1.医療費控除とは
自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合、その年中に支払った医療費の金額から保険金等により補填される金額を控除した金額が年間10万円(総所得金額等※が200万円未満の場合は、その金額の5%)を超える場合は、その超える部分の金額を所得金額から控除できます(最高200万円まで)。これを医療費控除といいます。
病院で支払った医療費がすべて医療費控除の対象となるわけではなく、例えばインフルエンザの予防接種や健康診断の費用などは医療費控除の対象にはなりません。
医療費控除を受けるときは、その医療費が控除の対象になるかどうかに気をつけなければなりませんが、一般的には控除の対象とならないと思われているものでも内容によっては控除の対象となるものもあります。
以下では、医療費の領収書に記載されている「文書料」の医療費控除について確認します。
※ 総所得金額等については、本ブログ記事「『合計所得金額』『総所得金額』『総所得金額等』の違いとは?」をご参照ください。
2.医師による診断書料
病院の領収書には様々な様式のものがありますが、その領収書をよく見ると、「文書料」という項目が記載されているものがあります。
この「文書料」とは、病気やケガなどで入院したり手術をした場合などに保険会社に保険金を請求するため、あるいは会社や役所などへ提出するために、医師に執筆してもらう証明書の作成費用をいい、一般的には「診断書」と呼ばれるものです。
領収書によっては、「文書料」とは別に、この診断書作成費用を「診断書料」という項目で表示しているものもありますが、「文書料」という項目でまとめて表示しているケースが多いと思われます。
一般的に文書料は医療費控除の対象にならないと認識されていますが、この「診断書料(診断書作成に係る文書料)」は医療費控除の対象にはなりません。
医療費控除の対象となる医療費は、医師による診療や治療の対価のうち通常必要であると認められるものとされています。
そうすると、診断書作成に係る文書料は医師が診療又は治療した内容を記載した文書の発行手数料であり、その発行された診断書は生命保険会社へ給付金を請求する場合等の提出書類として使用されることから、医師等の診療又は治療の対価に該当せず医療費控除の対象にはなりません。
3.医師による紹介状
一方、領収書の「文書料」の項目で表示されるもののうち、いわゆる「紹介状(診療情報提供に係る文書料)」は医療費控除の対象となります。
例えば、ケガをした際に当初診療を受けたA市民病院の医師からそれまでの診療状況を記した紹介状の交付を受け、紹介先のB整形外科医院にその紹介状を渡して引き続き治療を受ける場合があります。
このような場合の「紹介状」は、A市民病院の医師がその診療に基づきB整形外科医院での診療の必要性を認めて交付したものであり、この紹介状の作成費用はB整形外科医院による診療を受けるために直接必要な費用であり通常必要なものと考えられることから、医療費控除の対象となります。