含みます)又は同居特別障害者に該当する旨の記載があるときは、扶養親族等の数にこれらの一に該当するごとに1人を加算した数を、上記(2)における「扶養親族等の数」とします。
※3 同一生計配偶者とは、給与等の支払を受ける人と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除きます)で、令和 4 年中の所得の見積額が48万円以下の人をいいます。
したがって、提出された扶養控除等申告書に障害者等の記載があった場合は、(年末調整で過不足の精算が行われるとはいえ)毎月の給与の源泉徴収税額にも影響がありますのでご注意下さい。