減価償却は、大きく分けると「普通償却」と「特別償却」があります。
法人税法で定める定額法や定率法で計算する通常の減価償却を「普通償却」といいます。
この償却とは別に、租税政策的な目的などから通常の計算をした償却費に加えて余分に減価償却することが認められています。これを「特別償却」といいます。
さらに、この特別償却は「初年度特別償却」と「割増償却」に分かれます。実務上、特別償却というときは初年度特別償却を指す場合が多いことから、ここでは初年度特別償却のことを特別償却と呼びます。
この特別償却と割増償却ですが、よく似た制度なので両者を混同してしまうケースも見受けられます。
以下では、両者の相違点について整理してみます。
1.メリット
特別償却も割増償却も、早期に費用化することによる固定資産の陳腐化リスクに備えるメリットがあります。
2.計算方法
特別償却は、特別償却限度額(取得価額×特別償却率)が、普通償却に上乗せされます。割増償却は、割増償却限度額(普通償却限度額×割増償却率)が、普通償却に上乗せされます。
特別償却限度額=取得価額×特別償却率
割増償却限度額=普通償却限度額×割増償却率
つまり、特別償却は取得価額を基礎として計算するのに対し、割増償却は普通償却を基礎として計算します。
3.計算例
次の簡単な数値を使って両者の計算例を示します。
取得価額100万円
耐用年数4年(償却率0.25)
特別償却率20%
割増償却率20%(適用期間2年)
(1) 特別償却を行った場合
①1年目
普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
特別償却限度額=100万円×20%=20万円
合計=25万円+20万円=45万円
②2年目
普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
特別償却限度額=0(適用があるのは初年度だけです)
合計=25万円+0=25万円
③3年目
普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
④4年目
普通償却限度額=100万円-(45万円+25万円+25万円)=5万円
(2) 割増償却を行った場合
①1年目
普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
割増償却限度額=25万円×20%=5万円
合計=25万円+5万円=30万円
②2年目
普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
割増償却限度額=25万円×20%=5万円
合計=25万円+5万円=30万円
③3年目
普通償却限度額=100万円×0.25=25万円
割増償却限度額=0(計算例では適用期間を2年としています)
合計=25万円+0=25万円
④4年目
普通償却限度額=100万円-(30万円+30万円+25万円)=15万円
4.適用期間
特別償却は初年度だけですが、割増償却は一定期間の適用があります。
5.減価償却費の総額
特別償却も割増償却も、減価償却費の総額は普通償却の場合と同じです。